仕事の生産性向上は、従業員の負担を軽減するだけでなく、企業の利益を増加させるためにも不可欠な要素です。
しかし「どのように生産性を向上させれば良いのか」と悩む管理職も多いのではないでしょうか。
本記事では営業生産性に関する以下の内容を解説します。
- 営業生産性とは
- 生産性が低下する原因
- 向上させる方法
- 成功事例
生産性向上のための具体的な手法や成功事例をもとに、自社の業績向上につなげてください。
目次
営業生産性とは?
営業生産性とは、労働時間内にかかった費用(インプット)に対して得られた売上成果(アウトプット)を測る指標です。
営業ROIとも呼ばれており、投資と成果のバランスを評価するために用いられます。
ここでは、営業生産性に関する以下の項目について解説します。
- 営業生産性の計算式
- 営業生産性の重要性
営業生産性の計算式
営業生産性は、売上成果(アウトプット)を費用(インプット)で割った割合です。
営業生産性 = 売上成果 ÷ 費用
具体例として、営業マン30名体制で年間売上が3億円、年間労働日数が240日(1日8時間労働)と仮定した場合の営業生産性は以下のとおりです。
売上:300,000,000円
総労働時間:57,600時間(30名 × 240日 × 8時間)
営業生産性:5,208円(300,000,000円 ÷ 57,600時間)
営業生産性の重要性
公益財団法人日本生産性本部の調査によると、日本の営業生産性は49.9ドル(5,006円)となっています。
これはOECD加盟38カ国中27位に位置し、ほかの国々に比べて低く、改善の余地があることを示しています。
これは課題であるとともに、ここを改善することでより企業が成長できることを示しています。
まずは営業生産性の数値を測定し、基準を上回っているかどうか、立ち位置の確認が重要です。
参考:日本生産性本部「労働生産性の国際比較2022」
営業生産性が低下してしまう4つの原因
営業生産性が低下する原因は以下の4点です。
自社のの業務に当てはまっていないかどうか、確認しましょう。
- 残業が常態化した働き方
- マネージャーの管理能力不足
- 商談の管理が不十分
- 売上目標の裏付け未設定
残業が常態化した働き方
「愛社精神」として残業を奨励し、給与設計を残業に依存させる企業は一定数存在しますが、無駄な業務時間延長は問題を引き起こす可能性があります。
なぜなら、従業員の健康やモチベーションの低下につながるからです。
また、給与支払増加によるコストの上昇とともに、企業の生産性低下が促進されてしまう点も懸念されます。
以上を踏まえ、無駄な業務時間の延長は避けるべきです。
従業員の健康とモチベーションの維持を考慮し、必要な業務を効率的に遂行することが重要です。
給与設計も単純に残業に依存する形ではなく、適正な報酬体系への見直しが求められます。
生産性向上と給与水準の両立を図れれば、営業担当者や企業全体の成果を最大化できるといえます。
マネージャーの管理能力不足
マネージャーの管理能力は生産性に大きな影響を与えます。
円滑なコミュニケーションが取れず信頼を得られないマネージャーは、営業担当者の生産性を低下させる大きな原因だといえるでしょう。
考えられる具体例は、以下のとおりです。
- 部下とのコミュニケーションが不十分
- 感情的になりがちで全体を見渡せない
- 部下の個性や特徴を考慮せず一方的な指示を出す
- 客観的な売上分析を怠り指示に裏付けがない
上記の問題は、売上や組織にトラブルをもたらす場合が多く、明らかになった時には改善が難しいケースがあります。
したがって、現場の雰囲気づくりや部門の分析、部下の指導を日頃から重視することが重要です。
また、営業業務では個別の能力や経験に頼る一方で、確実な成約を得るためのプロセス設計と共有が大切です。
関連記事:営業マンのコミュニケーション能力を向上するには?実際に有効だった5つの施策を解説
商談の管理が不十分
組織の規律と人間関係が良好であるにもかかわらず、売り上げの成長が芳しくない場合、データに基づいた分析や営業戦略の欠如が原因かもしれません。
人は仕事に集中して取り組んでいると、自身の主観に囚われて周囲が見えにくくなる傾向があります。
成果が上がらない場合には、必ず何らかの原因が存在するため、第三者からの指摘や客観的なデータ分析に基づいて、自身のアクションを振り返ることが重要です。
また、定期的な営業会議は、現状を報告し客観的な事実を把握することに有効です。
生産性が向上し根本的な解決につながるでしょう。
売上目標の裏付け未設定
売上目標を根拠のないものに設定してしまうと、市場や現場の状況を考慮せずに不可能な数値を追い求めることになりかねません。
また、無理な状況が続けば、従業員のモチベーションは低下し、目標達成に向けた環境が形成できなくなってしまいます。
したがって、適切な根拠に基づいた現実的な売上目標を設定することが必須です。
それが従業員が高いモチベーションを保ちながら目標に向かうための裏付けとなります。
参考記事:マネジメントで目標設定が重要な理由とは?おすすめの「目標設定フレームワーク」も紹介
営業生産性を向上させる4つの方法
営業生産性を向上させるためには、以下4つのポイントが有効です。
- 目標とマイルストーンを正しく設定する
- 根拠のあるデータに基づいた売上予測を行なう
- 成果に見合った報酬体系を整備する
- 営業支援ツールを利用する
目標とマイルストーンを正しく設定する
営業計画の段階から、売上目標と目標を達成するためのマイルストーンが重要です。
実際に売上目標を立てるためには、これまでの売上実績や市場状況、営業担当者の成熟度などを考慮し、具体的かつ実現可能な目標を設定します。
目標を設定した後は、目標達成に向けての中間目標の設定も効果的です。
目標やマイルストーンの設定により、達成への道筋が明確化され、営業担当者のモチベーションが高まり、生産性向上が期待できます。
関連記事:生産性と結果につながる「チームマネジメント」とは?実践方法も解説
根拠のあるデータに基づいた売上予測を行なう
目標設定後には、設定した期間内での売上予測(フォーキャスティング)を行なうことが重要です。
これはデータに基づいて行うことが重要であり、売上予測の精度を高めるために過去の実績を正確にデータとして蓄積する必要があります。
データの蓄積により、目標とのギャップを正確に把握し、必要な行動を逆算できます。
そのため、営業活動を最適化するための手がかりとなるでしょう。
成果に見合った報酬体系を整備する
労働時間に基づいているだけの報酬制度では、売上を伸ばす意欲が低下してしまう場合もあるでしょう。
最悪の場合、残業が美徳とされたり、残業代稼ぎが発生したりする可能性もあります。
そこで、営業個人の成果に見合った報酬制度を整えることが重要です。
営業担当のモチベーションが向上し、売上の増加につながります。
結果として、営業活動の生産性も向上が見込まれます。
営業支援ツールを利用する
営業活動をサポートするためには、営業支援ツール(SFA)や顧客関係管理ツール(CRM)などの専用ツール活用が重要です。
SFAやCRMの普及により、営業活動はデジタルデータで保持・管理が一般的になってきました。
ツールで収集したデータを効率的に活用することで、ミスなく成果につなげられます。
専用の営業支援ツールの活用は優先度を上げて、積極的に検討すべき重要な取り組みと言えます。
関連記事:CRMとは?いま必要な理由とSFAとの違い、メリットデメリットを解説
営業生産性を向上させた成功事例2つ
最後に、営業生産性を向上させた成功事例を2つ紹介します。
- ニチバン株式会社
- NECソリューションイノベータ
成功した他社の事例から、自社に活かせるポイントを見つけてください。
ニチバン株式会社
ニチバン株式会社は、知識や知見の管理課題を解決するためにITツールを導入しています。
ITツールの導入により、情報の一元化とアクセスの容易化が実現されています。
結果としてナレッジの共有化と効率化が行われ、新入社員の顧客対応がスムーズになり、情報管理に関するストレスも軽減されました。
このように、ニチバン株式会社はITツールの活用により、ナレッジの一元化と効率化を実現し、顧客対応の品質向上とストレス軽減に成功した企業と言えます。
参考:ニチバン株式会社
NECソリューションイノベータ
NECソリューションイノベータでは、「営業1人あたりの生産性向上」を目指して営業DXを推進しています。
しかし、パンデミックの影響により展示会やセミナーが中止され、リード獲得数が例年よりも70%も減少しました。
そこでWebサイトやウェビナーを活用して顧客接点を100%デジタル化した結果、新たなリード獲得数が前年比で1.2倍に回復。
さらに、見込み顧客の99.7%はデジタル接点であり、リード獲得コストは対面営業が主体だった頃よりも70%も削減できています。
まとめ
営業生産性の改善は売上や成果の拡大を実現させるために重要です。
しかし、日本の営業現場では非効率な書類作成や案件管理が生産性を低下させています。
改善のためには営業戦略を見直し、個々の担当者が最高のパフォーマンスを発揮できる環境を整える必要があります。
具体的には、新しいツールの導入や業務の自動化を検討しましょう。
課題を分析し、適切な対策を講じることで効果的な改善が可能となるでしょう。