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大企業病から脱する方法

本記事では「大企業病」を取り上げ、それがどういう病かを説明した後、いかにして脱すればよいか述べたいと思います。

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大企業病とは


大企業病とは、組織が小規模だったときには発生しなかったさまざまな問題のことを指しています。下記がその典型例です。

  1. 指示命令系統の機能不全
  2. セクショナリズム
  3. ポスト不足・幹部職の停滞・管理職の無能化

まずは①です。スタートアップ企業などでは、意思決定者である経営者と現場の従業員の距離が近く、例えば、

現場「この件は今示したプランで進めたいと思います。よろしいでしょうか」
意思決定者「はい。それで進めてください」

とだけで終わる話が、組織の階層が増えていくことで最終的な承認までに膨大な時間がかかってしまったり、あるいは現場担当者の意図が間違った内容で上層部に伝わってしまい、その状態のまま意思決定がなされてしまったりするといった症状です。意思決定者側から降りてくる内容も当を得ないものになることで、現場が上層部に不信感を持つケースもあるでしょう。

②は派閥主義や縦割り主義といった意味合いで使われることが多い言葉で、要は「自分たちの組織や部署さえよければそれでいい」という考えです。全体最適を考えず、他部署との協力や連携がおろそかになる、あるいはそうした横のつながり自体を拒否するようになります。

ただ、見方を変えれば、セクショナリズムの弊害が発生していたとしても、企業全体としての価値提供がなされていれば存続できるというのは、大企業の強みでもあると言えます。もちろん、セクショナリズムがないに越したことはありませんが。

③は、大企業に見られるピラミッド型の組織でよくある問題です。立場が上がれば上がるほどポストが空いていません。そこに、『ピーターの法則』で書かれているように、管理職の無能化が起きると、組織の生産性がさらに低下していくということです。

すべての人は昇進を重ね、おのおのの無能レベルに到達する。ピーターの必然―やがて、あらゆるポストは、職責を果たせない無能な人間によって占められる。仕事は、まだ無能レベルに達していない人間によって行なわれている。
※ローレンス・J・ピーター、レイモンド・ハル『ピーターの法則 創造的無能のすすめ』ダイヤモンド社 2003年

脱大企業病へ


では、先に挙げた大企業病の症状を解消するためにどのようなことが必要でしょうか。一つずつ考えていきましょう。

上司は感情で判断しない


①から見ていきます。本来、各階層が事実を正確に伝えようとすれば意思決定者へ伝わる内容は最初から最後まで変わらないはずですが、例えば現場で何らかのトラブルが発生した場合、その事実を上司に伝えることによって、「問題を起こしてしまっている責任が自分にあることを自ら証明することになるのではないか」とか、「自らの評価が下がってしまうのではないか」と部下が考えてしまうと、事実を捻じ曲げて報告したり、あるいは報告そのものを怠ったりしてしまうのです。

これには二つの原因があります。一つ目は、その部下が上司に気に入られなければならないと考えていることです。上司が気に入らない情報は、加工しなければそのまま報告できないというわけです。

二つ目は、情報をどのように扱うべきかを組織内で明確に定めていないことです。社員が正しい情報の重要性を軽視してしまっているのです。

これらを解決するために、まずは、起きている事実を正確に伝えることでしか意思決定者は正しい判断を下せないという前提に、社員全員が立たねばなりません。上司は感情で物事を判断せず、事実の報告を何よりも重視する必要があります。

その上で、現場で起きている事実を報告し、それを改善する意思決定を上司にしてもらわないと自分たちが責任を果たせず評価が下がる仕組みにすればよいのです。

自部署の成績が会社の利益につながっているかを評価する


次は②への対処です。これは各セクション自体が問題なのではなく、各セクションを統括する責任者に問題があります。

そもそもセクションというのは機能を明確に分けた結果の形態であり、本来機能性に優れているのです。全体最適を実現するための部分最適になっていれば、セクショナリズムに問題はありません。

ここでは、評価制度のなかに「自部署の成績が会社全体の利益につながっているか」という視点を入れるとうまく機能します。いくら自部署の成績がよくとも、それが全体の利益に結び付かないと評価が下がる、ということになれば、組織内で改善しようとする作用が自然と働くはずです。

あくまで評価は結果で


③は、非プロセス主義的な評価制度を導入することで解決を目指します。これは先の二つの問題の解消にも通ずることです。それぞれのポジションに求められる役割を明確化することによって、現ポストでの業務をこなせているかをプロセスではなく結果で評価するのです。

こういうことを述べると、「過去の経歴はどうするのだ」とか「情はないのか」といった声が挙がってきそうですが、そういうことを言っているから大企業病になってしまうのです。組織が大きくなると、個々の存在が相対的に小さくなり歯車化してしまうことで、個々の働きがファジーになりがちです。そこに大きなムダがあるわけですが、大企業病にかかっている組織で働いている人たちはそのファジーさこそが大企業を支えているとすら思っているのかもしれません。

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