BtoBビジネスでは、商品やサービスの購入に至るまでの検討期間が長くなりがちです。そのため、見込み顧客を育成する「リードナーチャリング」は、商談に進むための重要なステップとなります。
実際、リードナーチャリングの効果は複数の研究で明らかにされています。DemandGen Reportによれば、リードナーチャリングを実施することで販売機会が20%増加するという結果が示されています。
また、Forrester Researchの調査では、リードナーチャリングを実施している企業の売上が、実施していない企業に比べて50%も高いという結果が得られています。これらの研究結果からも、リードナーチャリングの重要性は明白です。
しかし、多くの企業がこのプロセスに課題を抱えているのも事実です。
リードナーチャリングを成功させる鍵は、データを深く理解し、それを戦略的に活用することにあります。本記事では、データを活用してリードナーチャリングを成功に導く方法について詳しく解説します。
目次
1. デマンドジェネレーションの理解
まずは、リードが営業部門に引き渡されるまでのフローであるデマンドジェネレーションについて理解しましょう。
このプロセスは以下の3つのステップで構成されています。
- リードジェネレーション
- リードナーチャリング
- リードクオリフィケーション
① リードジェネレーション
見込み顧客を獲得するプロセスです。展示会やウェブ広告、資料請求フォームを通じて、顧客を獲得します。
例:展示会で得た名刺情報をマーケティングリストに加える。
② リードナーチャリング
獲得した見込み顧客の購買意欲を高めるプロセスです。リードには興味度合いに強弱があるため、それぞれに適したマーケティングコミュニケーションが必要です。
例:メールマガジンで役立つ情報を提供し、徐々に信頼関係を構築する。
③ リードクオリフィケーション
商談につながる可能性が高い見込み顧客を選別し、営業部門に引き渡すプロセスです。これにより、営業活動の効率化が図れます。
例:スコアリングを活用して、関心の高いリードを特定する。
2. データ収集のポイント
データはリードナーチャリングの基盤となります。ただし、闇雲にデータを集めるのではなく、データ形式を統一し、集計しやすい形で整理することが重要です。
① リードナーチャリングに必要なデータ
以下のデータを収集することで、リードの全体像を把握しやすくなります。
- 基本情報:名前、連絡先、会社情報、役職など
- 行動データ:ウェブサイト訪問履歴、資料ダウンロード履歴、メール開封履歴など
- 商談や営業活動の記録:過去のやり取りや商談内容
② データ収集の方法
効率的にデータを収集するには、以下の手法を活用しましょう。
- ウェブフォーム:問い合わせフォームや資料請求フォームを通じて基本情報を取得します。
- アンケート:顧客のニーズや関心を深く理解するために実施します。
- トラッキング:Google Analytics等のツールで、ウェブサイト訪問者の行動データを収集します
③データの管理方法
収集したデータを管理する際、次のツールを活用しましょう。
- データベース:Google BigQueryやSnowflakeを使用して、生データを安全に保管します。
- ETLツール:troccoやReckonerでデータの加工や変換を行います。
- ビジュアライズツール:TableauやLooker studioでデータを可視化し、分析に役立てます。
④MAツールやCRMツールとの連携
APIを活用し、複数のシステムを連携させることで、データの一元管理が可能になります。
例えば、弊社ではSalesforce(CRM)とMarketo(MA)を連携し、一貫した顧客管理を実現しています。この連携により、リードナーチャリングから営業活動までのプロセスを効率化できています。
3. データを活用したリードナーチャリングの実践
リードナーチャリングを実施する際、リードの購買意欲や関心を深く理解し、それに基づいた適切なアクションを取ることが重要です。
この章では、効果的なナーチャリングを実現するためのアプローチを2つ紹介します。
① スコアリングによる優先度付け
リードにスコアを割り当てることで、優先順位を明確化し、効率的なフォローが可能になります。
例:サイトを訪問したリードに10点、資料をダウンロードしたリードに20点を付与。高スコアのリードを優先してフォローすることで、商談獲得率を向上させる。
② パーソナライズされたコンテンツの提供
リードの興味や課題に基づき、それぞれに最適なコンテンツを提供します。
例:過去に資料請求を行ったリードに対し、製品のアップデート情報やキャンペーン情報を適切なタイミングで提供する。
例:IT業界のリードに対し、最新技術に関するホワイトペーパーを提供する。
4. マーケティングでよく使われるデータ分析手法
3章で紹介したアプローチを行うためには、リードの行動や属性データを基にした適切な分析が欠かせません。
この章では、リードナーチャリングに役立つデータ分析手法を解説します。
① 統計検定
背景・目的
2つの群(A群:サイト訪問のみ、B群:サイト訪問に加えて問い合わせあり)を比較し、どちらが商談獲得率に貢献するかを検証する。
手法
A群とB群の商談獲得率を統計的に比較するため、独立した2群のt検定を実施した。
結果
B群の商談獲得率はA群に比べ20%高いことが明らかになった(p < 0.05)。
考察
商談獲得率を向上させるには、サイト訪問のみのリードに対し、他のコンバージョン行動(例:資料ダウンロードや問い合わせフォームの入力)を促進することが効果的と考えられる。
活用
ウェブページ内に資料請求ボタンやフォームリンクを目立つ形で配置し、導線を設計する。
② ロジスティック回帰
背景・目的
リードの属性や行動履歴を基に、商談作成の可能性を予測するモデルを構築し、特定のリードグループをターゲットとするナーチャリング戦略を設計する。
手法
ロジスティック回帰モデルを使用し、リードの年齢、職種、直近の行動履歴が商談獲得率に与える影響を分析した。
結果
20〜30代男性リードの商談獲得率が50%以上であることが予測された。
考察
プロダクトが20〜30代男性に特に魅力的である可能性が示唆された。
活用
20〜30代男性リードに対してのフォローを強化する。
5. 成果の測定と改善
リードナーチャリングを成功させるためには、定期的に成果を評価し、改善を繰り返すことが重要です。
本章では、測定基準の設定や改善のためのアプローチについて解説します。
① KPIの設定
リードナーチャリングの効果を測定するために、以下のようなKPIを設定します。これらの指標を基にデータをモニタリングし、成果を分析することで、改善すべきポイントを明確にします。
これらの指標や遷移率に十分な成果が見られない場合は、戦略の見直しが必要です。
- リード数
- 有効リード数
- 商談獲得数
- 受注数
② データクレンジングによる改善
スコアリング基準やセグメント分類を再検討することで、より正確なデータ分析が可能になります。
このプロセスにより、新たな知見が得られ、リードナーチャリングの分析精度が向上し、高い効果を得ることができます。
③ 営業部門との連携
営業部門からフィードバックを得ることで、現場のニーズや課題を把握し、その知見をデータ分析に応用できる可能性があります。
部門間の連携を強化することで、リードナーチャリングの精度と成果をさらに向上させることが期待できます。
6. まとめ
データを活用したリードナーチャリングは、顧客理解を深め、適切なマーケティング施策を実施するために欠かせないステップです。
データ活用に積極的に取り組み、マーケティングの成果を最大化しましょう。
文責:識学 中島