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今、出戻り社員が増えている?メリット・デメリットと成功事例を紹介

出戻り社員とは

一度退職した社員を再度雇用する「出戻り」が今注目を集めています。

社会情勢の変化によって優秀な人材確保が難しいなか、出戻り社員を受け入れることは企業にとってたくさんのメリットがあります。

今回は出戻りについて、メリット・デメリットや出戻り社員の受け入れで成功している企業事例を紹介します。

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【出戻りの意味】退職後に元の職場に再就職すること

ビジネスにおける「出戻り」とは、一度在籍していた企業に再雇用されることを意味します。

出戻りという言葉はネガティブなイメージがありますが、実際は企業と労働者の双方にメリットがあるとして、今注目されています。

「カムバック採用」「ジョブリターン制度」「ブーメラン社員」など呼び方もネガティブな印象を与えないものが増えていることからも、出戻り社員は増加傾向にあるようです。

出戻り社員が注目されている背景

出戻り社員が注目されている背景には、優秀な人材が集まりにくくなっている、働き方が多様化しているなど、現代のビジネス社会におけるさまざまな理由があります。詳しく見ていきましょう。

即戦力となる有能な新入社員が集まりにくい

ビジネスにおいて、現在は売り手市場であるといわれています。

有効求人倍率が比較的高く、採用難に直面している企業が増加傾向にあるのです。

即戦力となる有能な新入社員が集まりにくい状況ですが、出戻り社員は自社の業務内容や社風を熟知している人材が多いため、採用すれば即戦力として活躍を期待できるでしょう。

労働力の高齢化が進んでいる

厚生労働省の調査によると、2030年までに65歳以上の人の割合が人口の30%を超えると予測されており、少子高齢化にともなう労働力人口の減少は避けられません。

そのため、社会が慢性的な人手不足に陥っているのが現状です。

労働力人口が減れば、企業は新しい人材を新卒登用以外で探さなければなりません。

出戻り社員の採用は、効率的な人材補填を可能にします。

働き方が多様化している

過去の日本では終身雇用制度や年功序列制度が一般的でした。

しかし現在は労働力の流動化が進み、転職は以前に比べてハードルが低くなっています。また、女性の社会進出も働き方が多様化した一因です。

キャリアを中断して専門学校や大学院などに進学したり、子どもが小さいうちは育児に専念して落ち着いてから再び働き出したり、起業や副業へチャレンジしたりなど、キャリアの選択肢は多様化しています。

さまざまなキャリアパスが認知されるなかで、一度退職した企業で再度働くという選択肢もポジティブに捉えられるようになってきています。

出戻り社員を受け入れるメリット

出戻り社員の受け入れは、採用にかかるコストを抑えられる、即戦力としての活躍が期待できるなどさまざまなメリットがあります。

企業が出戻り社員の受け入れで享受するメリットについて紹介します。

採用コストが低く抑えらる

出戻り採用の場合、転職エージェントや採用媒体を利用して人材を探す必要がないため、採用コストが抑えられます。

また、面接前からどんな人物であるか分かっているため、選考のプロセスも省略可能になり、スピーディな採用につながる点もメリットです。

即戦力が期待できる

出戻り社員は自社の仕事内容を理解しているため、即戦力として採用できます。

もし以前と同じ部署に配置できれば、退職前と同じ働きを発揮でき、教育が必要ありません。

もし在籍当時と変わった部分が合ったとしても、ゼロから教育する必要はなく、変更部分のみのフォロー教育で活躍してもらえるでしょう。

一般的な中途入社や新入社員と比較して、教育コストは低く抑えられます。

外部で得た新たな知見や経験を業務に活かせる

出戻り社員は一度社外で経験を積んでいるので、そこで得た新たな知見や経験を企業に持ち込めます。

既存社員にない発想が期待でき、イノベーションにつながるかもしれません。

自社と他社、両方の常識や慣習を知る人材だからこそ、企業の社風に合ったコミュニケーションを取ることができ、上手に他社で得たノウハウや経験を活かしてくれる可能性を秘めています。

採用のミスマッチが防げる

出戻り社員の採用は、中途入社にありがちなミスマッチに起因する短期間での退職リスクを減らせる一面もあります。

企業側はすでに出戻り社員がどのような人物かが分かっているのはもちろん、出戻り社員側も仕事内容や会社の雰囲気を熟知しているため、入社前に抱いていたイメージとのミスマッチを防げるというメリットがあります。

従業員エンゲージメントを高められる

出戻り社員が社外で挑戦したにもかかわらず再度戻りたくなった理由を知れば、既存社員は他社と比較した自社の魅力を再認識して、エンゲージメントを高められます。

出戻り社員の声をインタビュー記事などの形で社外公開して、自社の魅力を外部にアピールすることにもつなげられるでしょう。

出戻り社員を受け入れるデメリット

メリットの多い出戻り社員ですが、受け入れにはいくつかのデメリットも発生します。

出戻り社員の受け入れは、デメリットについても理解した上で慎重に判断する必要があるでしょう。

周囲の社員のモチベーションが低下する

頻繁に出戻り社員の採用を行うと、既存社員の間に一度やめてもいつでも戻ってこれる職場だという認識が生まれ、モチベーションが低下してしまうかもしれません。

いつでも戻れる会社だと思われると、優秀な社員が流出するリスクが高まってしまう点に注意が必要です。

仕事や人間関係の在籍時との変化に対応するのに時間がかかる

離職期間に大きな人事異動や組織改編があった場合、出戻り社員は変化を受け入れられない可能性があります。

業界によってはシステムや業務内容が日々変化しているため、出戻り社員の過去の経験がそのままでは通用しない場面も珍しくないのでしょう。

過去のやり方やルールに引っ張られて学び直しが難しい場合、出戻り社員が新しい環境になじめないリスクがあります。

また、出戻り社員は退職前の雇用条件で雇用されるとは限らないため、職種や配属先が異なるケースも。

かつて部下であった社員が上司になる可能性もあり、元部下が業務をやりにくく感じる場合もあるでしょう。

離職後、数年経ってから戻る場合には、新しい環境に慣れるためのフォロー体制を整えることが求められます。

待遇評価が難しい

出戻り社員は他社での実績を積んだ人材であるため、待遇評価が難しいというデメリットがあります。

もし出戻り社員を管理職など役職のある立場で雇うなら、待遇はそれなりに考慮しなければいけません。

すると既存社員との待遇面で差が発生し、既存社員から不平不満が出る場合も。出戻り社員の待遇は、既存社員とのバランス調整が難しいと心得ておきましょう。

同じ理由でまた辞めるリスクがある

出戻り社員は、何かしらの理由で一度退職した人物です。

そもそもなぜ自社を辞めてしまったのかについて再度振り返っておかないと、その理由が解消されていなければ同様の理由でまた辞めてしまうリスクがあります。

特に、人間関係が理由で退職している場合には要注意です。

加えて、先述したように会社の体制が大きく変わって職場になじめなかったり、元部下が上司になっていて業務がやりにくくなったりなど、新たな問題が生じる可能性もあります。

出戻り社員を受け入れる際の注意点

出戻り社員の受け入れを考えるなら、いくつか事前に社内で体制を整えておくべき点や選考時に確認しておきたい点など、注意したいポイントがあります。

注意点を押さえて、出戻り社員の採用に着手しましょう。

出戻り社員の採用基準を構築する

出戻り社員の採用時には、在籍年数や出戻りまでの年数、退職理由による出戻りの可否、必須のスキルや資格、退職している間に身につけたスキルなど、採用基準や条件を明確に定めておくことが大切です。

そういった採用基準の設定は、選考時の客観的な判断材料になります。

採用基準が明確化されていれば、既存社員が退職しても元のポジションに簡単に戻れるわけではないと理解し、人材の流出を防げるでしょう。

周りの社員とのバランスが取れる待遇システムを作る

場合によっては、出戻り社員の採用は既存社員との間に軋轢を生んでしまいます。

そのため、待遇・処遇面は周りの社員とのバランスの取れる仕組み作りが必須です。

再雇用制度を構築し、再雇用のための条件や選考基準、待遇についてあらかじめルールを設けましょう。

既存社員の不平不満を生まないよう、社内への周知・理解の徹底も重要なポイントです。

労働条件について重要な確認事項は慎重に確認しあう

出戻り社員とその企業とは互いをよく知っているため、採用の際の選考を簡略化しがちです。

書類選考を免除したり、面接回数を軽減したりする場合も少なくありません。

ただし、報酬面や労働条件など重要な事項の確認を省略してしまうと、入社後に行き違いが生じてしまうこともあるため注意が必要です。

口約束で済ませず、報酬や労働条件をはじめとした重要な確認事項は、必ず書面で確認しあう必要があるでしょう。

特に労働基準法第15条で書面での明示が義務づけられている事項については、慎重に確認してください。

出戻り採用の目的を明確にする

出戻り社員の採用は、なぜ出戻り採用を実施するのか、その目的を明確にすることが大切です。

出戻り社員の採用は、あくまでも採用手法のひとつ。

組織の課題を出戻り社員の採用で解決できるかどうかを見極めて、目的を設定してください。

また、出戻り社員採用後は定期的に振り返りを行いましょう。

再雇用した出戻り社員の活躍状況や、周囲との人間関係に問題が起きていないかなどは確認が必要です。

出戻り社員採用のためのアプローチ方法

出戻り社員採用を視野に入れるなら、退職者ネットワークの構築と活用が効果的です。

SNS上に退職した人材と現役社員がつながることのできるコミュニティを構築して、再雇用のニーズが発生した際にすぐに情報発信できるようにしておきましょう。

気軽に参加できるコミュニティがあれば、出戻りを希望する退職者からも企業側に再雇用の相談をしやすくなるはずです。

出戻り社員の積極採用の成功事例

企業のなかには出戻り社員の採用を積極的に行い、業績アップにつなげているところもあります。

出戻り社員の積極採用の成功事例を3つ紹介します。

プロキャリア・カムバック制度(トヨタ自動車株式会社)

日本の大手自動車メーカーであるトヨタ自動車株式会社では2005年から「プロキャリア・カムバック制度」として、出戻り採用を実施しています。

対象としているのは、家族の介護や配偶者の転勤などによって退職した、専門性・能力を有する事技系、技能系といった専門職以上の社員。

ライフワークバランスを考慮した働き方が選べる制度として、社員から受け入れられています。

この制度では社員の能動的なキャリア形成が可能になり、企業にとっても長期的な活躍が期待できるため、双方にメリットの大きな取り組みだといえるでしょう。

アルムナイネットワーク(株式会社日立製作所)

大手総合電機メーカーである株式会社日立製作所は、退職者が参加できる「アルムナイネットワーク」というクラウドサービスを提供しています。

アルムナイネットワークの目的は、退職した社員同士がコミュニティを形成して、互いに情報交換を行うことです。

株式会社日立製作所は、他社で新たに経験やスキルを得た出戻り社員の再入社を歓迎していて、即戦力人材として受け入れています。

A Better Career(パナソニック ホールディングス株式会社)

総合電機メーカーのパナソニック ホールディングス株式会社は、「A Better Career」という制度を設け、出産や育児、介護またはキャリアアップのための退職者を積極的に出戻り採用しています。

出戻り社員は1回に限り3ヶ月の試用期間を経て正社員として復帰可能です。

パナソニック ホールディングス株式会社は退職後に習得したスキルや知識を高く評価していて、再び社員が活躍できるよう多様なキャリア選択を後押ししています。

出戻り社員は低コストで即戦力を得られる企業の救世主

継続的な事業成長のためには、時代とともに多様化した働き方に企業が順応していく必要があります。

出戻り社員にはデメリットもありますが、低コストで即戦力を獲得したい企業にとっては効果の高い採用の選択肢になるでしょう。

優秀な人材の確保が難しい今、出戻り社員は企業にとっての救世主ともいえる存在なのです。

メリットとデメリットを考慮したうえで、上手く自社に取り入れていきましょう。

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