PDCAは企業だけでなく、学校教育や部活動など、ありとあらゆる場所で用いられる有名な業務改善手法です。
一方で近年は、社会変動の激しいVUCA時代が到来していることから「PDCAは古い」と言われるようにもなっています。
はたして本当に、PDCAは古いのでしょうか。
本記事ではPDCAを導入するメリット・デメリットと、PDCA以外の業務改善手法を解説していきます。
ぜひ最後まで読んでみてください。
目次
PDCAとは?
PDCAは「Plan(計画)・Do(実行)・Check(評価)・Action(改善)」の4つのプロセスを繰り返すことで業務を改善させるサイクルのことです。
PDCAは、品質管理研究の権威だったアメリカの統計学者のウィリアム・エドワーズ・デミングによって、1950年代に提唱されたフレームワークです。
今から約70年前に誕生したフレームワークなので、たしかに「PDCAは古い」のかもしれません。
しかし、現代でも通用するフレームワークだと考えられており、実際、品質管理の国際基準である「ISO9001」と「ISO14001」でもPDCAが活用されています。
PDCAを導入する5つのメリット
PDCAを導入するメリットは以下の5つです。
- やるべきことがわかる
- 課題がわかりやすい
- 確実に業務改善できる
- 今ある業務に集中しやすい
- 失敗から学ぶ力がつく
それぞれ詳しく解説していきます。
メリット①:やるべきことがわかる
PDCAを導入するメリットとして、まず挙げられるのが「やるべきことがはっきりする」ことです。
PDCAは、まず計画(P)を立てることからスタートします。
そして実際に計画を実行し、フィードバックを得た後に、また計画を立て直して、これを繰り返していくのです。
このようにPDCAサイクルを回していくことで、計画がどんどん洗練されて、やるべきことがはっきりしていきます。
また、計画を立て直す過程で何度も目標を設定することから、従業員の「目標に対する意識」が養われていくのもメリットです。
メリット②:課題がわかりやすい
PDCAを導入するメリットとして挙げられることのひとつが、「課題が明確になること」。
PDCAサイクルを回すと、実践と改善が何度も繰り返されるので、目標と結果のズレが明確になっていきます。
課題が明確になれば、課題解決のための具体的なアクションが見えてくるので、それをまたPDCAに落とし込んで、検証することが可能です。
このようにして、PDCAサイクルを回すことで、課題がより具体的な形となって見えるようになります。
メリット③:確実に業務改善できる
PDCAを正しく導入できれば、確実に業務を改善できるのもメリットです。
PDCAサイクルでは、計画を実行し、検証した後に改善案を出して、それをまた計画に落とし込むので、確実に業務内容を変化させることができます。
もちろん「業務内容の変化=成長」というわけではありません。
一方で、変化から得られる知見は多く、その知見を業務に正しく反映させられれば、確実に業務が改善されます。
メリット④:今ある業務に集中しやすい
PDCAを導入することで、今ある業務に集中しやすくなり、結果的にパフォーマンスを上げられる可能性があります。
PDCAでは、計画の段階でアクションプランが決定されるので、行動の段階では目の前の業務に集中して仕事を進められます。
また、PDCAでは計画・行動・評価・改善というように段階ごとにやるべきことがハッキリしています。
行動の段階で検証や改善のことを考える必要がないので、仕事に集中しやすい環境になるのです。
メリット⑤:失敗から学ぶ力がつく
PDCAを導入することで、失敗から学ぶ力が身につきます。
PDCAはサイクル式のフレームワークなので、仮に1回目のサイクルが失敗しても、それを次に繋げることができます。
計画・行動・評価・改善のプロセスで、失敗しても確実に知見を得られるので、失敗から学ぶ習慣を身につけられることが可能です。
PDCAを導入する3つのデメリット
ただし、PDCAにもデメリットは存在します。それが、以下の3つです。
- アイデアが生まれづらい
- PDCAが目的になりがち
- サイクルを回すのに時間がかかる
それぞれ詳しく解説していきます。
デメリット①:アイデアが生まれづらい
PDCAを導入するデメリットとして、アイデアが生まれづらいことが挙げられます。
PDCAは、これまで実行してきた業務や仕事を検証することで改善案を生み出すので、どうしても前例に近いアイデアしか出てきません。
何よりもPDCAは、あくまでも品質管理のために開発されたフレームワークであって、クリエイティブなアイデアを生み出すためのものではないのです。
業務改善で全く新しいアイデアを生み出したいのであれば、PDCAとは別の方法でアイデア出しするのがいいかもしれません。
デメリット②:PDCAが目的になりがち
手段と目的を履き違えてしまいがちなのもPDCAのデメリットです。
PDCAは、業務改善のための1つの道具に過ぎません。
この本質を理解した上でPDCAに取り組まないと、PDCAサイクルを回すことが目的になってしまいます。
PDCAは、あくまでも1つの手段であることを常に意識するのがいいでしょう。
デメリット③:サイクルを回すのに時間がかかる
「PDCAが古い」と言われる最大の理由として、サイクルを回すのに時間がかかることが挙げられます。
PDCAは4つのステップを踏む必要があり、改善(A)が最後に実施される構造になっているので、スピーディーな業務改善が難しいのです。
また、PDCAで成果を得るには、何度もサイクルを回す必要がある点も見逃せません。
変化の激しい現代社会でPDCAを実施する際は、サイクルの周期を可能な限り短くして、高速でPDCAサイクルを回していく必要があるでしょう。
PDCAサイクルを効果的に回すコツ
これらのデメリットをなるべく小さくし、効果的にPDCAサイクルを回すコツは以下の5つです。
- 目標と計画を具体的なものにする
- 実行した業務を記録する
- 成功要因と失敗要因を分析する
- PDCAサイクルの周期を短くする
- バッファを設ける
それぞれ詳しく解説していきます。
コツ①:目標と計画を具体的なものにする
PDCAサイクルを効果的に回したいのであれば、まずは目標と計画を具体的なものにしましょう。
目標に関しては、SMARTの法則などの目標設定のフレームワークの活用がいいかもしれません。
可能な限り「数字」で目標を設定するようにして、具体化を進めていきます。
こうして具体的な目標を決定したあとは、そこから逆算する形で具体的な計画を決定していきます。
その際に重要なのは、KPIをしっかり設定しておくことです。
目標を達成するためのKPIを設定できれば、目の前の業務に集中しやすくなります。
コツ②:実行した業務を記録する
PDCAサイクルを回す際は、業務内容を詳しく分析するために、実行した業務を常に記録するのがいいでしょう。
仕事で上手くいったことや新たな課題などを毎日の日報で記録しておき、それを後で詳しく分析できるようにしておきます。
また、計画とのギャップを確認するために「今日は3件の成約が取れた」というように数字で記録するのが望ましいでしょう。
コツ③:成功要因と失敗要因を分析する
記録を数値化した後は、評価(C)の段階で成功要因と失敗要因を分析します。
行動(D)で記録した情報を基に「良かったこと」「悪かったこと」「継続したいこと」「改善が必要なこと」というように、アクションをジャンル分けしていくのです。
このようにして従業員の仕事内容を徹底的に分析できれば、次のステップである改善(A)で、具体的な改善案を生み出しやすくなるでしょう。
コツ④:PDCAサイクルの周期を短くする
PDCAサイクルを実施する際は、PDCAサイクルの周期を可能な限り短くすることが大切です。
一般的に、PDCAサイクルは半年から1年ほどのペースで1周するものですが、変化が激しくなっている現代社会では、短期間で外的要因が大きく変化します。
1年もあれば、社会はすっかり様変わりしていることでしょう。
そのためPDCAサイクルは、可能な限り周期を短くして、常に変化に対応する必要があると言えます。
具体例を挙げると「高速PDCA」で有名なソフトバンクは、1日1周の頻度でPDCAサイクルが回っているそうです。
1週間や1ヶ月程度の中サイズのPDCAサイクルとは別に、1日という極小サイズのPDCAサイクルも同時並行で回していくのがいいかもしれません。
コツ⑤:バッファを設ける
PDCAサイクルで計画を作成する際は、バッファを設けるようにしましょう。
ビジネスシーンでバッファは「余裕」という意味があります。
つまり計画を作成する際にバッファを設けるということは、スケジュールの中に必ず空白の時間を入れるということです。
バッファを設けるメリットとしては、まず予想外のトラブルで業務が遅延してしまった際に十分に対応できる点が挙げられます。
また、PDCAサイクルでは評価(C)と改善(A)にもそれなりの時間が必要です。
評価と改善の時間を確保する手段として、バッファは有効となります。
PDCAサイクルを回す際は、バッファを意識してみてください。
PDCA以外の業務改善手法
PDCA以外の業務改善手法は以下の4つが有名です。
- OODA
- STPD
- PDR
- DCAP
それぞれ詳しく解説していきます。
OODA:迅速な意思決定で高速化
OODA(ウーダ)は、アメリカ空軍のジョン・ボイド大佐が提唱したマネジメント手法で、頭文字は「Observe(観察)・Orient(判断)・Decide(決定)・Act(行動)」を指しています。
OODAは業務改善手法というよりは意思決定のために存在するフレームワークです。
ボイド大佐はどんな状況下でも40秒以内に形勢を覆してきたことから「40秒ボイド」という異名を持っていました。
本来は戦闘で用いられるOODAですが、ビジネスの意思決定の場でも活用できる手法だと思われます。
STPD:現状把握を重視
STPDはソニーの常務取締役を務めた小林茂氏が提唱したマネジメント手法で、それぞれの頭文字は「See(観察)・Think(考察)・Plan(計画)・Do(実行)」を指しています。
STPDは現状把握を重視したフレームワークです。
現在、何が起こっているのかを見極める手法なので、現実とのギャップが生じづらいのが特徴となっています。
基本的には、計画の前段階で用いられる手法です。
PDR:計画を立てない業務改善手法
PDRは米国のハーバード・ビジネス・スクールのリンダ・ヒル教授が提唱したマネジメント手法で、それぞれの頭文字は「Prep(準備)・Do(実行)・Review(評価)」を指しています。
PDCAとの最大の違いは、計画の有無です。
PDCAは計画をしっかり立てて、計画通りに行動するのに対し、PDRは準備ができたらすぐに行動します。
そのため、PDRはPDCAに比べてサイクルのスピードが速く、大胆なアイデアが生まれやすい手法です。
DCAP:考えるよりもまず行動
DCAPはPDCAの順番を変えた業務改善手法で「Do→Check→Action→Plan」の順番となっています。
DCAPは計画を立てずにいきなり行動するので、市場動向や競合他社を肌感覚で理解した上で、それらを踏まえて後から計画を立てられるのが特徴です。
現代社会はスピード感が求められているので、PDCAよりもDCAPの方が現代的な手法と言えるかもしれません。
まとめ
それでは本記事をまとめていきます。
- PDCAは品質管理で用いられる業務改善手法のことで、現在はビジネスの場で広く持ちられている
- PDCAを導入することで確実に業務を改善させることができる
- PDCAはサイクルを回すのに時間がかかるのがデメリット
PDCAはビジネスシーンで非常によく用いられる業務改善手法ですが、一方で変化の激しい現代社会では「PDCAはスピードが遅い」という指摘もあります。
PDCAを導入する際は、変化に対応できるように、サイクルの周期を短くするのがいいかもしれません。