2020/05/27

テレワーク普及にも使いたい、最大450万円の「IT導入補助金」とは

新型コロナウイルスの流行は、企業の間でテレワークがほとんど普及していなかったことを明らかにしました。
出社しなければならない人はいまだに多く、その理由は「テレワークの制度やシステムがない」というものです。
そこで今、注目したいのが「IT導入補助金」です。
未知の感染症が現れたことで、IT化が従業員の健康を守る手段にもなっています。

 

IT化の遅れがリスクに

 

政府の10万円特別定額給付金を受けるための申請が始まっていますが、先日、このようなニュースがSNS上で話題になりました。

各自治体が申請の受付や処理に追われる中、品川区ではオンライン申請の処理は1日に約100件が限界だという話です[1]。

オンライン申請の場合は手入力なので、間違いも多いようです。
そのため品川区では職員が2人1組でチェックする体制を取っているというのがその理由ですが、品川区の人口は38万人21万世帯です。
仮に全世帯がオンライン申請をした場合、処理に2100日=5.75年かかるではないか、という指摘がネット上で広がりました。

現金給付に関わる話なので慎重なチェックが必要なのは当然のことなのですが、一方で5月上旬に振り込みを始めているところもあります。
この違いは何でしょうか。

例えば5月11日から振り込みを開始している足立区の場合、給付金担当の部署を4月下旬に設置して備えていたということです。

また江戸川区は、給付金についての国会議論が進んでいた4月下旬にオンライン申請に関わるシステムの構築に着手しており、5月7日から支給を開始しています。
素早いシステム化が功を奏した形です。

そして一般企業について見てみましょう。
一般企業のテレワーク化については、このような調査結果があります[2]。

パーソル総合研究所によると、企業正社員のテレワーク実施者は3月の調査では13.2%でしたが、4月には27.9%と倍増しています。
ただ、3割弱というのが高い数字かどうか考える余地がありますし、非正規雇用の従業員のテレワーク実施率は17%と低い状況にある様子を見ると、じゅうぶんに浸透しているとは言い難い所でしょう。

一方で、1か月で倍増しているということは、1か月の間にそれなりに新しい体制を作ることができた企業がある、ということでもあります。
危機に際して「やってみればできる」ことも分かったという結果です。

現在テレワークを実施できていないという正社員の理由を見てみましょう。
以下のようなものです(図1)。


図1 テレワーク非実施理由
(出所:パーソル総合研究所「新型コロナウイルス対策によるテレワークへの影響に関する緊急調査」)
https://rc.persol-group.co.jp/research/activity/files/telework.pdf p29

「テレワークで行える業務ではない」が半数近くにのぼっています。
しかし、次に続いている
「テレワーク制度が整備されていない」
「テレワークのためのICT環境が整備されていない」
というのは、IT化である程度補える要素です。

また、「テレワークで行える業務ではない」というのも、その一部は環境や制度の未整備が原因になっている可能性もあります。

新型コロナウイルスに関しては、国内では多くの地域で緊急事態宣言が解除されていますが、第二波、第三波が到来する可能性も指摘されています。
それだけに、今回の教訓を機に整備を急ぐ必要があるでしょう。

IT化に踏み出せない理由はいくつか考えられますが、一方で今回の新型コロナウイルス対策で一躍脚光を浴びているオンライン会議システムが「Zoom」です。
オンライン会議参会者が2019年12月には1000万件だったのが、3月には2億に達したといいます。
4月に入っても増え続ける傾向にあり、必要に応じてオンライン会議をする、という手法が主流になっていくと考えられます。

「顔を見ないと落ち着かない」「慣れない」という声も当初は多くありましたが、慣れればそう不便を感じなくなりますし、むしろ慣れていかなければなりません。

次に訪れる可能性のある危機に対応するためにも、「食わず嫌い」を続けるのはあまり良いこととは言えません。
10万円給付制度決定の前からシステム構築をした江戸川区のように、先回りでの整備を考える良い機会ではないでしょうか。

 

IT導入補助金制度が使いやすくなっている

 

ところで、国の「IT導入補助金」が利用しやすくなっています。
テレワーク導入や業務改善などのためにITシステムや機器を購入した場合、費用の3分の2、最大450万円が補助されるというものです(C類型)。

2020年は従来より予算規模も大きく、かつ新型コロナウイルスの影響を受けた事業者を応援するといった意味合いでさらに拡充される見通しです。
認められる内容も広くなっています。
制度としてこれまでより使いやすく、筆者の知人の話ではありますが申請はほぼ通ると話してくれた関係者もいました。

あまり難しく考えずとも、例えばITツールとしてのパソコンやタブレットといったハードウェアのレンタル費用も補助の対象です。

5月22日からの公募ですが、それ以前に購入したツールなども認められるようになっています(図2)。


図2 C類型IT導入補助金の申請の流れ(出所:IT導入補助金2020)
https://www.it-hojo.jp/tokubetsuwaku/

対象になるのは、このような業務に必要なツールです(図3)。


図3 C類型IT導入補助金の対象区分(出所:IT導入補助金2020)
https://www.it-hojo.jp/tokubetsuwaku/

特に大分類1は、どの企業でも必要とする業務のマネジメントに活かせることでしょう。

 

従業員保護のためにも先回りを

 

先のパーソル総合研究所の調査によると、現在テレワークで勤務している社員の半数が「今後もテレワークを続けたい」と回答しています(図4)。


図3 テレワーク継続の意向
(出所:パーソル総合研究所「新型コロナウイルス対策によるテレワークへの影響に関する緊急調査」
https://rc.persol-group.co.jp/research/activity/data/telework.html

中でも、若い人に希望者が多いのが特徴です。デジタルネイティブならではの合理性を好む傾向があると言っても良いでしょう。

また、この調査では、地域別のテレワーク実施率と感染者数との相関がかなり強いことも明らかになった、としています。
感染リスクをなるべく低下させることは企業にとって重要なマネジメントのひとつです。

そして今回の自粛生活のなかで、
「通勤なんてしなくてもいい人がいっぱいいるんじゃないか」
といった価値観を持った人も多いようです。
働くことの概念が変化しつつあるとも言えるでしょう。

長い目で見たときにも、IT化の進んでいない企業には若者は魅力を感じにくいところがあるでしょうから、今を良い機会として考えたいものです。

[1] 読売新聞 2020年5月13日
https://www.yomiuri.co.jp/national/20200513-OYT1T50156/
[2] パーソル総合研究所「新型コロナウイルス対策によるテレワークへの影響に関する緊急調査」12P 14P
https://rc.persol-group.co.jp/research/activity/files/telework.pdf
※ IT導入補助金特設サイト
https://www.it-hojo.jp/