経営者として会社を動かしている方の中には、組織マネジメントをどのように実務に落とし込むべきか、悩んでいる方もいるのではないでしょうか。
組織マネジメントは、自社の課題を明確にし、水面下にあった問題を解決しながら経営を向上させる管理方法です。
うまく活用できれば、業績の回復や生産性の向上への効果が期待できます。
本記事では、組織マネジメントによって期待できる経営効果とともに、組織マネジメントの成功事例を紹介します。
企業の運営方法や経営に関する悩みも解決に役立つ内容のため、ぜひ参考にしてください。
目次
組織マネジメントとは?
経済資産となるヒト・モノ・カネ・情報を管理し、運営の円滑化を目指す仕組みが組織マネジメントです。
ここからは、多くの企業が取り入れている理由、導入の目的、さらに混同されやすいリーダーシップとの違いを解説します。
- 組織マネジメントが必要とされる理由
- 組織マネジメントを導入する目的
- 組織マネジメントとリーダーシップの違い
関連記事:マネジメントの知識とは?管理職なら知っておきたいマネジメントの知識総まとめ
組織マネジメントが必要とされる理由
組織マネジメントが必要な理由として、組織全体の生産性向上による他社との差別化の必要性が挙げられます。
なぜなら、近年は企業の競争が激しい傾向にあり、経営効果を最大限に引き上げ、他社との差別化を図りながら優位に立つことが重要だからです。
しかし、あらゆる運営手法を試しても期待するほど業績が伸びず、悩んでいる企業も少なくありません。
これまで培ってきたノウハウや技術はすぐ市場全体に普及し、類似商品や類似サービスが生まれているのが実態です。
市場競争を勝ち抜くためには、組織マネジメントの考え方を取り入れ、自社のパフォーマンスを高める施策を打ち出す必要があります。
関連記事:漫画「宇宙兄弟」に学ぶ現代社会の組織マネジメント術を徹底解説!
組織マネジメントを導入する目的
企業を成長させ経営状況を好転させるためには、社員一人ひとりの能力を引き出す経営者の努力と工夫が必要です。
具体的には、個性やスキルを活かすために人材管理を徹底しましょう。
個人に焦点を当てることで、業績アップにつながる意見やアイデアを得られるかもしれません。
また、組織マネジメントによって働く環境が整えば、社員のモチベーションが高まります。
組織としての目標達成に向けた働きかけとして、組織マネジメントは重要な意味を持つといえます。
組織マネジメントとリーダーシップの違い
組織マネジメントと似た言葉としてリーダーシップがあります。
両者は一見似ているように感じますが、組織マネジメントは管理する「行為」であり、リーダーシップは人材をまとめて組織を引っ張る「役割」であると区別しましょう。
組織マネジメントは、チームとして企業の目標を達成する方法を考えます。
一方のリーダーシップとは、目標を達成するために組織のメンバーを正しく導く役割を担います。
組織マネジメントとリーダーシップに求められるスキルはそれぞれ異なるため、適した人材を選出し、推進する体制構築が大切です。
関連記事:リーダーシップとマネジメントの違いとは?必要なスキルや習得方法を解説
組織マネジメントの導入で期待できる3つの効果
組織マネジメントを行なう主なメリットを紹介します。
以下3つのポイントを参考に、組織マネジメントを取り入れた後の姿をイメージしてみてください。
- 生産性の向上
- 管理職の負担軽減
- 人材育成力の向上
生産性の向上
チーム力を高めて生産性をアップさせるためには、組織マネジメントの考えをもとに、業務の円滑化を目指してみましょう。
具体的には、現在の組織体制においてパフォーマンスが十分に発揮できているのか、各部署の責任者にヒアリングの予定を設けます。
すると、ヒアリングに向けて部署の現状を把握するために、各責任者が部署内のメンバーと情報のすり合わせを実施するようになります。
メンバー個人の能力と組織全体のパフォーマンスの2つの情報が集まるため、組織として生産性を高める余地がないか、よりよくするための人材配置や採用が必要かなど、具体性のある行動が可能です。
関連記事:生産性向上の成功事例集5選|必要性と具体的な施策を解説
管理職の負担軽減
組織マネジメントを取り入れることで、管理職の負担軽減が期待できます。
理由として、人材が適材適所に配置できているのか、業務分担は適切なのかなど、見直しのきっかけを作れるためです。
部署ごとに必要なコストや人材、取り組むべき課題に対して求めるレベルの成果が挙げられているのかなど、細かく確認ができます。
個人で取り組むべき課題や業務が明確になれば、従来管理職が行っていた実務を、適切な人材に割り振ることもできるでしょう。
業務整理ができれば、社員のモチベーションアップにもつながり、タスク完遂のスピードも上がります。
組織マネジメントにより個人の業務負担が減ることで、管理職は自分が為すべき管理業務に集中できることも大きなメリットです。
人材育成力の向上
組織マネジメントでは、企業単位ではなくチーム単位で課題を見つけます。
小規模なチームごとに設定した目標や課題に取り組むため、より個人にフォーカスしたマネジメントが可能です。
それぞれの価値観や意向を尊重し、才能を引き出しながら業務を進められるのはメリットでしょう。
個人を尊重されることで社員は自分が活躍できる場を見つけやすくなり、モチベーションも上がります。
また、モチベーションは社員の離職率を下げる効果も期待できるため、人材マネジメントに力を入れたい企業はさっそく組織マネジメントを導入しましょう。
関連記事:人材育成に必要なマネジメントの方法とは|必須スキルも徹底解説
組織マネジメントで抑えておきたいフレームワーク「7S」
組織マネジメントには、基礎となるさまざまなフレームワークがあります。
その中から、もっとも普及しているマッキンゼー・アンド・カンパニー社が提唱した「7S」を紹介します。
- 戦略(Strategy)
- 組織(Structure)
- システム(System)
- スキル(Skill)
- 人材(Staff)
- 価値観(Shared value)
- スタイル(Style)
関連記事:マッキンゼーの7Sをわかりやすく解説
戦略(Strategy)
「戦略」では、ライバル企業に打ち勝つための、現実的かつ成長を見据えた経営戦略が大切です。
ただ目標を設定するのではなく、目標達成に向けた具体策への落とし込みが成功の鍵を握ります。
組織マネジメントの中でも「戦略」は方向性を決める上でもっとも重要な要素です。
戦略を考える際は、経営理念から逸れていないか、企業の成果にコミットする目標であるかを確認し、誰が見てもわかる形で表現しましょう。
組織(Structure)
「組織」では、チームがどのように機能しているのかを把握します。
人間関係に問題がないか、社員同士のコミュニケーションは十分に取れているかなどを確認してください。
効果的なチームワークを形成するためにも、良好な人間関係の構築は重要です。
一緒に仕事をする仲間との信頼関係がなければ、個人のパフォーマンスも低下し、組織としての成果は上がりません。
ただ人間関係をよくするというのではなく、個々の役割分担は適切か、タスクの進捗に問題はないかなど、機能的な組織構築に向けた検討が大切です。
システム(System)
「システム」は、組織における最大のリソース「人」を最大限に活かすための制度を指します。
たとえば、業務を可視化して効率性を高める効果が期待できる業務マニュアルの作成や、部署間の連携を容易にするイントラネットの整備などが挙げられます。
システムがきちんと機能していなければ、業務そのものが滞ったり、組織の目標から外れてしまったりするかもしれません。
社員が無駄なく効率的に働けるよう、そして経営成果を出せるよう、制度はきちんと整えましょう。
スキル(Skill)
「スキル」は、個々の能力や自社の営業力やマーケティング力、技術力によって競合他社との優位性を示す意味です。
医療関係や工業関係など、専門性が問われる組織において、人材育成に力を入れて個人のスキルアップをサポートすることは組織全体の成長につながります。
また、同じサービスを取り扱っていても、スキルが高ければカスタマーから選ばれる理由になるでしょう。
業界の中で優位に立つためには、社員一人ひとりが持っているスキルを把握し、自社の強みとして活かしてもらえる環境づくりが重要です。
人材(Staff)
「人材」とは、社員の得意不得意を把握し、能力を最大限に発揮してもらうための本質理解を指します。
定期的に個別ミーティングや面談などを設けて、社員の持つ価値観や特性の変化を把握しましょう。
社員のマインドという点から見ても、担当者としてではなく個人として尊重されていると実感することでモチベーションが高まります。
価値観(Shared value)
「価値観」とは、経営理念やビジョンに位置するものです。
社員一人ひとりが成果に結びつく行動をするためにも、時間をかけながら企業としての価値観を定着させていきましょう。
わかりやすい例として、朝礼での読み上げがあります。
繰り返し声に出して読むことで記憶として定着するため、効果的な方法の一つです。
ただし、価値観が変わってしまうと社員は何を目標に業務を進めればよいのかわからなくなります。
長期的かつ普遍的な価値観となる経営理念を固めるようにしてください。
スタイル(Style)
「スタイル」は、仕事のスタイルや経営スタイルなどの企業風土の総称です。
創業から年数を積み重ねて徐々に培われていくため、働きやすさに直結します。
悪い例でいえば、残業するのは当たり前、休日出勤は当たり前など、いわゆるブラック企業といわれるものもスタイルの一つです。
意欲的に仕事をしてもらうためには、独断や偏見ではなく、社員の意見も聞きながら自分たちに合ったスタイルを構築する風通しの良さが求められます。
組織マネジメントで成功した事例
組織マネジメントが功を奏した企業の事例を3つ紹介します。
同じような経営の悩みを抱えている方や、マネジメント方法に迷っている方はぜひ参考にしてください。
- 組織全体でフラットな関係を築いた「Google」
- 中途採用の定着にチャレンジした「日本オラクル株式会社」
- 無駄を省き職能別組織を構築した「パナソニック」
組織全体でフラットな関係を築いた「Google」
世界のトップ企業であるGoogleは、役職に関係なくフラットな関係を築いています。
社員同士の信頼性を高めることで、実現が難しいと考えられるアイデアもリスクを恐れることなくポジティブに取り組んできました。
特に、組織において問題となる人間関係の障壁を取り除くために、均等な発言の機会を設けたり、相手を受け入れたりするための傾聴スキルを取り入れることなども実施。
信頼性を重視した組織マネジメントにより、Googleはさまざまなアイデアを実現できる企業として、成果を収めています。
中途採用の定着化にチャレンジした「日本オラクル株式会社」
日本オラクル株式会社は、クラウドサービスやソフトウェア製品を提供している有名企業です。
採用では即戦力になる中途採用を積極的に行ってきましたが、期待する成果を得られずにいました。
短期間で離職してしまう社員が一定数いるのが課題となっていたため、働きがいを高める専門チーム「社員エンゲージメント室」を立ち上げ、中途入職者に向けた5週間の研修プログラムを導入。
入職後1ヶ月を手厚くフォローすることで、中途採用の定着化に成功しています。
さらに、チーム営業から1対1営業に切り替えるなど就業体制も変更し、社員が働きやすい環境を整えたことで業績を大きく伸ばしています。
無駄を省き職能別組織を構築した「パナソニック」
パナソニックは、市場のニーズに合わせて事業部制組織と機能別組織を組み替えてきました。
機能別組織は効率的に生産できるというメリットがありますが、縦割りの組織になることで情報が広まるまでに時間がかかるのがデメリットです。
そこで、スピーディな対応を実現するために事業部制に戻し、業績を回復したのです。
また、従来の枠組みにとらわれず、柔軟な対応を可能にしている点も特徴です。
たとえば、マネジメントを目指したい社員の要望を聞き入れ、階級を上げて活躍を促したり、スペシャリストとして研究の道を用意したりと、希望する職能に合わせた対応により、従業員満足度も高い状態を維持しています。
まとめ
組織のマネジメントは、明確な目的を持って実行することが大切です。
業績を伸ばしたいのか、社員の離職率を下げたいのか、業務の円滑化を目指したいのかによって、マネジメント方法は異なります。
まずは現在の課題を明確にし、組織マネジメントの必要性を確認しましょう。
フレームワークの「7S」を参考に、現状を当てはめていけば優先的に解決すべき課題が見えてくるはずです。
まずは、7Sの土台である戦略から見直してみてはいかがでしょうか。