人事部にとって離職率の数字はとても大切です。離職率が高いと採用活動に悪影響を及ぼす可能性があります。
では、具体的にどれくらいから「離職率が高い」と言えるのでしょうか。
本記事では、離職率の平均値を紹介していきます。
それに伴い、離職率を改善させる方法と紹介するので、ぜひ最後まで読んでみてください。
関連記事:離職率とは?計算方法や平均値、離職率の高い企業、低い企業の特徴を解説!
目次
日本企業の平均離職率はどれくらい?
厚生労働省の「令和3年雇用動向調査」によると、日本の平均離職率は13.9%でした。
また、男性の場合は12.8%、女性の場合は15.3%ということで、女性の方が離職率が高い傾向にあるようです。
業界ごとの平均離職率
同調査によると、業界ごとの平均離職率は以下の通りとなっています。
産業 | 平均離職率 |
宿泊業・飲食サービス業 | 25.6% |
生活関連サービス業・娯楽業 | 22.3% |
サービス業 | 18.7% |
教育・学習支援業 | 15.4% |
医療・福祉 | 13.5% |
卸売業・小売業 | 12.3% |
学術研究・専門技術サービス業 | 11.9% |
運輸業・郵便業 | 11.5% |
不動産業・物品賃貸業 | 11.4% |
鉱業・採掘業・砂利採取業 | 10.0% |
製造業 | 9.7% |
建設業 | 9.3% |
金融業・保険業 | 9.3% |
情報通信業 | 9.1% |
電気・ガス・熱供給・水道業 | 8.7% |
複合サービス事業 | 8.7% |
以上のように、BtoCの業界では離職率が高くなっています。
新卒採用の3年以内の平均離職率
厚生労働省の「新規学卒就職者の離職状況(平成31年3月卒業者)」によると、大卒の新規就職者の3年以内離職率は31.5%とのことでした。
また、高卒の場合は35.9%、短大・専門卒の場合は41.9%、中卒の場合は57.8%です。
なお、事業所規模が小さければ小さいほど、3年以内離職率が増大する傾向があります。
離職率の計算方法
離職率の計算方法は、法律で明確に定義されているわけでなく、各機関によって算出方法が異なります。
まず厚生労働省の「雇用動向調査」では、1年間の離職者数を、1月1日の常用労働者数で割ることで離職率を算出しています。
例えば1年間の離職者数が100人で、1月1日時点の常用労働者数が1万人だとすると「100人 ÷ 1万人 × 100(%)」で1%です。
また、企業が採用している計算方法は、図式自体は厚生労働省と同じで、利用している数字が異なります。
例えば3年以内離職率を出したい場合は、3年間の離職者数をある時点での常用労働者数で割ります。
離職率の調べ方4選
自分が就職しようとしている企業や、競合他社の離職率の調べ方は、以下の4つが考えられます。
- インターネットで調べる
- 就職四季報で確認する
- ハローワークに確認する
- 採用担当者にメールする
それぞれ解説していきます。
調べ方①:インターネットで調べる
まずはインターネットで調べてみるのがいいでしょう。
特に、まだ設立して間もないスタートアップや、規模の小さい中小企業は、Webを主な活動場としていることが多いです。
そのため、これらの企業の離職率を調べる際はインターネットを活用するのがいいでしょう。
ただし、離職率はネガティブな数字なので、公表していない企業も多いのが実態です。
調べ方②:就職四季報で確認する
名の知れた大企業であれば、まず間違いなく就職四季報に企業情報が掲載されています。
就職四季報は、東洋経済新聞社が毎年発行している書籍です。就活生のために、有名企業の情報がまとめられています。
そして就職四季報で紹介されている企業の大半で、3年後離職率が公表されているのです。
なお、有名企業が名を連ねているということもあり、平均離職率に比べると、全体的に数字は小さいです。
また、3年後離職率以外にも、残業時間(月平均)、有給休暇取得日数も確認できます。
この3つの数字を見るだけで、職場環境がある程度推察可能です。
調べ方③:ハローワークに確認する
企業が離職者を出した場合は、ハローワークとの手続きが必要になります。
そのため、ハローワークは、各企業の離職率を算出できるはずです。
ハローワークで聞いてみるのも、離職率を調べる際に有効です。
特にハローワークは公的機関であるため、忖度なしに各企業の離職率を教えてくれるかもしれません。
調べ方④:採用担当者にメールする
もし上記の3つの方法で調べても離職率が出てこない場合は、企業の採用担当者に直接メールしてしまいましょう。
大抵の場合、採用担当者や人事部のメールアドレスは、企業説明会などで公開されます。
もしメールアドレスがわからない場合は、企業のHPのお問い合わせ欄から直接質問しましょう。
離職率は非常にシンプルな計算方法で算出できるため、まず間違いなく教えてもらえます。
仮に、離職率を教えてもらえなかったり、うやむやにされたりする場合は、その企業をあまり信用しない方がいいかもしれません。
離職率が高い企業の特徴
離職率が高い企業の特徴は以下の5つです。
- 労働環境が悪い
- 独立する人が多い
- 人材の流動性が高い
- 業務内容が刺激的でない
- 働き方に柔軟性がない
それぞれ詳しく解説していきます。
関連記事:退職理由ランキングTOP5!本音と建前はどう違う?社員の離職防止策も解説!
特徴①:労働環境が悪い
離職率が高い企業は、労働環境が悪いケースが多いです。
具体的には、以下のような労働環境となっています。
- 労働時間が長い
- 残業代が出ない
- 給与が低い
- 単純作業が多い
- 裁量権を持って仕事できない
- 福利厚生が充実していない
- 有給を取得できない
特に、労働時間が長いにもかかわらず残業代が発生しない企業は、まさにブラック企業です。
労働基準法で残業代の支給が定められているため、サービス残業を事実上放置している企業は、違法行為をしていることになります。
そして当然、従業員はより良い労働環境を求めるようになるので、どんどん退職していきます。
特徴②:独立する人が多い
離職率が高い企業は、独立する人が多い傾向にあります。
特にコンサル・IT業界のように、個人でも活躍しやすい業界では、将来的な独立を前提にキャリアを構築することが一般的です。
そういう意味では、離職率が高い企業が必ずしも悪い企業ではないことがわかります。
ただし、やはり人材流出は大きな痛手です。
サイバーエージェントやリクルートのように、社内で新規事業を立ち上げられる環境を整備できれば、離職率が低下するかもしれません。
特徴③:人材の流動性が高い
人材の流動性が高いことも、離職率が高い企業の特徴ということになりそうです。
人材の流動性が高い業界としては、プロジェクト単位でチームを結成するIT業界が挙げられます。
このように人材の流動性が高い業界は、ある程度の数のプロジェクトをこなしてから転職する人材が一定数いるため、離職率が高くなります。
特徴④:業務内容が刺激的でない
業務内容が刺激的ではないことも、離職率の高い企業の特徴です。
例えばアルバイトがやるような仕事は、誰でもできる業務がほとんどなので、やりがいを感じません。
たしかに単純作業は楽かもしれませんが、楽だからこそ飽きてしまいます。
やはり、一定の負荷がかかる仕事の方が、やりがいを感じやすいものです。
ドイツ出身の学者だったハンナ・アーレントは、自身の著書『人間の条件』で、労働を「産出と消費というリズムを回すために強いられる行為」としました。
その一方で、労働とは異なる概念である仕事を「ある特定の目的の達成を目指して行われる行為」としたのです。
業務内容が刺激的でない仕事は「労働」であり、アーレントから言わせれば「仕事」ではないのかもしれません。
特徴⑤:働き方に柔軟性がない
働き方に柔軟性がないことも、離職率の高い企業の特徴です。
柔軟性がない企業は、週休2日制の1日8時間労働にしか対応していません。
しかし現代では、副業が当たり前になったり、週休3日制が取り入れられたりする時代になっています。
個人に合わせた働き方を提供する必要があるのです。
また、女性の方が離職率が高いことからわかる通り、産休や育休を取り入れた働き方を提供する必要もあります。
離職率が必ずしも悪い指標ではない理由
一見すると離職率は、高ければ高いほど悪いイメージがあります。
しかし実際のところ、離職率は必ずしも悪い指標ではありません。理由は以下の3つです。
- 流動性が高い方が良い時代だから
- ポジティブな退職も考えられるから
- 入職率とのバランスが大切だから
それぞれ詳しく解説していきます。
理由①:流動性が高い方が良い時代だから
変化の激しい現代社会では、その時々によって、人材配置を変化させる必要があります。
そのため、人材の流動性が高い方が良い時代になっていると言えます。
その観点で見ると、離職率が高いことは必ずしも悪いこととは言えません。
実際、世界を動かし続けているシリコンバレーでは、3年以内に転職することは当たり前です。
また、人材の流動性が高まるにつれ、正規雇用ではなく業務委託という形で人材を獲得するケースも増えています。
理由②:ポジティブな退職も考えられるから
そもそも退職は、必ずしも悪いこととは言えません。ポジティブな退職も十分に考えられます。
結婚したことによる寿退社や、より高みを目指すために転職する行為は、まさにポジティブな退職です。
特に現代は、転職しながらキャリアアップすることが当たり前の時代になっています。
そのような時代では、積極的な退職が日常茶飯事になっていくはずです。
そのため、離職率が悪い指標だと断言しない方が良いでしょう。
理由③:入職率とのバランスが大切だから
組織の人事を推し量る指標として、たしかに離職率は重要です。
しかしそれと同じく、入職率も見ていく必要もあります。
入職率は、ある一定の期間中に新たに採用された者の割合を示す数字です。
離職率の真逆の数字という解釈でいいでしょう。
そして離職率を見る際は、入職率とのバランスも見た方がいいです。
仮に離職率が50%でも、同じく入職率も50%なのであれば「この企業は人材の流動性が高いだけかもしれない」という判断ができます。
逆に離職率が5%と低くても、入職率が1%なのであれば「この企業は縮小化を検討しているかもしれない」という推察も可能です。
離職率を見る際は入職率とのバランスも見て判断しましょう。
離職率を改善する方法
離職率を改善する方法は以下の3つです。
- 労働環境を改善する
- 優秀な人材には高待遇を提示する
- 柔軟な働き方を提示する
それぞれ解説していきます。
関連記事:離職防止とは?注目される背景やリスク、原因や対策を解説
方法①:労働環境を改善する
まずは労働環境を見直しましょう。ひとまず、労働基準法を遵守するようにした方がいいです。
具体的には以下の取り組みを実施します。
- 残業代を支給する
- 残業時間を減らす(月45時間以下)
- 有給を消化させる
また、半休を有効活用するのもいいかもしれません。
月曜午前や金曜午後を休みにすることで、従業員のリフレッシュを促進させることができます。
方法②:優秀な人材には高待遇を提示する
業績を出し続ける優秀な人材には、高待遇を提示しましょう。
安月給で買い叩いていては、いつか必ず転職されてしまいます。
この際、業績連動型の給与システムを採用して、業績に応じてメリハリのある給与を提示するのがいいかもしれません。
そうすれば、従業員は業績を出すために仕事に取り組むようになるでしょう。
また、業績と給与が連動すれば、従業員が自身の待遇に納得しやすくなるのもポイントです。
方法③:柔軟な働き方を提示する
離職率を改善させるために、柔軟な働き方を提示するようにしましょう。
まず取り入れたいのが、産休・育休です。
女性従業員が産休・育休から復帰する際に、柔軟な働き方を提示できるようにしましょう。
これは企業ブランディングにも繋がります。
また、フレックスタイム制を採用して、始業時間や終業時間を従業員自身が決められるようにするのもいいでしょう。
特に、オフィスが都内にあって満員電車の中で通勤している場合に、フレックスタイム制が有効です。
まとめ
それでは本記事をまとめていきます。
- 日本企業の平均離職率は13.9%
- 離職率の高い企業は労働環境が悪い傾向にある
- 離職率は必ずしも悪い指標ではない
日本企業の平均離職率は13.9%で、新規就職者の3年以内離職率は約3割です。
そして離職率は必ずしも悪い指標ではありません。
「平均より高いから」と落ち込むことはなく、労働環境改善に真摯に取り組みましょう。