『とにかく仕組み化』。
「人の上に立ち続けるための思考法」という副題の通り、本書は経営者・管理職に向けられた内容の本だと解釈して問題はないでしょう。
本書では少し、メッセージ性の強い言葉が並んでいます。
- 「あなたがいないと困るという言葉は麻薬である。」
- 「歯車として機能せよ」
- 「マニュアルをなめるな」
…こんな少し大胆な言葉を聞くと、メンバーである一般社員はなおさらのこと。管理職であっても窮屈な言葉だなと感じられてしまうかもしれません。
ですが、実際に現場で働いてみると、そうではありません。
むしろ窮屈さが消えて、目の前の仕事に集中できる状態が続きます。
…なぜ?本当?
そんな声も聞こえてきそうです。
今回は『とにかく仕組み化』の著者:安藤広大が代表取締役を務める「識学」という会社で働く、いち中途社員が本書の要約を記します。
また、実際に「仕組化の現場」で働いてみてどうなのか?を解説いたします。
目次
とにかく仕組み化の要約
とにかく仕組み化は下記のような目次で構成されています。
- なぜとにかく仕組み化なのか
- 正しく線を引く
- 本当の意味での怖い人
- 負けを認められること
- 神の見えざる手
- より大きなことを成す
- 仕組化のない別世界
本記事では、上記の1~4番までの要約・解説を行います。
なぜとにかく仕組み化なのか
そもそもなぜ仕組化は必要なのでしょうか?
- 個人を責めるのではなく、仕組みを責めよう
- 属人化は危険だ
- 仕組み化のメスを入れるのは上の役割である
本章をまとめると上記のようになります。
例えば部下が目標に対して未達になった際に「ついつい」頑張れ!で終わらせてしまうことはないでしょうか。
本質的には「頑張れ」で目標が達成されているのであれば、きっと目標は既に到達されているでしょう。
厳しい言い方をすると「ラク」だから「頑張れ」で終わらせてしまうのです。
そこに広がっているのは、目標を達成するための権限も責任もない世界です。
「目標を達成できない原因を因数分解して、ルールの見直しをする。」
本来の上司の役割を怠ってしまえば、属人化の世界はどんどんと広がり、エース社員がいなくなればチームが崩壊する、そんな未来が訪れてしまうかもしれません。
そうならないために、リーダーは覚悟を決めて仕組み化に取り組むべきである。本章ではそうしたリーダーとしての心構えが記載されています。
正しく線を引く
正しく線を引くとは、「よい」「悪い」を上司の権限のもと判定するということです。
例えば、職場を振り返ってみて下記のようなことはありませんか?
- 会社に長く勤めている「お局さん」だけに適用されるルールがある。
- ルールにはないが、企画書はベテラン社員の目を通してからという暗黙のルールがある
明文化されないルールが存在する状態は、正しく線が引けていないことを示します。
そして、正しく線を引けていなければ属人化の世界を助長することにもなります。
ルールを作ると、既得権益を握る社員の反発はあるかもしれません。
しかし、あなたが上司である限り、気にする必要はありません。自身の役割に基づき、ルール設定をすればいい。ただそれだけのことなのです。
また本章ではこのほか「部下に任せる」ことについても記載されています。
「部下に任せる」とは、ただ単に部下に仕事を任せればいいワケではありません。
責任と権限をセットにして部下に渡すことで、部下は成長していきます。
人は勝手にリーダーになるのではなく、責任感のなかで正しく成長をしていくのです。
本当の意味での怖い人
少し前までは「ブラック企業」がしきりにメディアに取り上げられていました。
ところが一転。現在では「成長できないから「超ホワイト企業」を退社する」という事例も増加しています。
ここで問題になるのが、恐怖には「よい恐怖と悪い恐怖」があるということです。
<悪い恐怖>
パワハラ | 理不尽な対応など、評価が不明で属人的な点が垣間見える
コミュニケーションを取ること自体に恐怖を抱いてしまう。
<よい恐怖>
仕事で求められる基準が高く、中途半端な仕事では認めてもらえない。
このままでは会社に残れないのではないかと感じてしまう。
ユルい会社がホワイト企業なのではありません。間違ったやさしさは「成長ができないとまずい」と考える若者にいつかは見限られます。
だからこそ、少し上の目標を常に目指し続けられるよう、成長できるような目標設定が必要なのです。
- 適度な緊張感がある
- 目標を達成すれば評価される仕組みが整っている
- 常に少し上の目標がある
このような状態になり、初めて社員は成長し続けることができます。
負けを認められること
「負けを認められること」は成長につながります。
誰かと比較するのが嫌、比較すると社内が殺伐とする、という意見もあるかもしれません。
しかし誰しも、心の中では比較をして物事を考えています。
例えば、ラーメン屋に行った時のことを想像してみてください。
<ラーメン屋の例>
昨日食べたラーメンは、1週間前に食べたラーメンよりは味がよかったが、値段が高すぎた。
無意識のうちに、私たちは比較をして味を判断しています。
そしてこの傾向は職場でも変わりません。
すなわち、比較をしないというメッセージを打ち出す上司の多くは「表向きだけ比較はしないというメッセージを出しておき、心の中で比較して考えている」という不健全な状態に陥っていることを示しているのです。
競争がある職場は不健全ではありません。
むしろ、負けを知り、次にどうすればいいのか必死に考えるため、企業全体として成長に向かっていける組織の構築に役立つのです。
ただしこのためには評価を明言化すること、モチベーションのみで管理しないことなどいくつか注意点があります。
本章では、注意点と解決方法を解説しています。
識学のマーケティング業務も「とにかく仕組み化」されている
『とにかく仕組み化』では、誰しもが代替可能な存在になることを推奨しています。
これは、個人の存在意義を消すようにみえますが、結果としては個人の成長にもつながる仕組みです。
実際、マーケティング業務には下記のような業務がありますが、どの業務も基本的にはマニュアル化されており、属人性が排除されています。
- インサイドセールス業務
- 広告業務
- オウンドメディア業務
- 広報業務
- セミナー業務 など。
マニュアル化されているため、会社の方向性によってはもちろん配置換えも起こります。もちろん、誰もが指示に従います。
なぜなら他の業務の「歯車」になることで、自身の有益性が高まることを知っているからです。
『とにかく仕組化』にも記載されているように、専任の担当者しかいなければ組織が危機に瀕することを従業員は理解しています。
個人ではなく組織としての有益性が高まることで、結果として自身の有益性も高まることを理解しているからこそ、頑張れるのです。
識学は感情を持つなとは言っていない
「識学」の教えは少し冷たいな…と感じられる点も多くあるかもしれません。
事実、著者自身も識学に転職したのは1年前、なんと冷たい会社なんだろうと誤解したことももちろんあります。
一方で、事実、識学は感情を持つなとはいってはいません。
誰しもロボットではありません。だからこそ感情はもっています。
ただ私たちは「モチベーション」を言い訳にすることはありません。そしてもちろん、それが上司に気にされることもないことに気づいています。
ただ事実に基づいて評価をされるため、感情を出す必要がない、という方が正しいかもしれません。
あわせて感情を評価しないからこそ、平等な評価になるということも理解しています。
あくまでも仕事では、走り切るまでは感情を出さない。ということだけなのです。
あくまでも仕事は仕事 | ロールを演じているだけ
- かけがえのない歯車になる
- 常に成長をし続ける
- モチベーションは気にされない
など、言葉だけを並べてみるとかなり冷たく感じられる識学ですが、あくまでも仕事は仕事です。
本書を引用するのであれば、下記のような感覚です。
会社は仕事をするコミュニティです。
ただし、コミュニティは1つとは限りません。
他にも、たくさんのコミュニティがあります。
引用『とにかく仕組化』より
私たち従業員自身、仕事は仕事と割り切っているから、常に目の前のことに集中ができます。
存在意義を仕事だけに求めない。
本書からは、そうした新しい視点からの学びも得られるのではないでしょうか。