離職率と生産性、一見すると直接的な関係はないように感じるかもしれませんが、どちらも企業の成長・発展にとって非常に重要な要素です。
離職率が高いということは、従業員が短期間で辞めてしまうことを表しています。
企業の業績に悪影響を及ぼすことがあるため、低く抑えるべきポイントです。
一方で、生産性が高い企業は競争力があり、市場で成功を収めることができるため、より強化したいポイントでしょう。
この記事では、離職率と生産性の関係について説明し、両者を両立できる施策について解説します。
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目次
離職率と生産性の関係性
まずは、離職率が生産性に与える影響と、逆に生産性の向上が離職率に与える影響についてそれぞれ解説します。
離職率が生産性に与える影響
離職率が高い企業では、新たな従業員を補充するための採用や教育のために、追加的な時間とコストがかかってしまいます。
これは採用を担当する人事部門だけでなく、新入社員を受け入れる現場にとっても負担となるため、企業全体の業務効率が低下し、生産性の悪化へとつながるのです。
また、継続的な人材の流出は、企業の中に経験やノウハウが蓄積することの妨げになってしまい、長期的にみても業績低下につながるリスクがあります。
さらに、離職率の高さは、残留する従業員の負担が増加し、ストレスが高まるこもが考えられます。
次々と同僚が辞めていく状況は、残った従業員にとって「この会社に居て大丈夫なのかな…?」という不安を呼び起こす原因にもなり、離職を検討する従業員がさらに増えるという負のループにもつながるでしょう。
以上により、モチベーションの低下や健康問題が発生し、生産性にも悪影響が及ぶのです。
従業員が次々と入れ替わる状況だと、新たな従業員の名前を覚えるのにも一苦労となり、組織内のコミュニケーションを正常に機能させるのも厳しくなります。
従業員間の情報共有や協力が難しくなることで、業務の効率性が低下することで、生産性も低下の一途をたどるのです。
生産性の向上が離職率に与える影響
生産性が高い企業では、従業員一人あたりの生産効率が良く、利益が上がることが期待できます。
これにより給与や待遇がより良くなれば、従業員の満足度も向上するでしょう。
また、生産性が高い企業は競争力があり、効率的な業務プロセスや働き方が確立されている傾向にあります。
従業員一人ひとりが無駄に労力をかける必要がなく“省エネ”で仕事できる環境が整っているため、従業員のストレスが軽減され、離職率も低く抑えられるのです。
また、高い生産性を持つ企業は、成長やイノベーションを期待できるため、従業員がやりがいを感じることができます。これも離職率低下に寄与する要因の一つです。
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離職率と生産性を両立するための6つの施策
前章で解説したように、離職率と生産性は密接に関連しており、企業にとって両者を同時に改善することが重要です。
両立のための具体策として、例えば以下の6つが挙げられます。
- フレックスタイム制度の導入
- リモートワークの導入
- 従業員のメンタルヘルス支援
- 従業員のキャリア形成を支援
- 社内コミュニケーションの促進
- 労働環境の改善
順番にご説明しましょう。
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1.フレックスタイム制度の導入
フレックスタイム制度を導入することで、従業員は自分のライフスタイルや家庭の事情に合わせて働く時間を選択できます。
これにより、従業員がプライベートな時間を確保しやすくなり、ワークライフバランスの向上が期待できるでしょう。
フレックスタイム制度は、ピーク時の通勤混雑を避けることができ、通勤ストレスの軽減にも寄与します。
また、従業員が働く時間帯を柔軟に選択できることで、いわゆる“夜型”や“早朝型”など、個々人の体質に合わせた最も生産的な時間帯に働くことが可能です。
このように、フレックスタイム制度の導入は従業員の満足度やロイヤリティを高める効果があり、結果的に離職率の低下につながるでしょう。
2.リモートワークの導入
リモートワークの導入により、従業員は自宅や好みの場所で働くことができます。
これにより、通勤に費やされる時間や費用、心身のエネルギーの消耗や疲労の蓄積を最小限に抑え、ワークライフバランスを向上させることができます。
また、リモートワークという柔軟な働き方が可能となることで、従業員の満足度が高まることに加え、リモートワークを取り入れていない職場に比べて先進的な試みを取り入れているという面で優位性が生まれます。
これらのことから、離職率を低く抑える効果を期待できるのです。
3.従業員のメンタルヘルス支援
従業員のメンタルヘルスをサポートする取り組みは、ストレスや過労の軽減に役立ちます。
具体的な支援策としては、カウンセリングやストレスチェックの実施、リラクゼーションスペースの設置、メンタルヘルスに関する研修などが挙げられます。
これらの取り組みにより、従業員の心身の健康を維持し、生産性を向上させるとともに、ストレスフルな環境に不満を持つ従業員の離職を防ぐことができます。
また、離職を望んでいないものの精神的な疾病を発症して勤務できなくなる従業員が出ることを防止できるでしょう。
4.従業員のキャリア形成支援
企業が従業員のキャリア形成を支援することで、従業員にとっては目の前の仕事をこなすだけでなく、長期的な視点に立った自己成長やキャリアアップを視野に入れられるようになります。
これにより、従業員が会社に長期でコミットする意欲が高まり、離職率の低下につながると同時に、生産性の向上にもつながるのです。
スキルアップ支援の具体策としては、「外部研修の費用補助」や「社内研修の開催」、「資格取得支援」、「社内のキャリアパス制度の整備」などが効果的でしょう。
5.社内コミュニケーションの促進
社内コミュニケーションを促進することで、従業員同士の協力や情報共有がスムーズになり、チームワークが向上します。
具体的な取り組みとしては、定期的な社内イベントや食事会の開催、オープンなオフィスレイアウトの採用、社内SNSの活用などがおすすめです。
これらの取り組みにより、組織内のコミュニケーションが活発化すれば業務効率が向上し、生産性にプラスの影響が与えられます。
例えば、部門間の対立やタコツボ化など、組織としての質の低下につながる現象を防ぐのに役立つでしょう。
また、良好なコミュニケーションは従業員の満足度を向上させるため、離職率の低下にもつながります。
6.労働環境の改善
労働環境の改善は、従業員のストレス軽減や生産性向上に大きく寄与します。
具体的な取り組みとしては、「オフィスのレイアウト改善」、「適切な照明や換気」、「感染症対策を意識した消毒液の用意」、「コーヒーマシン・ウォーターサーバーなどの設置」「休憩スペースの設置」などが効果的です。
これにより、従業員が快適に働ける環境が整い、集中力や生産性が向上します。
また、コミュニケーションの促進を図るために、オープンなオフィスデザインを採用したり、カジュアルなコミュニケーションスペースを設置するのも良いでしょう。
これにより、従業員同士の情報共有や協力がスムーズになってチームワークが向上し、生産性にプラスの影響を与えます。
さらに、福利厚生の充実も労働環境の改善に役立ちます。
例えば、退職金制度の拡充、休暇制度の見直し、従業員向けの割引制度などが有用です。
従業員がスポーツジムやマッサージなどを利用できる福利厚生サービスに加入するのもよいでしょう。
これらの福利厚生は、従業員の安心感や満足度を高め、働きやすい環境を提供します。
その結果、従業員の心身のストレスが軽減されて生産性が高まり、離職率の低下にも貢献するはずです。
まとめ
離職率と生産性は密接に関連しており、企業の持続的な成長には、その2つの両立が不可欠です。
働き方改革、従業員のキャリア形成の支援、労働環境の改善などといった施策を実施することで、生産性向上と離職率低下を両立させることが可能となります。
従業員のモチベーションや満足度を向上させ、働きやすい環境を整えるための環境整備は、企業としての競争力を持ち、他社に対して優位性を持つことにもつながる要素です。
積極的に投資する価値がある分野であるといえるでしょう。