人材不足に悩む企業にとって、人材育成は深刻な課題です。人材を適切に育成してチームや組織の成長につなげるためにも、人材育成のマネジメントに取り組んでみましょう。
本記事では、人材育成のマネジメントについて詳しく解説するとともに、得られる効果や進め方を紹介します。
目次
人材育成のマネジメントとは?
人材育成のマネジメントとは、人材育成のために実施する施策や育成される従業員の特性を知り、適切に配置するためのマネジメント業務のことです。企業が成長していくには、働く人材が欠かせません。
一人ひとりの適性を見極めて優秀な人材に育成していくためにはどのようにマネジメントしていくかが重要になりますその範囲は、教育制度や昇進制度、評価制度などさまざまで、新入社員を採用している企業であれば、採用活動も人材育成のマネジメントに含まれます。
人材育成の過程で、大きな責任がともなう仕事を任せられるほど成長するまでに時間はかかりますが、人材育成が成功すれば企業全体で生産性や業務スキルの向上が期待できます。
人材育成のマネジメントが注目されている理由
人材育成のマネジメントは、近年特に重要性が増しています。日本で人材育成のマネジメントが注目されている3つの理由について、見ていきましょう。
人材不足を解消できる可能性があるから
人材育成のマネジメントが注目されている理由の1つ目は、人材不足を解消できる可能性があることです。人手不足に悩んでいる企業は珍しくありません。
日本の少子高齢化が原因で労働力人口は年々減少しているため、人手不足に悩んでいる企業は珍しくありません。総務省統計局の調べによると、2022年の日本の労働力人口は前年に比べて5万人も減少しています。(※)
人手不足は今後も進むかもしれません。この状況で人手不足を解消するには、採用活動を続けつつ、今ある人材を効果的に育成することが求められます。
※参考:統計局. 「労働力調査(基本集計)2022年(令和4年)平均結果の概要」. P1
時代とともに求められる人物像が変化しているから
2つ目の理由は、時代とともに求められる人物像が変化していることです。インターネットの普及や働き方改革の実施、AI技術の発展など、世の中は大きく変化しています。
時代の変化にともない、企業を取り巻く環境や顧客のニーズも変わってきているので、その変化に合わせて、企業はうまく順応しなければいけません。
変化する環境に順応する力は、社員の努力や数回の社内研修ではなく、人材育成として企業が注力する必要があります。
働き方が多様化しているから
3つ目の理由が、働き方の多様化です。近年、時間や場所に囚われないテレワークや時短勤務など、一人ひとりの従業員が希望に合わせて働き方を選べるライフスタイルの多様化が進んでいます。
そこで重要となるのが、自立型人材の育成です。自分のこれからのキャリアや目指していきたい方向が明確で、目標に向かって適切な思考や判断ができる人材を自立型人材といいます。
働き方が多様化しているからこそ、自分の判断で生活に合った選択肢を選べる能力がとても大切です。自立型人材の育成は、変化の激しい社会の中で働き方のあり様も変わっていく時代に沿っていくために欠かせません。
人材育成のマネジメントで得られる効果
人材育成のマネジメントに注力することで、得られる効果を3つ紹介します。
生産性が向上する
人材育成のマネジメントで得られる効果の1つ目は、生産性の向上です。人材育成のマネジメントによって、社員のコミュニケーション力やリーダーシップなどを向上させることができれば、組織全体の生産性アップにつながります。
また人材育成によって生産性が向上できれば、わざわざ優秀な人材を探す必要も無くなるため、企業は採用に関わるコストを削減することが可能です。中途採用の単価は約100万円程度かかるといわれているので、経済的効果は大きいでしょう。
社員のモチベーションがアップする
2つ目は、社員のモチベーションアップです。人材育成のための面談や研修を通して、企業は従業員へ企業の理念や求める人物像を明確にし、共有することができます。
人物像がはっきりすれば、社員はどのような努力をすれば企業に貢献できるのか迷うことがないため、評価にもつながりやすいでしょう。効率よく人材育成が進められれば、従業員のモチベーションや成長意欲の向上が見込めます。
個々の社員がモチベーションをアップすることで、組織力の向上も期待できます。
また、今いる若手社員の人材育成を長期的に行うことができれば、やがて企業をまとめられるリーダーとしての能力を発揮するかもしれません。
人材が定着する
3つ目は、人材の定着です。人材不足に悩む企業にとって、今いる人材の離職防止は重要な課題です。また、せっかくコストをかけて育成したとしても、企業から離れてしまえば大きな損失になります。
人材の適性を活かした配置転換や仕事内容を割り当てるマネジメントができれば、社員は仕事が自分に合っていると感じるようになり、やりがいや成果につながりやすくモチベーションを高く保つことができます。
結果的に離職率が下がるので、優秀な人材が定着しやすい企業になっていくでしょう。
人材育成のマネジメントの進め方
人材育成のマネジメントを実施するための進め方を、5つのステップで紹介します。
1. 現状の課題を把握する
まずは、企業が抱えている人材に関する課題の整理が必要です。シンプルに人材の不足や採用をしても数年で退職するなどの課題が挙げられます。
企業は抱えている問題を明確にすることで、今すぐ取るべき対策や人材の育成内容が見えるようになってきます。育成マネジメントの方向性を決定する上でも重要なので、時間をかけてでも現状の課題をできるだけ具体的に挙げましょう。
2. 目標設定を行う
次は明確になった現状の課題に基づき、目標を設定します。目標は具体的かつ測定ができる必要があります。特定の資格や能力の習得、業務効率化への取り組みなどは、具体的な人材育成のマネジメントの効果的な目標の例です。
目標を具体的に設定することで、現状の課題を解決するために向かうべき方向性が明確になります。
3. 人材教育の計画を立てる
目標設定の後は、現状の課題などに基づいて人材教育の計画を立てます。目標を達成するために企業が最終的に必要とする人物像を定義しておきましょう。まずは、教育や訓練に関するプログラムの選定を行います。実施するためには、スケジュールの策定も欠かせません。
指導方法も重要ですが、特に大切なのが評価基準です。何を持って目標を達成したと判断するか、評価基準を明確にして社員にも共有しましょう。
人材教育の計画は、際限なく考えられるわけではありません。予算やリソースについても視野に入れた上で考える必要があります。
4. 目標共有・実行
人材育成の計画を立てた後は、目標や計画の社内共有と実行です。計画内容だけでなく、施策の目的や目標も合わせて社員に共有しましょう。
今企業にとってどのような部分が足りないのか、それを改善するために企業全体でどのような取り組みを実施するのかをきちんと伝えることで、社員の理解を得られることができます。また、人材育成を通じてモチベーションを向上させる事も可能です。
進捗状況によっては、計画の見直しや調整、外部企業の手助けが必要になるかもしれません。
5. 定期的にフィードバックを行う
最後が、定期的なフィードバックです。人材育成のマネジメントは、計画内容に基づいて一直線に進めるだけでなく、定期的に振り返りを行うことが必要です。タイミングをあらかじめ決めておき、面談や評価を行います。
いままでの期間で、目標までどのくらい近づけたのか定量的に図れることが望ましいです。進行具合が明確になったり、適切な評価やアドバイスが受けたりできれば、モチベーションはさらに向上するでしょう。
これからの時代にますます必要となる人材育成のマネジメント
人材育成のマネジメントは、人材不足に悩まされる企業が多い日本において、今後ますます取り組んでいきたい課題です。
近年はテレワークの推進やAI技術の進化、社会情勢など、環境が目まぐるしく変化しています。これらの変化に順応するには、対応できる人材の育成も必要となります。
人材育成のマネジメントは、最初の段階で現状の課題や目標をできるだけ明確にすることが大切です。今回ご紹介したようなポイントや進め方をもとに人材育成のマネジメントに取り組み、企業がより成長する人材育成を実施しましょう。