近年「エシカル消費」という言葉を見聞きするようになりました。
多くの消費者がエシカル消費に注目しているため、企業も無視できなくなってきています。
しかし、エシカル消費について正しく理解している人はまだまだ多くはありません。
そこで本記事ではエシカル消費に関する基本的な知識から、エシカル消費の重要性、具体例、SDGsやESG投資との関係などを解説していきます。
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目次
エシカル消費とは?
エシカル消費の「エシカル」とは英語では「ethical」といい、直訳すると「倫理的な」という意味になります。
「倫理」とは、人々が社会生活を送る上で「これは善いことか」「これは正しいか」と判断する際の根拠です。言い換えると「法的な拘束はない場合でも多くの人が正しいと感じていること」となります。
では、エシカル消費、すなわち「倫理的な消費」とは何かというと、環境問題や人権に配慮して購入・消費する商品やサービスを選ぶことを指しています。
(参考:エシカル消費とは丨消費者庁)
エシカル消費とSDGsの関係
近年、エシカル消費と並んで「SDGs」という言葉もよく耳にするようになりました。
SDGsとは「Sustainable Development Goals」の略称であり、日本語では「持続可能な開発目標」といいます。
SDGsでは「貧困をなくそう」や「飢餓をゼロに」、「質の高い教育をみんなに」といった国際社会全体が目指すべき目標を17個設定しています。
例えば、私たちがエシカル消費をすることで、目標2「飢餓をゼロに」、目標13「気候変動に具体的な対策を」、目標16「平和と公正をすべての人に」といった目標に貢献することができます。
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エシカル消費を意識しないとどうなるのか?
あなたは普段買い物をしたりモノを消費する際に、それがいつ、どこで、誰の手によって、どのように生産されているかを考えたことはあるでしょうか?
近年になって作り手や生産地に対する配慮がなされるようになってきましたが、それでもまだ何も気にせず消費活動を行っている人が大半です。
そこで、私たちが消費する食品や製品のルーツを知らずに購入し続けることの問題がわかる事例を紹介します。
- カカオ農園の違法な児童労働
- 「人道に対する罪」で捜査されるユニクロ
それでは1つずつ解説していきます。
カカオ農園の違法な児童労働
あなたが一休みする際に食べるチョコレート。
そのチョコレートの原料となるカカオ豆の原産国であるガーナやコートジボワールでは、小学生ほどの子どもがカカオ農園で働いています。
IITA(国際熱帯農業研究所)による調査では、例えば、コートジボワールだけで約13万人の子どもが農園での労働に従事しているとされているのです。
家族の手伝いとして子どもが仕事をしている場合もありますが、13万人のうち1万2,000人の子どもが農園経営者の親戚ではない子どもでした。
さらに、農園を経営している家庭の子どもの3分1は、学校に行ったことがないため字が読めない子どもも数多くいます。
さらに、その中には他国から誘拐されて奴隷として売られ、強制的に仕事をさせられている子どもがいることも指摘されています。
このような状況にあるなかで製造されたチョコレートを購入するということは、間接的であるとしても私たち消費者も悲惨な児童労働に加担していると言えるのです。
(参考:児童労働を脱して カカオ豆の国 ガーナ丨全日本民医連)
(参考:チョコレートと児童労働丨ACE[エース])
「人道に対する罪」で捜査されるユニクロ
品質が高く、デザイン性・機能性に優れた服を安く提供してくれる、庶民の味方とも言えるユニクロ。
しかし、なぜ「品質が高くデザイン性・機能性に優れた服」が安く提供できるのかを考えたことはあるでしょうか?
もちろん、ユニクロを展開するファーストリテイリングによる経営努力の賜物であることは間違いありません。
しかし安さを追い求めるあまり、ファーストリテイリングはフランス当局から「人道に対する罪に加担した疑い」で捜査されることになったのをご存知でしょうか?
その原因は、人権問題が指摘されている中国の新疆ウイグル自治区の綿を使用しているという疑惑があったためです。
捜査対象となったのはユニクロだけではなく、ZARAを展開するインディテックスを含めた4社でした。
新疆ウイグル自治区の強制労働
もともと新疆ウイグル自治区で製造される「新疆綿」と呼ばれる綿は、安くて質が高いと評判でした。
ユニクロだけではなく無印良品や、「ナノ・ユニバース」を展開するTSIホールディングスも使用していました。
しかし、「新疆綿は強制労働によって製造されているのではないか」という疑いがあり、人権侵害の問題が指摘されています。
このような背景がありアメリカでは、ユニクロのシャツの輸入を差し止められてしまいました。
ファーストリテイリング側は「(生産過程で)人権侵害がないことを第三者認証などを通じて確認している」としています。
もし、強制労働によって生産された綿でつくられた服だとしたら、本当に「安くて高品質だ」と喜んで購入できるでしょうか? また、そのような消費活動は倫理的と言えるでしょうか?
(参考:仏当局、ユニクロなどを捜査 ウイグルでの人権問題巡り丨朝日新聞DIGITAL)
(参考:日本企業、人権監視強化急ぐ 強制労働に高まる圧力―ウイグル問題丨時事ドットコム)
(参考:アパレル大手、なぜ新疆綿を使用中止?丨日本経済新聞)
関連記事:SDGs(持続可能な開発目標)とは?17の目標や事例をわかりやすく解説!
私たちができるエシカル消費の具体例
- 「商品・食品の作り手や産地が大切なのはわかるけど、どうすればいいの?」
- 「エシカル消費って具体的に何をすればいいの?」
と感じている方もいるでしょう。
そこで、ここでは誰でも簡単にできるエシカル消費の具体例を見ていきましょう。
- フェアトレード商品を購入する
- 地元で採れた食材を食べる
フェアトレード商品を購入する
エシカル消費の具体例の1つ目は、「フェアトレード商品」を購入することです。
「フェアトレード」とは「公正な取引」という意味です。
現代では、先進国が大量生産大量消費をするために、発展途上国でつくられた原材料や製品を安く買い叩いており、そのおかげで私たちは豊かな生活を送ることができています。
しかし当然ですが、このような消費の在り方はエシカル消費とは呼べません。
発展途上国の生産者がつくった製品や食品が、適正な価格で継続的に取引されることで生産者や労働者を支援する仕組みが必要なのです。そして、そのような仕組みでつくられた商品をフェアトレード商品と言います。
フェアトレード商品にはその証となる認証ラベルが付いているため、購入する際の参考にしてみてはいかがでしょうか。
(参考:フェアトレードジャパン)
地元で採れた食材を食べる
地元で採れた食材を選ぶこともエシカル消費につながります。
なぜなら、地元で採れた食材を食べるには、下記のようなメリットがあるからです。
- 遠くに運ぶ必要がなく輸送にかかるコストや二酸化炭素排出量が少ない
- 遊休地の再利用や耕作放棄地の増加抑制につながる
- 地元で販売するため、多品種少量生産でも成立する
- 地元の経済活性化につながる
また、無農薬や減農薬でつくられた有機野菜やオーガニック食品を購入することもエシカル消費です。
農薬を使うことは土地や水に負担がかかるため環境負荷につながりますが、消費者がオーガニック食品を買うことで、農家は農薬の使用量を減らすことができます。
さらに、消費者にとっても新鮮な食材をお手頃な価格で購入できるという点も魅力と言えるでしょう。
関連記事:ESGとは?簡単に解説!意味や定義、最新事例について
企業にも求められるエシカル消費
エシカル消費が求められるのは消費者だけではありません。企業もまた、エシカル消費に貢献するような活動を行う必要性が高まってきています。
なぜなら、エシカル消費に興味がある消費者が増加しているからです。
消費者庁が2020年に公表した「エシカル消費に関する消費者意識調査」によると、「エシカル消費」という言葉の認知度は2016年で6%だったのが、およそ2倍の12.2%に伸びました。
また、エシカル消費に興味があるのは全体のおよそ60%で、前回調査の35.9%から大幅に増加しています。
さらに、エシカル消費につながる商品やサービスについて、「これまで購入したことがあり、今後も購入したい」「これまでに購入したことはないが、今後は購入したい」の合計が80%を超えており、前回の61.8%よりも増加しています。
このように、エシカル消費を求める消費者が増えているため、今後はエシカル消費につながらない商品やサービスは需要が低くなっていくことが予想されます。
(参考:エシカル消費、「興味ある」が約6割に増加-消費者庁が意識調査で報告書-丨日本エシカル推進協議会)
増加するESG投資
また、こうした動きは消費者だけに留まりません。
投資家もまたエシカル消費を実施している企業へ積極的に投資するようになっています。
背景には、ESG投資の拡大があります。
ESG投資とは
ESG投資の「ESG」とは、
- Environment(環境)
- Social(社会)
- Governance(企業統治)
の頭文字の略称です。
環境問題や社会問題と言った「貨幣価値への換算は困難だが、着目するべき取り組み」を重視して事業を展開する企業を重視・選別して行う投資を「ESG投資」と言います。
近年、投資家はESGに配慮した企業こそ成長が見込めるとの観点で投資先を選ぶようになっています。
世界持続的投資連合(GSIA)によると、2020年の世界のESG投資額は、2018年に比べて15%増えて35.3兆ドル(およそ3,900兆円)だったことがわかっています。
気候変動や人権問題への関心の高まりが理由とされています。
さらに、2016年時点で世界の投資額の26.3%がESG投資でしたが、2020年では35.9%に増加しているように、ESG投資は世界的に拡大しているのです。
(参考:GSIR-20201.pdf (gsi-alliance.org)
関連記事:ダイバーシティとは?ビジネスに取り入れるメリットや意味、注目の理由を解説
エシカル消費のために企業ができること
世界的にESG投資が拡大しており、エシカル消費を望む消費者も増加傾向にあるため、企業はこれに対応していかなければなりません。
そこで、企業がエシカル消費の実現に向けてできることを見ていきましょう。
- 環境に配慮したモノづくりを行う
- サプライチェーンを可視化する
それでは1つずつ解説していきます。
環境に配慮したモノづくりを行う
企業がエシカル消費のためにできることの1つ目は、環境に配慮したモノづくりを行うことです。
具体的には、下記のような施策が挙げられます。
- 再生可能エネルギーを使う
- オーガニック食品や減農薬食品を使用した商品の拡充
- ストローや包装などプラスチック製品の使用をやめる
このような活動により、環境負荷を低減することが大切です。
サプライチェーンを可視化する
上記で挙げたカカオ農園で働く子どもや新疆ウイグル自治区の強制労働の事例がありましたが、このようなことは広く周知されていないことが問題でもあります。
したがって、企業側としては、原材料の調達から加工、配送、販売までのサプライチェーンを可視化することが重要です。
サプライチェーンを可視化するためには、その過程において社会問題や人権に配慮されているという情報を公開することが効果的です。
こうすることで、商品がどのような道筋をたどって消費者に届けられるのかが明らかになります。
この結果、消費者は人権侵害を行っていない企業やフェアトレードを行っている企業を選んでエシカル消費をすることが可能です。
まとめ
ここまでエシカル消費の基本的な知識から、消費者や企業がエシカル消費に取り組む重要性などをみてきました。
消費者の間ではエシカル消費を望む人が増えつつあり、投資家の間でもESG投資が注目されています。
企業にとってはエシカル消費の推進は今後必須となっていくでしょう。
まずはできることから取り組んでみてはいかがでしょうか。
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