目標設定は、従業員一人一人のモチベーションや成長、さらには組織としてのチーム力、そして企業全体の利益向上のためにも、非常に重要です。
しかし、「どうすれば適切に目標を設定できるのかわからない」という声も聞かれます。
そこで本記事では、目標設定を論理的に体系立てて考え、設定するためのフレームワークを紹介します。
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目次
目標設定におすすめのフレームワーク15選
早速、目標設定をする際におすすめのフレームワークを紹介していきます。
各フレームワークが持つ特徴や、どのようなシーンで役立つかを把握しましょう。
SMARTの法則|ドラッカー考案でチーム目標設定におすすめ
SMARTの法則は、経営学者として有名なピーター・ドラッカーが提唱した法則です。
チームで目標を設定する際に役立つ手法で、プロジェクトの過程においても、目標への到達度を客観的に判断しやすい特徴があります。
なお、「SMART」とは下記の頭文字を取ったもので、各項目を意識することで質の高いフレームワークが可能となります。
- Specific(具体的であること)
- Measurable(計測できること)
- Achievable(達成できること)
- Realistic(現実的であること)
- Time-related(期限があること)
例えば、「顧客満足度を上げる」などの抽象的な目標だと、達成や進捗の過程が分かりづらいです。
そこで、「解約率を10%以下にする」「今季の売上高を前年比5%アップさせる」など、具体的かつ計測しやすい目標を据えることで、進捗の把握なども容易になります。
HARDゴール|SMARTの法則により感情的メソッドを導入したい人におすすめ
HARDゴールとは、先述したSMARTの法則よりも感情面を考慮しているフレームワークです。
なお、「HARD」は下記の単語の頭文字を取ったものです。
- Heartfelt(心の底から)
- Animated(活気がある)
- Required(要求する)
- Difficult(困難)
HARDゴールは、「心の底から」目標を達成したいという強い意志を持ち、「活気」を持って仕事に取り組むことで、自身が理想としているキャリアを築くことができるという考えのもと進められます。
自身の理想を明確にイメージすることで、自分が目指しているキャリアや目標がブレなくなります。
また、目標や理想を達成するためには、「要求」されているスキルや能力を把握し、「困難」に直面した際の対処法を考えておくことが重要となります。
困難を乗り越えるために必要な知識やスキルを能動的に習得し、強い意志を持って目標達成を目指す際に活用できるメソッドです。
マンダラチャート|9×9の81マスで思考を整理したい人におすすめ
マンダラチャートとは、9×9の81マスにアイデアを書き込み、視覚的に思考整理を行うフレームワークです。
メジャーリーグで活躍している大谷翔平選手も、高校生時代にマンダラチャートを活用して、夢や目標に対する思考を整理していました。
なお、マンダラチャートでのフレームワークは下記の手順で行います。
- 縦3マス×横3マスの9マスのマス目を書き、中心のマスに思考や発想を深めたい課題を書く
- 課題を書いたマスの周りのマスに、課題に関連した語句を記入(例えば、中心に「キャリアアップ」と書いたら、周囲に「資格取得」「転職」などを書く)
- 9マスすべてを埋めたら、課題以外の8マスを中心としたマンダラを作成する(例えば、「資格取得」を中心とした周囲のマスに「FPを取得」「勉強時間を確保する」などを書く)
マンダラチャートを作成することで、視覚的に「自分のやるべきこと」が整理されます。
アイデアの量が増えて、問題解決や夢の実現のための具体的なアクションが把握できるので、ぜひ実践してみましょう。
KPIツリー|最終目標までの中間目標を可視化したい人におすすめ
KPIツリーとは、最終目標までの中間目標を可視化できるフレームワークです。
KPIとは、最終目的であるKGIを達成するための中間目標を指しており、複数のKPIを達成することで最終目的に到達できると考えるとわかりやすいです。
例えば、KGIが「純利益の増加」であれば、KPIとして下記のようなものが挙げられます。
- 売上の増加
- 契約件数の増加
- 経費の削減
KGI(最終目的)を出発点として、複数のKPIを分岐させて図式化(KPIツリーの作成)することで、やるべきことが明確になります。
中間地点であるKPIが達成されなければ、最終目標であるKGIは達成できません。
そのため、KPIツリーを多角的に捉えて、セクションごとにやるべきことを整理することで、会社全体の目標として設定したKGIの達成、成長を促進できるようになります。
関連記事:KPI・KGIの違いとは?KPI・KGIを設定する3つのメリットなどわかりやすく解説!
OKR|インテル社考案!評価制度を高速で回したい人におすすめ
OKRとは、GoogleやFacebookなどの世界的に有名な大企業が積極的に取り入れているフレームワークの手法です。
従来の計画方法と比較して、高い頻度で目標設定や振り返り、再評価ができるため、スピーディーに評価制度を回せる点が特徴です。
OKRでは、一つのO(目標)に複数のKR(主要な結果)が付随する図式となっています。
目標は数値などの具体的な指標である必要はなく、シンプルで覚えやすいものを設定し、かつ1カ月〜3カ月程度で達成できるようなレベル感が望ましいとされています。
ひとつの目標に対して、KRは2〜5つ程度付随するのが一般的で、各KRも「ベストを尽くせば達成できるレベル」が望ましいです。
目標設定をロジカルにでき、各社員のやるべきことが明確になり、エンゲージメント向上が期待できる点がOKRのメリットです。
関連記事:OKRとは?Googleやメルカリも採用している目標の設定方法や成功への道筋
PDCA|管理業務や品質管理の効率化をしたい人におすすめ
PDCAとは「PDCAサイクル」とも呼ばれていますが、下記のサイクルを繰り返すことで継続的な業務の改善を促すフレームワークです。
- Plan(計画)
- Do(実行)
- Check(評価)
- Action(改善)
目標を立てて、計画を実行し、「実行した結果の有効度」「他に良い方法がないか」という評価をします。
その上で、必要に応じて改善を行い、また第1段階である計画から始まるというサイクルです。
PDCAはトヨタやソフトバンクで導入され、その他にも多くの企業で導入されています。
社員の目標ややるべきことが明確になったり、課題が分かりやすくなる点が特徴です。
関連記事:効果的なPDCAとは?失敗要因やデメリット、対策方法を解説
MBO|チームの目標達成度を個人で管理したい人におすすめ
MBOとは、企業全体ではなく、個人やグループごとに設定した目標の達成度を管理するフレームワークです。
各社員が目標を設定し、達成するために要した時間や出した成果を社員自らが振り返ります。
なお、MBOは下記の3つのタイプに分類されており、各企業で最適な方法を導入することが重要となります。
- 組織活性型:社員自らが目標を設定し、個人個人の自主性を引き出すボトムアップ形式
- 人事評価型:各社員が年度目標の課題を設定し、目標達成度と業務の評価を行う
- 課題達成型:会社全体の目標を部門目標に分け、さらにチーム目標、個々人の目標へと落とし込むトップダウン形式
自己管理によるマネジメントが可能となり、人材育成を通して目標達成のための具体的施策を作りやすい点がメリットです。
目的目標の4観点|目標達成において挫折したくない人におすすめ
目的目標の4観点は、達成したい目標を設定した上で、目標達成のための道筋を立てていくフレームワークです。
- 他者有形
- 自分有形
- 他者無形
- 自分無形
という4つのマトリクスに分けられており、他者軸と自分軸で、それぞれ有形の成果と無形(感情など)の成果にも目を向ける点が特徴です。
「他者無形」を高めると「自分有形」へのモチベーションが高まり、「自分有形」の目標に向かう過程において、「自分無形」が高まることで「他者有形」を実現したいモチベーションが高まると考えられています。
GROWモデル|部下を自発的に動かしたい上司におすすめ
GROWには「育つ」という意味がありますが、GROWモデルは上司が部下に対して自発的な行動を促すアプローチです。
GROWモデルでは、上司から部下自身が自分で気付きや学びを得られるようにサイクルを回していきます。
なお、GROWは下記の頭文字から来ています。
- G:Goal(目標の明確化)
- R:Reality/Resource(現実の把握)
- O:Options(選択肢の創造)
- W:Will(行動計画と目標達成の意志)
GROWモデルでは、部下の自主性や主体性を高め、責任を全うする力を養うことができます。
また、上司のマネジメント力アップも期待できるでしょう。
ルーティンチェックシート|1日の流れを視覚的に捉えたい人におすすめ
ルーティンチェックシートとは、目的や目標を達成するために必要な行動をルーティン化し、毎日実践するためのフレームワークです。
ルーティン行動を日々実践することが目標を達成する上で重要ですが、ルーティンチェックシートは日々のルーティンを定着させるために役立ちます。
ルーティン化する行動は具体的に表現し、ルーティンが実践できたか否かは「〇✕」でシンプルに評価します。
なお、ルーティンチェックシートの達成率が86%以上になると「目標達成はほぼ見えてくる」という位置づけなので、達成率86%が一つの基準となります。
ルーティンチェックシートは1ヵ月周期で振り返り、必要に応じて再度ルーティン行動を再設定するサイクルで進めましょう。
ベーシック法|最も基礎的な目標設定をしたい初心者におすすめ
ベーシック法は他の方法にも通じるフレームワークで、様々な目標設定の手法の中でも最も基礎的なものです。
ベーシック法では、目標設定の手順が「目標項目」「達成基準」「期限設定」「達成計画」の4つのステップで構成されています。
各ステップにおいて、社員自らがしっかりと考えることができれば具体的な目標が出来上がるでしょう。
なお、目標を設定する際は高すぎる目標を避けることと、定期的に振り返ることが重要です。
振り返りを行う頻度は週に1回程度が目安となります。
振り返りの際に仕事の進捗が遅れていることが判明したら、早めに行動計画を修正するなどの微調整を行うことで、達成率を上げることができるでしょう。
三点セット法|ベーシック法で物足りない中級者におすすめ
三点セット法も、ベーシック法と同じく目標設定の基本的な考え方が基本が盛り込まれたフレームワークです。
ベーシック法をさらに深掘りしている点が特徴で、三点セット法では「テーマ」「達成レベル」「達成時期」の3項目を具体的に設定していきます。
目標設定を失敗しないためには、まずは会社の全体目標に関連した目標を据えることを意識しましょう。
自分が取り組んでいる仕事が、自己成長だけでなく会社のためになっている実感を得ることができれば、仕事へのモチベーションも高まります。
また、必要に応じてフィードバックをもらうことで目標達成に近付くことができるので、上司や先輩とのコミュニケーションも意識しましょう。
ランクアップ法|ベーシック法と組み合わせて質を高めたい人におすすめ
ランクアップ法は、ベーシック法と組み合わせることで高い効果を発揮するフレームワークです。
ランクアップ法では、下記の6つの要素から目標項目を設定します。
- 改善
- 代行
- 研究
- 多能化
- ノウハウの普及
- プロ化
課題を改善するための目標設定を行い、その後は上司や先輩などの「自分よりランクが高い人」の仕事を代行できるレベルを目指していきます。
次のステップとして、新たなスキルや能力を習得して多能化を目指し、大きな自己成長を目指していきます。
自身がレベルアップしたら、後輩や部下も習得できるようにノウハウを普及させつつ、自分は最終的に「プロ」のレベルを目指す流れです。
ベーシック法と組み合わせ、目標設定の質を高め、より自己成長につなげたい人におすすめの手法です。
ベンチマーク法|明確に目指すべき競合がある人におすすめ
ベンチマークには「指標」という意味がありますが、ベンチマーク法では「既に成功しているモデルを参考にしながら目標設定」をします。
参考にするモデルを決めておくことで、目標が立てやすくなり、着実にレベルアップができるようになります。
自分だけで目標設定ができなかったり、また効果的な目標設定ができない人におすすめのフレームワークです。
なお、参考にするベンチマークは様々ですが、下記の3つが代表的です。
- 内部ベンチマーキング(自社内の部署や先輩社員を参考にする)
- 競合ベンチマーキング(競合他社を参考にする)
- 機能ベンチマーキング(異業種のベンチマークを参考にする)
期中設定法|都度目標を設定して柔軟に対応したい人におすすめ
期中設定法とは、都度目標を設定して柔軟に対応したい人や、未知の状況から高い目標を設定したいと考えている人におすすめのフレームワークです。
期中設定法では、曖昧な目標を設定しておき、必要に応じて都度目標を調整します。
調整を行う段階で仕事の進捗を確認し、仕事の進め方や達成基準などを決めていきます。
最初から明確な目標設定をする必要がないため、気軽に目標を作りやすい点や軌道修正しやすい点がメリットです。
初めは「抽象的な目標」を設定し、定期的に振り返りながら目標を具体化することを意識しましょう。
NLP式目標設定法|脳科学や心理学を駆使して大きな成果を生み出したい人におすすめ
NLP式目標設定法とは、「Neuro(神経)」「Linguistic(言語)」「Programming(プログラミング)」の3つの視点からアプローチするフレームワークです。
NLP式目標設定法で目標を設定すると、具体的な将来のイメージ作りを通して目標達成のためのモチベーションの向上に繋がります。
なお、NLP式目標設定法の手順は下記の通りです。
- 肯定的な言葉で目標設定する
- 目標を具体的にする
- 目標達成後の自分をイメージする
- 目標達成に必要なものを確認する
- 目標達成にあたって直面する障害や課題を特定する
- 設定した目標をより高度にする
脳科学や心理学のアプローチを通じて目標設定をしたい人は、活用すると良いでしょう。
まとめ|あなたにあったフレームワークを発見しよう
紹介してきたように、各フレームワークに特徴があるため、自分自身に合っているフレームワークを発見することが重要です。
もちろん、いきなり自分に合ったフレームワークを見つけることは難しいため、いくつか実際に試しながら最適なものを選びましょう。
良質な目標設定ができれば、仕事のモチベーションが保ちやすくなり、結果的に自己成長にも繋がりやすくなります。
紹介してきたフレームワークは、仕事以外にも多くのシーンで使えるため、ぜひ様々な場面で活用してみてください。