ロジカルシンキングという用語を聞いたことがある方は多いでしょう。
日本でロジカルシンキングが注目されるようになったのは、約20年前。
今なお社会人のビジネススキルとして求められる考え方として知られています。
特に昨今では、ダイバーシティの拡大やビジネス活動の加速、多くの情報を瞬時に得られるようになった時代に対応して成果を出していくために必要なスキルとして、より重要度が高まっているといえるでしょう。
本記事では、ロジカルシンキングを職場で活かしたいとお考えの方に向け、ロジカルシンキングのスキルを身に着けるメリットやデメリット、活用例などを解説します。
目次
ロジカルシンキング(論理的思考)とは?
ロジカルシンキングとは「論理的思考」や「論理的な考え方」と訳される思考法のことです。
自分で考えて行動し、コミュニケーションを取ることに使うことができるため、ビジネスでも日常でも使えます。
ロジカルシンキングを用いて判断する場合は、ロジカルシンキング体系を経るとよいとされています。
ロジカルシンキング体系とは、以下のような体系です。
- 情報の発想:フレームワーク発想
- 情報の整理:ツリー構図・マトリックス構図・プロセス構図
- 情報の発信:ストラクチャー志向
まずはフレームワークで情報収集し、集めた情報を整理します。
情報を整理したら提案や報告、発表などの手段で発信します。その際に利用できるのが、以上で挙げたロジカルシンキング体系です。
ロジカルシンキングによって自分の意見や考えに説得力を持たせられるため、意識的に身に着けておきたいスキルといえるでしょう。
参考:本田一広「ロジカルシンキングで面白いほど仕事がうまくいく本」(2016年)
ロジカルシンキングのメリット5つ
ロジカルシンキングとは論理的思考のことで、身に着けた方がよいビジネススキルということが分かりました。
では、ロジカルシンキングを身に着けるメリットにはどのようなことがあるのでしょうか。
本章ではロジカルシンキングのメリットを以下の5つの観点から解説します。
- 物事を客観的に捉えられるようになる
- 分析力が向上する
- 問題解決能力が向上する
- コミュニケーション能力の向上が期待できる
- 生産性が向上する
1.物事を客観的に捉えられるようになる
メリットとしてまず挙げられるのは、物事を客観的に捉える能力が身につくことです。
ロジカルシンキングは、論理的な思考法です。
物事を感覚的に捉えるのではなく、筋道を立てて矛盾・破綻がないように論理的に考え、結論を出します。
それにより、物事を客観的に捉えることが可能となるのです。
ロジカルシンキングによって物事を客観的に捉える能力が身につくと、仕事をする上で以下のようなメリットをもたらしてくれます。
- 合理的に意思決定できる
- 問題や課題の解決を効率化できる
- リスク管理が可能になる
- コミュニケーションが円滑になる
- 成果を最大化できる
2.分析力が向上する
ロジカルシンキングは「情報の収集」「情報の整理」「情報の発信」の体系で構成されます。
分析は「情報の整理」の段階で必要です。
さらに、ロジカルシンキングは物事の因果関係や仮説を明確にします。
因果関係や仮説が明確になれば、データや情報を客観的に評価したり、問題や原因を見極めたりすることが可能です。
また、複雑な状況で重要なポイントを抽出したり、優先順位を決めて物事に取り組めたりできるようにもなります。
分析力はビジネスの判断や戦略に必要なスキルであり、効率性や正確性を高めるためにも大切です。
3.問題解決能力が向上する
問題の解決には、ロジカルシンキングが必要です。
ロジカルシンキングでは、物事の目的や目標を明確にし、その目的や目標に基づいて検討や推論を行います。
目的や目標を明確にできると、解決策を考えることができ、さらにその実行までの道筋も明確かつ具体的になるのです。
ロジカルシンキングには以下のようなさまざまな手法やフレームワークがあります。
ロジカルシンキングを身に着け、こういったフレームワークや手法を使い組み合わせることで、問題解決能力の向上が期待できるでしょう。
- 演繹法
- 帰納法
- MECE(Mutually Exclusive Collectively Exhaustive)
- ロジックツリー
- ピラミッドストラクチャー
4.コミュニケーション能力の向上が期待できる
近年、働き方は目まぐるしく変化し、最近ではリモートワークから出社に切り替える企業が増えました。
弊社がリモートワークが可能な職場に勤めている会社員に行った調査では、出社のメリットに「社員同士のコミュニケーションが取りやすい」の回答をした人が51.5%と最も高い結果となっています。
ロジカルシンキングを身に着けると、相手に自分の考えや意見を筋道立てて伝えられます。
筋道を立てた伝え方は、話に説得力を持たせることができ、相手に納得してもらえるでしょう。
また、相手の話もロジカルに聞くことができ、理解や共感が深まります。
コミュニケーションはビジネスの基本とも言えるので、ロジカルシンキングはチームワークや関係性を良くするためにも大切です。
5.生産性が向上する
先述の1〜4のメリットを考慮すると、ロジカルシンキングによって生産性が向上するというメリットが見えてきます。
ロジカルシンキングは物事を論理的に考えたり、伝えたりできる思考法なので、コミュニケーション能力や問題解決の効率が高まります。
これにより、仕事の質やスピードが上がるのです。
ただし、生産性を高めるには他の思考法と組み合わせること、組織全体の文化や環境も重要です。
また、個々の社員のモチベーションやスキルにも影響されます。
そのため、ロジカルシンキングの導入は組織全体のトレーニングやサポートと組み合わせるとよいでしょう。
ロジカルシンキングのデメリット3つ
ロジカルシンキングは、状況や場面に応じて他の思考法や手法と組み合わせて使うことも大切です。
一見してデメリットがないように思えるロジカルシンキングですが、デメリットも存在します。
以下の3つの観点から、ロジカルシンキングのデメリットを解説していきましょう。
- 感情が考慮されない
- 新しいアイデアを出すのには向いていない
- ロジカルシンキングはあくまで「手段」であり「目的」ではない
1.感情が考慮されない
ロジカルシンキングによって誰にでも分かりやすい筋道が通った考え方が可能になります。
この考え方には、客観的な視点が必要不可欠です。
客観的に物事を捉えることはロジカルシンキングのメリットだと説明しましたが、同時に客観的に物事を捉えることで、どうしても自分や相手の感情や主観的な考えを無視することになる、というデメリットも生まれます。
感情や主観的な考えを無視した考え方をすると、人間関係や信頼に悪影響を及ぼす可能性もあるでしょう。
2.新しいアイデアを出すのには向いていない
ロジカルシンキングは、論理的な分析と推論に基づく思考法であり、場合によっては創造性や直感的なアイデアの発想を制約してしまう可能性があります。
創造性や革新的なアイデアを生み出すのに向いているのは「ラテラルシンキング」という思考法です。
ラテラルシンキングとは、問題解決のために既成概念や理論にとらわれずに新しい発想を生み出す思考法です。
他の思考法と組み合わせたり、適切な場面や状況でロジカルシンキングを活用することが大切です。
3.あくまで「手段」であり「目的」ではない
ロジカルシンキングはあくまで考え方のツールであり「手段」です。
論理的思考を身に着けることが「目的」ではありません。
ロジカルシンキングの活用は、短時間で仮説を導くことを可能にします。
そして、出した仮説を明確にすること、説得力を持たせることも可能です。
しかし、本来重要である考えるプロセスが軽視されてしまう可能性があるため、ロジカルシンキングに執着せず、あくまで考え方の手段ということを忘れないようにしましょう。
ロジカルシンキングの活用例
ビジネスにおいて、ロジカルシンキングはどのように効果的に働くでしょうか。
たとえば、交渉時にロジカルシンキングを活用するメリットは、感情的にならずに論理的な手順を踏むことで問題解決をスムーズにしてくれることといえるでしょう。
実際、ロジカルシンキングは交渉に限らずさまざまなビジネスシーンで活用が可能です。
本章では、ビジネスシーンでのロジカルシンキングの活用例を2つ解説します。
- ビジネスシーンにおける日常会話時
- 新入社員教育を行うとき
ビジネスシーンにおける日常会話時
たとえば、上司や同僚に商談の結果を報告をしたいとき、歓送迎会の幹事をするとき、取引先との世間話などでもロジカルシンキングは活用できます。
ポイントは、以下の通りです。
- 発言の種類を伝える
- 結論から言う
- 仕事の目的を理解しておく
- ロジックツリーを使ってみる
ロジカルシンキングは日常生活でも活用できますが、仕事をする際だけでも意識的に使いたいものです。
新入社員教育を行うとき
新入社員にロジカルシンキングを身につけてもらうことは、問題解決能力や分析力、コミュニケーション能力の向上が期待できるので、有効な活用例といえます。
新入社員には、以下のような研修の目的やゴールを伝えておくとよいでしょう。
- 指示や情報を理解できるようになる
- 相手に分かりやすく筋道の通った伝え方ができるようになる
- 自分の意見、結論を導く力が鍛えられる
- 話の論点を明確にできるようになる など
新入社員にロジカルシンキングの基礎を教え、実践してもらうことは、新入社員がビジネス上の課題や問題に対して効果的なアプローチを取ることを可能にします。
ロジカルシンキングのトレーニング法
今までロジカルシンキングがどういったものか知らなかったという方でも、ロジカルシンキングを無意識的に行っている場合があります。
しかし、部下に指導する際や取引先でのプレゼンなどで、意識的にロジカルシンキングを取り入れたい場面もあるのではないでしょうか。
そういったシーンでも効果的に活用できるようになるには、ロジカルシンキングを鍛えるトレーニングを行うことが有効です。
- セミナーに参加したり本を読んだりと自発的に学ぶ
- インプット・アウトプットの練習をする
- フェルミ推定
1.セミナーに参加したり本を読んだりと自発的に学ぶ
自社でロジカルシンキングを学ぶ機会がない方は、社外のセミナーに参加したり本を参考にしたりするのもひとつの手です。
たとえば、以下のようなセミナー検索サイトが参考になります。
また、本に関しては入門編から上級者向けの内容まで、さまざまな本が販売されています。
何を選んだらよいか分からないという方には、演習問題が載っている本を選び、例題を解いたり基本を学んだりするのがおすすめです。
以下の記事では、ロジカルシンキングを活用するときにおすすめの本を紹介しています。ぜひ参考にしてみてください。
関連記事:ロジカル・シンキングとは?必要性や鍛え方を簡単に解説! | 識学総研
2.インプット・アウトプットの練習をする
ビジネスにおいてのインプットとは、知識や情報を得たり記憶したりして自分に取り入れることです。
また、アウトプットとは、インプットしたことを書く・打つ・話す・人に教えるなどの行動全てを指します。
樺沢紫苑「学びを結果に変えるアウトプット大全」によると、3:7がインプットとアウトプットの黄金比だといいます。
ロジカルシンキングを構成している「情報の収集」は言い換えるとインプット、「情報の発信」は言い換えるとアウトプットです。
インプットした情報を整理し、アウトプットする。
インプットとアウトプットを練習して繰り返すことにより、ロジカルシンキングが鍛えられ、身につきます。
参考:樺沢紫苑「学びを結果に変えるアウトプット大全」(2018年)
3.フェルミ推定
フェルミ推定とは、実際には把握したり、計算したりするのが難しい問題を論理的に推論することで短時間で概算することです。
実際に問題を解くことで鍛えられます。
フェルミ推定を採用面接や就職試験で取り入れている企業もあり、分析力や頭のやわらかさなどを問われます。
以下は、フェルミ推定の有名な問題です。
- 日本には電柱は何本あるか?
- アメリカのシカゴには何人の調律師がいるか?
以上の問題を解くためには、4つのステップを踏みます。
このステップは、問題解決のための一般的な手順でもあります。
- 解答に必要な要素や目的を確認する
- 要素を分解する
- 分解した要素に自分が把握しているデータを当てはめる
- 妥当かどうか、現実的か、常識的に考える
インターネット上には紹介した問題の解答方法や解答、他のフェルミ推定の例題が多数あります。
興味のある方はぜひ調べてみてください。
本記事のまとめ
ロジカルシンキングは、物事を論理的に考えることであり、問題解決能力や分析力の向上など多くのメリットがあります。
しかし、感情や直感などを無視したり、ロジカルシンキングという手法に執着してしまう可能性があるというデメリットも忘れてはいけません。
手法のひとつとしてロジカルシンキングを活用するためには、自ら学んだりやフェルミ推定の問題を解くなどの方法で鍛えることがおすすめです。