株式投資をするのであれば知っておきたい指標の一つに、VIX指数があります。
VIXとは別名「恐怖指数」とも呼ばれており、株式市場の短期的な目線に対する投資家たちの心理状況を表したものです。
恐怖指数が高いほど市場が大幅に落ち込む(上昇することもある)可能性が高いため、投資家たちはVIXに注目して投資を行っています。
本記事では、VIXの基本的な意味や使い方、その裏にある仕組みについてわかりやすく解説をしていきます。
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目次
VIX(恐怖指数)とは?
VIXとは、Volatility Indexの略称で、投資家たちの心理状況を示したグラフのことです。Volatilityとは、不安定さや不確実性、変動性を指す英単語で、VIXは価格変動の幅の大きさを示します。
そのため、株式相場が荒れることが予想されるとVIXも大幅に上昇します。
このVIXはシカゴ・オプション取引所(CBOE)が、米国株価指数S&P500から算出したものですが、アメリカの経済状況は日本においても大きな影響を及ぼすため、日本でも注目される指標となっています。
VIX(恐怖指数)の特徴3つ
VIXを理解する上で押さえておきたい特徴は以下の3つです。
- 通常時は20前後
- 株価が急落する可能性が高い
- 日経平均株価とも相関性がある
それぞれについてわかりやすく解説をします。
通常時は20前後
VIXは通常10〜20(パーセント表示)の間を行き来するというのが一般的な考え方です。政治的な動きや、国際情勢が悪化するとVIXが高まると考えるとわかりやすいでしょう。
- 10〜20:適正値
- 30程度:警戒状態
- 40以上:パニック状態
VIXは投資家の心理状況を示しているため、経済危機や国家間の争いなどが報道されると、指標は高まる傾向があります。
株価が急落する可能性が高い
VIXが高いほど、投資家が株式市場に対して不安を感じていることを示すため、株価が急落する恐れがあります。正確には、VIXはボラティリティ(変動性)を示すため、大幅な株価の上昇が期待されるケースであってもVIXは上昇します。
しかし、一般的に株価は上げ相場においては緩く上昇し、下げ相場においては急激に下がる傾向があります。
このため、VIXが上昇するということは、その後の相場が大きく下がる可能性が高いのです。
実際、2020年の2月〜3月にかけてVIX指数は大幅に上昇した時期がありますが、この時期のダウ平均株価を見てみると、以下のように変動しています。
このように、NYダウ平均などと逆に振れる可能性が高いのが、VIXの特徴です。
日経平均株価とも関係がある
VIX指数は米国株価指数S&P500から算出した数値ですが、日本の株価とも関係があります。これは、日本経済がアメリカの経済と深く関わっていることが原因です。
上記をみると、VIXと日経平均株価は逆の関係になっていることがわかります。このため、日本の株価にもVIXは影響すると考えて問題はありません。
VIX(恐怖指数)の仕組み【ざっくりと】
ここまでVIXについて説明をしてきましたが、VIXを正確に理解するためには裏側にあるメカニズムを理解する必要があります。ここからは、VIXがどのように算出されているかを理解することで、正しくVIXを理解していきましょう。
①VIX(恐怖指数)の根底にあるのはオプション取引
先述したように、VIXは米国株価指数S&P500から算出しています。これをもう少し詳しく説明すると、VIXは、S&P500指数先物オプション取引の「インプライドボラティリティ」をベースに計算されています。
先物のオプション取引とは「将来、商品を買う権利と売る権利」を売買する取引のことです。具体的には以下の4つが挙げられます。
▼オプション取引の基本
コールの買い | 「行使価格で商品を購入する権利」を購入すること |
コールの売り | 「行使価格で商品を購入する権利」を売却すること |
プットの買い | 「行使価格で商品を売る権利」を購入すること |
プットの売り | 「行使価格で商品を売る権利」を売却すること |
具体的に日経平均株価の例で、コールの買いを考えると以下のようになります。
逆に、上記の場合にコールの売りをしていた場合には以下のようになります。
ここからわかるのは、オプションの買い手は「支払ったオプション料」のみに損をする金額が限定されるのに対し、オプションの売り手は損をする金額に上限がないということです。
このため、一般的にはオプションの売り手は、金額だけでみると、リスクが高い取引と認識されています。
②VIX(恐怖指数)の算出方法
オプションの金額(先ほどの例だとコール価格)は、需要と供給により決定されます。そしてこの需給を決定するのは以下の要素です。
- 株価と権利行使価格との差額
- オプションの満期までの期間
- 予想変動率
簡単にまとめると、オプションを購入して勝てる確率が高いほど、オプションの満期までの期間が長いほど、株価が変動する確率が高いほど、オプション料は高額になるということです。
オプション料金は上記の3つの指標から算出されるため、オプション料金と他の2つの要素が決まっていれば、残りの1つの要素も逆算できるということになります。
ここでVIXの意味を再度確認してみましょう。
VIX指数とは、今後の株式相場の予測変動率のことでした。
つまり、VIX指数とは、現在のS&P500のオプション金額、株価と権利行使価格との差額、オプションの満期までの期間、それぞれの平均値を算出し、方程式に放り込んだ結果として現れる予測変動率ということになります。
このため、VIX指数が高いということは、オプション市場が盛り上がっていることを示していると言い換えられます。
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日本版VIX(恐怖指数)「日経平均ボラティリティ・インデックス」
VIXはアメリカの株式市場での指数ではありますが、日本の株式市場にも影響を及ぼすものだと説明しました。しかし実は、国内にも日本版のVIXが存在します。
それが「日経平均ボラティリティー・インデックス」です。日経平均ボラティリティ・インデックスは、VIX同様に、日経平均先物のオプション価格から算出しています。
このため、日経平均ボラティリティ・インデックスが高いということは、日経平均株価のボラティリティが高まる可能性を示唆しています。
実際にボラティリティの確認をすると、日経平均が大きく下げた2020年3月ごろに日経平均ボラティリティ・インデックスは高まっています。
このため、日本の株価動向を確認する際には日経平均ボラティリティ・インデックスも使用することがあると、頭に留めておくと良いでしょう。
まとめ
VIX(恐怖指数)は世界の株価動向を俯瞰するのに利用できる指標です。恐怖指数という名前はついているものの、決して相場の急落のみを示すのではなく、相場の急上昇も期待されるものです。
しかし、実際には相場の急落の合図となることが多いため、「VIXの高値が確認されたため相場の急落に備える」という考え方は間違ったものではありません。
相場動向を確認するひとつの指標としてVIXがあると覚えておくとよいでしょう。
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