日本のビジネスにおいては多くのシーンで、外部企業との契約や備品の購入を行う際に「稟議書」が用いられます。
複数の上長の承認を得てからでなければ手続きが進まないことや、書き直す必要が生じたりと、手間と時間がかかるケースもあります。
これにより、一部の従業員が「ムダではないか」と考えていたり、「稟議のせいで生産性が下がる」という指摘の声が挙がる場合もあります。
しかし、本当に稟議書はムダなのでしょうか? また、生産性を下げずに効率的に運用するにはどうすれば良いのでしょうか?
そこで本記事では稟議書について、
- 概要や必要性
- 書き方や記載項目
- 効率的な運用
- 企業側の注意点
を解説していきます。
目次
稟議書とは
稟議書とは、自分の権限では決められない事柄について、上長から承認を得るための書類を指しています。
具体的には、下記のようなシーンで用いられます。
- 外部企業との契約
- パソコンなどの備品の購入
- 人事採用
- 出張申請
主に、実行する際に費用がかかるケースにおいて用いられます。
また、稟議書は日本企業の独自の文化であり、諸外国では迅速な意思決定が求められることが一般的なため、稟議書はあまり用いられていません。
関連記事:稟議とは?メリットデメリット、申請・作成のポイントを解説
稟議書の必要性・意義とは
企業にとって重要な事案については、本来なら会議で承認を得ることが理想的です。
しかし、すべての事案について会議を開く場合、関係者のスケジュールを調整しなければならず、手間も時間もかかるうえに当事者にとっても負担が大きくなります。
そこで稟議書を用いることで、これらの負担を抑えつつ、関係者全員の承認を得ることができるのです。
また、稟議書に目を通すことで、どの部署がどのような事案に取り組み、その費用や費用対効果などがどの程度発生するのかなどを把握できるので、連携がとりやすくなります。
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稟議書の書き方・記載項目とは
ここでは稟議書の具体的な書き方や記載項目について見ていきましょう。
定められた様式を用いる
基本的に企業ごとに定められた様式があるため、その様式を用いて作成しましょう。
様式がない場合は、インターネットからテンプレートをダウンロードすることもできます。
必要な項目を記載する
一般的に稟議書では下記のような項目を記載します。
件名・タイトル
件名またはタイトルには、どのような用件か、何が必要かを簡潔に記載します。
例えば「パソコンの購入について」や「接待費の費用について」など、ひと目で内容がわかるようにすることが重要です。
提出先の部署・担当者の名前
承認を求める上長が誰かわかるように書きましょう。
例えば「部長 山田太郎様」というように、個人名だけではなく役職名を入れるのが望ましいです。
自分の部署と名前
作成者が誰かわかるように名前を記入しましょう。
このときも上記と同様、役職名を添えておくことが大切です。
費用
費用がいくらかかるのかは、可能な限り正確な数字を記載しましょう。
パソコンなど物品を購入する場合は、見積書や製品カタログを添付するのが理想的です。
詳細
稟議書の目的や内容について詳しく、かつ簡潔に記載しましょう。
例えば箇条書きで書き出しておくと、全体像がつかみやすくなります。
稟議書の内容の変更や事後申請について
ここでは、稟議書に関するよくある疑問を解説していきます。
稟議書の内容変更や増減額は可能?
基本的に、一度決裁を受けた稟議について内容を変更することはできません。
しかし、
- 一部変更する旨を明記した稟議書を起案する
- 決裁を受けた文書に変更の旨をボールペンで書き足す
などの対応によって、内容を途中で変えることは可能です。
発注後の事後申請は可能?
ビジネスの交渉においては、その場で判断を求められるシーンがあり、その結果について事後承認が必要になるケースもあります。
したがって企業によっては事後申請を認めていることがあり、この場合においてはその経緯を説明しなければなりません。
稟議書について企業が注意するべきこと
稟議書を提出するハードルが高い場合、現場からの意見が反映されず、事業が停滞してしまいます。
したがって、従業員が稟議書の作成方法を学ぶだけではなく、企業側が積極的に稟議書を出しやすい環境を整えなければなりません。
そこで、ここでは稟議書を円滑に運用するためのポイントを解説していきます。
フォーマットを準備する
従業員が感じる稟議書作成のハードルの高さや手間を、企業は少しでも取り除かなければなりません。
その第一歩として効果的な方法が、稟議書のフォーマットをあらかじめ準備しておくことです。
パターン別に稟議書のフォーマットを用意しておけば、従業員は効率的に作成できるようになるでしょう。
稟議書を素早く確認する
プレイングマネージャーが承認を判断しているケースや、稟議書の数が多いケースだと、稟議書の確認を後回しにしてしまい、意思決定のスピードが遅くなってしまいます。
このような状況に陥らないためにも、日頃から後回しにせず、迅速に確認するように教育しなければなりません。
まとめ:素早い稟議体制を構築するために
稟議は企業との契約に用いられるため、素早く確認する必要があります。
その一方で、稟議書には承認ルートがあるため、本当にその資料で間違っていないのか、などのチェックも欠かせません。
担当者ははやく回したい。管理者は稟議書が正しいかつぶさに確認したい。この相反する主張の落としどころはルール設定となるでしょう。
弊社識学ではルールを明確に設定しています。
たとえば稟議書の場合には「必ず〇日以内に管理者は認可 | 否認」をする、といったルールを設けておけば、どちらが正しい運営をしているのかを明確にできるでしょう。
また、あまりにも稟議の質が低い場合には、チェックリストを通してから提出。
なにかひとつでも欠けているものがあったら管理サイドは否認できるといったルールの設定も考えられます。
稟議のルールを明文化することで、素早い稟議のチェック体制が整うでしょう。