「スタッフのやる気を引き出し、離職率も下がる」という状態を生み出すことは、管理職やマネージャーにとって最も大事な仕事の一つです。
ではそのために、上司は何をすればよいのでしょうか。
その答えの一つが「”理想の未来”を達成するには自社が最高」と思わせてあげることかもしれません。
スタッフが自分の将来を考えたとき「自社にいるべきだ」と思ってもらう。
そうすれば、やりがいを感じて自社で活躍してくれやすくなるという話です。
一見当たり前なのに、ちゃんとできていないところが多いのも特徴ですので、まずはお付き合いください。
方法としては大きく言えば2ステップ
①まずは「理想の将来を聞く」ことをちゃんと行う
②次に「そのためにいまするべきこと」をいっしょに考える。
では、どのような注意点があるのか、具体的な事例とともに考えていきましょう。
目次
①まずは「理想の将来を”ちゃんと”聞こう」
大きな目標は「”理想の未来”を達成するには自社が最高」ということでした。
そのためにはどうするか。
*
「まずはスタッフの理想の未来を聞きましょう。」
こういわれると、よく聞く話だと思われるかもしれません。
ただ、理想の未来を聞くにあたって、そもそも
・「聞く」という行動を”確実”にできているのか
・「本音」をスタッフから引き出せているのか
については気を付けるべき点があります。
「聞く」という行動を確実にする仕組みづくり
・最近ではいつスタッフの未来について、聞きましたか?
・「スタッフの未来の目標や達成したいことは何か」と聞かれて即答はできますか?
この質問を自問してみると「頭ではわかっているものの、実はやりきれていない」というマネージャーの方もいらっしゃると思います。
大事なのに意外と忘れがちなもの。
では、どうしたらよいでしょうか?
これは筆者が実際に経験した、あるベンチャー企業の話です。
そこの社長が抱えていたのがまさに「聞くこと自体を忘れてしまう」という問題でした。
そこで
・確認するタイミング
・確認事項
を設定するようにしました。
具体的には
・「毎月の面談で聞く」というタイミングを決める。
・面談シートを作り、必須質問事項として設定をする。
ということです。
とても単純なことですが、漏れてしまう・忘れてしまうことが問題である場合には有効な手段といえます。
では「漏らさずに聞ければ」それでよいのでしょうか?
「本音」をスタッフから引き出すための”心理的安全性”
スタッフの理想の未来を聞くにあたって、仮に漏らさずに聞けたとしても本音ではなく「会社の面談用の答え」では意味がありません。
では、本音を少しでも引き出すためにはどうしたらいいでしょうか?
ここで重要なのが「心理的安全性」です。
心理的安全性とはGoogleが強く提唱しているもので「何を言っても大丈夫だ」と思える状態を指します。
そのためにはいくつもの方法がありますが、Googleのリサーチチームの発表[1][2]から一部抜粋すると
【積極的な姿勢を示す】
→会話以外の作業をせず、少し体を乗り出すようにして相手の目を見て話す。
【「メンバーの意見を理解している」ということを示す】
→メンバーが発言した際には、その内容の要約して確認する。『理解したこと』を返答で示す。
【相手を受け入れる姿勢を示す】
→まずはこちらが自己開示をし、メンバーが自己開示をしやすい場を設ける。その場に限らず、普段から「開示している」こと示す。
▼心理的安全性の詳細については以下の記事をご覧ください
googleも採用している、部下が悪いことでも積極的に報告する「強いチーム」の作り方
ここでスタッフの本音をある程度でも引き出せたとします。
ただ、なんの行動にもつながらなかったら意味が弱まってしまいますよね。
そこで、次に考えるべきは「”いま”するべきことは何か」
②「今するべきこと」を要素分解x逆算xスモールステップで考える。
目標を設定した後、その目標を達成するために具体的な行動を考えます。
重要なのは「”理想の未来”を達成するには自社が最高」だと思ってもらうことでした。
ここで重要な考え方が【要素分解】と【逆算+スモールステップ】です。
大きな目標を要素に分解する
まずは達成したい未来の要素をいったん分解します。
「達成したい未来」という大きな状態では、様々な要素が混ざりあっているので具体的なタスクに落とし込みにくい場合が多いからです。
例えば達成したい未来が「場所にとらわれず、学生相手のキャリア支援をしたい」だとします。
そこで、要素を分解してみましょう。今回は「生活」スタイルと「業務」に分けることができそうです。
・生活という意味では、好きな場所で働くこと
・業務という意味では、学生相手のキャリア支援をすること
ただこの時、いきなり「手に余る大きさの目標」を設定してしまうと達成が難しいので、意欲を継続するのが難しくなります。
今回で言えば「好きな場所」で働くという目標をいきなり設定しても、次にどうしていいかは悩んでしまいやすいでしょう。
そこで、大事なのが「逆算」と「スモールステップ」という考え方です。
「逆算」と「スモールステップ」で手のひらサイズまで目標を分解していく
手に余る目標は、自分で扱うことのできる手のひらサイズまで分解していくことが必要です。
このときに重要なのが「逆算」と「スモールステップ」。
具体的に考えてみましょう。
例えば「場所にとらわれずに働きたい」という大目標がスタッフにある場合です。
これをどこでも働ける”リモートワーク制度”のない会社でいきなり認めるのは簡単ではありません。
そこで「リモートワークを会社で導入し、スタッフがその対象となる方法」をいっしょに考えていくことになります。
これは実際に、先の会社であった事例ですが、前例無しにいきなりリモートワークを認めることが難しかったので「出張社員のWeb会議制度の導入」をしました。
出張中という
・会社にいることができない
・遊ばせておくにはもったいない
という状況。
このタイミングでwebを利用することで問題なく会議や情報共有ができれば、実質のリモートワークです。
これで近くにいなくてもスムーズな会議や情報共有ができるということがわかり、リモートワークがスムーズに認められました。
今の流れを整理すると、
*
大目標:場所にとらわれずに働きたい=リモートワークを会社に認めてもらう
↓
中目標:リモートワークの前例を作る
↓
小目標:出張社員のオンラインで会議に参加する事例を作る
*
といった流れです。
同様に、「学生相手のキャリア支援に携わりたい」スタッフが何か特定の仕事をしたいと考えているのであれば、逆算とスモールステップでやりたい職種や仕事ができるように、
・配置換え
・新規業務創出
を手伝うということも考えられます。
これはスタッフ個人ではなかなか難しいので、マネージャーとして「会社の利益」も考慮しつつスタッフにとって最高の状態を作っていくことが必要です。
まとめ:スタッフにとって最高の環境を作り出す
改めてですが、
・スタッフの理想の未来を聞く
・それを達成するには自社にいたほうがいいと納得してもらう
・そのために「自社にいれば理想の未来に近づいている」という状況を作り出す。
スタッフにとって最高の環境を作り出すことが、マネージャーの最重要な仕事の一つといっても過言ではありません。
スタッフのやる気を上げ、離職を下げるために一度取り組んでみてはいかがでしょうか。
参照
[1]Google社『re:Work』心理的安全性を高める
https://rework.withgoogle.com/jp/guides/understanding-team-effectiveness/steps/foster-psychological-safety/
[2]Google社『re:Work』心理的安全性を高めるためにマネージャーにできること
https://rework.withgoogle.com/jp/guides/understanding-team-effectiveness/steps/foster-psychological-safety/