製造企業にとってオペレーションは非常に重要かつ最もコントロールが難しい領域です。
そこで本記事では、オペレーションを上手に回すためのマネジメント手法を解説していきます。
オペレーションに悩みを抱えている経営者や管理職の方々は、ぜひ最後まで読んでみてください。
目次
オペレーションマネジメントとは?
オペレーションとは、組織内の業務を円滑に進めるための取り組みのことを指します。
そのためオペレーションマネジメントとは、業務を効率よく進めるための仕組みを管理することだといえるでしょう。
オペレーションマネジメントを進めることで、業務全体を効率化させることができます。
また、限られた経営資源を活用して成果の最大化を狙うことも、オペレーションマネジメントの目的の一つです。
オペレーションマネージャーの役割・メリット
オペレーションマネージャーの役割は以下の通りです。
- 業務計画
- 財務
- 製品デザイン
- 品質管理
- 予測
- 戦略管理
- サプライチェーンマネジメント
それぞれ解説していきます。
業務計画
まずは業務計画です。業務計画の内容としては以下が挙げられます。
- 製品の生産やサービス運営状況などをモニタリングする
- 在庫やリソースの管理をする
- メンバーのコンディションを随時チェックする
- スケジュールや作業フローの計画を立てる
オペレーションマネージャーには、業務効率の維持が求められます。
そのため、ヒト・カネ・モノの動きを常に把握する必要があるのです。
財務
財務もオペレーションマネージャーに求められる役割の一つです。
具体的には以下の業務となります。
- 目標に合わせた予算を作成する
- 予算の配分を行う
- 投資機会を常に探す
財務では、コスト削減と売上向上が求められます。
そのため、ただ業務を管理するだけでなく、売上向上が見込める投資機会を常に探すことが大切です。
製品デザイン
オペレーションマネージャーは製品デザインも手掛けます。
ただしここでいう製品デザインとは、製品の形状的なデザインではなく、顧客ニーズや市場動向に合わせたビジネス面での製品デザインです。
具体的なタスクは以下の通りとなります。
- 市場調査を実施し、製品デザイナーにもわかるようにまとめる
- 製品デザインチームと情報共有する
- デザイナーの製品開発をサポートする
製品を市場で売り捌くためには、ビジネス的な視点が必要不可欠です。
関連記事:【デザイン思考とは?】もはやビジネスでは必須!?デザイン思考の意味や定義導入事例、使い方を解説!
品質管理
製品の生産段階では、品質管理がポイントとなります。
品質基準に適合しているかどうかを常に確認することで、大量ロスを事前に防ぐことが可能です。
具体的には以下のような業務となります。
- リスク分析を行う
- 品質基準を定める
- 品質テストを実施する
- 製品のロスを記録する
品質管理は単純に製品そのものの質を担保するだけでなく、費用削減のための重要な業務の一つです。
費用を極限まで抑えることで利益を最大化することができます。
予測
オペレーションマネージャーは、市場予測で製品の需要を見定める必要があります。
そしてそれに合わせて、営業活動やプロモーションを計画しなければなりません。
また、原材料の高騰など、費用面での予測も必要不可欠です。
戦略管理
業務計画、財務、市場予測などの業務で得た情報を用いて、戦略を策定・管理します。
また、その戦略が組織全体の目標に合致するかどうかも見極めなければなりません。
近年では、地球温暖化対策などのグリーンな施策が求められている点にも注意が必要です。
関連記事:絶対知っておくべき「戦略とマネジメント」の違いとは
サプライチェーンマネジメント
製品・サービスを生産する会社であれば、サプライチェーンマネジメントは必須業務だといえます。
生産・調達・出荷のサプライチェーンの流れを滞らせないことが大切です。
また、品質向上やコスト削減にも積極的に取り組まなければなりません。
オペレーションマネージャーに必要なスキル
オペレーションマネージャーに必要なスキルは以下のとおりです。
- 柔軟な対応
- 財務計画
- データを解釈する能力
- 対立解決能力
- データに基づいた意思決定
- クリティカルシンキング
- 問題解決能力
それぞれ詳しく見ていきましょう。
柔軟な対応
オペレーションマネージャーは、柔軟な対応が求められます。
オペレーションは、外的要因はもちろんのこと、企業の目標変更などの内的要因によっても変化するからです。
これらの変化に対応するためには、フットワークよく動き回り、柔軟に考え、アクションを起こす必要があります。
財務計画
財務で失敗しないようにするためには、財務計画を立てることが必要不可欠です。
そのため必然的に経理の知識も必要となります。
また、コストを削減するために低価格の生産企業を選択する必要が出てくるでしょう。
一口に財務計画と言っても、質の高い財務計画を作成するためには、様々な視点でカネの動きを見なければなりません。
データを解釈する能力
市場に合わせた製品デザインを成功させるためにはデータを解釈する能力が必要不可欠です。
データを読めるだけでなく、それをわかりやすく解釈できれば、デザイナーの方々に情報共有しやすくなります。
もちろんデザイナーだけでなく、オペレーション全体に情報共有する必要があるので、データをまとめるスキルも求められるでしょう。
対立解決能力
オペレーションをゼロから構築する場合、トライアンドエラーを何回も繰り返す必要が出てきます。
これをスムーズにこなすためには、対立解決能力が必要です。
この際、限られたリソースの中で最高の製品を作るという心意気が大切になるでしょう。
その心意気があるからこそ、何度も失敗できるし、その度に立ち向かうことができるのです。
データに基づいた意思決定
オペレーションマネジメントは、需要供給などの市場予測や原材料の価格など、様々なデータに基づいた意思決定が求められます。
製品の物質的なデザインはデザイナーに任せて、オペレーション全体の意思決定に集中するようにしましょう。
また、新たな投資機会を創出するためにも、データに基づいた予測を都度繰り返すことが重要です。
クリティカルシンキング
オペレーションマネージャーには、オペレーション全体を批判的に思考できるクリティカルシンキング能力が求められます。
クリティカルシンキングを徹底することで、オペレーション全体の効率化やコスト削減を徹底できるようになるでしょう。
また、論理的に戦略を組み立てることで、意思決定の裏付けが強化され、部下を動かしやすくなるメリットもあります。
関連記事:クリティカルシンキングとは?凡人が天才に勝るための唯一の思考法
問題解決能力
オペレーションマネージャーは様々な業務を遂行しなければならないため、高い問題解決能力が要求されます。
現場でのトラブルや突発的な外的要因などに対してもスピーディーに対処できれば、オペレーション全体の強度がより高まるでしょう。
オペレーションマネジメントの流れ
オペレーションマネジメントのプロセスは以下のとおりとなっています。
- プランニング
- スケジューリング
- 生産オペレーション
- 保全オペレーション
- 品質オペレーション
- 在庫オペレーション
- データ共有と分析
- モニタリング・フィードバック
それぞれの過程を詳しく見てみましょう。
プランニング
まずはプランニングを実施します。
ここで生産計画や施策をしっかり定めないと、途中で軸がぶれてしまい、意思決定に迷いが生じてしまうでしょう。
強固なオペレーションを作り出すためにも、まずは具体性のある計画立案が必要です。
スケジューリング
プランニングを実施した後は、スケジューリングを実施しましょう。
ここでは製品・サービスを開発するための工数を洗い出し、期限や優先順位をしっかり定めます。
また、トラブルに備えて適切にバッファ(余裕=一定の予備機関)を設けることが大切です。
例えば3ヶ月後を期限する場合は1週間バッファを設ける、というイメージです。
生産オペレーション
生産オペレーションは生産活動の領域で、生産システムや生産方式などを定めて実行する、非常に重要な行程です。
例えば製造業の場合、工場での生産活動が生産オペレーションということになるでしょう。
また、生産性を向上させるためにムダな時間を削るなど、地道な積み重ねが必要となる領域です。
保全オペレーション
保全オペレーションは製品の品質、設備、従業員の健康などを保全するオペレーションです。
品質テストや環境チェックを高頻度で実施することで、高い保全性を維持することができます。
また、現場の従業員のコンディションも管理することで、生産性向上、離職率低下、幸福度向上が見込めるようになるでしょう。
リターンが少ない領域ですが、リスクを軽減させるためにもしっかり力を入れなければいけません。
品質オペレーション
品質オペレーションでは、製品・サービスの品質のフィードバック・改善が行われます。
ここで品質基準や標準仕様を見直して、品質の改善・維持に努めるのです。
また、市場の動向や顧客要求も取り入れて、新たな製品開発に活かすこともあります。
品質オペレーションでは、「常に進化し続ける」という心意気が大切です。
在庫オペレーション
在庫オペレーションは受発注や在庫に関するオペレーションです。
この在庫オペレーションを作り込むことで、コスト削減が見込めるでしょう。
また、その性質上、生産オペレーションとの結びつきが強い領域です。
在庫が大量に余っている時は生産をストップさせるなど、生産現場との連携が重要になります。
データ共有と分析
上記の工程の中で集まったデータは、しっかり全体に共有して分析するようにしましょう。
その際には、各オペレーションごとに分析することが大切です。
また、データに対する現場からの意見も抽出して、それを全体に共有できるとなお良いでしょう。
モニタリング・フィードバック
データを共有して分析した後は、それを基にした評価・改善を行います。
そして改善した後にまたデータを収集し、それを基に改善して……を繰り返していくのです。
そうすることで、より強固なオペレーションを構築することができます。
また、改善する際には、その改善によって新たな課題が出る可能性があることも知っておかなければなりません。
未然に課題を解決できることもあるので、「その改善案をそのまま実行していいのか」という問いを自分に立てるようにしましょう。
事例:ANAのオペレーションマネジメントセンター
オペレーションマネジメントの事例として、ANAのオペレーションマネジメントセンター(OMC)がよく挙げられます。
そもそも、航空業界は他業界に比べて失敗を基に改善する習慣が定着しています。
なぜなら一度の失敗が大量の人々の命を失う可能性があるためです。
そのため、航空機にはブラックボックスと呼ばれるレコーダーが備わっています。
何かしらの失敗があった時はブラックボックスからデータを収集し、改善案を早急に打ち出し、同じ失敗を二度と繰り返さないように徹底するのです。
実際に、ANAのOMCの社員インタビュー記事を見てみると、一度のミスがきっかけで、データの確認作業を一度に6回繰り返すようになったそうです。
また、地球温暖化問題に対処するために、翌日以降の航空機とダイヤを都度見直し、同じ座席数をキープしたまま二酸化炭素排出量を最低限にするという緻密なオペレーションを実行しています。
この事例から、ミスに対する迅速な対処が非常に重要であることがわかります。
対処が早ければ早いほど問題解決は早くなり、新たな課題もスピーディーに抽出することができます。
よくある質問
ここではオペレーションマネジメントにおけるよくある質問に解答していきます。
オペレーションマネージャーの年収は?
オペレーションマネージャーの年収は、職場や企業によりますが、500万円から1,300万円ほどが相場だといえるでしょう。
オペレーションマネージャーは業務量が多いことに加え、求められるスキルが多様であり、それでいて業務遂行とマネジメントを両立しなければなりません。
そのうえ現場での経験も求められるため、必然的に給与は高くなります。
オペレーションマネージャーに必要な資格は?
オペレーションマネージャーになるために必要な資格は特にありませんが、企業によっては資格の取得を推奨される場合があるようです。
そこでよく挙げられるのが、日本コンタクトセンター検定試験のオペレーションマネジメント検定です。
また、財務諸表を読み解く力も必要なので、日本商工会議所の簿記検定も取得すべきでしょう。
しかし結局のところ、オペレーションマネージャーは、その都度訪れるトラブルに対して迅速に対応できるスキルと経験が求められます。
資格はあるに越したことはありませんが、まずは実践が大事ということになるでしょう。
オペレーションマネジメントは大学でも学べる?
オペレーションマネジメントは大学でも学ぶことが可能です。
ただしオペレーションマネジメント学部が存在しているわけではなく、経営学部の授業の一環として学ぶことになりそうです。
また、MBA(経営学修士)でもオペレーションマネジメントを学ぶことができます。
また、東京工科大学のコンピュータサイエンス学部にはオペレーションマネジメント研究室が設けられており、そこではICT技術を用いたオペレーションマネジメントを研究・学習できます。
まとめ
それでは本記事をまとめていきます。
- オペレーションマネジメントは組織内の業務を効率化させる取り組みのこと
- オペレーションマネージャーには様々な業務スキルが求められる
- オペレーションマネジメントを成功させるには、迅速なトライアンドエラーを繰り返すことが大切
オペレーションマネジメントは、メーカーやサービス開発にとって非常に重要な領域です。
その分、多くの業務が要求されるので、高度な問題解決能力が必要になります。
そして、問題に対して迅速に解決することが大切です。
考えるだけでなく、とにかく実践することが重要だといえます。