ソーシャルグッドは「社会(Social)」に対して「良い(Good)」影響を与える取り組み・商品・サービスのことを指します。
現在、地球規模での課題解決が企業に求められる中で、ソーシャルグッドは非常に大きなムーブメントになってきています。
そこで本記事では、ソーシャルグッドの波に乗りたい担当者向けに、ソーシャルグッドについて解説していきます。
ぜひ最後まで読んでみてください。
目次
ソーシャルグッドとは?【社会に優しい商品】
ソーシャルグッド(Social good)は、社会に対して良い影響を与える商品やサービスのことを指します。
ソーシャルグッドに近しい言葉としてはSDGs、CSR、ESGなどが挙げられるでしょう。
近代から始まった大量生産・大量消費が成熟した現代社会では、我々人類が利益を追求しすぎたことによる環境破壊や貧富の拡大が問題になっています。
そこで、企業活動の中で社会に良い影響を与えるソーシャルグッドな商品やサービスが高く評価されるようになっているのです。
ソーシャルグッドが注目されている背景
ソーシャルグッドが注目されている背景として以下の3つが挙げられます。
- SDGsがメインストリームになったから
- SNSで社会貢献活動が可視化されるから
- CSRが求められているから
それぞれ詳しく解説していきます。
背景①:SDGsがメインストリームになったから
ソーシャルグッドが注目されている背景として、SDGsがメインストリームになっていることが挙げられます。
SDGsは「Sustainable Development Goals」の略称で、意味は「持続可能な開発目標」です。
持続可能な社会を作り上げるための17のゴールが示されています。
2015年の国連サミットで採択されたSDGsは、現在、リベラル派を中心にメインストリームと化しており、SDGsを主張する世界的企業も増えています。
それに伴う形で、社会に良い影響を与えるソーシャルグッドが注目されるようになりました。
背景②:SNSで社会貢献活動が可視化されるから
ソーシャルグッドが注目されている背景として、SNSの普及が挙げられます。
2010年代から利用者が急増したSNSは「ソーシャルネットワーキングサービス」の略称です。
簡単に言えば、社会全体の意見をデジタルで可視化したのがSNSだと考えられます。
そのため、社会貢献活動のようなソーシャルグッドな取り組みはもちろんのこと、社会に悪い影響を与える活動も、一瞬で拡散されるようになっています。
監視社会と化したSNSと上手に付き合っていくためにソーシャルグッドを追求する、という考え方を抱く企業も増えていると考えられます。
逆に、ソーシャルグッドとSNSを組み合わせて、自社をブランディングするケースも出てきています。
背景③:CSRが求められているから
ソーシャルグッドが注目されている背景として、CSRが挙げられます。
CSR(Corporate Social Responsibility)は「企業の社会的責任」という意味です。
現在は、利益至上主義ではなく、ステークホルダーや社会全体に対する責任が求められています。
近年は「CSRを重視する企業の株価が上昇傾向にある」とするデータも出てきており、企業活動でCSRは無視できない要素になっています。
CSRが求められていく中で、社会に良い影響を与えるソーシャルグッドが注目されている背景があります。
企業がソーシャルグッドに取り組むメリット3選
企業がソーシャルグッドに取り組むメリットは以下の3つです。
- ブランディングに繋がる
- ステークホルダーからの信用を得やすい
- 社会問題を解決できる
それぞれ詳しく解説していきます。
メリット①:ブランディングに繋がる
企業がソーシャルグッドに取り組むメリットとして、ブランディングに繋がることが挙げられます。
現代人は、機能性や価格だけで商品を選びません。
商品の裏側にあるストーリーや文脈を理解した上で、モノを購入するようになっています。
商品にストーリーを付与するには、ブランディングが必要不可欠です。
そしてブランディングを実施する上で、ソーシャルグッドは非常に重要な要素になると考えられます。
ソーシャルグッドやSDGsを気にするリベラル層は、平均収入が高く、顧客単価が高い傾向があります。
ソーシャルグッドを追求した結果、それがブランディングに繋がり、結果的に売上上昇に繋がるのです。
メリット②:ステークホルダーからの信用を得やすい
ステークホルダーからの信用を得やすいことも、企業がソーシャルグッドに取り組むメリットとして挙げられます。
一般的にステークホルダーは株主・顧客・消費者・従業員・地域社会などを指します。
そしてステークホルダーからの信用は、株価に直結すると言っても過言ではありません。
信用が得られていない状態では、その企業に投資したくなくなるので、結果的に株価が下がります。もちろん、その逆もあり得ます。
つまり、ソーシャルグッドな取り組みを実施することで、ステークホルダーからの信用を得られるようになれば、資金調達力が大きくなる可能性があるのです。
ステークホルダーからの信用を得る方法の1つとして、ソーシャルグッドの活用が求められます。
メリット③:社会問題を解決できる
ソーシャルグッドは社会に良い影響を与えるため、社会問題の解決に繋がります。
一般的に「社会問題の解決」と言えば、多くの人がボランティアやNPO法人をイメージすると思います。
もちろん、ボランティアやNPO法人は素晴らしい取り組みです。しかし正直に言って、問題の根本的な解決には至っていない印象です。
一方で、企業がソーシャルグッドに取り組むことで、社会問題を根本的に解決できる可能性があります。
なぜなら「利益」という持続可能に必要不可欠な要素を盛り込むことができるからです。
社会問題を解決するための資金を「利益」で賄うことができれば、その事業は半永久的に回転し続けます。
ソーシャルグッドは、社会問題解決の手段の1つとして活用できるのです。
企業がソーシャルグッドに取り組む際の注意点3選
企業がソーシャルグッドに取り組む際の注意点として、以下の3つが考えられます。
- 社会効果はちゃんと測定する
- トレードオフが発生する可能性がある
- 効果を追求しすぎないようにする
それぞれ詳しく見ていきましょう。
注意点①:社会効果はちゃんと測定する
企業がソーシャルグッドに取り組む際は、その社会効果をしっかり測定するようにしましょう。
例えば事業活動に必要な電力をクリーンなエネルギーだけで賄う場合は、その具体的な電力量やコストを算出します。
そしてその数字を公表することで、ステークホルダーからの信用を得られるようになります。
言葉だけでソーシャルグッドを示しても意味がありません。
明確な数字でソーシャルグッドを示すことが、真の信頼を勝ち取ることに繋がるのです。
注意点②:トレードオフが発生する可能性がある
ソーシャルグッドを追求することで、トレードオフが発生する可能性があることには注意しましょう。
例えば「クリーンなエネルギーだけを使う」として、太陽光発電の電力を用いるとします。
しかし一般的な産業用太陽光電池の大半は、広大な面積を切り拓くことで設置されます。
つまり、それだけ多くの面積にある自然が損なわれるということなのです。
一見するとソーシャルグッドに見える取り組みも、実態を深掘りすることで、トレードオフが発生している可能性があります。
ステークホルダーに「偽善だ!」と追求されないようにするためにも、ソーシャルグッドのトレードオフには注意しましょう。
注意点③:効果を追求しすぎないようにする
企業がソーシャルグッドを実施する際は、効果を追求しすぎないようにしましょう。
ソーシャルグッドな取り組みは、ステークホルダーからの信用を得たり、ブランディングに繋がったりする効果があると考えられます。
そのため、企業としても「企業活動の一環」としてソーシャルグッドに取り組みたくなるはずです。
しかし、ソーシャルグッドでの効果を追求しすぎてしまうと、ステークホルダーから悪印象に映る可能性があります。
ソーシャルグッドを熱烈にアピールすることにリソースを割くのではなく、本当に正しいと思えるソーシャルグッドな取り組みにリソースを投下するのが健全です。
ソーシャルグッドの企業事例7選
ここではソーシャルグッドの企業事例を7つ紹介していきます。
事例①:パタゴニア
ソーシャルグッドの代表事例は、やはりパタゴニアです。
アウトドア用品の製造・販売を手掛けるパタゴニアは、2022年、同社の全株式(約30億ドル)を環境危機対策に取り組むNPOなどの組織に譲渡しました。
これによりパタゴニアは「地球が唯一の株主」になったのです。
これまでもパタゴニアは、売上高の1%を自然環境の保護に利用するなど、ソーシャルグッドの先進企業として注目されていました。
「全株式を譲渡する」のはあまりにも壮大すぎて参考にならないかもしれませんが、今後のパタゴニアの動向には注目です。
事例②:無印良品
無印良品は2018年にソーシャルグッド事業部を設立し、ソーシャルグッドなコンテンツを展開するようになりました。
例えば2020年7月に、世界最大級の無印良品となる直江津店をオープンした際は、地元の特産品を販売する「なおえつ良品市場」と、郊外の高齢者向けの移動販売「MUJI to GO」を展開しました。
どちらも、それなりの収益を見込んで実施されているのがポイントです。
事例③:グラミン銀行
グラミン銀行はバングラデシュに設立されたマイクロファイナンス機関です。
グラミン銀行は、担保を有していない貧困層に融資を貸し出し、その上で返済率も高かったことから2006年にノーベル平和賞を受賞しています。
グラミン銀行が他の銀行と異なる点として「移動業務」や「グループ貸付」が挙げられます。
これらのアイデアを駆使することで、経済弱者が容易に起業できる環境を構築することに成功したのです。
事例④:Allbirds
Allbirdsはウール製のスニーカーを製造販売する起業です。
従来のスニーカーは再利用不可能な素材を用いるのが一般的でした。
一方でAllbirdsのスニーカーは、再利用しやすい天然素材が用いられているのが特徴です。
また、Allbirdsのスニーカーは「世界一快適な靴」と評価されており、利用者も非常に多く、2021年には米ナスダック市場に上場しています。
その注目度の高さから、取引開始日には株価が90%上昇したそうです。
事例⑤:スターバックス
スターバックスは、使い捨てプラスチック削減のために、ストロー不要のフタを提供するようになりました。
ネット上では「使いづらい」という声がある一方で、確実にソーシャルグッドをアピールできているのも事実です。
ソーシャルグッドな取り組みでブランディングする際は、消費者の目に見えるところからスタートするのがいいかもしれません。
事例⑥:ユーグレナ
ミドリムシを用いた食品・化粧品を製造販売するユーグレナは、2014年から「ユーグレナGENKIプログラム」を実施しています。
ユーグレナGENKIプログラムは、消費者からの売上の一部で、バングラデシュの子どもたちに栄養豊富なユーグレナクッキーを届ける事業です。
ユーグレナGENKIプログラムは、明確な数字で事業内容が示されているのがポイントで、2023年11月末時点で「17155089食分」のクッキーが届けられたとのこと。
また、先ほど紹介したグラミン銀行と現地合弁企業も設立し、現地での支援活動にも力を入れているそうです。
事例⑦:サファリコム
サファリコムは2009年にケニアで設立された携帯電話会社です。
ソーシャルグッドな事例として注目されている事業としては、モバイル送金サービス「M-PESA」が挙げられます。
ケニアに限らず、アフリカに住む人々の約半分が銀行口座を持っていない現状があります。
そのため、個人間でお金を正確にやり取りするのは極めて困難でした。
しかしサファリコムのM-PESAであれば、銀行口座がなくても、携帯電話さえあれば、お金を送金できます。
これにより、母国への仕送りが極めて容易になったのです。
このようにビジネスは、世の中にある問題を解決するための手段として活用できます。
まとめ
それでは本記事をまとめていきます。
- ソーシャルグッドは社会に優しい商品・サービス・取り組みのこと
- 現代社会はソーシャルグッドがメインストリームになりつつある
- ソーシャルグッドを重視することでステークホルダーからの信用を得やすくなる
世界中の多くの国々で最低限の生活が送れるようになった現代社会では、どれだけ社会をより良くしていけるかが求められるようになっています。
そのための手段の1つとして、ソーシャルグッドが注目されているようです。
ソーシャルグッドに力を入れて、社会貢献できる商品・サービスを開発する必要があるかもしれません。