企業活動において、組織だって業務に取り組むことは必須であり、そこにコミュニケーションは欠かせない要素です。
近年ではリモートワークの普及により、コミュニケーションの形も大きく変わっており、認識を改める必要性とともに、その重要度もより上がっています。
そこで本記事では、組織内の「ホウレンソウ」を最適化するマネジメントコミュニケーションについて解説していきます。
目次
PMBOKでも重視されるマネジメントコミュニケーション
マネジメントコミュニケーションは、マネジメントに必要なコミュニケーション能力のことを指します。
具体的には、プロジェクト進行における指示や、人材育成における指導などのコミュニケーションによる管理が挙げられるでしょう。
現在、PMBOK(プロジェクトマネジメント体系ガイド)でもマネジメントコミュニケーションは重要視されていることから、マネジメント職の方に必須のスキルだといえます。
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今マネジメントコミュニケーションが重要視される理由
現在、マネジメントコミュニケーションが重要視されている理由としては、以下が挙げられます。
- リーダーシップとマネジメントの違いに焦点があてられた
- リモートワークでコミュニケーションの必要性が高まった
- 人材育成のためにコミュニケーションが必要だと再認識された
それぞれ解説していきます。
リーダーシップとマネジメントの違いに焦点があてられた
マネジメントコミュニケーションが重要視される背景として、リーダーシップとマネジメントの違いが注目されるようになったことが挙げられます。
まず、リーダーシップは組織の目標を達成するために部下を率いる能力のことを指します。
率先力や部下を動かす力が求められるといえるでしょう。
一方でマネジメントは、目標を達成する手法を考え、それを組織に落とし込む能力を指します。
簡単に言えば、部下を管理し、組織をまとめる能力です。
誰かを率いて行くのがリーダーシップ、人を管理するのがマネジメントという明確な違いが明らかになっているのです。
リモートワークでコミュニケーションの必要性が高まった
リモートワークでコミュニケーションの必要性が高まったことも背景にあるでしょう。
リモートワークは場所関係なしに仕事ができることの証明に繋がりました。
しかしその一方で、お互いに顔を合わせてコミュニケーションを取ることの重要性も浮かび上がったと言えます。
その中で再度、マネジメントにおけるコミュニケーションが見直されるようになりました。
どのような場面で対面で会話すべきなのか。逆にどのような場面でチャットを活用すべきなのかが、議論されるようになったのです。
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人材育成のためにコミュニケーションが必要だと再認識された
リモート環境における人材育成は、オンライン講座や資料配布など、一方通行な教育プログラムでした。
しかしそれでは、わからないことを聞く時に手間がかかってしまいます。
ここで、「人材育成は可能な限り双方向的なプログラムで組む必要がある」ということが明確になりました。
もちろん、自分一人でキャリアを成長させるに越したことはありません。ですが、時には上司からも指導を受ける必要があります。
そのため、上司が部下に対してどのように指導すべきなのかも注目されるようになりました。
マネジメント能力とコミュニケーション能力の関係性
マネジメント能力とコミュニケーション能力の関係性は、どのようなものになっているのでしょうか。
まず、マネジメントは「ヒト・カネ・モノ」を管理することだといえます。
そうなると、この3つの内のヒトにフォーカスした能力がコミュニケーション能力ということになるでしょう。
つまり、マネジメント能力の一つとして、コミュニケーション能力が存在しているという解釈ができます。
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マネジメントコミュニケーションを成功させる手順
マネジメントコミュニケーションを成功させる手順は以下の通りです。
- プロジェクト単位で関係者を洗い出し、ニーズを把握し分類する
- 発信内容の責任の所在を明確にする
- 適切なコミュニケーションツールを導入する
- 緊急度と重要度に分けて発信をさせる
プロジェクト単位で関係者を洗い出し、ニーズを把握し分類する
マネジメントコミュニケーションを成功させるためには、まず誰と積極的にコミュニケーションをすべきか把握する必要があります。
そのため、プロジェクト単位で関係者を洗い出し、分類しましょう。
例えば株主とやり取りする際は、財務をテーマにした会話にニーズがありそうですし、チームメンバーと会話する際は雑談を交えてもいいかもしれません。
一つのプロジェクトには数多くのステークホルダーが存在します。
誰と何のコミュニケーションをとるのかを明確に把握しておきましょう。
発信内容の責任の所在を明確にする
次に、情報発信の責任の所在を明確にする必要があります。
現代社会ではSNSで誰もが意見を述べることができます。
しかしその責任の所在が曖昧になってしまうと、いざ問題が発生した時にスムーズに対応できません。
発信した情報に対して誰が責任を取れるのかを明確にする必要があります。
また、情報を発信する際は、誰が責任者なのかを明示しておくといいでしょう。
例えば、映画上映システムのIMAXの品質に関しては、映画上映後に「CQO(最高品質責任者)に直接問い合わせてください」という趣旨の文言と、連絡先が公開されます。
このように責任者を決めてしまえば、チーム内で「責任者がいない」ということを避けることができるでしょう。。
適切なコミュニケーションツールを導入する
適切なコミュニケーションツールを導入するのもおすすめです。
例えば、現在はビジネスでもチャット形式のツールが流行しており、直感的な操作でやり取りを進められます。
現状のメールのやり取りに不満がある場合は、ツールの導入を検討してみるといいでしょう。
緊急度と重要度に分けて発信をさせる
情報発信の際に、緊急度と重要度のマトリクスに分けて発信させることも大切です。
例えば緊急度の高い情報を発信する際は、まずは誰もがすぐにアクセスできるSNSで発信してみるのがいいでしょう。
また、重要度の高い情報に関しては、プレスリリースか記者会見、場合によっては株主総会で発表した方がいいでしょう。
このように緊急度と重要度によって、情報発信の手段が変わってきます。
そのため、いくつかの情報発信手段を持っておくことが重要です。
関連記事:【仕事】よいコミュニケーションとは?大切さ意味をドラッカーの名言から科学的に徹底解説!
マネジメントコミュニケーションに活用できるツール
マネジメントコミュニケーションに活用できるツールとして以下が挙げられます。
- Slack
- Chatwork
- Teams
- WEB会議
- 電話
- 報告書
それぞれ詳しく見ていきましょう。
Slack
Slackは2013年に公開されたチャットツールで、主にエンジニアやベンチャー企業で利用されています。
Slackの最大の特徴はスレッド機能とチャット機能の融合です。
チャット感覚で会話しながら、スレッドを立てることで建設的なコミュニケーションを進めることができます。
他にも数々のAPI連携が可能で、用途に応じて機能をカスタマイズすることも可能です。
ただし、機能が多すぎること、他の一般的なチャットツールに比べて使いづらい印象があるのがデメリットです。
特にスレッド機能に馴染みのない方が使いこなすのは難しいでしょう。
Chatwork
Chatworkは、中小企業向けのチャットツールです。
ファイル共有やビデオ通話はもちろんのこと、タスク管理のようなビジネス向けの機能が搭載されているのが特徴となっています。
デザインも非常に使いやすいです。
ただし、Slackのようにスレッドを立てることができないのと、複数のグループでのやり取りがやりづらいというデメリットがあります。
部署が複雑に絡まっているような組織には向かないでしょう。
Teams
TeamsはMicrosoftが提供しているチャットツールです。
Slackのようにスレッドを立てることも可能で、シンプルなデザインとなっています。
ただし、Microsoft以外の製品との連携が弱いのがデメリットです。
また、デザインはシンプルなものの直観的な操作はできず、使い勝手が悪い印象があります。
WEB会議
リモートワークが普及して最も話題になったのがWEB会議です。
これはディスプレイ上で会議することを指し、場所を問わずに会議できるのが魅力です。代表的なツールとしてはZoomが挙げられます。
その一方で、画質・音質が悪くなりがちなのと、対面での会議に比べて場の雰囲気が掴みづらいのがデメリットです。
関連記事:全社会議とは?web会議やオンライン上で行う注意点や目的・意味を解説
電話
電話も立派なコミュニケーションツールの一つです。
業務時間内であればいつでもアクセスできるのが魅力で、テキストに比べて感情や意図が伝わりやすいのも特徴でしょう。
ただし、相手との時間が合わないとやり取りが進められないのがデメリットです。
特に近年はフレックスタイムが導入されるようになっているため、相手と同じタイミングでやり取りすることは難しくなっています。
報告書
報告書もマネジメントコミュニケーションに応用できます。
例えば、管理職目線に立った時に「プロセスはどうでもいいから結果だけを知りたい」という場面があるかと思います。
そのような場合に報告書は便利です。一目で業務の顛末がわかるので、管理職側としてはインプットしやすいといえます。
一方で、報告書を作成する時間がもったいない点がデメリットです。
あまりにも時間がかかるのであれば、もっと他に生産性のある業務に取り組んだほうがいいでしょう。
マネジメントコミュニケーションの注意点・大切なこと
マネジメントコミュニケーションの注意点や大切なことは以下の通りです。
- 事実のみを「ホウレンソウ」させる
- 部下が報告しづらい雰囲気を作らない
- モチベーションマネジメントと切り分ける
それぞれ解説していきます。
事実のみを「ホウレンソウ」させる
マネジメントコミュニケーションでは、事実のみを「ホウレンソウ」させることが必要です。
主観的な感情が入ってしまうと、管理職が何が事実なのかわからなくなってしまいます。
例えば「顧客は急いでいるように見えました」という発言は、いつまでにほしいのかが明確になっていないため、上司も判断がつきません。
また、事実のみをホウレンソウさせることで、コミュニケーションの正確性が向上します。
そのため、情報共有のミスが減り、結果として生産性の向上も期待できるでしょう。
関連記事:報連相とは?目的やメリット、ポイントや必要なシーンを解説
部下が報告しづらい雰囲気を作らない
部下が報告しづらい雰囲気を作らないことも大切です。
特に、失敗に関する報告がやりづらい雰囲気になると、失敗に対する処理が遅れがちになり、業績低下に繋がる恐れがあります。
まずは、失敗を認める風土を作り上げることが大切です。失敗に対して感情をぶつけても、何も生まれません。
合理性のある意見だけを述べることで、建設的な議論が進められます。
そのため、管理職は感情の揺さぶりに惑わされず、事実のみを判断して仕事を進める能力が求められるでしょう。
モチベーションマネジメントと切り分ける
マネジメントコミュニケーションは、あくまでも仕事を進めるためのスキルであり、従業員のモチベーション向上が目的ではありません。
この点を履き違えると、マネジメントコミュニケーションを成功させるのは難しいでしょう。
例えば、マネジメントコミュニケーションをモチベーションマネジメントと同じにしてしまうと、仕事中の雑談が増える原因になりかねません。
雑談は休憩時間やプライベートの時間にすべきであって、仕事の時間では仕事のための会話を行うべきです。
マネジメントコミュニケーションに失敗したら
マネジメントコミュニケーションに失敗したのであれば、今一度立ち止まって改善案を作成し、そしてそれをまた実行しましょう。
そもそも、マネジメントコミュニケーションは非常に難しい能力だといえます。
後天的に成長させることができるとはいえ、先天的な性格や立ち振る舞いに影響されやすいからです。
そのため、失敗を気にする必要はありません。改善して失敗してを繰り返して、徐々にコミュニケーションの質を高めていきましょう。
マネジメントコミュニケーションにお勧めの本
マネジメントコミュニケーションを習得するのにおすすめの本は、『アサーティブ・コミュニケーション』(日経文庫)です。
本書はアンガーマネジメントの延長線上にあるアサーティブ・コミュニケーションに関する書籍で、相手を尊重しながらも自分の考えを主張する方法が紹介されています。
コミュニケーションに悩んでいる人は、一度本書を読んでみるといいでしょう。
関連記事:『伝わらない部下』には、「アサーティブコミュニケーション」で話が噛み合わせよう
よくある質問
ここでは、マネジメントコミュニケーションにおけるよくある質問に解答していきます。
ステークホルダーマネジメントとの違いは?
ステークホルダーマネジメントはプロジェクトに関わる全てのステークホルダーを管理することです。
そのため、コミュニケーション分野を管理するマネジメントコミュニケーションとは趣旨が異なります。
コミュニケーションマネジメント計画書とはなんのこと?
コミュニケーションマネジメント計画書は、プロジェクトマネジメント計画書の構成要素の一つで、メンバーやリーダーがどのように情報を発信したのかをまとめた書類のことを指します。
ステークホルダーがコミュニケーションに対して抱いているニーズや、情報伝達の責任者、情報伝達の手段・技術を記入します。
部下の良いところを伸ばすためのコミュニケーションは必要ですか?
弊社「識学」では不要だと考えています。
コミュニケーションは事実ベースで、基本は部下から報告させるのがよいでしょう。
まとめ
それでは本記事をまとめていきます。
- マネジメントコミュニケーションは情報伝達の管理のこと
- リモートワークの普及によってマネジメントコミュニケーションの重要性が高まった
- マネジメントコミュニケーションは、従業員のモチベーション向上が目的ではない
リモートワークの普及によってコミュニケーションの在り方が変わった今、マネジメントコミュニケーションが注目されるようになりました。
もし、コミュニケーションで課題を感じているのであれば、今一度、マネジメントコミュニケーションを見直してみてはいかがでしょうか。