本記事では人事評価の目的を6つ紹介しています。
また、人事評価の目的を明確にすべき理由も解説しているので、ぜひ最後まで読んでみてください。
なお、本記事では一般的な「人事評価」の内容を掲載しております。
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関連記事:人事評価の書き方のポイント!評価の基準と記入例もあわせて解説
目次
人事評価の目的
人事評価の目的は以下の通りです。
- 企業理念を従業員に周知させるため
- 従業員に求める行動を明示するため
- 人材育成に活用するため
- 人材配置を効率化させるため
- 公平な処遇を決定するため
- 従業員のモチベーション・やる気を引き出すため
それぞれ解説していきます。
企業理念を従業員に周知させるため
人事評価の目的の一つとして、企業理念の周知が挙げられます。
企業理念を従業員にしっかり周知させることができれば、企業と従業員の方向性がマッチし、従業員エンゲージメントが高まるでしょう。
また、企業がどのようなビジョンを抱いているのかを把握できれば、従業員も自身の業務において、それを踏まえた判断ができるようになります。
従業員にパフォーマンスを求めるのであれば、まずは企業が従業員に何を求めているのかを明確にする必要があるでしょう。
具体的には、人事評価の際に事前に企業理念について説明することで、企業理念を周知させることが可能になります。
関連記事:ビジネスにおける理念とは?企業理念・経営理念の目的やメリット、混同されがちな言葉との違いを解説
従業員に求める行動を明示するため
従業員に求める行動を明示するのも、人事評価の目的の一つです。
これは、人事評価における面談でしっかり明示するのが良いでしょう。
また、人事評価項目にも盛り込んでおくことで、従業員に求める行動を促進させることもできます。
この際、「自立できる従業員になってほしい」というように、内発的要因で達成できる行動を明示することがポイントです。
これが「営業実績を前年比120%」というように外部要因に影響されやすい行動を明示すべきではありません。
こういった業績などは、あくまでも目標で設定すべきです。
人事評価で従業員に求める行動を明示する際は、従業員一人で変えられる規模の行動を要求するようにしましょう。
人材育成に活用するため
人事評価の目的は複数ありますが、特に重要なのが「人材育成」です。
実際に人事評価で得たデータがあれば、何が得意で何が弱点なのかが把握できるので、それを基に人材育成を実施できます。
また、面談の際のフィードバックで直接指導することもできますし、評価者が被評価者を観察する際にもアドバイスができます。
そのうえ、公平な人事評価が実施できていれば、従業員は人事評価の向上を目標に業務に取り組むようになるでしょう。
そうすれば従業員が自発的に能力を成長させられるようになります。
人事評価を活用することで、従業員の人材育成の効率が大きく変わってきます。
人事評価制度を見直す際は、人材育成に繋げられるような工夫を取り入れるようにしましょう。
人材配置を効率化させるため
人事評価で従業員のデータを抽出することができれば、組織内の人材配置を効率化させることが可能です。
例えば営業部に所属する従業員Aのコミュニケーション能力に課題が見られた際は、比較的コミュニケーションを必要としない経理部への転属が検討できます。
逆に、経理部に所属する従業員Aがデータにも強いのであれば、マーケティング部への転属を検討してもいいでしょう。
このように「〇〇が強い」や「〇〇が弱い」というデータは、基本的に人事評価でしか抽出できません。
また、若手社員の段階で人事評価を実施できれば、次世代リーダーの候補者を選び出し、その軌道に乗せてあげることもできます。
人材配置を効率化させるためには、人事評価が必要不可欠なのです。
関連記事:適材適所とは?ビジネスで重要な理由や実現する方法を解説
公平な処遇を決定するため
人事評価は、公平な処遇を決定するのに適した制度です。
従来の日本企業では年功序列の考え方が根強かったこともあり、能力や業績がないのに高給を手に入れているベテラン社員が未だにいる状況です。
そうしたときに能力主義を強めた人事評価制度を取り入れることができれば、能力のある従業員に対して適切なインセンティブを提供できるようになるでしょう。
そしてこのように公平な処遇を決定できるようになれば、従業員もモチベーションが上がり、結果的に組織内の生産性が上がる可能性もあります。
優れた若手社員をピックアップするためにも、公平な処遇を決定できる人事評価は必要です。
従業員のモチベーション・やる気を引き出すため
以上の通り、人事評価を活用すれば従業員のモチベーション・やる気を引き出すことができます。
最も一般的な例は、業績と報酬を強く結びつけることです。
業績が高ければ高いほど報酬も大きくなっていく仕組みであれば、従業員は必死に業績を出すようになるでしょう。
ただし、近年はワークライフバランスの声が強まっており、報酬に魅力を感じなくなった従業員も増えています。
そのためにもやはり、公平な人事評価によるやりがいの提供は大切です。
従業員が企業理念に沿った行動が取れているかを評価できれば、報酬を与えずとも、従業員のモチベーションは高められるでしょう。
人事評価の目的を明確にすべき理由
説明したように、人事評価にはさまざまな目的があります。
そして、人事評価を成功させるためには、そういった人事評価の目的を明確にすべきです。理由は以下の通りとなっています。
- 適切なフィードバックが実施できるから
- 公正な評価で部下からの不満が出づらくなるから
- 生産性が向上するから
それぞれ詳しく見ていきましょう。
適切なフィードバックが実施できるから
人事評価の目的を明確にできれば、適切なフィードバックが実施できます。
例えば人事評価の目的が人材育成なのであれば、従業員のキャリアを見据えながら、業務効率向上のためのアドバイスができます。
一方、人材配置が目的なのであれば、従業員のデータをしっかり抽出した上で、部署異動の相談ができるでしょう。
このように人事評価の目的によって、フィードバックの内容も大きく変化します。
公正な評価で部下からの不満が出づらくなるから
人事評価の目的が明確になっていれば、公正な評価を下せるようになります。
なぜなら人事評価の目的が明確になっていれば、それに伴い適切で明確な人事評価項目を設定できるためです。
では実際に部下の立場になって考えてみましょう。
例えば、今期の業績が良ければ当然、高く評価してほしいものです。
しかし、何らかの理由で不公正な人事評価となってしまい、業績の割にはどう考えても低い評価を下されたとします。
そうなれば当然、仕事に対するモチベーションが低下してしまいますし、上司のことを信用できなくなるはずです。
逆に、今期の業績がそこまで良くなかったのに、なぜか高く評価された場合はどうでしょうか。
評価の受け取り方にもよりますが、「これぐらいの業績で高く評価されるんだったら、このままでいいや」と捉えてしまうでしょう。
つまり、不公正な人事評価は企業にとって良いことが何もないのです。
優秀な人材を流出させてしまう可能性もありますし、場合によっては不服申し立てで裁判という流れもあります。
人事評価の目的を明確にして、公正な人事評価を実施するようにしましょう。
生産性が向上するから
人事評価の目的を明確にすることで、生産性を向上させることができます。
なぜなら、人事評価によって従業員のモチベーションを高めたり、組織内の人材配置の効率化が見込めたりするからです。
例えば、それこそ生産性向上を目的に人事評価を実施する場合、従業員のモチベーション管理が鍵となります。
その際、「高い業績には高い評価を下す」というように、業績と評価をしっかり連動させることが大切です。
従業員も、自分なりにトライアンドエラーを繰り返しながら業務を進めています。
そしてそれが業績に繋がり、さらにそのプロセスまでしっかり評価してもらえば、従業員のモチベーションが上昇し続けるでしょう。
以上のようなサイクルが回れば、必然的に業務遂行能力が伸びていき、生産性が向上するはずです。
また、人事評価を活用して、適切な人材配置ができれば、組織全体の生産性向上も見込めます。
目的が明確になっている人事評価を実施できれば、従業員の自発的なモチベーションを促しつつ、組織全体のモチベーション向上に繋がっていくのです。
人事評価制度の例
人事評価制度の例は以下の通りです。
- コンピテンシー評価
- 360度評価
- 目標管理制度
それぞれ解説していきます。
コンピテンシー評価
コンピテンシー評価とは、職務ごとに定義された行動特性に合わせた人事評価のことです。
元々、コンピテンシー(competency)とは高い業績を出せる優秀な従業員の行動特性のことを指します。
そしてコンピテンシー評価では、コンピテンシーを言語化することで人事評価項目に盛り込み、それを基に人事評価が実施されるのです。
例えば、IT業界における優秀なエンジニアには以下のようなイメージがあるかと思います。
- とにかく集中してバリバリとコードを書く
- Slackでスピーディーにコミュニケーションを取る
- 常に新しい技術に注目する
そしてコンピテンシー評価では、上記の優秀なエンジニアの行動特性に近い従業員を高く評価するのです。
スキルや知識ではなく行動特性に注目することで、ポテンシャルの高い従業員を高く評価できるようになります。
しかし、コンピテンシー評価には様々な課題が指摘されています。
「優秀社員の行動特性を目指そう」と従業員が考え始めることで、本来の目的である生産性・業績向上の目的を疎かにしてしまうことがあるのです。
また、現在は多様化が進んでおり、働き方や生産性の上げ方にも種類が増えてきています。
同じ職種だとしても「朝早く起きて作業した方が良い」という人もいれば「寝たい時に寝て仕事したい時に仕事した方が良い」という人もいるはずです。
このようなケースで、コンピテンシー評価を実施するのは難しいといえます。
360度評価
360度評価とは、被評価者に対して評価者だけでなく、上司・同僚・部下などの様々な立場の人に評価してもらう制度のことです。
上司からのみ評価してもらう従来の制度よりも、公平な評価が下せる確率が高まるということで、被評価者が納得しやすい制度となっています。
従来の人事評価制度とは異なり、様々な立場から被評価者を見ることになるため、結果的に評価材料を多く集められるのが特徴です。
また、被評価者自身も上司にだけでなく同僚や部下と良好な関係を構築するようになります。
これも360度評価のメリットの一つでしょう。
360度評価が近年注目される背景としては、企業の組織改革の機運が高まっていることが挙げられます。
現代社会は変化が激しく先が全く読めない状況となっており、可能な限り組織構造をコンパクトにして、よりスピーディーに事業を進める必要が出てきました。
そのためにDXが検討されるようになりますが、それに合わせて360度評価も注目されるようになります。
なぜなら360度評価の場合、管理職を設けない組織でも人事評価が実施できるためです。
しかし評価担当者が増え、責任の所在も曖昧になるために、主観が評価に加わりやすいデメリットがあります。
360度評価を導入する場合、客観的な評価材料を集められるように制度内容を工夫する必要があるでしょう。
目標管理制度
目標管理制度とは、被評価者に個人目標を設定してもらい、その目標の進捗度によって評価を下す制度のことです。
マネジメント論を確立させたピーター・ドラッカーが発表した概念で、「Management By Objectives」の略でMBOとも呼ばれています。
目標管理制度において重要な要素は2つあります。ひとつは個人目標が企業目標とリンクしていること、もうひとつは個人目標は被評価者自らが決めることです。
そもそも目標管理制度の肝は、被評価者に「自らが所属している組織の一員であること」を強く自覚させることにあります。
企業目標達成のために自分がどのような結果を残せればいいのかを考えることで、組織へのコミットが高まっていくのです。
そのためには、企業目標にリンクした個人目標を自分で考え、それを実践していくのがベストな選択でしょう。
なお、目標管理制度のデメリットとしては、企業目標を常に変化させなければいけない現代社会に、目標管理制度が適していないことが挙げられます。
まとめ
それでは本記事をまとめていきます。
- 人事評価は目的を明確にして実施すべき
- 目的を明確にすれば、生産性向上など、組織全体の利益に繋がる可能性がある
- 様々な手法を取り入れて人事評価制度を構築した方がいい
なぜ人事評価を実施するのか、その目的が明確になっていれば、組織全体の利益に繋がる可能性があります。
逆に、目的が曖昧になっていると様々な問題が生じる可能性があるともいえるでしょう。
人事評価で困っている場合は、まずは目的を見直してみてはいかがでしょうか。