ビジネスにおける成果は何に左右されるのでしょうか。ある人は環境といい、ある人は運だといいます。
そしてそのひとつの要素には、「マインド」があるかもしれません。そう書くと自己啓発のようで抵抗がある人もいるかもしれませんね。
しかし、ビジネスにおいてマインドほど大切なものはありません。考え方次第で、大きな成果を挙げることもでき、また反対に挫折を味わうこともあります。今回は、そのマインドひとつで大きく成果が変わっていくことを確認していきます。
目次
成果につなげるマインドとは?
マインドセット研究の第一人者、スタンフォード大学のキャロル・S・ドゥエック教授のベストセラー『マインドセット 「やればできる!」の研究』によると、マインドには「硬直マインドセット(Fixed mindset)」と「しなやかマインドセット(Growth mindset)」があるとされます。
硬直マインドセットは失敗を極度に恐れチャレンジせず、しなやかマインドセットは失敗を成長の糧と捉え、さらに新しいことにチャレンジする、そう定義されています。そして、成長マインドセットは学習で身につけることもできるため、成長していこうと呼びかけます。[1]
このように、生来のものではなく学習で人生が変えられるという言説には勇気づけられるものです。
自己啓発の有用性
さて、成果はマインドひとつというと、とても自己啓発的で敬遠される方もいるかもしれません。
そこでまず、この自己啓発の興りを確認してみましょう。橘玲氏の『上流国民/下流国民』によると、自己啓発は自己責任や自己実現に起源を持つとされます。
こうした「自己実現=自己責任」の論理は1960年代になると「自己啓発」として、アメリカで花開くことになります。資本主義を肯定し、自由な社会で「自分らしく」生きることを称揚するこの新しい思想[2]
と書かれています。
資本主義を肯定し、自分らしく。これはまさにアメリカ的な自己啓発であり、日本のビジネスパーソンの間でも人気の考え方ではないでしょうか。
マインドひとつで大きく変わった例
少し昔の話で恐縮ですが、1995年に野茂英雄選手がメジャーリーグに挑戦しました。当時の日本野球界には、「日本人がメジャーリーグに挑戦するなんて」という硬直マインドが蔓延していました。野球界だけでなく、メディアも、応援するわたしたちも、同じように感じていたのです。野茂選手がメジャーに挑戦するときは大変なバッシングを浴びたのでした。
しかし、野茂選手がトルネード投法で大人気となり、結果を出したことで、球界のマインドは大きく変わりました。今では、野球選手がメジャーリーグに挑戦するのはもはや当たり前のマインドセットです。これは、野茂英雄という偉大な挑戦者によって、球界だけでなく日本全体のマインドセットが180度、完全に逆に変わった証拠ではないでしょうか。
2017年に、アスリートであり哲学者の為末大氏は、メルマガでそう指摘しています。[3]
マインドを変えるペップトーク
では、マインドを変えていくにはどうしたらいいのでしょうか。
具体的には、まず言葉を変えてみることだと考えられます。ひとつのヒントとして、『ペップトーク』をみていきます。
ペップトークとは、pep(元気)、pep up(元気づける)を語源に持つ言葉で、こちらもアメリカで生まれたトーク術です。たとえば、映画でもこのペップトークをみかけることがあります。『インディペンデンス・デイ』では、出撃するチームに対して、大統領がペップトークで励まします。
7月4日、“人類”という言葉は新しい意味を持つ(中略)それが今日、我々が称える人類の独立記念日だ
という言葉で、皆を鼓舞するのです。[4] これからどうなるかわからない戦いを前にして、この戦いには意味があること、その意味性に注目して、7月4日(独立記念日)にかけて、スピーチをしています。これはストーリー上、7月4日なのですが、7月3日だったらきっと「明日のために」とか、7月5日だったら「次の日に意味がある」とかのペップトークになっていたかもしれません。
営業の神様が教えるペップトーク
さらにペップトークにはマインドを変えるパワーがあります。マインド次第で成果が大きく変わった例として、営業マンの浅川智仁氏が書かれた『お金と心を動かす会話術』では、営業の神様ブライアン・トレーシーのペップトークが紹介されます。
営業のセールス電話をいやいやかけているチームがあったとき。少しも成果が上がらず、「硬直マインド」になってしまって、余計に成果が上がらないというダメなスパイラルに陥っていました。そこでトレーシーは
「午前中、最初に50人に断られた者に、最高級のランチをごちそうしよう!」
と宣言したのです。すると電話をかける営業パーソンたちのマインドが変わって、断られても喜ばしく感じ、どんどん電話をかけるようになったので結果として全体の成果が伸びたという話です。[5]
このような事例からも、マインドひとつで成果が大きく変わることが理解できるのではないでしょうか。
ただマインドを変えただけで住みやすくなる
筆者の個人的な体験談になりますが、マインド一つで大きく変わったことがあります。筆者はライターをしているので、さまざまなコンテンツをお客様に納品しています。ただ、フリーランスであるがゆえに受注は不定期なので売上には波があるのです。
そこで受注の“谷“のときに馴染みのお客さんに「お手伝いできることないでしょうか?」とうかがうと、先方は少し無理して仕事を作って発注してくれました。非常に感謝しています。よって近所のレストランでカフェタイムががらがらだったとき、あえてドリンクを意味なくオーダーして売上に貢献することとしました。
すると、レストランの店員さんからの扱いが格段に良くなり、空いているときには仕事もしやすくなり、非常に利用しやすくなったのです。たった540円のドリンクでしたが、筆者の「ちょっとした売上貢献」の気持ちが伝わったのです。もちろん、その気持ちは筆者が自分のお客さんからいただいたものでした。
そのレストランは建て替えをしたばかり。いくら人気レストランですぐに回収できるとはいえ、莫大な費用がかかっているでしょうし、人件費もある以上、アイドルタイムには危機感を覚えるはずです。
そこで、筆者はそれ以降、混雑するピークタイムではなく、客足が引いたランチとディナーの間のタイミングや、雨が降って客足が衰える日にそのレストランへ行き、席を埋めて売上に貢献しています。
まとめ
今回はビジネスだけにとどまらず、野球に映画にレストランにとさまざまな例を引きながら、マインドひとつで成果(結果)が大きく変わるという話をみてきました。マインドを変えるには、“セルフ”ペップトークもいいとされます。とにかく、心持ちを変えると世界が変わって見えるのです。
世界の見方が変わると、ビジネスで出る結果も変わります。私たちはみな、同じ世界を生きながら、同時代人の間に結果を出せる人と出せない人に、残酷にもわかれてしまいます。何が成果をわけるのか。それはマインドにほかなりません。
[adrotate group=”15″]書き手:名もなきライター
参照
[1]キャロル・S・ドゥエック『マインドセット 「やればできる!」の研究』
[2]橘玲『上流国民/下流国民』
[3]http://tamesue.jp/blog/archives/think/201700324
[4]映画『インディペンデンス・デイ』
[5]浅川智仁『お金と心を動かす会話術』