「さん付け運動」をご存知でしょうか?
役職ではなくその人の苗字に「さん」を付けて呼ぼうといった取り組みで、1990年代頃、はじめる会社が増加しました。
最近では、人手不足・人材不足の対策として、イメージアップを図るために取り組む会社が目立ちます。
一方で役職呼びをし続けている会社もあり、「さん付け」から役職呼びへ戻す会社もあるようです。
今回は管理職の呼び方に関する現状や、重要な考え方についてお伝えします。
社外での管理職の呼び方についても解説するので、最後まで読んでみてください。
関連記事:管理職と一般社員の違いとは?管理職の定義や役割、必要な能力などと併せて徹底解説!
目次
管理職の呼び方の現状
管理職に対する呼び方の現状について、以下で詳しく見ていきましょう。
- 役職呼びは古い?「さん付け」の増加
- 管理職の役職呼びを徹底する会社もある
役職呼びは古い?「さん付け」の増加
社内の風通しを良くして上司にも意見できるようにするという意図で、役職に関わらず全員に「さん付け」すると公表している会社は少なくありません。
トヨタの事例を紹介します。
トヨタは1980年代後半から「さん付け」運動を開始しました。
ねらいとしては組織のフラット化と風通しを良くすることで、改革を職場レベルで定着させようとしました。
同僚、上司はもちろんのこと、社長であっても「◯◯さん」と呼ぶのです。
結果的に上司と部下のオープンな雰囲気が醸成され、若手社員が中心となった業務改善運動をはじめとして、活発な取り組みがボトムアップで行われるようになりました。
トヨタの他にも「さん付け」運動を公表している代表的な会社は以下のとおりです。
- アース製薬株式会社
- 株式会社クボタ
- 株式会社TASAKI
- 株式会社無印良品
- ロート製薬株式会社
いずれも組織の風通しの良さをアピールしています。
関連記事:風通しの良い職場とは?メリットやデメリット、効果的な5つの施策を紹介!
管理職の役職呼びを徹底する会社もある
管理職を役職で呼ぶことを徹底している会社も少なくありません。
古い考え方と思われることもあるかもしれませんが、役職名で呼ぶことにも良い面があります。
企業組織の運営方法のうち、トップダウン型組織は社長が経営方針や会社の重大な意思決定をして、部長・課長・係長の管理職を通して、一般社員に業務の指示が伝わります。
役職名で呼ばれることによって、自分の立ち位置をより理解・自覚しやすく、スムーズに役割をまっとうすることができるというのがメリットです。
管理職の呼び方はルールを決めるべき!
管理職の呼び方について重要なことは、会社全体としてのルールを定めることです。
なぜなら個人の自由にしてしまうと、あだ名や「ちゃん付け」で馴れ合いの関係になってしまう恐れがあるからです。
本人が意図しない呼び方で呼ばれるなど、トラブルにもなりかねません。
プライベートでは問題ないやりとりでも、ビジネスの場にはふさわしくありません。
「◯◯部長」のように役職呼びをするのか、「さん付け」で呼ぶのかについては、どちらが正しいということはなく、会社の社風や方針に合わせればよいでしょう。
大切なのは経営層の合意の上で、会社として統一したルールを明確にすることです。
管理職の呼び名一つでも、部下にルールを守らせるように徹底しましょう。
関連記事:ルールはなぜ重要か 部下にルールを守らせるにはどうすればよいか
管理職の呼び方を役職名で統一するのはパワハラにあたる?
管理職の呼び方を役職名で統一するようにルール化し、社員に遵守させることは、パワハラにはあたらないと考えられます。
なぜなら組織であればルールは当たり前に存在するもので、管理職の呼び方を会社全体で統一する内容のルールがあっても、特別な問題はありません。
厚生労働省のパワハラに関する定義の中でも、管理職の呼び方については記載はありませんでした。
ただし役職で呼ばない部下に対して執拗に怒ったり、高圧的に迫ったりするなど、度を超えた指導についてはパワハラと認められかねません。
役職呼びをするルールを決めても守らない社員がいるときは、役職名が頻繁に変わったり役職名の周知がきちんとされていない可能性があります。
全員が守れるルールになっているかを確認してみましょう。
関連記事:パワハラを防ぐマネジメント術
管理職の呼び方別のメリット・デメリット
管理職を役職で呼ぶのか、さん付けで呼ぶのかによるメリットとデメリットをそれぞれ以下の順に解説します。
- 役職呼びのメリット
- 役職呼びのデメリット
- さん付け呼称のメリット
- さん付け呼称のデメリット
役職呼びのメリット
管理職を役職で呼ぶメリットは、指示命令においての上下関係や、組織のピラミッド構造が明確になることです。
とりわけ企業の組織構造がトップダウン形式をとっている会社には適しているといえます。
マネジメントでは上司と部下はある程度距離を置くことが好ましいため、立ち位置が明確になる役職呼びは好都合です。
役職呼びをする職場環境では、組織の方針を理解しやすく、現場での徹底もしやすいでしょう。
役職呼びのデメリット
管理職の役職呼びのデメリットは、堅苦しい雰囲気になりやすく、上司に気軽に意見を言いづらいところです。
なぜなら役職名を言うことで、管理職と部下の間に距離を感じるような心理的な影響があると考えられるためです。
また、役職が変わったときに混乱しやすいこともデメリットです。
役職名を間違えてしまうと失礼にあたり、お互い気まずい雰囲気になってしまいます。
役職呼びをルール化するのであれば、誰がどの役職に就いているかが明確にわかるような仕組みをつくりましょう。
さん付け呼称のメリット
さん付けのメリットは、上司も部下もフラットな関係性を築きやすく、風通しの良い社風になりやすいことです。
実際に導入している会社では、さん付け運動が社員の意識改革のきっかけとなって、業務改善の取り組みやボトムアップでの活動がなされるようになった事例があります。
「若手社員の能力を引き出したい」「組織に新しい風を取り込みたい」という経営層の思いがあるならば、さん付け呼称は合っているといえます。
また役職が変わったとしても「さん付け」ならば呼び方が変わらないため、周囲の混乱もなく、余計な気を使うこともありません。
さん付け呼称のデメリット
さん付け呼称のデメリットは2つです。
1つめは管理職の責任感が薄れることです。
新しい役職に就いてすぐにでも「◯◯部長」「◯◯課長」などと役職名で呼ばれれば、無意識のうちに責任感が湧いてくるものでしょう。
ところが管理職でも「さん付け」のままだと、管理職としての責任を感じたり、自覚を持ったりする機会が極端に減り、その役割を無責任に担ってしまう恐れがあるのです。
2つめは上下関係への意識が希薄になり、「お友達感覚」の社員が増えてしまうことです。
上司と部下関係なくフランクに話せる一方で、個人的な事情や家庭の話などが話題に上がることもあるでしょう。
一見組織内の雰囲気は良いように見えても、いざ上司が部下に指導をしようとする場面で、普段の関係性が近いほど緊張感は薄れてしまいます。
社外での管理職の呼び方マナー
会社の外で管理職を呼ぶときは、常識としてマナーを守らないと、取引先との信頼関係に影響が出てしまいます。
以下の管理職に関わる呼び方の3つのマナーについて詳しく見ていきましょう。
- 社外の人の前では上司の役職名は省略
- 社外の管理職に対しては「名前+役職名」
- メールの場合は「◯◯様」が無難
社外の人の前では上司の役職名は省略
社外の人に対して自社の管理職の話をする場合は、上司であっても名字のみで呼びます。
役職名は敬称にあたるため、身内の人には付けないのが一般的です。
たとえば社外の人からの電話応対は以下のようになります。
◯ 「ただいま鈴木は会議中でございます」
✕ 「ただいま鈴木部長は会議中でございます」
社外の管理職に対しては「名前+役職名」
取引先の管理職のことは「◯◯社長」「◯◯部長」と呼ぶのが一般的です。
ただし外資系や業界によっては、長くて覚えきれない役職名も存在するため、その場合は「◯◯様」「◯◯さん」と呼んでも問題ないでしょう。
「◯◯部長様」「課長さん」は二重敬語になるため、間違った呼び方です。
メールの場合は「◯◯様が」無難
社外の人にメールを送るときは、よほど密な関係性があるような場合をのぞいて、役職を問わず「◯◯様」と送るのが無難です。
管理職の場合、昇格や降格の情報をキャッチしていない場合に万が一相手が降格していた場合、失礼にあたる可能性があるため、役職呼びは避けるべきでしょう。
まとめ
管理職の呼び方は、メリットとデメリットを考慮したうえで、社内で統一ルールを決めるべきです。
社長・経営層が決めた方針を部長・課長・係長の管理職を経て、一般社員に伝えるようなピラミッド型組織であれば、役職呼びがフィットします。
識学のエッセンスを経営に取り入れていただく場合は、管理職と部下は一定の距離感が大切であるため、役職呼びのほうが相性が良いでしょう。
御社の目指すべき組織の姿を思い描きながら、管理職の呼び方ルールも検討してみてください。