ロールプレイング研修とは、業務中に起こり得るシチュエーションを想定して実施される,
実践的な研修です。企業において営業や接客スキルの向上を目的に行われます。
本記事では、ロールプレイング研修の概要を押さえながら、メリットや種類、研修の進め方や注意点、効果を高めるコツなどについてわかりやすく解説します。
目次
ロールプレイングの定義とは?
ロールプレイングとは、実際に現場で起こったこと、または起こると想定される疑似場面を設定して、その場面での自分に与えられた役割を演じることでスキルを身につける学習方法です。
ロールプレイングという言葉は、「役割」を表す「role」と、「演じる」を意味する「play」の2つの英語を組み合わせた言葉です。
略してロープレということもあります。
目的は実践経験の補完!
ロールプレイングの手法を取り入れたロールプレイング研修の目的は、経験を積むことで実践力を養うことです。
仕事におけるスキルのうち、接客や営業などの対面コミュニケーションが必要な場面では、座学やマニュアルだけで完璧にスキルを身につけることは難しいとされています。
いくら座学で知識を学んでも、実際の場面で活かせなければ意味がありません。
ロールプレイングを研修に取り入れることで、座学で得た知識が実践を通して、現場で活かせるスキルとなるでしょう。
ロールプレイング研修のメリット4つ
ロールプレイング研修は、座学やマニュアルから得た知識を、起こり得るシチュエーションで再現することであり、効果的にスキルを身につけることが可能です。
ロールプレイング研修のメリットはさまざまですが、本記事では以下の4つについて詳しく解説します。
- 実践的な業務やスキルが身につけられる
- 個人の課題が把握しやすい
- 具体的なフィードバックが可能
- コミュニケーション能力がつく
①実践的な業務やスキルが身につけられる
ロールプレイング研修の最大のメリットは、実際にあり得る場面を想定して行われるため、実践的な業務やスキルを効果的に身につけられることでしょう。
また、実際に体を動かすので、座学講座を受けたりマニュアルを読んだりするよりも自発的に学習できる点も魅力です。
②個人の課題が把握しやすい
ロールプレイング研修で実際の現場で起こり得るシチュエーションを経験すると、自分にどんなスキルが不足しているのか把握しやすくなります。
具体的な自分の課題が可視化されることでスキルの学び直しや対応策を講じられるので、実際の現場でミスをしないよう準備ができるでしょう。
また、ロールプレイング研修を通じて成功体験を積み上げることは、自信にもつながります。
③具体的なフィードバックが可能
ロールプレイング研修は複数人で行うため、客観的かつ具体的なフィードバックが受けられる点もメリットです。
フィードバックをもらうことで、自分では気づけなかった課題や不足点、クセなどがわかるため、スキルの底上げが叶います。
④コミュニケーション能力がつく
ロールプレイング研修は、役割を演じながら対人形式で行われるため、コミュニケーション能力の向上にも役立ちます。
コミュニケーション能力が不足している人は、ロールプレイングを重ねることで人と接することに慣れ、メンタル面も強くなれるでしょう。
どのような態度でクライアントや顧客と接するべきなのか、さらにトーク内容の見直しもできるため、対応スキルが向上します。
説得力のある話し方を身につけることにも役立つでしょう。
ロールプレイング研修には4つの種類がある
ロールプレイング研修と一言でいっても、細かく分けると以下の4種類があります。
- 問題解決型ロールプレイング研修
- ケース型ロールプレイング研修
- モデリング型ロールプレイング研修
- グループロールプレイング研修
それぞれどのような研修なのか見ていきましょう。
①問題解決型ロールプレイング研修
問題解決型ロールプレイング研修は、過去に起きた問題や現在進行形で発生している問題をテーマにして行う研修です。
リアルロールプレイングとも呼ばれます。
問題に対してさまざまな角度から協議し、最適な解決策を導きます。
新人や伸び悩んでいる従業員の課題解決のヒントになり、成長を促すロールプレイングです。
②ケース型ロールプレイング研修
特定のシチュエーションを想定して、顧客の業種などの属性や課題と自分のポジションを細かく設定して行われるロールプレイング研修です。
ロールプレイング研修の多くは、ケース型で実施されます。
ロールプレイング実施後は、対応やトークの内容などについて参加者にフィードバックしてもらいます。
状況が細かく決まっているほど適切なフィードバックが可能であり、課題認識に有効です。
③モデリング型ロールプレイング研修
モデリング型ロールプレイング研修は、モデルとなる代表者のロールプレイングを他の参加者が模倣するロールプレイングの手法です。
定型的な動作や対応を習得させたい場合、イメージを共有させたい場合、基礎的で重要なスキルを習得させたい場合などに用いられます。
新入社員対象のビジネスマナー研修などでよく取り入れられています。
メンバーの足並みをそろえたい場合にも効果的です。
④グループロールプレイング研修
2~3名のグループに分かれて、同じテーマのなかでメンバー同士が役割を交代しながら、繰り返し実践されるロールプレイングです。
同じシチュエーションでも立場の異なる役割を演じることで、同じ状況を違う角度から把握でき、広い視野を養えます。
視点が変わることでアイデアや意見が出やすくなり、より効果的な対応方法を見つけられるでしょう。
ロールプレイング研修の進め方【準備編】
ロールプレイング研修を実施する際には、きちんとした準備が必要です。
ステップ①から④まで、ロールプレイング研修の準備について紹介します。
ステップ①目的を決める
ロールプレイング研修の実施に向けて最初に行うことは、目的を決めることです。
ロールプレイング研修を取り入れることで、従業員にどのようなスキルを身につけてほしいのかを明確にします。
目的があいまいなままでは、ロールプレイング研修の成果が半減するだけでなくフィードバックや評価も難しくなってしまいます。
ステップ②場面設定を決める
ロールプレイング研修の目的が決まったら、次は場面設定を決めます。
場面設定は、できるだけ本番に近いリアルなものが望ましく、より具体的な状況であることが求められます。
例えば、顧客の年齢や性別等の属性、クレーム対応であれば対象となる商品やクレームの内容などを細かく設定します。
具体的であればあるほど、実践に効果的なロールプレイング研修になるはずです。
ステップ③役割を決める
場面を設定したら、役割を決めます。クレーム対応のシチュエーションを想定するなら、顧客の役割と窓口担当の役割などです。
可能であれば、客観的な視点でフィードバックをしてもらうオブザーバーを置くと、ロールプレイング研修の質がより高まります。
ステップ④設定を資料に落とす
目的や場面設定、役割などが決まったら、その設定を資料にまとめます。箇条書きなどで構いません。
大切なのは、資料を読んだだけでシチュエーションが想像できるようなわかりやすい資料にすることです。
ロールプレイングの途中で設定を忘れてしまっても資料を見れば思いだせるような、必要な情報をわかりやすく記載した資料を作成しましょう。
ロールプレイング研修の進め方【研修当日編】
ロールプレイング研修の準備が完了して、研修の当日を迎えたら、参加者に研修の目的を伝えるところから始めましょう。
ロールプレイング研修の当日の進め方を紹介します。
ステップ①目的を伝える
ロールプレイング研修の当日、最初に研修の目的を伝えます。
もし研修を行う目的が理解できていなければ、研修の効果が思ったほど得られないかもしれません。
社会人としてのビジネスマナーを身につけるため、クレーム客に対して適切な対応方法を修得するため、できるだけスムーズにクロージングするためなど、最初に「何を目的としたロールプレイング研修」なのか、対象者に説明しておきましょう。
ステップ②シーンや場面設定を伝える
ロールプレイングに参加するメンバーに、シーンや場面設定を説明します。
設定を記載した資料を配布し見てもらいながら、口頭でもどのような状況なのかを説明して正しく理解してもらいましょう。
ステップ③実施方法や注意点を説明
ロールプレイングの目的と場面設定を説明したら、ロールプレイングの具体的な方法や注意点を説明しましょう。
ロールプレイングを行ううえで必要な事前知識や基礎知識があれば、共有しておくことをおすすめします。
参加者にどのような役割を演じてほしいのか、具体的にどのような動きをすれば良いのかを説明します。
もしオブザーバーがいるのであれば、どのような視点で見てほしいのか、どこを重点的に見てほしいのかを伝えておくと良いでしょう。
ステップ④ロープレの実践
ロールプレイング研修前の説明が終わったら、いよいよロールプレイングのスタートです。
演じる役割は固定せずに、メンバー内で交代しながらロールプレイングを行うとより効果的です。
例えば電話応対におけるビジネスマナーを学ぶロールプレイング研修であれば、架電側と受信側、どちらの立場も経験することで、相手の立場から自分のスキルを客観的に見ることができます。
ステップ⑤フィードバックを行う
ロールプレイングの後は、できるだけ時間を空けずにフィードバックを行ってください。
ロールプレイング実践後すぐにフィードバックすることで、自分の課題を振り返りやすくなります。
フィードバックのためのチェックシートを準備しておくと、どの観点から見て評価しているのかが明確になり、精度の高いフィードバックが可能になります。
フィードバックはオブザーバーの立場からだけでなく、参加したメンバー同士で振り返ることも効果的です。
ステップ⑥振り返りを行う
ロールプレイングを行いフィードバックをもらったら、振り返りも当日中に行います。
ロールプレイング研修で学んだこと、身についたこと、発見した自分の課題などを整理します。
良かった点も同時に振り返るのがおすすめです。
さらに、学んだことを現場でどのように取り入れていきたいかをアクションプランとして発表すると、身についたスキルをより実践的に活かせるようになるでしょう。
ロールプレイング研修が効果的なテーマ・シナリオは?
ロールプレイング研修には、効果の出やすいテーマがあります。代表的なのは以下の3つです。
- クレーム対応
- 営業研修
- コーチング研修
それぞれ見ていきましょう。
①クレーム対応
ロールプレイング研修でよく取り入れられるのが、クレーム対応研修です。
クレーム対応はネガティブなイメージが強く、苦手意識を持っている人も少なくありません。
ロールプレイング研修を行って成功体験を積み重ねることで、クレーム対応への心理的な障壁を減らし、苦手意識をなくすことができる可能性があります。
おすすめのテーマは以下のようなパターンです。
- 顧客から直接クレームが入った場合
- 他の担当者からクレームを引き継いだ場合
実際に想定されるシチュエーションでロールプレイングを実践しましょう。
②営業研修
コミュニケーション能力や傾聴力、伝える力など、営業に求められるスキルは多岐に及びます。
営業研修にロールプレイングを取り入れることで、これらのスキルを総合的に身につけられるでしょう。
営業研修のためのロールプレイング研修でおすすめのテーマは、以下のようなものが挙げられます。
- 顧客への商品説明
- 顧客との商談クロージング
- 顧客から課題を引き出す
- 提案に対するネガティブな反応への対応
営業研修は経験が浅い若手営業のスキル向上に効果的です。
関連記事:新人営業を即戦力にする研修とは?
③コーチング研修
部下や後輩育成に効果的なコーチング研修にも、ロールプレイングを取り入れられます。
コーチングも営業と同じようにコミュニケーション能力やサポート力など幅広いスキルが必要です。
実際にコーチングを行う場面を想定して、ロールプレイング研修を実施してみましょう。
以下のようなテーマがおすすめです。
- 自分の非を認められない部下への対応
- モチベーションの低い部下への対応
- 素直に指示を聞けない部下への対応
- スランプに陥っている部下への対応
ロールプレイング研修の注意点とは?欠点はある?
ロールプレイング研修は多くのメリットがありますが、効果を最大限に得るために注意しておきたいポイントがあります。
- 緊張感に欠ける場合がある
- 内容や形式を変えないと課題が見つかりにくい
- フィードバック=評価だと思わない
この3つの注意ポイントについて、詳しく紹介します。
①緊張感に欠ける場合がある
ロールプレイング研修は基本的に知らない相手と行うことはなく、同じ部署屋チーム同士で実施するケースがほとんどです。
そのため緊張感に欠きやすい欠点があります。意識して緊張感を保たなければ、なれ合いになってしまいがちです。
せっかくロールプレイングを行っても緊張感を保てなければ、スキルが身につきにくく、自分の課題も見えにくくなってしまいます。
ロールプレイング中は本番と同じであると心得て、メリハリを持って取り組みましょう。
②内容や形式を変えないと課題が見つかりにくい
ロールプレイングは繰り返し行うことが推奨されますが、同じ内容や形式で何度も行っているとロールプレイングに慣れてしまい、課題が見つかりにくくなることもあります。
課題が見つけにくいと感じたら、パターンを変えたり、別のやり方や内容を考えたりした方が良いでしょう。
③フィードバック=評価だと思わない
ロールプレイング後のフィードバックは、評価ではありません。
フィードバックは対象者に改善ポイントを伝えて、よりスキルやノウハウを効果的に身につけてもらうためのものです。
ロールプレイングの目的は、スキルの改善や向上であって、良い評価をもらうことではないと覚えておきましょう。
効果を高めるためにはフィードバックが重要!
ロールプレイング研修の要になるのが、フィードバックです。
フィードバックの内容によって、ロールプレイング研修の効果は大きく左右されます。
ロールプレイング研修の効果を高めるフィードバックのコツを解説します。
フィードバック項目を決めておく
フィードバックする内容を事前に決めておくと、質の高いフィードバックができるようになります。
フィードバックする項目の具体例は、以下の通りです。
- 声掛けやあいさつ
- 態度や動作
- 身だしなみ
- 話し方や言葉遣い
- 充分な商品知識
- 会話力や対応力
- ニーズの汲み取り
- クロージング
これらの項目を数値化してフィードバックすると、公平でわかりやすいフィードバックになります。
良かった点も共有する
フィードバックでは、良かった点の共有も重要です。
フィードバックは悪かった点や気になった点を指摘することが多いですが、マイナス面だけ伝えるとあらさがしのようになってしまいがちです。
また、欠点だけを指摘されると対象者はモチベーションを保てなくなる可能性があります。
悪い点を指摘するのではなく、良かった点を伝えたうえで、より長所を伸ばすために改善点を伝えるというスタンスにすると、対象者も前向きに捉えられるでしょう。
まとめ
ロールプレイング研修は、実践的に業務知識やスキルを身につけられる手法であり、さまざまな種類があります。
効果的に研修を進めるためには目的を明確にして準備を整えて行うことが大切です。
特にフィードバックは、ロールプレイング研修の成功の鍵を握っていると覚えておきましょう。
ロールプレイング研修のポイントを押さえて、適切なフィードバックを行って研修を効果的に実践してください。