従業員の人事評価に対する不満は、放置すれば退職に繋がる可能性があります。管理職の方としては、避けたい状況でしょう。
本記事では、人事評価への不満が退職に繋がる理由や、その解決策を紹介していきます。ぜひ参考にしてみてください。
目次
人事評価への不満が退職に繋がる理由とは?
人事評価への不満が退職に繋がる理由は以下の通りです。
- 正当に評価されないから
- 人事評価に見合った報酬がもらえないから
- モチベーションが上昇しないから
- キャリアが成長しないと考えてしまうから
それぞれ解説していきます。
正当に評価されないから
人事評価への不満が退職に繋がる理由として、正当に評価されないことが挙げられます。
特に、自己評価と実際の評価に大きな乖離があると、従業員は「明らかに不公正だ」と考えるようになるでしょう。
例えば、従業員自身が「今回は良い業績だった」と考えているにもかかわらず、実際の評価が低くなっていた場合、当然のことながら、従業員は不満を持ちます。
そして正当に評価されない職場で仕事を頑張る意義を見いだせなくなり、結果的に退職してしまうのです。
もちろん、客観的に見て、従業員の自己評価が間違っているのであれば、評価理由をしっかり説明することで解決できるでしょう。
しかし、人事評価制度に問題があった場合には信用を取り戻すのは非常に難しいと考えられます。
どちらにせよ、正当に評価されないと感じてしまう職場には、長くいたくないものです。
関連記事:人事評価と自己評価のズレとは?なぜズレが生じるのか、その理由を解説
人事評価に見合った報酬がもらえないから
人事評価に見合った報酬がもらえないのも、退職に繋がる理由の一つです。
例えば、今期の成績が非常に良く、人事評価でも高評価をもらえたとします。
従業員は自分の頑張りに見合った報酬や待遇の提示を期待するでしょう。
しかし、特に報酬が上乗せされることもなく「来期も頑張って欲しい」と言われたら、その従業員は来期も頑張れるでしょうか。
基本的に、従業員の多くは報酬を得るために企業に所属して働いています。自分自身や家族の生活を守るためです。
そのために仕事を頑張っているのに、頑張った分だけの報酬が提示されないのであれば、退職・転職を考え始めて当然です。
どれだけ人事評価が正当でも、それが報酬に繋がらないのであれば、従業員は「頑張っても無駄」と考えるようになってしまいます。
関連記事:社員への人事評価制度の問題点は?導入・見直し方法を解説!
モチベーションが上昇しないから
人事評価への不満が退職に繋がる理由として、モチベーションが上昇しないことが挙げられます。
人事評価で下される評価には、ポジティブなものもあればネガティブなものもあります。
ポジティブな評価をもらえた場合は問題ないでしょうが、ネガティブな評価が問題です。
やはりネガティブなことを言われてしまうと、気分が滅入ってしまい、モチベーションが低下します。
これが深刻化すると「この職場では活躍できそうにない」という考えに至り、結果として退職してしまうのです。
また、自分自身が認識していなかった問題点を指摘されると、「この人は私のことをわかっていない」と感じるようになり、人事評価に不信感を抱くようになります。
これも結果として、退職に繋がる可能性があるでしょう。
関連記事:パフォーマンスを向上させる人事評価項目とは?設定のコツまで紹介
キャリアが成長しないと考えてしまうから
また、「この人事評価では一向にキャリアが成長しない」と考えてしまうのも、退職に繋がる理由の一つです。
この場合、いくつかのケースが考えられます。
まず、公平に評価してもらえない場合です。どれだけ頑張っても正しく評価されないのであれば、いつまで経ってもキャリアを成長させることができないでしょう。
また、人事評価は公平であるものの、それが待遇に反映されない場合も考えられます。
こちらも、どれだけ頑張っても出世することができない状態です。
成長志向のある従業員としては、キャリアを成長させられない職場にいる必要性が薄れてしまうでしょう。
結果として、企業は伸び代のある優秀社員を手放すことになってしまいます。
関連記事:人事評価制度の作り方!失敗してしまう人事評価が生まれてしまう背景を解説
人事評価の不満で退職に繋がるデメリット
人事評価の不満による退職のデメリットは以下の通りです。
- 職場の雰囲気が悪くなる
- 釣られて退職を申し出る従業員が出る
- 穴埋めのための雇用コストが発生する
それぞれ解説していきます。
職場の雰囲気が悪くなる
人事評価の不満で退職に繋がると、職場の雰囲気が悪くなります。
残された従業員としては、「退職したということは何かしらの理由があるはずだろう」と考えるので、上層部に不信感を募らせるようになるでしょう。
また、退職した従業員の穴埋めをしなければならなくなるので、それもストレスの発生要因となります。
それに、プライベートでの関係に対する影響も考えられるでしょう。
学生時代、仲の良かった友達が突然転校してしまったということで、気が滅入った経験をした方がいるかと思います。
それと同様の現象が企業でも起こる可能性があるのです。
どちらにせよ、ポジティブな理由でない限り、従業員の退職によって職場の雰囲気は悪化していくでしょう。
関連記事:人間関係もマネジメント職の重要課題!問題の原因と解決法を伝授
釣られて退職を申し出る従業員が出る
人事評価の不満によって退職者が出ると、それに釣られて退職を申し出る従業員が発生する可能性があります。
これには様々な要因が考えられるでしょう。
まず、退職者が出ることで、上層部に対する不信感が募ることが挙げられます。
もし、明らかに不公平な人事評価が実施されていた場合、その周囲にいた従業員の方も、違和感に気づくでしょう。
また、「あの従業員は評価に不満があって退職したらしい」と風の噂で回ってくることもあるでしょう。
そして、退職者が出てからの職場の雰囲気が改善されない場合も注意が必要です。
退職者が出てから職場の雰囲気や業務遂行に悪影響が残り続け、改善の見込みが感じられなくなった場合に、他の従業員も相次いで退職してしまうことが考えられるでしょう。
また、そもそも退職を前から考えていて、実際に退職者を目の当たりにしたことで、それに釣られて退職するというケースもあります。
どちらにせよ、ネガティブな理由で退職者が出ると、相次いで退職者が発生する可能性があるのです。
これは企業にとって、非常に大きなダメージになるでしょう。
関連記事:離職防止とは?注目される背景やリスク、原因や対策を解説
穴埋めのための雇用コストが発生する
人事評価の不満によって退職者が出てしまった場合、穴埋めのための雇用コストが発生します。
例えば、新入社員が退職してしまった場合は、次の新入社員が入社するまで待てばいいかもしれません。
しかし、熟練社員が退職してしまった場合は、それに相応するレベルの従業員を中途採用する必要があります。
人事評価の不満によって退職者が出てしまった場合、リクルーティングのためにお金や時間といった様々なコストが発生してしまいます。
これは企業にとって大きな機会損失になるでしょう。
人事評価の不満を解消し、退職率を低下させる方法
人事評価の不満を解消し、退職率を抑える方法は以下の通りです。
- 人事評価制度を見直してから改善する
- 人事評価項目を明確かつオープンにする
- 1on1の人事評価面談を設けて丁寧に説明する
- 人事評価に見合った待遇を提供する
それぞれ詳しく見ていきましょう。
人事評価制度を見直してから改善する
まずは人事評価制度を見直し、問題点を抽出しましょう。そして、それを基に改善を加えていきます。
なお、人事評価は以下の3つの3要素で構成するのが基本です。
- 成果評価
- 能力評価
- 情意評価
成果評価は、どれだけ結果を出すことができたのかを評価します。
この際、事前に個人目標を設定しておいて、その目標達成度を数値化することで、客観的に評価することが可能です。
続いて能力評価は、業務遂行においてどのような能力を活用しているのか、またどのような知識を保有しているのかを評価します。
資格の所持が一番わかりやすいのですが、それだけでなく、業務遂行でどれだけ能力が役立っているのかに注視することが大切です。
そして情意評価は、勤務態度や企業への忠誠心が評価されます。
ただ成果を出したり優れた能力を保有していたりするだけでなく、企業のブランドイメージを壊さない人間性が求められるのです。
人事評価制度を見直す際は、以上の3つの評価基準がどのようなバランスになっているのかを確認しましょう。
例えば新入社員は情意評価のウエイトを大きくしてもいいと思いますが、管理職に対しては「情意評価の項目は既にマスターしている」という前提で考えるべきです。
また、職種によって求められる評価項目も異なってくるので、企業全体の人事評価制度をしっかり見直しましょう。
人事評価項目を明確かつオープンにする
人事評価項目を明確にするのは非常に大切なことです。
なぜなら、人事評価項目が明確になっていれば、評価者が何を基準に評価すべきかも明確になるためです。
逆に、人事評価項目が曖昧になってしまうと、評価者は何を基準に評価すべきかがわからなくなり、結果的に主観が入ってしまいます。
また、人事評価項目がオープンになっていれば、被評価者も人事評価の実態を知ることができるため、不信感を募らせることもありません。
その上、人事評価項目に則った行動を取るようにもなるでしょう。
関連記事:人事評価項目を設定するなら、まず例を見よう!設定のポイントも解説
1on1の人事評価面談を設けて丁寧に説明する
1on1の人事評価面談を設けて丁寧に説明することも大切です。
この1on1の面談で大切な心構えが2つあります。
1つめは、評価に至った理由を客観的な視点で述べることです。
ここで丁寧にかつ論理的に説明できれば、被評価者も納得してくれるでしょう。
そして2つめは、建設的なフィードバックを心がけることです。
例えば低評価を説明する際に、ただネガティブな指摘をするだけでは次に繋がりません。
その問題点を改善させるようなフィードバックを心がけるべきです。
なるべく被評価者に考えさせるのがいいですが、適度にアドバイスを直接伝えてみてもいいでしょう。
人事評価に見合った待遇を提供する
人事評価に見合った待遇を提供することも大切です。
どれだけ人事評価が公平だったとしても、それが報酬や待遇に反映されなければ意味がありません。
人事評価担当者や管理職の方は、人事評価に見合った報酬を提示すべきです。
また、待遇に関しては、優秀な従業員を出世させたり、保有している能力によって異動させたりなど、適切な人材配置にも繋げられる可能性があります。
人事評価に見合った報酬や待遇を提示することは、企業にとって長期的なプラスになることがあるのです。
よくある質問
ここでは人事評価の不満による退職に関して、よくある質問に解答していきます。
人事評価への不満と退職は因果関係にあるの?
少し古いデータですが、2009年3月11日に厚生労働省が発表した『第6回21世紀成年者縦断調査』によると、正規雇用から正規雇用に転職した男性の21.1%が「能力・実績が評価されなかったから」と回答していたようです。
非正規雇用から正規雇用に転職した男性の場合は9.9%ということで、正規雇用の方が人事評価に納得がいっていない可能性があるようです。
どちらにせよ、人事評価に対する不満が退職に繋がっている可能性は十分にあります。
人事評価への不満を解消した成功事例を教えてください
株式会社メルカリやGoogleなどが実施しているピアボーナス制度が、成功事例として取り上げられることが増えています。
ピアボーナス制度とは、従業員同士で報酬を贈り合うシステムのことです。ちなみに、「ピア(peer)」には仲間という意味があります。
具体的には、スマートフォンアプリやチャットツールを通じて、感謝を贈りたい相手にポイントやメッセージを送信し、それが一定のタイミングで集計されて、報酬に反映されるようです。
メリットとしては、チームワークや従業員エンゲージメントが向上したり、チーム内でのコミュニケーションが活発化することが挙げられています。
また、チームとの結びつきが強くなり、退職しづらくなる効果もあるようです。
一方でデメリットとしては、ピアボーナス制度導入にそれなりのコストがかかることと、表面的な部分しか評価されなくなる可能性があることが挙げられるでしょう。
チームの根回しなど、影の部分で活躍している従業員が評価されない可能性があります。
ピアボーナス制度を導入する際は、従来の人事評価と織り交ぜながら、バランスを取る必要があるでしょう。
まとめ
それでは本記事をまとめていきます。
- 人事評価の不満は退職に繋がる可能性がある
- 人事評価の不満による退職は、組織内に様々な悪影響を及ぼす
- 人事評価の不満を解消するには、制度の見直しを進めて、しっかり改善させる必要がある
人事評価への不満を放置すると、それが退職に繋がる可能性があります。
そういったネガティブな理由による退職は、組織内に様々な悪影響を及ぼし、結果的に企業に大きなダメージを与えることになるでしょう。
人事評価制度は常に見直すようにして、繰り返しの改善に努めるべきです。