ビジネスパーソンに欠かせない論理的思考能力(ロジカルシンキング)を強化してくれるのが、ロジックツリーと呼ばれるフレームワークです。ロジックツリーの活用法を学べば、企画の立案や目標設定、課題の分析、問題点の深掘りなど、さまざまなシーンで役立てることができます。
ロジックツリーの種類は、要素分解ツリー、原因追求ツリー、問題解決ツリー、KPIツリーの4つがあります。どのロジックツリーを用いるかは、目的によって変わってくるため、違いを理解しておきましょう。
本記事では、ロジックツリーを活用するメリットや作成時の注意点を解説します。
目次
ロジックツリーとは?
ロジックツリー(Logic Tree)とは、ロジカルシンキングの手法の一つで、問題の原因や解決策を見える化できるフレームワークです。深掘りしたい問題を一つ取り上げ、そこから枝分かれするように構成要素を書き出していくため、ロジックツリーと呼ばれています。
ロジックツリーの幹の部分は、枝分かれした部分の総和(合計)と等しくなっています。そのため、後の項目で説明するとおり、業務上の問題を細分化し、一つひとつの要素を漏れなくダブりなく分析することが可能です。
一見しただけでは整理がしづらい複雑な問題も、ロジックツリーを使って分解することで、解決に向けた糸口が見えてきます。
ロジックツリーを活用することのメリット
ロジックツリーを活用するメリットは5つあります。
- 課題を明確に把握できる
- 課題の原因を知ることができる
- 解決策を導きやすい
- 起こすべきアクションの優先順位をつけやすくなる
- 課題の全体像を共有しやすい
課題の原因や課題自体が明確でない場合は、ロジックツリーを使って現状を分析してみましょう。また、ロジックツリーは課題解決に向けたアクションを起こす際にも役立ちます。
課題を明確に把握できる
ロジックツリーは、一つの問題を幹として、構成要素(枝)を網羅的に書き出して行きます。言語化するのが難しい課題であっても、ロジックツリーを使って細分化することにより、事象と原因、問題を紐づけることができるため、課題を明確に把握できます。
課題の原因を知ることができる
ロジックツリーは、問題の原因究明にも役立つフレームワークです。
例えばロジックツリーを使って、売上が低下しているという課題を分析してみましょう。売上が低下しているといっても、顧客単価が低下しているのか、顧客数が低下しているのかによって、原因の所在が異なります。
また、仮に顧客単価が低下していたとして、購入単価(購入1回当たりの支払額)が低下しているケースや、購入頻度(顧客1人当たりの購入回数)が低下しているケースなど、さらに複数の原因が考えられます。
このようにロジックツリーを活用すれば、課題の原因を細かく分析することが可能です。課題の原因を特定できない場合は、ロジックツリーを使って掘り下げてみましょう。
解決策を導きやすい
問題の隠れた原因を特定すれば、解決策も見つけやすくなります。ロジックツリーを活用することで、原因を見える化できるため、何に対して解決策を考えればよいのかが明確になります。具体的な解決策の立案へとスムーズにアクションを起こすことが可能です。
起こすべきアクションの優先順位をつけやすくなる
前述のとおり、ロジックツリーは問題の構成要素を漏れなくダブりなく分析するフレームワークです。ロジックツリーを使えば、問題に対してとるべきアクションも網羅的に書き出すことができます。
それぞれのアクションの有効性を比較し、優先順位を付けて問題解決に取り組むことが可能です。
課題の全体像を共有しやすい
課題が明確になってもきちんとチームへ共有できなければ、納得した上で取り組んでもらうことは難しいかもしれません。
ロジックツリーを共有すれば原因は何か、なぜその解決策に至ったのかなど課題の全体像をチームで把握できるので、すばやくアクションを起こすことが可能です。
ITツールを活用すれば、ロジックツリーをオンラインで共有できるため、テレワークやリモートワークにも対応できます。
ロジックツリーの種類は4つ
ロジックツリーは大きく分けて4種類あります。
- 要素分解ツリー(Whatツリー)
- 原因追求ツリー(Whyツリー)
- 問題解決ツリー(Howツリー)
- KPIツリー
それぞれ得意なことや役立つシーンが違うため、業務の性質に合わせて適切なロジックツリーを選びましょう。
要素分解ツリー(Whatツリー)
要素分解ツリー(Whatツリー)は、問題を構成する要素を網羅的に書き出すためのロジックツリーです。要素分解ツリーを作成すれば、抽象的であいまいな物事を具体的な要素に分解し、全体像を把握できます。
例えば、リスティング広告についての理解を深めたい場合、レスポンシブ検索広告・拡張テキスト広告などの要素に分解していくことで、自社に必要な広告がどれか具体的に把握できます。
原因追求ツリー(Whyツリー)
原因追求ツリー(Whyツリー)は、問題の原因究明に長けたロジックツリーです。幹となる部分に直面する課題を置き、考えられる原因を網羅的に書き出していきます。
複数の原因が当てはまる場合は、それぞれの重要度や緊急性を比較し、どれが優先的に対処すべき根本原因かを特定します。
問題解決ツリー(Howツリー)
問題解決ツリー(Howツリー)は、問題解決に向けたアクションを洗い出すためのロジックツリーです。解決したい問題を一つ挙げ、想定されるアクションを漏れなくダブりなく書き出します。
例えば、「オウンドメディアの集客数を改善するには?」という問題に取り組む場合、記事数を増やす、Web広告を出稿する、SNSを活用する、SEO対策を強化するといったアクションを挙げ、さらに枝分かれしてアクションを深掘りしていきます。
原因追求ツリーと問題解決ツリーを併用すれば、より効果的に問題を解決することが可能です。
KPIツリー
KPIツリーは他のロジックツリーと違って、企業の重要業績評価指標(KPI)を立てるときに使われます。まず企業の最終的なゴールである経営目標達成指標(KGI)を挙げ、その実現に必要なKPIを網羅的に書き出していくのが特徴です。
ロジックツリーの作る際のポイント
ロジックツリーを作成するときは、以下の4つのポイントを意識しましょう。
- MECEを徹底して作成する
- 仮説立てをする
- 因果関係を意識する
- 右端の項目が「行動」になるまで深掘りする
ただ問題を細分化するだけでは、原因究明や解決に向けたアクションにはつながりません。MECEや仮説立て、バリュープロポジションキャンバスの活用により、ロジックツリーを正しく作成することが大切です。
MECEを徹底して作成する
MECEとは、互いに(Mutually)、重複せず(Exclusive)、全体として(Collectively)、漏れなく(Exhaustive)の頭文字をとった言葉で、ロジックツリーを作成するときに欠かせないポイントの一つです。日本語で、「漏れなくダブりなく」と言い換えられることもあります。
例えば、ロジックツリーを年齢で分ける場合、10代以下、20代、30代、40代、50代、60代以上となっていれば抜けや重複がなく、MECEの状態です。ロジックツリーがMECEになっていないと、各ツリーで矛盾が発生したり、考慮すべき要素が抜けていたりして、問題解決につながらない可能性があります。
ロジックツリーを書き出すときは、各要素がMECEになっているか必ず確認しましょう。
仮説立てをする
ロジックツリーを書き出す途中で手が止まってしまったら、一度仮説を立ててみましょう。数字やデータを元にして、思い切って仮説を立ててみることで、思わぬ切り口が見つかる可能性があります。
仮説立てをするときに役立つのが、顧客のニーズと自社の提供価値を整理する手法の一つ、バリュープロポジションキャンバスです。
バリュープロポジションキャンバスの活用方法を詳しく知りたい場合は、こちらの記事を参照してください。
因果関係を意識する
ロジックツリーは、左から右に向かってツリー状に要素を分解していきます。
このとき、左のツリーと右のツリーが因果関係(原因と結果)で結びついているかどうかを確認しましょう。特に原因追求ツリーの場合、因果関係がおかしいと何のためのツリーなのか分かりません。
例えば、顧客数が減少しているというツリーと、新規顧客の獲得数が減っている、既存顧客のリピート率が減っているというツリーの場合、互いに因果関係にあります。因果関係を重視してロジックツリーを作成することで、他の社員と共有したときの説得力も増加します。
右端の項目が「行動」になるまで深掘りする
ロジックツリーの最終的な目的は、課題解決につながるアクションを起こすことです。ロジックツリーを作成するときは、右端の項目が何らかの行動になるまで、どんどん深掘りしていきましょう。
特に問題解決ツリーを作成する場合、具体的なアクションをできるだけ洗い出すことにより、優先順位を付けて問題解決に着手できます。ただ問題を分解するだけでなく、ロジックツリーの最終地点が行動になるようにツリーを書き出しましょう。
ロジックツリーのメリットや活用方法を知り、業務の課題を見える化しよう
ロジックツリーとは、問題の見える化や原因究明、解決策の発見などに役立つフレームワークです。特別な知識やスキルがなくても使えるため、誰でも簡単にロジカルシンキングを実践できます。
ロジックツリーには、要素分解ツリー、原因追求ツリー、問題解決ツリー、KPIツリーの4種類があるため、状況に合わせて使い分けていきましょう。
業務上の課題に困ったら、ロジックツリーを使って状況を整理したり見える化したりすることが大切です。