リーダーを育成して組織を活性化させたいと思っても、リーダーシップの定義や種類について詳しく知らない方も多いのではないでしょうか。
ひとえにリーダーシップといってもたくさんの種類があり、組織やリーダーの個性に合わないリーダーシップを採用しては本来の目的が達成できなくなってしまいます。
この記事ではリーダーシップの意味や種類、目的、必要なスキルを紹介します。
リーダーを適切に育成することで、日々成長できる組織を目指しましょう。
目次
そもそもリーダーシップとは?定義は何?
リーダーシップは指導力や統率力とも言い換えられ、組織をはじめとした集団を目標にまで導く能力のことです。
これまでリーダーシップは元来の性格や特性として考えられていました。
しかし昨今では、どのような人にも備わっているものであると認識されており、リーダーシップは特別な力を持つ人だけでなく、どのような人であっても発揮できると考えられています。
リーダーシップでポイントとなるのは、次の3つです。
- 目標を達成するためのビジョンをメンバーに示す
- ビジョン実現のためにメンバーのモチベーションを維持する
- ビジョン実現の障壁を解消する
これらのリーダーシップのポイントは、組織やチームが目標を達成するために必要な能力でもあります。
リーダーシップ理論のひとつ、PM理論とは?
社会学者である三隅二不二が提唱したのがPM理論です。
PM理論におけるリーダーシップは、次の2つから構成されています。
- 目標達成機能(P機能:Performance function):目標や計画を立てて指示を出す、組織やチームの生産性や成績を向上させる能力
- 集団維持機能(M機能:Maintenance function):組織やチームの人間関係を友好な状態に保ち、強化・維持していく能力
PM理論ではこの2つの能力を基に、次の4つのタイプに分類します。
タイプ | 目標達成機能 (P機能) | 集団維持機能 (M機能) | 特徴 |
PM | 優れている | 優れている | P機能、M機能ともに優れている理想のリーダーシップ |
pM | 劣っている | 優れている | M機能のみ優れているリーダーシップ現状を維持する場合には適しているが、成果が上がらず仲の良い集団で終わってしまう可能性がある |
Pm | 優れている | 劣っている | P機能のみ優れている成果は出るが組織にまとまりがなく、中長期的な離職率が高くなりやすい人材育成につながらない可能性がある |
pm | 劣っている | 劣っている | P機能、M機能いずれも劣っているリーダーシップリーダーシップが発揮されていない状態 |
P機能、M機能が大文字の場合は能力が優れていることを意味し、小文字の場合は能力が劣っていることを意味します。
例えばPMタイプはP機能、M機能どちらも優れていますが、pmタイプはどちらも劣ってしまっているということです。
PMタイプであれば目標を達成するという成果を上げる力が優れている上に、組織やチームをまとめる力も優れているため、理想のリーダーシップと言えるでしょう。
一方で、pm型は成果を上げる力、組織をまとめる力も劣っているため、リーダーシップが発揮されていない状態です。
PMタイプのリーダーに近づくためには、以下に挙げる取り組みを行いましょう。
伸ばす機能 | 取り組み |
P機能 | ・メンバーにゴールを示して、たどり着くまでの具体的な道のりのイメージを持たせる ・メンバーにゴールへ向けた行動を意識させる |
M機能 | ・定期的な面談を行い、メンバーの考えを理解する ・メンバーに対して高圧的な態度を取らない ・会議でメンバー全員に考えを発表してもらう ・懇親会を開催する |
リーダーシップとフォロワーシップの違いは?
リーダーシップと似た言葉として挙げられるのが、フォロワーシップです。
リーダーシップが組織やチームを統率する能力であるのに対して、フォロワーシップとは、組織やチームのメンバーが主体的にリーダーや他のメンバーをサポートしたり意見を提案したりする能力のことを指します。
そのためフォロワーシップは、組織を統率するリーダーシップとは相互関係にあると言えます。
例えば、リーダーが提示した目的達成のためのビジョンに対して、フォロワーシップを発揮したメンバーが意見や提案をすることで、建設的なやり取りが成立するのです。
リーダーシップとマネジメントの違いとは?
マネジメントもフォロワーシップと同様、リーダーシップに似た言葉として挙げられます。
リーダーシップとマネジメントの違いは次のとおりです。
種類 | 詳細 |
リーダーシップ | ビジョンを明らかにして目標を達成すること |
マネジメント | 目標や目的達成のための手段を決めて管理すること |
リーダーシップは目標達成のために「どのような」ビジョンで進めればいいのかを決めるのに対して、マネジメントは「いつ」「どのようにして」業務を進めていくかを考えることです。
また、それぞれが見据えるスパンにも違いがあります。
リーダーシップは目標達成のために長期的な視野が求められるのに対して、マネジメントはより短期的な視野で物事を捉えます。
しかし一般的に、企業ではリーダーシップとマネジメントが区別されることはほとんどありません。
マネジメントを行う管理職の役割の一つに、リーダーシップが含まれていると捉えられています。
リーダーシップの必要性・重要性
目標達成のためにメンバーが同じ方向を向き、一丸となって仕事を進めるためには、リーダーシップが発揮され、チームが適切に導かれていることが欠かせません。
リーダーは、例えば以下のような役割を持ちます。
- 目標の設定や生産性の向上
- ビジョンや価値観の浸透
- 組織やチームの団結力の向上
- メンバーが持つスキルの向上
経営層と現場とでは、しばしば視点が異なる時があります。
そのため、リーダーは現場に目標の意図や行うべきことを共有し、従業員が同じ課題感を持って業務を遂行できるように橋渡しし、サポートしなければなりません。
個々のメンバーが素晴らしいスキルを持っていることと、チーム全体で力を発揮できることとは別問題です。
チーム内でコミュニケーションを活性化させてモチベーションを上げ、業務がスムーズに進められるようにすることもリーダーの役目です。
また、現代は変化の激しいVUCAの時代に突入しています。
どのような変化にもいち早く対応して個々がスキルを向上できるように促進することで、競争力が上がり、企業の目標達成に近づきます。
リーダーシップの種類について
アメリカの心理学者であるダニエル・ゴールマンによると、リーダーシップには6種類があると説明されています。
ここではそれぞれのリーダーシップにおける特徴を紹介します。
ビジョン型リーダーシップ
ビジョン型リーダーシップはチームが目指す目標を明確に提示し、メンバーが正しい方向に進んでいくスタイルです。
メンバーの帰属意識が高まりやすい手法であるため、組織の成長期や変革期に特に有効です。
実現手段はリーダーが指示するのではなく、メンバーの自主性が尊重されます。
この型では、リーダー自身がぶれない信念を持ち、それを共有することが求められます。
コーチ型リーダーシップ
コーチ型リーダーシップとは一人ひとりの希望や考え方を傾聴し、メンバーの特性に合わせた方法で目標達成へと導くスタイルです。
5〜10人など少数のメンバーで有効な手段であり、適材適所の人材配置でポテンシャルを引き出せます。
リーダーには観察力やメンバーの特性を理解する力、コミュニケーション能力が求められます。
関係重視型リーダーシップ
関係重視型リーダーシップとはメンバー同士の関係性や感情に配慮し、チームの人間関係を良好に保ちながら目標達成へと向かうリーダーシップです。
特にチームビルディングやメンバー間の信頼が必要な時期において効果を発揮します。
人間関係を重視するメンバーには効果的な一方、そうでないタイプには響きづらいため、柔軟に別の方法も用いるとよいでしょう。
民主型リーダーシップ
民主型リーダーシップとはメンバーからの意見を積極的に取り入れ、組織の意思決定に反映させていくスタイルです。
その特性から、意思決定へのエンゲージメントを高めるのに効果を発揮します。
その一方で、メンバー同士の意見が異なると結論に至らないことがあるため、緊急な判断を求められる際には向いていません。
この方法では、リーダーの調整力やコミュニケーション能力が求められます。
ペースセッター型リーダーシップ
ペースセッター型リーダーシップとは、リーダーが自ら手本になるような高いパフォーマンスを発揮し、メンバーにも同じレベルを求めるスタイルです。
メンバー個々のスキルが高い際に有効であり、短期の物事を解決する際に有効です。
長期であればメンバーが疲弊してしまう可能性があるため、注意しなければなりません。
適度に意思疎通を図ることで、メンバーの離脱を防げるでしょう。
強制型リーダーシップ
強制型リーダーシップとは、メンバーに対して指示通りの行動を求めるスタイルです。
すべてリーダーが組織の方針や意思決定をする権利を持っており、メンバーはリーダーの決定に従います。
こちらのスタイルは危機的な状況や急激な市場の変化など、迅速な判断が求められる場面で効果を発揮します。
しかしメンバーに対して支配的になりすぎてしまうとエンゲージメントやメンタルヘルスに影響する可能性があるため、バランス良く行うことが大切です。
リーダーシップに必要な9つのスキル・資質
リーダーシップに必要なスキル、資質として、主に以下の9つが挙げられます。
- 目標設定能力
- 洞察力
- 判断力
- コミュニケーション力
- 誠実性
- 責任感
- 実行力
- 育成・指導力
- モチベーション管理能力
いずれも組織やチームの団結力やモチベーション維持、さらには目標達成に欠かせないスキル、資質です。
自身のスキルや資質を振り返って、足りているかを確認してみてください。
1. 目標設定能力
PM理論の一つの要素のように、リーダーシップには目標を設定する「目標設定能力」が必要です。
目標設定にあたっては、組織やチームが達成すべき目標を用意する必要があります。
達成可能な目標を設定するためには、KPIを設定することが重要です。
例えば、営業において、年間の売上を上げるという目標があるとします。
この際、ただ「年間の売上向上」という大きな目標を設定するだけではなく、「売上を上げるために月に〇件の電話営業をする」といった中間目標(KPI)を設定しましょう。
2. 洞察力
リーダーシップを発揮するためには洞察力も必要です。
組織やチームでプロジェクトを成功させるためには、現状が正しい方向に進んでいるかをリーダーが洞察力を持って判断する必要があります。
3. 判断力
判断力もリーダーシップに必要な能力です。
組織やチームがプロジェクトを進めていく上では、予想していないトラブルが発生する可能性があります。
そのような際は、迅速かつ的確な判断が必要です。曖昧な判断を下してしまうと、さらなるトラブルに発展する可能性も考えられます。
またメンバーからの信頼も低下してしまう恐れがあります。
4. コミュニケーション力
組織やチームが円滑に業務を進めるためには、円滑なコミュニケーションが必要です。
そのため、リーダーは日頃からメンバー一人ひとりとコミュニケーションをとり、業務で困っていることがないか、不明な点がないかなどを吸い上げておきましょう。
組織やチーム内でのコミュニケーションが活発になることで、闊達な意見交換にもつながり、目標や方針のブラッシュアップができたり目標達成に向けたアイデアが豊富に出てきたりするメリットを得られます。
5. 誠実性
誠実性もリーダーシップに必要な能力です。例えば、指示した内容とリーダーの行動が異なっていては、メンバーから不信感を抱かれてしまいます。
メンバーから不信感を抱かれてしまうと、組織やチームとしての連帯感やメンバーのモチベーションが失われてしまう可能性が高いです。
そのため、メンバーへの指示や指摘、さらには業務に対しては誠実さをもって対応しましょう。
指示した内容を変更しなければならない場合は、その理由をメンバーに共有することが大切です。
6. 責任感
リーダーには責任感が備わっていることが重要です。リーダーが担う業務は多岐にわたります。
またメンバーが担当している業務であっても管理者であるリーダーが最終的には責任を持つことも多いです。
どのような業務であっても責任感をもって臨みましょう。
優先すべきことは何なのか、いつまでに何を確認・対応すべきなのかを整理して優先順位を自分でつけて業務に集中してください。
7. 実行力
先述した6種類のリーダーシップスタイルにおける実力型リーダーシップのように、リーダーは実行力によってメンバーをけん引することも必要です。
組織やチームの目標やビジョンの実現のために自ら行動することで、メンバーの信頼獲得につながります。
8. 育成・指導力
メンバーを育成、指導することもリーダーの重要な役目です。いくらリーダーが優秀であっても、一人だけでは目標には到達できません。
メンバー一人ひとりを育成することで、組織やチームとしての力が高まり、目標達成に近づけます。
洞察力やコミュニケーション力によって、メンバーそれぞれの状態や能力を把握して、それぞれに応じた育成、指導を施すようにしましょう。
9. モチベーション管理能力
リーダーシップの目的の一つに、組織やチームのメンバーのモチベーション維持があります。
そのためリーダーには、メンバーのモチベーション管理能力が求められます。
メンバーのモチベーションが低下してしまうと、組織やチームとしての生産性の低下につながりかねません。
リーダーは一人ひとりのメンバーの状況や状態を把握した上で、それぞれに仕事において期待している旨などを伝えたり相談に応じたりして、モチベーションを維持するように努めましょう。
リーダーシップを高める方法
リーダーシップを高める方法として、以下の点が挙げられます。
- 過去のノウハウを学ぶ
- 常に仕事に関する問題意識を持つ
- 他のメンバーと違うことを恐れない
- 積極的にコミュニケーションを取る
- リーダーシップ研修に参加する
仕事に関する問題意識を持つ、積極的なコミュニケーションを取るなどは日頃から行えるため、意識して行動するようにしましょう。
過去のノウハウを学ぶ
リーダーシップを高めるためには、過去の優れたリーダーのノウハウを学ぶのが効果的です。
例えば、自社内にいる優れたリーダーや著名な経営者をロールモデルにするのが適しています。
過去のリーダーのノウハウからリーダーシップを学ぶ際は、ロールモデルとしたリーダーが、どのタイプのリーダーシップであるかを把握しておくことが大切です。
自分が民主型リーダーシップを目指そうとしているにもかかわらず、強制型リーダーシップに分類されるリーダーのノウハウを学んでしまっては、方向性がぶれてしまいます。
目標とするロールモデルを見つけたら、一歩ずつ近づくために目標を設定しましょう。
目標を設定する際は次の点を意識することがポイントです。
- 目標設定は詳細にする
- 達成可能な目標を設定する
- 目標の開始日と終了日を設定する
常に仕事に関する問題意識を持つ
仕事に対して常に問題意識を持つことも、リーダーシップを高める上では重要なポイントです。
リーダーは目の前の仕事をただこなしていくのではなく、問題意識を持って、どのようにすれば現状が改善するかを考えていく必要があります。
問題に直面したタイミングで考えはじめると対応が遅れてしまうため、日頃から常に問題意識を持ちましょう。
他のメンバーと違うことを恐れない
組織やチームのメンバーと違うことを恐れないことも、リーダーシップを高めるため方法の一つです。
日本の組織は集団主義の傾向にあるため、自分なりの意見があったとしてもそれを伝えずに、メンバーの意見が賛同してしまう人が多いです。
しかしリーダーまでもが集団主義に染まってしまっては、革新的なアイデアを出せないだけでなく、組織やチームを目標に向かって適切にけん引できません。
リーダーシップを高めるためには、日頃から他のメンバーと意見が異なることを恐れないように心がけましょう。
積極的にコミュニケーションを取る
リーダーは普段から組織やチームのメンバーの様子を把握して、業務やメンタルのケアをする必要があります。
普段から積極的にコミュニケーションをとるようにしましょう。
リーダーが率先してメンバーと会話することによって、組織やチームの雰囲気が良くなり全体のコミュニケーションも活発になります。
また普段からコミュニケーションをとることで、メンバーもリーダーに相談や意見がしやすくなるでしょう。
リーダーシップ研修に参加する
リーダーシップのスキルを学べるリーダーシップ研修では、さまざまな場所でさまざまな研修が開催されています。
このような研修に参加することで、リーダーシップのスキルの向上が可能です。
リーダーシップ研修はオンラインでも行われていますが、対面であれば練習やロールプレイが実施されるケースもあります。
また外部で開催される以外にも、企業が専門家を招いて開催されることもあります。機会があればぜひ参加してみましょう。
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まとめ
リーダーシップは、組織を成功に導くために欠かせない能力です。
リーダーシップにはビジョン型や強制型など、さまざまなスタイルがありますが、特定のタイプに偏らず、柔軟に使い分けることが組織の生産性向上につながるでしょう。
リーダーにどのようなスタイルを求めるのか迷うときもあるかもしれませんが、今回紹介した方法を組織やリーダーの特性に当てはめ、力を発揮できるように指導していくことが大切です。