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リアリティショックとは?起きる原因や企業と従業員ができる対処法を紹介

リアリティショックとは?

リアリティショックとは、会社に入社して、自分の思い描いていた理想と現実との間にギャップを感じてしまう現象を指しています。

リアリティショックは個人の問題ではなく、組織運営にも影響を及ぼすため、適切な方法で解消することが大切です。

この記事ではリアリティショックの概要について説明し、原因や従業員と企業がそれぞれできるリアリティショック対処法について解説します。

リアリティショック(reality shock)とは何か

リアリティショックとは、新しい環境に置かれた際に、理想と現実のギャップに驚きや戸惑いを感じる状態を指します。

特に、仕事において新入社員が入社前に抱いていた期待と実際の仕事内容や職場環境との間に大きな差を感じることが多く、モチベーションの低下や将来への不安につながることもあります。

リアリティショックの問題点

リアリティショックの問題点は、組織全体の活性化や組織全体の生産性、定着率に大きな影響を及ぼすことです。

リアリティショックは新入社員に起こるものと考えられがちですが、実際にはベテラン社員が感じることも少なくありません。

例えば昇進によって管理職になった人が、理想と現実のギャップを感じたり、育児休暇から復帰した人が、思い描いていた仕事と育児の両立と現実が異なった場合などによく見られます。

リアリティショックに直面し続けることで、仕事への意欲や積極性が失われ、業務効率が低下してしまうことがあるでしょう。

また、離職率の上昇も懸念されます。さらに、エンゲージメントの低下も深刻な問題です。

エンゲージメントとは、従業員が組織にいかに深く関わり、貢献しようとするかを示す指標ですが、リアリティショックは上司や組織への信頼感を損ない、エンゲージメントを低下させる原因となります。

早期退職とリアリティショックの関係

従業員の早期退職の要因の一つとして、リアリティショックが大きく関わっていると考えられます。

「独立行政法人 労働政策研究・研修機構(JILPT)」は、初めて正社員として勤務して離職した人に対して離職理由を調査しました。

早期退職とリアリティショックの関係

引用:独立行政法人労働政策研究・研修機構 第2回若年者の能力開発と職場への定着に関する調査 (ヒアリング調査)

その結果、早期に退職した人の多くが、「労働時間・休日・休暇の条件」「人間関係」「仕事の内容」「仕事がうまくいかない」などの理由を挙げています。

これらの理由に共通するのは、入社前に期待していたことと実際の仕事との間に大きなギャップがあったということです。

期待と現実のギャップ、すなわちリアリティショックが早期退職の原因になっていると考えられるでしょう。

早期退職とリアリティショックは、特に若者の離職率と大きな関連性があるといえます。

近年、日本では若者の職場への定着率の低さが課題となっています。

入社前に抱いていた期待と現実のギャップによってモチベーションが下がることは、早期退職の大きな要因です。

こちらの記事では、新入社員のモチベーション低下の理由とリアリティショックの関連性について詳しく解説しています。

関連記事:新入社員のモチベーション低下の理由!8割を襲う「リアリティ・ショック」とその対処方法

リアリティショックが起きる原因

立場にかかわらずさまざまな人に起こりうるリアリティショックは、何に起因しているのでしょうか。

ここでは、組織行動論などで知られる甲南大学経営学部経営学科の准教授である尾形真実哉氏が提唱する、リアリティショックが起きる原因を4つ紹介します。

仕事に関するショック

仕事に対する過度な期待が、入社後のギャップを生み、リアリティショックにつながることが多いとされています。

就職活動中は、理想の仕事や会社像を描きがちですが、実際の職場では、想像と異なる状況に直面することがあります。

例えば、仕事内容が単調だったり、人間関係がうまくいかなかったり、労働環境が悪かったりする場合などです。

こうしたギャップは、仕事への意欲を低下させ、場合によっては離職につながる可能性も高めます。

同期・同僚など他社に関するショック

周囲との能力の比較や人間関係による大きなストレスも、リアリティショックを引き起こします。

例えば、優秀な同期に囲まれ、自分の能力の低さを感じて自信を失ったり、逆に周囲の能力の低さにがっかりしたりすることがあります。

また、仕事が上手くいかないときに会社からのサポートが不足していると感じることも、大きなショックとなりえます。

さらに、職場でのコミュニケーションがうまくいかず孤立感を感じるなど、人間関係の悩みもリアリティショックの要因の一つです。

評価に関するショック

自分の貢献度に見合った評価や待遇を受けられず大きな不満を感じて、リアリティショックの原因になることがあります。

特に、昇給額が期待を下回ったり、昇進の機会が少なかったりする場合、会社から正当に評価されていないと感じ、モチベーションが低下するケースは少なくありません。

近年は若者の価値観が多様化し、出世に興味を示さない人も増えていると言われていますが、自分の努力が評価に結びつかないと感じれば、誰しも不満を抱くものです。

このような評価に関する不満は、従業員の離職率の上昇や、組織全体の士気低下にもつながる可能性があります。

組織に関するショック

企業のビジョンや将来性に対する期待と、実際の職場での経験とのギャップがあると、従業員に大きなストレスを与えることがあります。

例えば、企業のビジョンに共感して入社したものの、実際の職場ではそのビジョンが実現されていないと感じたり、将来性のある会社だと思っていたのに、実際は成長が鈍化していたりする場合などです。

このようなギャップは、従業員の会社への帰属意識を低下させ、最悪の場合、離職につながる可能性があります。

従業員ができるリアリティショックの対処法

会社に入社してリアリティショックを感じてしまった場合、すぐに退職を決めるのではなく解消できないかを考えてみることをおすすめします。

従業員自身ができるリアリティショックの対処法を紹介します。

ギャップの原因を分析する

リアリティショックを感じたら、まずはなぜギャップが生まれているのか、その原因を分析しましょう。

内容によっては解消できる可能性があります。

例えば、

  • 仕事内容:入社前に期待していた仕事内容と、実際の仕事内容
  • 求められているスキル:自分のスキルや経験と求められているスキル
  • 仕事のやりがい:思い描いていた仕事のやりがいと実際の内容
  • 仕事の目的:自分の目的と組織が目指している目的

などについて整理し、理想と現実の違いをはっきりとさせてみてください。

似た立場の人と想いを共有する

リアリティショックを感じていても、上司や先輩には話しにくいと思う人は少なくありません。

自分と似たような立場の人であれば、自分が抱えている悩みと似たような課題を抱えている可能性があるため、お互いに気持ちを共有すると良いかもしれません。

  • 仕事の内容について
  • 人間関係について
  • 上司との関係について
  • 評価について

など、お互いの気持ちを共有して、その後どうやってギャップを解消すればよいか建設的な意見交換ができるのが理想です。

ギャップを埋める方法を考える

リアリティショックを感じてもすぐに退職の意思がない場合には、ギャップを解消して理想と現実の間を埋める方法を考える方法が有効です。

たとえ失敗続きで悩んでいるのであっても、失敗は成長の過程であるとポジティブに捉えてみると良いでしょう。

  • 自分の強み、弱みを分析する
  • 短期目標を設定して成功体験を積み重ねる
  • 新しいスキルを習得する

など、ギャップを埋めるためにできることはたくさんあります。

企業ができるリアリティショックの対処法

リアリティショックによる従業員の退職は、企業にとって損失です。

企業側も入社した従業員がリアリティショックを感じないよう対処する必要があり、入社後にリアリティショックを感じている従業員には適切な対応が必要でしょう。

企業ができるリアリティショックの対処法を紹介します。

採用のミスマッチを防ぐ

採用のミスマッチをできるだけ減らすことで、リアリティショックを予防できます。

採用のミスマッチを防ぐために大切なのは、採用広報と選考プロセスの工夫です。

  • 企業の雰囲気が伝わるような写真や動画などを積極的に活用する
  • 情報開示にはできるだけ具体的な数字を用いる
  • 選考プロセスでカジュアル面談など複数の従業員と交流できる機会を設ける
  • インターンシップを実施する

などの方法があります。

これらの取り組みを通じて、応募者はより現実的な企業理解ができ、入社後のミスマッチを防止し、定着率向上につなげられるでしょう。

従業員が安心して働ける環境を整備する

従業員のリアリティショックを防ぐためには、従業員が安心して働ける環境を整備することが大切です。

入社した従業員に、「自分は会社に必要とされていないのでは」と感じさせることは避けなければなりません。

例えば、

  • 入社する従業員に対して組織として歓迎しているメッセージを伝える
  • 名刺やパソコン、備品など、仕事に必要なものをきちんと準備しておく
  • フォローアップ研修を実施する

などが挙げられます。

適切に評価できる体制を整える

自身の評価に納得がいかず、リアリティショックを感じる従業員がいる場合、評価制度の見直しが必要です。

見直すべき項目は、

  • 評価の目的
  • 評価の基準
  • 評価期間
  • 評価の方法
  • 評価プロセス
  • 評価に結び付く報酬
  • 異議がある場合の対応

などです。

また、評価に対する適切なフィードバックを行い、組織として従業員に何を期待しているのかを伝えることも求められます。

定期的な1on1でフォローを行う

リアリティショックを防ぎ、従業員が安心して働ける環境を作るためには、人間関係の円滑化が重要です。

具体的には、1on1ミーティングの導入により、従業員が気軽に相談できる体制を整えることが有効です。

また、上司が率先してコミュニケーションを取り、新入社員の不安を解消することも求められます。

1on1ミーティングで話す内容は、

  • 仕事内容の理解度
  • 業務で困っていること
  • 同僚との関係性
  • 将来のキャリアプラン
  • 会社への期待
  • 不安に感じていること
  • 目標設定と達成までのプロセス
  • 成長のために必要なスキルや知識
  • プライベートな悩み

などさまざまです。

まとめ

リアリティショックとは、入社前後の期待と現実のギャップによって生じる心理的な状態です。

新入社員だけでなく、ベテラン社員や昇進した社員も経験する可能性があります。

リアリティショックは、仕事内容、人間関係、評価などさまざまな要因から生じますが、放っておくと従業員のモチベーション低下や離職率の上昇など組織に悪影響を及ぼすため、対処が必要です。

企業は、採用段階から入社後のフォローまで、適切な対策を講じて、リアリティショックを予防し、従業員の定着率向上につなげましょう。

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