人材育成は、企業の経営や存続において重視すべき戦略のひとつです。
しかし、「人材育成の効果が思うように上がらない」「人材育成をしても人材が辞めてしまう」と悩む方は少なくありません。
そこで、本記事では人材育成において大切なことを7つと人材育成に必要なスキル、活用できるツールなどを解説します。
目次
人材育成の考え方
企業における人材育成の考え方は業界や業種、組織によって異なります。
しかし、一般的には以下のようなポイントを重視して人材育成を進める必要があります。
- 中長期的な人材育成戦略
- 継続的な自己啓発機会の提供
- 実務を通した経験やスキルの習得
以上のポイントを重視した人材育成を進めるためには、企業の仕組みとして人材育成体系を構築することが大切です。
例えば「役割等級制度」では、人材育成体系が構築されていなければマネジメント層は期待されるスキルや知識を身に付けるのは困難と言えます。
他にも、階層別の研修や社員個人のキャリアプランを明確にするなど、人材育成体系を構築し人材育成計画を立てるようにしましょう。
人材育成で大切なこと7選
人材育成が成功したと言えるのは人材育成の目的が達成され、人材が企業の競争力に貢献するに至ったときです。
本記事では2020年に経団連が行った「人材育成に関するアンケート調査結果」を元に、人材育成において大切なことを7つ解説します。
- 目的・目標を明確にする
- 自律的なキャリア形成の支援
- 人材育成ができる人を育成する
- 社員との積極的なコミュニケーション
- 人材育成施策を定期的に見直す
- 社員本人の意向を尊重する
- 環境や制度を整える
参考:人材育成に関するアンケート調査結果|一般社団法人 日本経済団体連合会
1.目的・目標を明確にする
人材育成においては目的や目標を明確にすることが大切です。
人材育成は企業の存続・発展のためなのは大枠であり、さらに「これから先、企業としてどうあるべきか」「どういったところを伸ばしていくべきか」「そのためにどんな人材が必要か」といったところまで明確にしておく必要があります。
そうでなければ、育成計画も中途半端になってしまい、社員のモチベーション低下や、一体感不足につながるでしょう。
目的、目標を設定したら、それを達成するために何にコミットしていくべきかも分かってくるでしょう。
たとえば、人材育成の目標を「管理職を増やす」こととした場合、昇級や昇進にあたっての評価基準を明確にすることやその適切な運用が求められるようになります。
弊社が2021年に実施した「人事評価の“モヤモヤ”に関する調査」では、自社の人事評価制度に対する不満の理由として最も多かったのが「評価の基準が不明確」(48.3%)という回答です。
明確にした目標や基準を組織内に共有することで、組織内での透明性が高まります。
また、明確な目的や目標があれば、社員のモチベーションを高められるため、結果として生産性も上がり、社員ひとりひとりの成長も促進されるはずです。
マネジメントTips「人事評価の”モヤモヤ”に関する調査結果レポートと評価制度のポイント」ダウンロード | 識学総研 (shikigaku.jp)
2.自律的なキャリア形成の支援
人材育成は会社主導ではなく、社員が自律的にキャリア形成できるよう、支援を行うことが大切だと言えます。
2020年に経団連が行った「人材育成に関するアンケート調査結果」では、「社員のキャリア形成の現状」として7割強が会社主導と回答しています。
一方で、自律的と回答したのは22.9%です。
自律的と回答した企業では、以下のような社員の自律的なキャリア形成に効果のある施策が行われています。
- キャリア計画の作成とそれを用いた上司や人事部との面談
- キャリアの方向性を踏まえた計画的な配置・育成
- 本人の意向を尊重した自己申告制度(配置・職種転換等) など
3.人材育成ができる人を育成する
厚生労働省の調査によると、人材育成に「問題がある」とする事業所割合は7割を超えています。
その理由として最も多い回答が「指導する人材の不足」で58.1%です。
人材育成のできる人は、企業に以下のようなメリットをもたらします。
- 自分や他の社員の成長に貢献し、組織の学習効果を高められる
- 企業の経営戦略や目標に沿った人材を効率的に育てられる
- 市場や業界の変化に対応した柔軟な人材を育てられる
以上のようなメリットから、社内で人材育成のできる人を見つけて支援することが大切と言えます。
もちろん、人材育成を外部に依頼することもできますが、それでは人材育成のノウハウが社内に蓄積しないため、やはり社内で回していくことが重要です。
4.社員との積極的なコミュニケーション
人材育成には社員と積極的にコミュニケーションを取ることも大切です。
前出の「人材育成に関するアンケート調査結果」では、社員との個別のコミュニケーションを「見直す必要がある」としているのは6割程度となっています。
調査に参加した企業が社員とのコミュニケーションを見直すために挙げている具体例は、以下の通りです。
- 1on1ミーティングの導入によるコミュニケーションの活性化
- 一方向ではなく双方向のコミュニケーションの推進
- Face to Faceのコミュニケーションを基本としつつ、ITツールを導入
- より中長期での目標を踏まえたコミュニケーションの充実
- 評価と育成施策の連携
- 上司に対するコーチング研修などの強化 等
5.人材育成施策を定期的に見直す
ダイバーシティやDX化、働き方改革など時代や環境に合った人材育成施策を取り入れることが大切です。
そのためには、今行っている人材育成施策が時代や環境に合ったものか見直す必要があります。
政府は日本が目指す未来社会は「Society 5.0」と提唱しています。
Society 5.0とは、仮想空間と現実空間を高度に融合させたシステムにより、経済発展と社会的課題の解決を両立する、人間中心の社会のことです。
Society 5.0の考え方を取り入れることは、これからの経済社会における企業のあり方、その流れに沿った計画を打ち出すことにつながります。
これらを踏まえて、人材育成施策や予算、計画などを定期的に見直すことで人材流出を防ぐことも可能になります。
6.社員本人の意向を尊重する
前出の厚生労働省の調査において、人材育成に問題があると答えた事業所のなかで、2番目に多かった回答は「人材を育成しても辞めてしまう」というもの。
その割合は50%台を超えています。
辞めてしまう理由はさまざまですが、異動や社外の研修の承認など、社員本人のキャリア開発の意向を尊重することで、離職率を抑えることができるでしょう。
前出の経団連の調査で実際に社員本人の意向を重視する施策の回答として、以下を上から順に導入している企業の割合が高くなっています。
- 社内公募制度
- 海外・国内留学制度
- 海外赴任制度
- 他企業や自治体等への出向制度
7.環境や制度を整える
人材育成には自己啓発やOff-JTなどの「学ぶ姿勢」を認める環境づくり、目標管理制度やコーチング制度といった「部下・後輩の育成」制度を整えることが大切です。
前出の経団連の調査では企業に「社員の学ぶ姿勢や部下・後輩の育成を評価し、処遇に反映する仕組みの有無」を質問しています。
この質問に「学ぶ姿勢」と「部下・後輩の育成」の双方を同様に評価し、処遇に反映する仕組みがあると回答した企業は56.3%。
今後の方針として「学ぶ姿勢」と「育成」、ともに処遇への反映を強めたいとの回答が多くなっていることから、人材育成には環境や制度を整えることが大切と言えます。
人材育成に必要なスキル
「人材育成をやったことがない」「自分の持っているスキルで人材育成が務まるのか不安」本章ではこのような方のために、人材育成に必要なスキルを解説します。
以下の人材育成に必要な5つのスキルはすべてこれからでも身に着けられるスキルです。
ぜひ参考にしてみてください。
- 現状把握スキル
- 目標設定スキル
- マネジメントスキル
- コミュニケーションスキル
- 適切な人材を選ぶスキル
1.現状把握スキル
現状把握スキルは組織やチームの課題や要望を的確に理解し、現況を客観的に評価するスキルのことです。
人材育成では問題や課題の本質を把握し、改善点を明確にする能力が求められます。
現状把握スキルは人材育成の以下のような状況で活用できます。
- 個別指導や人材育成計画を策定するとき
- 部下のフィードバックや評価を行うとき
- 予防策や解決策をあらかじめ考えるとき
そして、現状把握スキルを高める方法としては以下のようなものが挙げられます。
- 報告・連絡・相談のルールを決める
- 部下の業務内容や進捗状況を可視化し、管理する
- 部下の能力や特性に応じた目標設定をする など
2.目標設定スキル
目標設定スキルは具体的で達成可能な目標を定め、その達成方法を計画するスキルのことです。
人材育成においては目的意識を持ち、優先順位を付けて計画を立て、チームを正しい方向へ導く力が必要となります。
人材育成において目標設定スキルが必要となる理由は以下の通りです。
- 部下の現状や課題を正確に把握し、個々に合った育成計画を立てられるため
- 部下のモチベーションやエンゲージメントが高められるため
- 部下の問題解決能力や自律性を育むことができるため
人材育成をする立場の方は自身の目標設定スキルを高めるためにも、定期的に自己評価や振り返りを行うことをおすすめします。
3.マネジメントスキル
マネジメントスキルは人材育成において欠かせないスキルです。
マネジメントスキルとは、設定した目標を達成できるよう従業員を動かす能力のことです。
リーダーシップや部下へのタスクの割り振り、進捗管理、チームメンバーのサポートを通じて効果的な結果を生み出します。
「マネジメントスキル」について詳しく知りたい方は、ぜひこちらの記事を参考にしてみてください。
関連記事:マネジメントスキルとは?高める方法や向上のために企業が取り組むべきことを解説 | 識学総研
4.コミュニケーションスキル
コミュニケーションスキルはその名の通りですが、情報を明確に伝え、他者との円滑な関係を築く能力のことです。
部下への適切な言葉選びや傾聴力、フィードバック、問題解決への対話が人材育成でのコミュニケーションには有効です。
人材育成におけるコミュニケーション方法の例としては、以下のようなものがあります。
- 上司と部下が定期的に行う面談
- 目標管理制度
- キャリア面談制度
- 自己申告制度
- メンター制度 など
人材育成において周囲と積極的にコミュニケーションを取り、聞く力や伝える力を習得することが必要となります。
5.適切な人材を選ぶスキル
人材育成で大切なことに「人材育成できる人を育成すること」があります。
あらかじめ前述の1~4のスキルのある人材を選ぶ能力そのものも重要なのです。
人材育成に求められる能力や価値観に合致し、チームにフィットする候補者を評価し、選び抜く判断力が求められます。
また、マネージャーやリーダーになることを希望していない人材を選んでスキル習得を促進するのもひとつの手ですが、その場合は精神的負担を感じてしまい人材育成が無駄になる可能性も考えなくてはなりません。
人材育成に活用できるツール|キャリアマップ・職業能力評価シート
人材育成に活用できるツールやフレームワークは多々ありますが、自社に合ったものを活用することが大切です。
人材育成に活用できるツールとして、キャリアマップがあります。
キャリアマップとは、職業能力評価基準で設定されているレベル1~4をもとに、能力開発の標準的な道筋を示したものです。
上の画像の図は、スーパーマーケット業のキャリアマップです。
自社版のキャリアマップを作るには、職業能力評価基準の「レベル」と自社の資格等級制度、それに対応する年数を埋めていくと作成できます。
他にも、人材育成に活用できるツールとして職業能力評価シートがあります。
職業能力評価シートとは、チェック式の評価シートのことです。
職業能力評価シートでは「自分(または部下)の能力レベルはどの程度なのか」「次のレベルに上がるには何が不足してるのか」を具体的に把握することが可能になります。
キャリアマップも職業能力評価シートも自社に合わせたカスタマイズが可能です。
自社の業務内容に応じて適切なツールの使い分けがおすすめです。
まとめ|人材育成に大切なこと
本記事では、人材育成で大切なことや人材育成に必要なスキルについて解説しました。
人材育成を加速させたいとお考えなら、ツールやフレームワークの活用、マネジメントコンサルティングなどを利用するのをおすすめします。
弊社は既に3,000社以上に導入いただいた「識学」を導入する、マネジメントコンサルティング会社です。
誰でも正しく学べば部下をマネジメントできる人材になれる弊社のロジックは、汎用性が高いのが特徴です。
詳しくは、下記の資料をご覧になってください。