2020/03/04

「コミュニケーション」の意味を科学的に解説すると

コミュニケーションとは何かと聞かれても、その言葉の解釈は、時代や人、その国の文化によって異なります。

誰にでも、コミュニケーションとはどんなものなのかが正確に伝わり、かつ、実践できるようにしようと思うと、なかなか難しいものです。

そうはいっても、ビジネスではコミュニケーションは避けては通れません。何かいい方法はないのでしょうか。

そこで、コミュニケーションという言葉の意味について、共通の認識を持てるように科学的に解説します。

 

コミュニケーションで重要なのは、方法よりも相手

 

コミュニケーションとは、意志の疎通を図ることであり、その方法として、読む、書く、聞く、話すという言語を使う4つのスキルと、身だしなみや立ち振舞いなどの非言語によるものがあるというのが一般の認識でしょう。

コミュニケーションの方法は、ビジネス雑誌などでも取り上げられることも多く、ややもすれば、相手のことよりも方法論にばかり意識が向きがちです。

しかし、大事なのは方法論ではなく、相手に目を向けることです。

コミュニケーションを成立させるのは受け手である。内容を発するもの、つまりコミュニケーターではない。彼は発するだけである。聞く者がいなければ、コミュニケーションは成立しない。(『ドラッカー名言集 仕事の哲学』より)[1]

ドラッカーのこの言葉にもあるように、受け手の存在こそがコミュニケーション成立のための絶対条件なのです。

受け手のことを無視して、ひたすらテクニックばかりを磨いたとしても、そのテクニックが相手に対して使えるものでなければ、こちらが思うような反応を得ることができません。

そして、コミュニケーションの基準となるのは、相手の反応です。

営業でも、しゃべるのが苦手でも契約を取ってくるという人がいるように、コミュニケーションを決定づけるのはテクニックではなく、相手の反応です。

同じことを伝えたとしても、相手によって、どのように見えるのか、どのように聞こえるのか、そして、どのように感じるのかといったことは違ってきます。

科学的に見ても、認知特性といって、人によって外界からの情報を頭の中で理解・記憶したり、表現したりする方法が異なることが知られており、視覚、聴覚、言語の3つのタイプがあります。[2]

例えば、視覚優位の人の場合、電話のように音だけのやり取りが苦手で、どうしても聞き漏らしや聞き間違いが多くなってしまいます。

よって、相手が視覚優位であれば、メールや写真、イラストなどの視覚情報を使ってやり取りをした方が伝わるわけです。

このように、コミュニケーションを決定づけるのは相手であり、まずは相手のことをよく知ることが大事になってきます。

 

話がかみ合わなくなる原因

 

コミュニケーションがうまくいくためには、こちらが意図したことが、相手に正確に伝わることが必要です。

そのためには、自分と相手とで、前提がそろっている必要があります。

筆者は、とあるビジネス心理学系のセミナーにおいて、簡単なパズルゲームによって、前提の重要さを学びました。

このパズルゲームは、二人一組になり、片方の人が言葉だけを使って指示を出し、もう一方の人にパズルを組み立てさせるというものです。

一見すると簡単そうに見えますが、スムーズにできるという人は、なかなかいません。

実は、このパズルは、自分と相手でそれぞれのパーツの形は同じなのですが、色は異なります。

形が少し複雑なので、色を使ってパーツを指定しようとすると、こちらが意図したものとは違うパーツを指定してしまうという仕掛けになっています。

そのことに素早く気がつけばうまくいくのですが、お互いが持っているパーツは見えないように仕切りで区切られているうえに、持っているパーツは形も色も同じだという思い込みもあります。

そのため、お互いの前提がずれているということに気がつかなければ、このゲームはクリアできません。

このセミナーには、経営者や税理士、医師といった方々が参加されますが、講師によると、このゲームの反響は、毎回大きなものだそうです。

講師から、このゲームを体験した、とある経営者の話を聞いたのですが、その方はご自身のコミュニケーション能力に非常に自信を持っておられた方だったそうです。

しかし、ゲームの結果は、何度やってもボロボロ。

そこでやっと、自分にコミュニケーション能力があるのではなく、周囲の人が自分に合わせてくれていただけだったのだということに気がつかれたそうです。

前提のズレというのは非常に厄介で、なかなかその存在に気づくことができません。

自分にとっての常識が、相手にとっての常識とは限らないという認識が、話がかみ合わなくなるのを防ぐうえで、重要になってきます。

 

前提のズレを生むもの

 

筆者が上記のセミナーで学んだ言葉が「地図は土地ではない」というものです。

同じ土地を見ていたとしても、人によって頭の中に描く地図は異なります。

目印となるような大きな建物などしかないものもあれば、どこに何があるのかを詳細に描きこまれたものもあります。

このように、人によって物事を捉える際には、概要だけを捉えて細かい部分は無視するのか、細かい部分にまで詳細にこだわるのかという違いが出てきます。

そのように認識の方法に違いがあるため、異なる認識をする人同士では、話が合いにくくなります。

また、その人の頭の中の地図が、今の土地をそのまま表しているとも限りません。

頭の中の地図が古いままで、新しいものに描き換えられていなければ、当然ながら、新しい地図を持った人との会話がかみ合いません。

このように、認識の仕方であったり、前提が作られた時期が違っていたりすると、前提のズレを生み出してしまいます。

 

相手に合った言葉を使うことの重要性

 

前提がそろえばコミュニケーションがうまくいくのかというと、必ずしもそうとは言えません。

ビジネスにおけるコミュニケーションでは、こちらが考えることが相手に伝わるということだけでなく、相手に何らかの変化や行動を要求します。

そのためには、相手にいかにうまく働きかけることができるかが重要になってきます。

コミュニケーションがうまくいくために重要なのが、次の3つのポイントです。

第一に、受け手の言葉を使うことです。

ソクラテスは「大工と話すときは、大工の言葉を使え」と説いた。コミュニケーションは、受け手の言葉を使わなければ成立しない。受け手の経験にもとづいた言葉を使わなければならない。(『ドラッカー名言集 仕事の哲学』より)[3]

ここでの「受け手の言葉」が示すものとは、何でしょうか。

たとえ同じ言葉であったとしても、自分と相手とで前提が異なることがあります。

例えば、「適当」という言葉について考えると、本来の意味は、ほどよく当てはまっているということです。

しかし、それがいつしか、適当にするということが、手を抜いたやり方で処理して構わないという意味に受け取られるようになってしまいました。

受け手としては、「適当」という言葉を理解する際に、それがどんな意味で使われているのかを知るために、周囲の状況を観察します。

さらに、蓄積された経験から共通点を見つけ出して、一般化させ、それを言葉の意味として理解します。

そのため、スピードが重視される現代のビジネスの現場においては、適当という言葉が、省略できるものは、とにかく省略してしまうという理解に変わってしまったと考えられます。

同じ言葉であったとしても、その背後にある経験によって意味が変わってしまうというのが、おわかりいただけるのではないでしょうか。

ドラッカーの言葉の「受け手の経験にもとづいた言葉を使わなければならない。」というのは、そういう意味であると考えられます。

第二に、受け手が何を期待しているのかを知ることです。

受け手が期待しているものを知ることなく、コミュニケーションを行うことはできない。期待を知って、初めてその期待を利用できる。(『ドラッカー名言集 仕事の哲学』より)[4]

どんなニーズを持っているのかは、人によって異なります。

例えば、歯磨き粉の場合、虫歯を予防したいというニーズを持った人もいれば、一方で歯を美しく白くしたいというニーズを持った人がいます。

前者は、問題回避型と呼ばれ、解決するべき問題や回避するべきことがあると、やる気が高まるとされています。また、後者は目的志向型と呼ばれ、所有したり、取得したり、達成したり、到達することで、やる気が高まるとされています。[5]

もし、問題回避型の人に、ホワイトニングの効果が高い歯磨き粉を売ろうとしたり、目的志向型の人に、虫歯予防の効果が高い歯磨き粉を売ろうとしても、ニーズと合わないため、うまくいきません。

相手のタイプに応じて言葉を使い分けることで、相手からの反応を引き出すことができるようになります。

第三に、受け手の気持ちに合わせることです。

コミュニケーションは、受け手に何かを要求する。受け手が何かになること、何かをすること、何かを信じることを要求する。何かをしたいという受け手の気持ちに訴える。コミュニケーションは、受け手の価値観、欲求、目的に合致するとき強力となる。合致しないとき、まったく受けつけられないか、抵抗される。(『ドラッカー名言集 仕事の哲学』より)[6]
具体的なデータを示し、メリットを強調すれば、相手は動いてくれるかというと、必ずしもそうとは限りません。

ドラッカーも言うように、受け手の価値観、欲求、目的に合致することが必要になってきます。

「人間は論理的思考ではなく、感情で動いている」とは、2017年にノーベル経済学賞を受賞した、米シカゴ大学のリチャード・セイラー教授の言葉です。[7]

相手の欲望や感情を無視して、理屈ばかりを押し通すということはできません。

理屈や一般論で相手を説得しようとするのではなく、相手の気持ちをうまくくみ取ったコミュニケーションの方法が求められます。

以上のことをまとめるのであれば、コミュニケーションとは、相手の認知特性や、こちらとの前提のズレを把握したうえで、その相手に一番合った表現方法によって、こちらの意志を伝えることと考えることができます。

ぜひ、仕事を進める上で参考にして下さい。

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参照
[1]出所「ドラッカー名言集 仕事の哲学」P.F.ドラッカー ダイヤモンド社 P127
[2]出所「最新科学で解き明かす最強の記憶術」洋泉社MOOK P60
[3]出所「ドラッカー名言集 仕事の哲学」P.F.ドラッカー ダイヤモンド社 P128
[4]出所「ドラッカー名言集 仕事の哲学」P.F.ドラッカー ダイヤモンド社 P129
[5]出所「「影響言語」で人を動かす」シェリー・ローズ・シャーベイ 実務教育出版 P80~81
[6]出所「ドラッカー名言集 仕事の哲学」P.F.ドラッカー ダイヤモンド社 P130
[7]出所「マーケティングの本質 「心理」に関する「真理」」ADEX SYNRI ラボ 日本経済新聞出版社 P15