近年、少子高齢化や女性の社会進出が進むなかで、子育てや介護と仕事の両立が困難な時代となっています。
この傾向は今後も増加すると想定されており、現代社会の課題のひとつです。そこで知っておきたい法律が「育児・介護休業法」です。
2021年に改正されて2022年に施行されますが、その実態について正しく把握しているでしょうか?
そこで本記事では、育児・介護休業法の概要や改正のポイント、従業員の取得率向上によって企業が得るメリットや課題を解説していきます。
目次
育児・介護休業法とは
育児・介護休業法とは、子育てや介護をする必要がある労働者のために、仕事と両立できる環境を整え、仕事を継続できるようにサポートするための法律です。
正式には「育児休業、介護休業等育児又は家族介護を行う労働者の福祉に関する法律」といいます。
本法律に基づく制度としては「育児休業制度」と「介護休業制度」があります。
育児休業制度
育児休業制度とは、子どもを育てる労働者が法律に基づいて取得できる休業制度です。
1歳未満の子どもを育てている労働者が対象となり、女性だけではなく男性も対象となります。しかし、休業期間は男女で異なっており、
- 女性は産後休業が終わった日の翌日から、1歳の誕生日の前日まで
- 男性は子どもが生まれてから、1歳の誕生日の前日まで
となっています。
介護休業制度
介護休業制度とは、介護が必要な家族を介護する際に取得できる休業制度です。
休業期間は、介護が必要な家族1人につき3回までとされており、合計で93日まで取得できます。
育児・介護休業はどれほど普及しているのか
実情として、現状、育児・介護休業はあまり取得されているとはいえません。
厚生労働省の「令和2年度雇用均等基本調査」を見てみると、女性の育児休業取得者は87.5%ですが、男性は15.8%とほとんど取得できていません。
つまり、女性の育児負担が軽減されていないことがわかります。しかし、男性の取得率は年々増えつつあり、今後も少しずつ改善していくことが期待できます。
(参考:令和2年度雇用均等基本調査丨厚生労働省)
介護休業の取得率
大和総研の「介護離職の現状と課題」によると、2017年時点で介護休業制度を利用している労働者は全体の1.2%ほどでした。介護休暇制度など、介護休業以外の制度利用者をあわせても8.6%ほどです。
つまり、介護が必要な家族がいる労働者のおよそ9割が、制度を使わずに介護をしているということになります。
(参考:介護離職の現状と課題丨大和総研)
育児・介護休業の取得率が低い理由とは
では、なぜこれほどまでに取得率が低いのでしょうか? その理由としては下記のようなものが挙げられます。
- 収入が減ってしまう
- 職場に迷惑をかけたくない
- 休業制度の利用に対する無理解
- 介護サービスが不十分で人に任せられない
- 「職場に居場所がなくなるのではないか」という不安
人手不足が深刻化するなかで、自分が抜けると職場に迷惑がかかってしまう場合、休業制度を利用しにくいでしょう。
また、職場の人々の育児・休業制度に対する無理解によって、取得に対して抵抗を持ってしまうケースもあります。
育児・介護休業法の改正されたポイントとは
育児・介護休業制度の取得率が一向に上がらないことを受けて、2017年と2021年に改正が行われています。
2017年の育児・介護休業法改正
2017年には下記のような改正が行われました。
- 半日の休暇取得が可能に
- 子どもの対象範囲の拡大
- 年間93日の介護休業を、年間3回の分割取得が可能に
- 介護休業給付金率が40%から67%に引き上げ
- 介護による短縮勤務の措置期間の拡大
- 同居、扶養していなくても介護休業の対象に
2021年の育児・介護休業法改正
2021年には下記のような改正が行われました。
- 労働者が休業申請・取得をしやすい雇用環境整備の義務化
- 妊娠や出産をした労働者に対して、育児休業について周知し取得意向の確認の義務化
- 有期雇用労働者の育児・介護休業取得要件の緩和
- 産後パパ育休(出生時育児休業)の創設
- 育児休業の分割取得
(参考:育児・介護休業法のあらまし丨厚生労働省)
従業員に育児・介護休業を取得させるメリットとは
育児・介護休業の取得率を上げることは従業員や社会のためだけではなく、企業にとっても下記のようなメリットをもたらします。
- 従業員とその家族との信頼関係を築くことができる
- 従業員の働く意欲が上がる
- 企業の印象が良くなる
- 国からの助成金制度を利用できる
育児・介護休業を積極的に取得してもらうことで、企業と従業員との関係が良くなり、働くモチベーションアップにもつながります。
また、国は取得率向上を目指して助成金を出しているため、利用しない手はないでしょう。
(参考:事業主の方への給付金のご案内丨厚生労働省)
育児・介護休業に伴うデメリットとは
従業員に取得してもらうことでメリットもありますが、その一方で下記のようなデメリットもあります。
- 人手不足に陥る
- メンバーから不満の声が上がりチームワークが乱れる
- 復帰した従業員への対応やフォローアップが必要
このように、さまざまな側面において課題が生じる可能性があるため、一つひとつ対応していかなければならないでしょう。
まとめ
育児・介護休業法は今後従業員が勤務をするうえで欠かせない法律となる可能性が高いです。
ただし、休暇ばかりが増え従業員の生産性が下がってしまうのでは、と考える経営者の方も多いでしょう。
そこで今後はより一層、従業員の生産性を上げるための組織作りが急務になります。
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