キャリアセンターとは、大学や専門学校などに設置されている就職や進路相談専門の部署です。
働き方が多様化する昨今、学生がひとりで就職活動を行うのには限界があります。
そこで、学生が自分の未来の就職やキャリアについて気軽に相談でき、バックアップしてもらえる場所として、キャリアセンターが求められているのです。
この記事では、キャリアセンターの導入目的や支援内容、メリットについて詳しく解説します。
目次
キャリアセンターとは何か
キャリアセンターとは、大学や専門学校などで学生が将来の進路を相談したり、求人情報を提供して学生の就職活動をサポートしたりする部署を指します。
その学校に籍のある学生であれば誰でも無料で利用できます。
キャリアセンターの役割は、学生が将来に向けて自分のキャリアを主体的に考えていけるようにサポートを行うことです。
キャリアセンターの変遷
キャリアセンターの歴史は意外と古く、始まりは第二次世界大戦後に各大学が就職課などを設置して、求人情報の提供や学生相談などの就職支援を行っていたことにさかのぼります。
その後、1992年のバブル崩壊をきっかけに、長期不況の影響で就職難が深刻化。
大学を卒業しても正規雇用されずフリーターになる人が続出しました。
そこで大学は、卒業生の就職率向上を課題として、就職支援を強化する必要に迫られたのです。
2000年に出された文部科学省の「大学における学生生活の充実方策について」の答申のなかで、キャリア教育の重要性が明確に示されたため、各大学はキャリアセンターを設置してキャリア教育を本格的に導入するようになりました。
最近では、キャリアセンターの役割も少しずつ変化してきています。
初期の頃はシンプルな就職活動の支援が中心であったものの、現在は就職活動だけでなく、学生が入学してからすぐ将来設計を考えられるような、より幅広いキャリア支援を行っています。
キャリアセンターを導入する目的
大学がキャリアセンターを導入する主な目的は、学生の円滑な就職活動の支援と、将来のキャリア形成をサポートすることです。
学生を募集している企業には多種多様な業種、職種が存在し、それぞれの企業が求める人物像や必要なスキルは異なります。
また、応募書類の作成、面接対策など、就職活動には多くのステップがあり、初めての経験である学生にとって、ひとりでの就職活動は不安や戸惑いを抱くことも少なくありません。
キャリアセンターは、こうした学生の悩みや不安を解消し、学生が希望する進路を実現するためのサポートを行います。
キャリアセンターで実施している支援
学生の就職支援やキャリア形成を目的としているキャリアセンターでは、具体的にどのような支援が行われているのでしょうか。
キャリアセンターで実施している支援について、具体的に紹介します。
進路相談
まだ具体的な将来像が描けていない学生に対して、キャリアカウンセラーが学生の希望や適性を考慮しながら進路相談を行います。
キャリアカウンセラーは多くの場合、キャリアコンサルタントの国家資格保有者です。
場合によっては、具体的な就職先や進路先を提案したり、必要な資格の取得をアドバイスすることも。
また、学生のキャリアプランを立てるためのサポートも行います。
企業情報や求人情報の提供
キャリアセンターは、企業情報や求人情報の提供を行っています。
キャリアセンターのなかには、無料の職業紹介事業を行えるよう厚生労働大臣に届け出ているところもあり、学生の希望や興味に合わせた求人情報を提供しています。
キャリアセンターでは、学校にしか出さない新卒向けの求人など、一般には公開されていない求人情報も提供。学生の就職の可能性を広げたり、企業からの推薦求人の取りまとめを通して、企業と学生のマッチングを促進したりしています。
また、大学で独自に企業説明会を開催することもあり、合同説明会やインターンシップなどの情報提供も含め、学生が企業を知る機会を提供しています。
履歴書やエントリーシートの添削
企業に応募した際に必ず必要となる履歴書やエントリーシートの添削を行い、書類選考を通過するためのサポートを行うのもキャリアセンターの役割です。
キャリアセンターでは、誤字脱字のチェックから、内容の改善まで応募時に必要な書類の添削を行います。
多くの学生の書類を添削してきた経験から、企業が求める応募書類の書き方を指導可能です。
就職ガイダンスや支援講座の開催
キャリアセンターでは、就職ガイダンスや支援講座を開催しています。
例えば、自己分析の方法やエントリーシートの作成を指導したり、業界・企業研究の方法についてアドバイスを行ったりしています。
就職活動に必要なスキルを身につけるための講座を開催する大学も多く、近年では、早い段階からキャリアを考えるために低学年向けのセミナーが増えている傾向です。
筆記試験対策
就職試験では、SPIなどの適性検査や基礎学力や一般常識を問う試験などが実施されます。
キャリアセンターでは、これらの筆記試験対策も行っています。
筆記試験対策講座を開催したり、過去問題の解説や、解き方のコツを教えたりして、学生が安心して試験に臨めるようサポートします。
模擬面接やグループディスカッション対策の実施
キャリアセンターは、模擬面接やグループディスカッションなど、実際の選考を想定した実践的な練習の場を提供しています。
キャリアアドバイザーからのフィードバックを受けながら練習をすれば、学生は自分の強みを発揮し、改善が必要な点を把握できるでしょう。
WEB面接や動画選考に対応した対策を行っている大学や専門学校もあります。
OB・OG訪問の支援
就職活動の一環として、学生はOB・OG訪問を行う人が多い傾向です。
キャリアセンターでは、OB・OG訪問の機会を設けて、訪問前のマナー指導や先輩たちの就職活動体験記の提供を行っています。
また、卒業生を招いてのトークイベントなどを通じて、在学生が先輩たちの生の声を聞ける機会を設けています。
既卒者向け就職支援
キャリアセンターがサポートするのは在学者だけではありません。
キャリアセンターでは、卒業後も就職活動に困っている既卒者を対象に、就職支援を行っています。
例えば、新卒で就職した会社を辞めたい、やりたい仕事が見つからない、などの理由で再就職を希望する卒業生に対して、キャリア相談や、中途採用や第二新卒向けの求人情報を提供しています。
キャリアセンターで実施されるイベント
先述の通り、キャリアセンターでは就職支援の一環としてさまざまなイベントを開催します。
どのようなイベントが開催されるのか、4つのイベント例を紹介します。
就活ガイダンス
就活ガイダンスは、学生がスムーズに就職活動を進めるサポートを行うイベントです。
卒業生であるOB・OGが、自身の経験をもとに就職活動の体験談や現在の仕事の内容などを学生やその保護者に向けて紹介します。
就活ガイダンスに参加すれば、就職や職種など就職活動に関する知識が増加したり、企業研究の方法や面接対策など、就職活動に必要な知識やスキルを身につけられたりするでしょう。
一般的には10月頃までに実施されることが多いようです。
大学1年生・2年生向けガイダンス
キャリアセンターでは、学生が早い段階から社会人としての意識を持ち、自分の適性や興味に合った職業選択ができるよう、大学1・2年生向けの就職・進路ガイダンスも開催しています。
このガイダンスは学生が将来のキャリア設計を始めるための第一歩として位置づけられます。
学生は、自分のキャリアについて考えを深めて、就職活動に対する知識や意識を高めることで将来の目標を明確にできるでしょう。
企業説明会
キャリアセンターが主催する企業説明会は、学生が企業の人事担当者から直接、会社の仕事内容や企業文化、求める人物像などを聞ける貴重な機会です。
一度に複数の企業について知れるため、効率良く企業研究ができます。
企業説明会には、大企業からベンチャー企業まで幅広い業種の企業が参加します。
説明会を踏まえて、キャリアセンターの担当者が相談に乗ってくれるので、安心して参加できるでしょう。
インターンシップ
インターンシップは、学生が実際に企業で働きながら仕事内容や職場環境を体験できるプログラムです。
実際の仕事を通して、企業の雰囲気を体験し、興味のある仕事が自分に合っているかを確認できます。
また、インターンシップでの経験は、就職活動での自己PRや面接に活かすことが可能です。
キャリアセンターはさまざまな企業と連携して、幅広い分野のインターンシップを提供しています。
事前説明会やフォローなど、キャリアセンターが全面的にサポートするため、学生は安心して参加できるでしょう。
企業がキャリアセンターを活用するメリット
キャリアセンターでメリットを享受できるのは、学生だけではありません。
企業もキャリアセンターを活用することでさまざまなメリットを得られます。具体的に紹介しましょう。
優秀な学生にアプローチできる
採用活動にキャリアセンターを活用すると、優秀な学生にアプローチしやすくなります。
キャリアセンターを通じて優秀な学生に早い段階から接触して関係を築くことで、競合他社に引き抜かれるリスクを減らせるでしょう。
また、企業が採用実績を積むことでキャリアセンターからの信頼を得られるため、適正が高く優秀な学生を優先的に紹介してもらえるようになる点もメリットです。
採用コストが削減できる
大規模な求人広告や人材紹介会社への依頼と比較して、キャリアセンターを利用した採用活動はコストを抑えることができます。
通常、求人媒体への掲載は月に数十万のコストがかかります。
しかしキャリアセンターであれば、無料で求人票を掲載できたり、企業案内やパンフレットを置かせてもらえたりと、コストを削減できます。
さらにキャリアセンターが主催する合同説明会へ参加すれば、多数の学生に一度にアプローチできるため効率的です。
安定した採用基盤を獲得できる
企業がキャリアセンターと定期的な接触を図れば、大学や学生と良好な関係を築くことができます。
すると、通年採用の流れに対応しやすくなって安定した採用基盤を獲得できる可能性があります。
企業は常に人が入れ替わるため、毎年一定の採用枠を確保しなければなりません。
これは企業の採用部門にとって大きな課題ですが、キャリアセンターを活用することで、この課題を改善できます。
学生にとっても、実際に卒業生が働いている企業は安心感があるでしょう。
地元に就職したい学生にアピールできる
キャリアセンターを介して企業説明会を開催すれば、地元から進学して地元に就職したい学生に対して自社をアピールできる点もメリットです。
あまり認知度の高くない企業であっても、キャリアセンターにパンフレットをおいてもらったり、学生に対して情報提供してもらうことで認知が広がります。
また、地域貢献活動を行っている企業にとっては、地域社会への貢献度をアピールする絶好の機会となります。
キャリアセンターを利用する際の流れ
企業がキャリアセンターを活用して効果的な採用活動を行うためには、事前の準備が不可欠です。
企業がキャリアセンターを利用する流れを押さえておきましょう。
採用ターゲットの明確化
まずは、採用したい人材像を具体的に定義しましょう。
出身大学、学部学科はもちろん、専攻分野、得意分野、学生時代に力を入れた活動、サークル活動やアルバイトの経験、求める人物像の性格や価値観など、多角的な視点からターゲットを絞り込むことで、より効率的な採用活動が可能になります。
採用したいターゲットを明確にすれば、ターゲット層に響く適切な求人票の作成ができるようになるでしょう。
さらにキャリアセンターにも自社が具体的にどのような人物像を求めているか伝えられるので、推薦もスムーズになってミスマッチを防げます。
採用活動を行う学校を選ぶ
続いて、どこの学校で採用活動を行うかを決定します。
例えば、企業にOB・OGがいる学校は、学校の情報や学生の傾向、特徴などを把握しやすいためおすすめです。
また、学生側から見ても卒業生が働いている企業には安心感を感じられるでしょう。
企業のなかには採用活動を行う場所を偏差値や人気度を基準に選ぶ企業もありますが、名門校は人気が高くライバルも多数います。
人気の学校を対象にするなら、自社にはどのような魅力や文化、特徴があるのかを明確にして他社と差別化した上でアピールする準備が必要です。
キャリアセンターを訪問して学校と信頼関係を構築する
採用活動を行う学校を決定したら、キャリアセンターに足を運びます。
Web会議やメールなどでもコンタクトはとれますが、できれば直接対面する方が心証は良くなります。また、訪問は1度ではなく、定期的に行うと良いでしょう。
学校側としても、頻繁に通ってくれる企業のことは信用できるため、学生を薦めてくれやすくなるかもしれません。
また、通ううちに学内説明会や合同説明会への参加を認めてもらえるはずです。
1回の訪問で信頼関係が築けるわけではないので、少しずつ距離を縮めていくと良いでしょう。
社員に事前研修を行う
企業説明会などに参加できることになったら、社員に事前に研修を行います。
学生向けの企業説明会などイベントでは、企業説明や質疑応答など、社員が学生と直接コミュニケーションをとる機会が多くあります。
そのため、社員には基本的なコミュニケーション能力が必要です。
イベント前に、社員に対してコミュニケーション研修を実施し、円滑なコミュニケーションが取れるよう準備します。
また、イベントに若手社員も参加させると良いでしょう。学生と年齢の近い若手社員は、学生が入社後のイメージを掴みやすくなり、安心感を与えます。
学生が企業を選ぶ際に重視するポイントを把握する
最後に、学生が企業をどのような視点で見て選んでいるのか、学生が企業に対して何を望んでいるのかなど、企業を選ぶ際に重視するポイントを把握します。
実際に企業選びで重視されているのは、給与や福利厚生、企業規模や社風、企業理念などです。
その学校によっても異なるので、重視されるポイントをリサーチした上で、パンフレットや資料を選定しましょう。
学生の興味関心を引く説明資料を作成するのはもちろん、学生からありがちな質問に的確に答えられるよう、事前に準備しておくことをおすすめします。
まとめ
キャリアセンターは、学生がスムーズに就職活動を進めるため学生と企業をつなぐ大学や専門学校内の部署です。
進路相談、求人情報の提供、履歴書やエントリーシートの添削など、さまざまなサービスを提供しています。
また、キャリアセンターは学生だけでなく企業にとっても、優秀な人材を効率的に採用できる場でもあるため、キャリアセンターをうまく活用して、採用につなげましょう。