マンダラチャートは、目標達成のための道筋を可視化するのに有効なツールです。仕事やプライベートの目標を達成するのが困難に感じるときには、マンダラチャートを活用しましょう。この記事では、マンダラチャートの作り方やポイントについて詳しく紹介します。
目次
マンダラチャートとは?
マンダラチャートは密教におけるマンダラ(曼荼羅)の模様に由来する図のことで、マンダラートと呼ばれることもあります。マンダラはサンスクリット語で「丸いもの」です。
密教の曼荼羅図ではその世界観を視覚的に把握できるよう、中央に大日如来を配置し、その周囲をぐるりと取り囲むようにして諸仏諸尊を細かく配置していきます。
マンダラチャートも密教の曼荼羅と同じように、主たるものの周りを細かいもので取り囲むような形で作成していきます。基本的には中央に1マスを、その周囲に8マスを配置した9つのマスが軸となります。
そしてその周囲にさらに3×3のマスを設定し、個別に内容を記載していく流れです。合計81のマスの中にアイデアを書き込むことで、思考が次第に整理されていきます。
近年では、世界で活躍するプロ野球選手の大谷翔平選手が目標達成のためにマンダラチャートを取り入れていることが、メディアで紹介され話題となりました。進学や就職、昇進などの目標達成のために、マンダラチャートの作成に取り組む方が増えてきています。
マトリックス法との違い
フレームワークの思考法には、マンダラチャートの他にマトリックス法と呼ばれるものもあります。マトリックス法では、マンダラチャートと同じようにマスを使って情報を管理します。
ただし、マトリックス法は個別に内容を記載するのではなく、縦横をかけ合わせるようにして思考を深めていくものです。
例えば、縦列に商品やサービスの内容、横列に製造コストや売れ行きなどを記載すれば、製品の販売状況の比較ができます。それぞれが交差する部分には、点数を入れたり、◯や×などの評価指標を書き入れたりして情報を整理していきます。
縦列と横列の組み合わせで、企業の方針や目標、問題点とその解決方法などあらゆる項目を判定できるのが、マトリックス法の魅力です。
マトリックス法は、対象となる要素についての客観的な評価を行うことで、可視化してフィードバックにつなげるために有効なツールです。
マンダラチャートはマトリックス法とは異なり、目標や目的を可視化するためのツールとして役立ちます。マンダラチャートとマトリックス法はよく比較されるため、両者の違いをチェックしてより適した方を取り入れていきましょう。
マンダラチャートのやり方
ここからは、マンダラチャートを作るときの手順を紹介します。思考を上手に整理して目標達成につなげていくためにも、適切な手順でマンダラチャートを作成していきましょう。
メインテーマを決める
マンダラチャートを作成するにあたっては、まず紙を用意するかエクセルなどのソフトを使い、3×3のマスを9つ配置した81のマスを作っていきます。続いて、軸となるメインの目標やテーマを定めましょう。
自身やチームが成し遂げたいメインの目標やテーマは、中央に位置するマスに記載します。例えば仕事のチームで目標の達成を目指すのなら、中心部分には「売上目標の達成」、「来店客数の増加」といった要素が入ります。
チームでマンダラチャートを活用するときには、全員が協力しながら達成を目指せるような目標を立てることが肝心です。
その他には、「転職の成功」「資格取得」などの目標を掲げるのも有効な方法でしょう。中心部分に入る目標は定量的なものと定性的なもののどちらでも問題ありません。
達成するために必要な要素を書く
中心のマスの周囲の部分にあたる縦と横、ななめの8マスは、目標達成のために必要な要素を具体的に書く欄となっています。基本的には左ななめ上のマスを始点として、重要な要素を時計回りに書いていきます。
例えば、マンダラチャートを活用して店舗に来店するお客様の人数を増やしたいというゴールを設定する場合、広告の出稿や店頭呼び込み、顧客へのメールといった要素をマスに記載していくのです。
他にもマンダラチャートを使って売り上げアップを目指すのなら、集客アップや認知度アップの他、仕入額を減らすことや人件費を抑えるといった要素を記載するのも良いでしょう。
要素に抜けや漏れが生じないよう、あらゆる分野に思考をめぐらせながら、8つの項目を埋めてください。
要素のために必要な行動目標を書く
中央の1マスに対して具体的な要素を8マス記載したら、この8マスの要素を具体的に掘り下げていきます。
まずは、8つのテーマの周囲にそれぞれ3×3のマスを作りましょう。3×3のマスの中心部分には先ほど挙げた要素を転記します。続いて、転記した要素を実現するための行動目標を8つずつ書き出していきましょう。
例えば、メインテーマに売上アップ、そのための要素として集客力を挙げた場合には、集客に関する具体的な行動目標を掲げていきます。例えばキャンペーンを開催する、SNSを活用する、クーポンを配布するなど、効果的な行動は数多く考えられます。
このような方法で思考を続けながら、81のマス全てを埋めていきましょう。マスを埋めたあとには、バランスが取れているか、項目に漏れがないかなどをチェックして、ブラッシュアップしていきましょう。
81マスのマンダラチャートに書かれた目標を一つずつ達成する
マンダラチャートの81マスをすべて埋めれば、中央の枠には大きな目標とそれを構成する要素が、そして外側の枠にはToDoリストが作られた状態になります。これによって、目標達成のためにどのような行動が必要なのかを視覚的にに整理できます。
リストが完成したら、マンダラチャートにある行動目標を一つずつクリアしていきましょう。マンダラチャートはすぐに確認できる場所に用意しておき、何度も見返して内容を詳しく把握しましょう。
マンダラチャートのメリット
マンダラチャートを作って行動することには多くのメリットがあります。ここからは、マンダラチャートの効果や得られるメリットについて考えていきましょう。
始めやすい
マンダラチャートの作成方法には細かいルールはありません。まず目標を定め、その目標を達成する要素をピックアップします。その後は具体的な行動のアイデアを書き出していくだけなので、誰でも手軽に取り組むことができます。
マンダラチャートは紙に手書きする他、エクセルなどで自作も可能です。また、フォーマットをWebサイトからダウンロードしたり、マンダラチャート専用のスマートフォンアプリを使ったりして作成するのもおすすめの方法です。
導入しやすい方法でマンダラチャートに取り組み、効率よく目標を達成していきましょう。
アイデアの量が増える
マンダラチャートのマス目はかなり多いため、作成時にはたくさんのアイデアを出す必要があります。マス目を埋めていく作業の中で、アイデアの量はどんどん増えていくことでしょう。
頭の中で考えているだけでは思いつかないような斬新なアイデアに出会えるのも、マンダラチャートを作成するメリットです。
マンダラチャートをビジネスで活用する際には、ぜひチームメンバーで協力しながらマンダラチャートを仕上げていきましょう。メンバーがそれぞれに意見を出せば、バリエーション豊かなアイデアを一つのマンダラチャートにまとめることができます。
思考が視覚化できる
マンダラチャートは思考を視覚化するための有効なツールです。マンダラチャートを作るときには3×3のマスに目標達成のための要素を入れた後、その周囲にさらに具体的な行動目標を入れていきます。
この手法によって、個々の要素を深掘りして理解することが可能となります。
目標を達成することを頭で考えているだけでは、具体的な道筋はなかなか見えてこないものです。目標達成のための要素を文字に起こして細かく分解していく作業を進めれば、思考内容を目で見てはっきりと把握できます。
抜け漏れがなくなる
頭の中で漠然と考えるだけでは、有効な方法を見落としてしまっていることに気付きにくいです。思考に漏れや抜けが生じていると、目標達成のための要素が足りなくなってしまうかもしれません。
高い目標を達成するためには、あらゆる要素が不足しないよう気を配ることが大切です。マンダラチャートで8つの要素を書き出してそのバランスをチェックすれば、どのようなポイントに抜けや漏れが生じているのかを把握できます。
優先順位が立てられる
目標を達成するためにはたくさんの行動を行わなければなりません。しかし、一度にあれこれと行動しようとしても、なかなかうまくいかないことも多いでしょう。
マンダラチャートの作成には、どのような行動を優先すべきかを把握しやすくなるというメリットがあります。マンダラチャートに記載したそれぞれの項目をじっくり比較し、まずどのような行動を起こせばいいのかを見極めていきましょう。
優先順位が把握できれば行動をスムーズに起こせるため、より効率的に目標へと近づくことができます。
周囲と内容を共有しやすい
ビジネスでマンダラチャートを作成するときには、上司やチームのメンバーと内容を共有するのがおすすめです。
頭の中で思考していることを周囲の人と共有するのは難しく、思考をうまく言語化できなかった場合、目標達成のための重要な要素を周囲に伝えられないまま終わってしまうかもしれません。
しかし、思考をマンダラチャートの形で書き起こせば、内容を具体的に伝えることが可能となります。目標を共有し、同じ目標に向かって行動を起こせるため、業務の効率は高まりやすくなります。
また、目標を共有してチームの結束力アップにつなげられるのも、マンダラチャートを活用する大きなメリットです。
マンダラチャートを書く際の注意点
せっかくマンダラチャートを作るのなら、より効果を発揮するような手法を取り入れたいものです。ここからは、マンダラチャートを作成する際に気をつけたいポイントについて解説します。
81マスすべてを埋める
マンダラチャートを作るときには、すべてのマスを埋めるようにしましょう。マンダラチャートは思考を整理して目標をはっきりさせるためのツールです。
空欄がいくつもある状態では、どのような目標に向かってどのような行動をすれば良いのかという道筋もぼやけてしまいます。
まずはマンダラチャートのすべてのマスに対し、思いついたことをどんどん書き出していきましょう。マスに書くべきことが分からないときには抽象的なことを書いても問題ありません。
記入する内容が決まらない場合は周囲に相談する
マンダラチャートのマスに何を書けばいいかと悩んだときには、周囲の人に相談してみましょう。ビジネスに関するマンダラチャートを作っているのなら、チーム内の同僚や先輩など業務内容を把握しているメンバーからアドバイスを引き出すのが効果的です。
マンダラチャートのテーマとなる業務の経験者に話を聞けば、どのような行動が必要なのかを詳しく把握できます。
また、プライベートに関するマンダラチャートを作るときには、家族や友達に相談するのも良さそうです。自身とは異なる考え方や感性を持つ人からの助言は、マンダラチャートを作る上での新たな発見やアイデアにつながっていくでしょう。
経験や知識が不足していると質が下がる可能性がある
マンダラチャートの作成には、目標とする分野に対する経験や知識、ノウハウが必要です。未知の分野に関するマンダラチャートを作成するケースでは、情報が不足しており具体的な行動目標を立てられないかもしれません。
結局、抽象的な行動目標ばかりになってしまい、目標の達成に至らない可能性も考えられます。
未経験の分野に取り組むときにはまず、経験や知識の不足を補うことが大切です。目標達成に至る道筋をある程度具体的に把握できれば、行動目標にも具体性が出てきます。
マスが埋められない場合は中心のテーマを変える
マンダラチャートのマスに行動目標がうまく書けない場合、その原因はメインの目標のあいまいさにあるかもしれません。あれこれと思考してみても全てのマスを埋められないときには、マンダラチャートの中心に書いたテーマを少し変えてみましょう。
例えば、「売り上げを伸ばす」というメイン目標に対して具体的な行動目標が浮かばない場合には、目標をより具体的に設定します。
「◯カ月以内に売り上げ◯円を達成する」など、期限を設定したり数値目標を定めたりすれば、行動目標のアイデアが浮かびやすくなります。
仕事とプライベートは分けて考える
マンダラチャートに仕事のこととプライベートのことを混ぜて記載するのはあまりおすすめできません。
目標を高い水準でクリアしていくためには、オンオフの切り替えが重要です。仕事とプライベートの境目がないマンダラチャートを作ってしまうと、メリハリがなくなりモチベーションが下がってしまう恐れがあります。
また、ワークライフバランスの低下が起きる懸念もあります。いくつかの目標を達成したいと考えているのなら、仕事のこととプライベートのことを分けて、別々のマンダラチャートを作るようにしましょう。
大谷翔平選手のマンダラチャート活用例
マンダラチャートは、プロ野球選手の大谷翔平さんも活用していたメソッドです。大谷翔平選手がマンダラチャートを作るきっかけになったのは、花巻東高の野球部員だった時代に、監督の佐々木洋氏から勧められたためです。
大谷翔平選手が高校1年生のときに書いたマンダラチャートには、「8球団からドラフト1位指名」というメイン目標が掲げられています。
この目標のために必要な要素として大谷翔平選手は、体づくりやコントロール、キレやスピードの強化といった要素を記載しています。また、人間性やメンタル、運といった要素も重視しているのです。
大谷翔平選手が作ったマンダラチャートの行動目標の欄にも、高い目標が掲げられています。例えば体づくりの要素の欄には、体のケアや食事、柔軟性といった行動目標が設定されています。
また、スピードの欄には下肢の強化や体幹強化、ピッチングを増やすといった項目が書かれていました。
大谷翔平選手が世界で活躍するほどの選手になったのは、常に高い目標を掲げ行動を起こしてきたからです。目標達成のために、ぜひ大谷翔平選手のような質の高いマンダラチャートを作り、実践につなげてみましょう。
マンダラチャートで目標を達成するポイント
マンダラチャートの作成後は、内容に沿って具体的な行動を始めましょう。ここからは、マンダラチャートの目標を達成するために知っておきたいポイントについて説明します。
優先順位が高いものから取り組む
マンダラチャートにはたくさんの行動が書かれていますが、全ての行動を同時に行うことは難しいでしょう。マンダラチャートの行動目標に取り組むときには、優先度を意識しましょう。
目標達成のための近道がどのマスにあるのか、どのような行動を意識すれば効率が良いのかを考えることが重要です。必要に応じて、マンダラチャートのマスに重要度や優先順位の点数をつけるのもおすすめです。
期日を決める
マンダラチャートを作るときには目標達成のための期日を設定しておきましょう。期限がない状態で行動を起こすと、いつまでも目標達成に至らないまま次第に目的意識が薄れてしまうかもしれません。
まずはメインとなる目標を実現する期日を定めます。続いて、細かい要素や行動目標についても目安となる期日を設定しておきましょう。各項目の期日をスケジュール帳に転記して管理するのもよい方法です。
マスの効果を記録しておく
実際に行動をしたあとには、各項目の効果を計測しましょう。行動目標に従って行動した結果、どの程度の効果が生じたのかを振り返れば、次へとつなげていくことができます。
行動してみたにもかかわらず思ったような効果が得られなかったときには、マンダラチャートの内容を変更したり、次のマンダラチャートを作る際の参考にしたりと工夫しましょう。
ビジネスにマンダラチャートを取り入れて目標を達成しよう
マンダラチャートとは密教の曼荼羅のような形の表のことです。3×3の9マスを9つ配置した81のマスにそれぞれ目標や必要な要素、アイデアを書いて仕上げていきます。
マンダラチャートはビジネスの方向に具体性を持たせたいときに最適なツールです。マンダラチャートを作成すれば目標達成のために何が必要なのかを可視化できるようになり、効率的な行動に移せます。
また、転職活動やプライベートなど、応用できる範囲が広いのもマンダラチャートの魅力です。
実現したい目標があるものの、うまく行動に移せないとお悩みなら、ぜひマンダラチャート作成にチャレンジしてみましょう。