多くの企業において、係長は昇進のファーストステップとも呼べる役職です。
係の長である以上、部下を率いるのは間違いありませんが、はたして管理職と言えるかというと微妙な立ち位置になっています。
とはいえ、管理職を目指していく中で、係長は絶対に通る道。
求められる役割をしっかり理解し、全うすることで、次のステップへと進んでいく足がかりになるでしょう。
本記事ではマネージャー志望の方向けに、係長の役割や仕事内容を解説していきます。
ぜひ最後まで読んでみてください。
目次
係長とは
係長は、自分が所属している係のトップを指します。
近年は「チームリーダー」と呼ぶ企業も増えているようです。
一般的に「係」とは組織構造における最小単位であり、「課」の下に位置付けられると考えられています。
関連記事:マネジメントは分類した方がいい【階層別に求められるアプローチ】
係長は管理職?
係長が中間管理職に位置付けられるのは間違いないでしょう。
なぜならある程度、部下を管理する必要がある役職だからです。
中間管理職とは、管理職と現場の板挟みになっている役職のことで、主に係長や課長が該当します。
この考え方に則ると、管理職だと言えるのは部長だけで、管理職である部長の下につく課長や係長は中間管理職だという見方ができます。
つまり、係長は管理職ではありません。
ただし、管理職ではないとはいえ、一定のマネジメントスキルは求められる役職です。
係長と主任の違い
係長に似た役職名として、主任が挙げられます。
一般的に主任は、現場での指揮を任される立場にあるため、係長に比べると現場との距離がより近い役職です。
「チーフ」と呼ばれることも多いです。
係長の方がリーダーの側面が強く、主任の方が現場との距離が近いのが、係長と主任の違いです。
そのため一般的には、主任よりも係長の方が上の立場になります。
係長と課長の違い
係長は、課長と一般従業員の間に位置する役職です。
チームの最小単位が「係」であり、複数の「係」が集まってできるのが「課」となります。
その「課」を率いるのが課長なので、課長は係長の1つ上の役職だと言えるでしょう。
一般的には、係長よりも課長の方がマネジメント業務の割合が大きくなります。
企業や組織構造によっては、課長でも現場の業務をこなす場合がありますが、基本的には「課」全体のマネジメント業務がメインです。
関連記事:課長に求められる役割とは?役割の種類と備えるべき資質について
係長の3つの役割
係長の役割としては、以下の3つが挙げられます。
- 業務遂行の責任者
- 現場リーダーとして部下を指揮する
- 上位の管理職とのパイプを繋ぐ
それぞれ詳しく解説していきます。
業務遂行の責任者
係長の役割としてまず挙げられるのが、業務遂行の責任者です。
現場で実際に業務をこなすメンバーと最も距離の近いマネージャーである係長は、現場での業務遂行の責任者を務める必要があります。
このように責任者を設けることは、組織をスムーズに回していく上で必要不可欠です。
課長や部長としては「現場で何かあったらとりあえず係長に聞いてみる」というように対応できます。
係長は現場での業務遂行の責任者なので、係の状況を一通り把握する必要があります。
現場リーダーとして部下を指揮する
現場リーダーとして部下を指揮するのも係長の役割です。
先ほども述べた通り、係長には責任があるため、部下に対して一定の指揮権が与えられます。
現場での業務遂行に滞りがないように、部下を指揮するのも係長の役割の1つです。
また、パフォーマンスを向上させるために部下を育成するのも、基本的には係長の役割です。
係長自らが指導するのか、それともベテラン従業員に指導してもらうのか。
どちらにしても、従業員が育つ環境を構築することが係長に求められます。
関連記事:リーダーシップ論とは?学んだ方がいい理由や歴史も解説!
上位の管理職とのパイプを繋ぐ
係長は上位の管理職、多くの場合は課長とのパイプを繋ぐ役割があります。
もし係長がいなかったら、課長は従業員全体にメッセージを浸透させなければいけません。
逆に、係長がいれば、課長は何人かの係長に用件を伝えるだけで済みます。
また、現場の意見を抽出して上層に伝達するのも係長の役割です。
特に経営層は、現場の状況を把握しづらい立場にあります。
最前線に立つ係長が上位の管理職とのパイプを繋ぐことで、組織に一体感が生まれてくるのです。
係長の仕事内容
係長の主な仕事内容は以下の4つです。
- 目標達成計画の策定
- 業務プロセスの改善
- 部下の管理
- リスクマネジメント
それぞれ詳しく解説していきます。
目標達成計画の策定
係長は、担当する係の目標達成計画を策定します。
目標達成計画の策定に必要な要素は主に2つ。
1つめは、企業の目標から逆算して設定することです。
企業目標を達成するために、課長が係ごとに役割を分担し、係長はそれにあわせて目標を設定するのです。
そしてもう1つは、部下の成長を促すために設定するアプローチです。
部下の能力を最大限引き出すための目標設定が別途必要だと言えます。
関連記事:目標達成の方法とは?適切な目標設定の重要性や目標達成できる従業員の共通点を解説
業務プロセスの改善
係長の仕事内容として、業務プロセスの改善も挙げられます。
係長は現場との距離が最も近い役職なので、業務プロセスを改善しやすい立ち位置にいます。
定期的に業務プロセスを見直し、改善できる部分があればどんどん改善していきます。
また、係長の判断だけではできない改善、例えばインフラの見直しなどに関しては、課長の指示を仰ぎます。
このような業務プロセスの改善は、経営層や管理職には難しいので、係長に求められている仕事だと言えるでしょう。
部下の管理
係長は「係」に所属する部下の管理も任されます。
具体的には、部下への仕事の割り振りや、人材配置が主な仕事です。
そのため、係長にも一定のマネジメントスキルが必要だと言えます。
もちろん、係長も現場での業務遂行にリソースを投下しますが、それと同時に、部下の管理にも目を配る必要があるのです。
リスクマネジメント
係長は、現場でのリスクマネジメントを任されています。
例えば飲食店であれば食中毒のリスクは徹底的に排除しますし、工場であれば従業員の健康を第一に考えます。
ホワイトカラーの職種でも、従業員のメンタルヘルスには常に目を配る必要があり、それと同時に、係長自らの健康状態も万全にするのが望ましいでしょう。
このように、現場で考えられるありとあらゆるリスクをマネジメントするのが係長の仕事の1つです。
関連記事:変化の激しい現代社会で必須の「リスクマネジメント」実施方法まで解説
係長に求められる能力
係長に求められる能力は以下の5つです。
- 高度な業務遂行能力
- ロジカルシンキング
- リーダーシップ
- タイムマネジメント
- 育成能力
それぞれ詳しく解説していきます。
高度な業務遂行能力
係長は、少なくとも部下を引っ張っていけるだけの業務遂行能力が求められます。
高度な業務遂行能力を持っていることで、まず部下が係長を信頼するようになります。
また、実際に部下を指導する際にも、高度な業務遂行能力が役に立つでしょう。
そしてマネジメント目線ではあまりよろしくありませんが、スパートをかける際に係長自らが業務遂行の中心に立つことも求められる傾向にあります。
ロジカルシンキング
係長は、パフォーマンスを最大限発揮するためのロジカルシンキングが必要です。
ロジカルシンキングは主に目標設定、人材配置、業務プロセスの改善で必要となります。
例えば業務プロセスを改善する場合は「どれだけ生産性が向上するか」「改善する際に負担が発生しないか」など、論理的に考えることが重要です。
少なくとも感情的な思考だけで係長の仕事をこなすのは困難です。
可能な限りクールに、論理的に物事を考える習慣を身につけましょう。
関連記事:ロジカルシンキングの鍛え方とは?ビジネスマンのための5つの訓練法を紹介
リーダーシップ
係長には、係を率いるだけのリーダーシップが必要です。
リーダーシップとは、目標を達成するために周囲のメンバーに影響を与えられる能力を指します。
その際に重要になるのが、ベクトル合わせです。
どれだけ従業員が優秀でも、その力が目標達成に向けられていなければ意味がありません。
リーダー及び係長は、従業員の力を1つの目標に向けるために、チームをまとめ上げるリーダーシップが必要なのです。
タイムマネジメント
係長には、タイムマネジメント能力が求められます。
大半の目標には期限が設定されており、その期限を達成するためには、タイムマネジメントが必要不可欠です。
また、タイムマネジメントは、目標設定や業務プロセスの改善にも活用できます。
そして係長がタイムマネジメントできれば、部下が目の前の仕事に集中するようになる効果もあります。
現場の責任者である係長が、業務の時間を管理しましょう。
育成能力
現場に入ってくる新入社員を育てる責任は係長にあります。
そのため、育成能力が必要不可欠です。
ただし、一口に育成と言っても、その手法は実に様々です。
あらかじめ業務内容を体系化してマニュアルを作成するのもいいでしょうし、ベテラン従業員の力を借りるのもいいでしょう。
やり方は現場の特性や雰囲気で変動するので、それに合わせた育成方針を作ることが係長に求められています。
係長の平均賃金・年齢
やはり係長の平均賃金や平均年齢は気になってしまうものです。
厚生労働省の「令和3年度賃金構造基本統計調査」によると、役職別の平均賃金・年齢は以下の通りになっています。
平均賃金 | 平均年齢 | |
部長級 | 577,900円 | 52.8歳 |
課長級 | 476,300円 | 48.7歳 |
係長級 | 367,800円 | 45.3歳 |
非役職者 | 277,400円 | 40.7歳 |
以上の通り、非役職者に比べて係長は1ヶ月あたり約9万円の差があることになります。
これは年収換算だと約100万円以上もの差です。
また、こうして見ると、役職が1つ上がるごとに賃金が10万円程度増していることがわかります。
平均年齢で見ると、係長は45歳です。あくまで平均値である点にご注意ください。
係長から管理職を目指すために必要なこと
係長から課長や部長などの、より上位の管理職を目指したいなら、以下のような取り組みが必要です。
- マネジメントスキルを習得する
- 企業のためになることを考える
- 長期的な視点を持つ
それぞれ詳しく解説していきます。
マネジメントスキルを習得する
係長が管理職を目指す際は、まずマネジメントスキルの習得を心がけましょう。
なぜなら昇進していくにつれて、マネジメント業務の割合が大きくなっていくためです。
マネジメントスキルを習得する方法は、いくつか挙げられます。
企業がマネジメント研修を提供しているのであれば、まずはそれを利用してみるのがいいかもしれません。
また、独学でマネジメントスキルを習得したいのであれば、マネジメント関連の書籍を読み込むのがいいでしょう。
係長であれば、マネジメント関連の知識を実際の現場(係)で活用することができます。
知識習得と現場での実践を繰り返して、マネジメントスキルを習得していきましょう。
企業のためになることを考える
現場にいる従業員は目の前の仕事をこなせば十分だと言えますが、管理職になると、企業のために何ができるかを考える力が求められます。
視座が高ければ高いほどよいと言えるでしょう。
そこで普段から、企業のためになることを考えるといいでしょう。
自社がどのようなポジションにいて、ここからどのように進んでいくべきかを考える習慣を身につけると、思考を経営層に近づけることができます。
長期的な視点を持つ
役職が上になればなるほど、より長期的な視点を持つ必要が出てきます。
経営層は少なくとも5年後の未来を常に見る習慣があり、管理職も例外ではありません。
企業のためになることを考えるのと同時に、長期的な視点を持つ習慣も身につけておきましょう。
そのためにはもっとマクロな視点で時間を捉えることが重要です。
常に未来の社会像を意識するのがいいでしょう。
まとめ
それでは本記事をまとめていきます。
- 係長は管理職ではなく中間管理職
- 係長は現場のリーダーとして部下を指揮・管理する役割がある
- 係長は高度な業務遂行能力はもちろんのこと、一定のマネジメント能力も求められる
係長は管理職を目指す上で最初に通る役職の1つです。
企業内での出世を目指す上で、避けては通れない役職だと言えます。
そして係長から管理職を目指していく際は、より高度なマネジメントスキルを習得する必要があります。
企業が用意している研修を受動的に受けるだけでなく、書籍を読むなど、自ら行動を起こすのが大切です。