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「コミュニケーション不足の事例紹介」リスクを軽くみすぎていませんか?

「コミュニケーション不足の事例紹介」リスクを軽くみすぎていませんか?

ビジネス・コミュニケーションの重要性を知りながら、上司と部下の意思疎通や、他部署との連携が取れていない企業は少なくありません。
ある調査によると、「部門間コミュニケーションに問題あり」と答えた人は7割に達しました。
多くのビジネスパーソンが、コミュニケーションは重要と知りながらそれを実行できていないのは「コミュニケーション不足のリスク」を認識できていなからではないでしょうか。
コミュニケーション不足のリスクには、金銭的な損失も含まれます。
コミュニケーション不足の実態を紹介したうえで、そこにどのようなリスクが潜むのか解説します。

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コミュニケーション不足の実態と損失【データ編】

企業におけるコミュニケーション不足の実態と、コミュニケーション不足が招く損失をみていきましょう。

人事業務関連サービスを提供しているProFuture株式会社によると、「社内のコミュニケーションに課題がある」と認識している企業は8割に達します[1]。
そして「課題のあるコミュニケーション」を尋ねたところ、「部門間、事業所間」が7割、「経営層と社員の間」が半数に達しました。
業務内容や働く場所や地位が異なると、コミュニケーションが薄れることがわかります。

 

企業におけるコミュニケーション不足は、単に「不仲」や「不快」で済む問題ではありません。
従業員どうしが連携することで生産性が現行より2025%向上し、その効果は年間約140兆円になる、というアメリカの調査もあります。
これもアメリカでの調査ですが、社内コミュニケーションの弊害によって従業員1人当たり年約300万円の損失を生んでいます[2]

コミュニケーション不足のリスクとは、利益を獲得し損なうリスクであり、金銭的な損失を被るリスクです。
つまり、従業員どうしが不仲だと企業はお金を失い、従業員どうしが意思疎通を図り始めると企業は儲けることができる、というわけです。

それでは次に、コミュニケーション不足の具体事例を紹介しながら、それが金銭的な損失を生むメカニズムを確認していきましょう。

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【事例1】顧客満足度を低下させるリスク

社内コミュニケーション不足を解消したことで、顧客満足度を回復させて企業を紹介します。
この卸売会社は、国内の複数の拠点間の業務連絡が滞る課題を抱えていました。その結果、顧客のリクエストに十分に対応できていませんでした。
そこで卸売会社は、KDDILINEと共同開発した「ビジネス版LINE」を導入しました。LINEは多くの社員たちがプライベートで使っているので、ビジネス版LINEの導入はスムーズに進みました。
業務連絡が滞る課題を解決できただけでなく、現場の声が本社に届きやすくなりました。その結果、顧客満足度は回復しました[3]。

この事例のポイントは、ビジネス版LINEというツールがコミュニケーションを増やした点です。ビジネス版LINEは有料サービスなので、この卸売会社は社内コミュニケーションの解決にコストをかけたことになります。
社内コミュニケーション不足は、会社が戦略的に投資するなどして動かなければ解決しにくいことがわかります。
また、ひとつのツールで社内コミュニケーションが変わることがあることもわかります。

この事例には、もうひとつポイントがあります。
それは卸売会社が、顧客満足度の低下が社内コミュニケーション不足に起因していることに気がついたことです。
顧客満足度の低下を、顧客と直接コンタクトする部門だけのせいにする企業もあります。しかしこの卸売会社は、現場の社員の声に耳を傾けることが、顧客の信頼を回復させる近道であると見抜きました。この洞察力は、多くの企業の参考になるはずです。

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【事例2】非がないのに損失を被るリスク

社内コミュニケーション不足には、「非がないところに煙が立つ」リスクがある、というユニークな指摘があります。
「火がないところに煙は立たぬ」は、煙が存在する以上、必ずどこかに火種はある、という意味です。
この指摘は「火」を「非」で文字っているわけですが、企業が抱えるトラブルの場合、その企業に非がないのに煙が立ってしまうことがある、というのです。
そしてそれが、社内コミュニケーション不足に起因する、というのです。

この指摘をしているのは、世界最大のコミュニケーション・コンサルティング・ファームであるフライシュマン・ヒラードの日本法人代表、田中愼一氏です[4]
田中氏は「非がないところに煙が立った」事例として、北米で発生した日系自動車メーカーの大規模リコール問題を引用します。
この問題は1社のトラブルにとどまらず、日本製品の安全神話すら揺るがしかねない事態に発展してしまいました。

発端は、日系自動車メーカーの自動車が北米で「暴走」し4人が死亡した事故でした。アクセルを踏んだときに戻らなくなる可能性が指摘され、大規模リコールになりました。
しかしこれは結局、濡れ衣であることがわかりました。
事故を起こした人は、フロアマットを2枚重ねにしていて、それがアクセルに干渉し「暴走」を招いたのです。車の欠陥ではありませんでした。

田中氏は、非がなかったのに大規模リコールにまで発展してしまったのは、日系自動車メーカーの対応のまずさに原因があったと指摘しています。
日系自動車メーカーは「暴走死亡事故」が起きた当初、十分な説明をせず、沈黙していました。非がなかったので、当然といえば当然です。
しかし日系自動車メーカーはその後、事態が大きくなりそうな雰囲気を察知すると、情報を発信し始めました。
そして明確な社会問題になってから、社長が渡米して議会で謝罪しました。

「沈黙」「情報発信」「社長の謝罪」という一貫性のない行動が、非がないのに非があるようにみられて大問題に発展してしまったわけです。

田中氏は、企業がいわれのない非難を受けないようにするには、一貫性のある行動が必要であると指摘しています。
そして、一貫性のある行動を取るには、情報受信と状況分析とメッセージ発信を一元化して、そのすべてを統括する部門を設け、その部門をトップの直属にする必要がある、とも指摘しています。

なぜ、一元化とトップ直属部門が必要なのかというと、情報がトップに上がるまでに、社内の関係者が情報に「色」を付けてしまうからです。社内の各部門にはしがらみがあるので、情報を捻じ曲げて上に伝えてしまう可能性があります。
情報に色が付いてしまうのは、社内コミュニケーションにも一因があるでしょう。

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【事例3】人的パワーを失うリスク

社内のコミュニケーション不足は、仕事の重複や仕事の漏れを招くリスクがあります。それは人的パワーを失うことを意味します。

63%もの社員が、自分の仕事に「無駄な業務」があると認識している、という調査結果があります[5]。
そして、その無駄は「企業の慣習による業務遂行」「自動化できそうなのに手作業をしている」「付き合い残業や不必要な残業」から発生している、といいます。

同じ調査では、「無駄のない業務のために勤務先が工夫していること」も尋ねています。そのトップ3は次のとおりでした。
1位:一定時間で短い休憩がある(27%)
2位:進捗を定期的に共有し、遅れ気味なところはメンバー内でフォローする(23%)
3位:効率化を図るためのミーティングが定期的にある(22%)

2位と3位はコミュニケーションの充実に他なりません。
これらの調査結果から、次のことを導くことができるでしょう。

・進捗を定期的に共有しないと、無駄な業務が発生する
・ミーティングを定期的に開かないと、無駄な業務が発生する

チームの一員が、他のメンバーの状況を把握していないと、「やっていると思ってやらないこと」や「やっていないと思ってやってしまうこと」が発生するのは、想像に難くありません。

冒頭で、「社内コミュニケーションの弊害が従業員1人当たり年約300万円の損失を生んでいる」というアメリカの調査結果を紹介しましたが、企業の経営者や管理職は、「無駄な業務」の積み重ねが300万円に膨らむ可能性がある、と考えるべきでしょう。
そして「進捗の定期的な共有」や「遅れている人へのフォロー」「効率化を図るためのミーティング」といった社内コミュニケーションこそが、300万円の損失を減らす第一歩になることもあわせて覚えておきたいものです。

 

まとめ 良好な人間関係は「平時」に築く

コミュニケーションの重要性を理解しながら、実際の行動ではコミュニケーションを軽視してしまうのは、コミュニケーション不足のリスクを「我が事」に感じられないからでしょう。
それは、会社の損失が、社員にとって「他人事」になっているからではないでしょうか。

3つの事例を紹介して、コミュニケーション不足が会社に金銭的な損失をもたらしたり、コミュニケーションを充足させると業務がスムーズに進んだりするメカニズムを確認しました。
他人事を我が事にするには、「今あの人とコミュニケーションを深めておかないと、会社に損害を与えてしまう」という危機感を、社員1人ひとりが持たなければなりません。

トラブル発生時は、関係者は感情的になりやすいので、そのときになってあわててコミュニケーションを構築しようとしてもうまくいかないでしょう。
トラブルが起きていない「平時」にこそ、コミュニケーションを深めていく必要があります。

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参照
[1]「社内コミュニケーションに関する調査」結果報告(HRpro
https://www.hrpro.co.jp/research_detail.php?r_no=153
[2]職場コミュニケーション不足は「数千万円の損」? 米IT企業が取り組む“意識改革”(ITmedia NEWS
https://www.itmedia.co.jp/news/articles/1710/11/news033.html
[3]<ビジネス版LINE>で社内外のコミュニケーションが進化! 顧客満足度向上に直結(KDDI)
https://www.kddi.com/business/column/20170526/cs-hattool-successfulcase/
[4]フライシュマン・田中慎一代表「トヨタ事例に見る国際社会のリスク・コミュニケーション」(
GLOBIS知見録)
https://globis.jp/article/2328
[5]63%の勤務先で無駄な業務あり!2人に1人が勤務先に「情報共有の仕組みづくり」を希望その他”AI・業務ツールの導入”や”コミュニケーション機会”なども(FNN PRIME
https://www.fnn.jp/posts/000000622_000002302PRT

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