近年、BtoBマーケティングの世界ではターゲット企業を特定し、パーソナライズされたアプローチを行う アカウントベースドマーケティング(ABM) が注目を集めています。
特に営業リソースが限られている企業にとって、より確度の高いリードを獲得しマーケティングROI(投資対効果)を最大化する手法 としてABMの導入が進んでいます。
従来のリードジェネレーション型マーケティングでは、多くのリードを獲得してから精査するアプローチが主流でした。しかし、この方法では時間とコストがかかり商談につながらないリードが増えるという課題がありました。一方で、ABMは特定のターゲットアカウントに焦点を当てるため、ROIを向上させる効果が期待できます。
本記事では、ABMがどのようにROIの向上に寄与するのかを詳しく解説し、さらにABMの効果を測定するためのKPI設計についてもご紹介します。ABMの導入を検討している企業にとって、有益な情報となれば幸いです。
目次
1.ABMとROI向上の基本概念
①:ABMとは?
ABM(Account Based Marketing)は、特定の企業(アカウント)をターゲットとし、個別にマーケティング施策を展開する手法です。
一般的なリードジェネレーション型のマーケティングが不特定多数の見込み客を対象とするのに対し、ABMは企業ごとに最適な施策を実施する点が特徴的です。
ABMの主な目的は、マーケティングと営業チームが連携し、ターゲットアカウントへのアプローチを統一することで、顧客エンゲージメントを高め、成約率を向上させることにあります。
個々のアカウントに特化したマーケティングを実施するため、無駄なリソースを削減できることもABMの大きな利点です。
➁:ROIとは?
ROI(Return on Investment)は、投資した資金に対して得られた利益を示す指標であり、マーケティング施策の有効性を測定する際に用いられます。ROIの計算式は次の通りです。
ROI = (利益 ÷ 投資額)× 100
ABMは、ROIを向上させるために非常に有効な手法とされています。その理由は、投資を分散させず、最も収益性の高いアカウントにリソースを集中させることで、より高い成果を得ることができるためです。
2.ABM施策がROI向上に貢献する理由
①高いコンバージョン率
ABMでは、ターゲット企業の課題やニーズに最適化した施策を行うため、一般的なマーケティングよりもコンバージョン率が高くなります。
実際に、ABMを導入した企業の65%が、従来のマーケティング手法よりも高いコンバージョン率を達成しています。
②マーケティングと営業の連携強化
ABMでは、マーケティングと営業が共同でターゲットアカウントを選定し、施策を実施します。これにより、営業が求める質の高いリードを確保でき、リードナーチャリングの精度が向上します。
Forresterの調査によると、ABMを導入した企業の62%が、営業とマーケティングの連携が強化され、売上が向上したと報告しています。
③効率的なリソース配分
ABMでは、ROIの高いアカウントにリソースを集中投下するため、無駄なマーケティング費用を削減できます。従来のマーケティング手法と比較して、21%~50%高いROIを達成するケースもあります。
3.ROIを最大化するためのポイント
①ターゲットアカウントの精査
ABMの成功には、ターゲットアカウントの適切な選定が不可欠です。データ分析を活用し、以下のような基準で選定しましょう。
・過去の売上データ(高いLTVを持つ企業)
・業界、市場規模(成長が見込まれる業界)
・意思決定プロセスの把握(キーパーソンとの関係性)
ターゲットアカウントの精度を高めることで、ROIを向上させることができます。
② コンテンツのパーソナライズ
ターゲットアカウントごとに、パーソナライズされたコンテンツを作成することが重要です。具体的には:
・業界ごとのカスタマイズ資料(ホワイトペーパー、ケーススタディ)
・ターゲット企業の課題に即した提案書
・個別セミナーやウェビナーの開催
ABMを実施する企業の74%が、パーソナライズドコンテンツを活用することでエンゲージメントが向上したと回答しています。
③マルチチャネル戦略
ABMの施策は、複数のチャネルを組み合わせて実施することで、ROIを最大化できます。主なチャネルには:
・メールマーケティング(パーソナライズドメール)
・SNS広告(LinkedIn、Facebook)
・ダイレクトメール(手紙・ギフトを活用)
・オフラインイベントやカンファレンス
これらを組み合わせることで、ターゲットアカウントへの接触回数を増やし、コンバージョンを高めます。
④データ分析とPDCAの徹底
ABM施策の成果を最大化するためには、データを活用した継続的な改善(PDCAサイクル)が不可欠です。
・KPIの設定(リード獲得数、商談化率、契約率)
・ABテストの実施(広告クリエイティブ、メール件名など)
・営業とのフィードバック連携(商談内容の振り返り)
継続的な分析と改善を行うことで、ROIの最大化が可能になります。
記事のまとめ
ABMは、従来のマーケティング手法とは異なり、特定のアカウントに焦点を当てることで、より高いROIを実現することができる手法です。
特に、マーケティングと営業が密接に連携しながら施策を展開することで、ターゲットアカウントに対して効果的なアプローチが可能になります。
ROIを向上させるためには、ターゲットアカウントの選定を慎重に行い、パーソナライズされたコンテンツを提供し、マルチチャネルでのアプローチを実施することが重要です。
また、データを活用した分析と継続的な改善を行うことで、より高い成果を得ることができます。
今後のマーケティング戦略の一環として、ABMを積極的に取り入れ、ビジネスの成長につなげていきましょう。
文責:岸