サプライヤーの意味や、意味が近い言葉との使い分けについて、詳しく知らない方もいるのではないでしょうか。
サプライヤーとは「製品の部品を供給する者」という意味を持ちます。
価格だけで取引先を選んでいては、のちに他の要素が原因で自社に大打撃を与えてしまう可能性があるため、選び方を知っておくことが大切です。
この記事ではサプライヤーの意味や言葉の使い分け、サプライヤーを選ぶポイント、管理の流れを紹介します。
最後までお読みいただき、消費者に信頼を与えられる企業を目指すための参考にしてください。
目次
サプライヤーとは「仕入先」「供給先」のこと
上記でも触れましたが、サプライヤーとは「製品の部品の供給者」のことです。
サプライヤーは、英語で「supplier」となります。
「供給」を意味する「supply」に、「人」や「もの」を示す「-er」を付け加えた言葉です。したがって、「Supplier」は下記のような意味合いも持っています。
- 仕入先
- 納品業者
- 供給元
- 供給者
- 供給業者
- 卸売業者
- 製造業者
- 供給国
製品の製造に必要な部品などを求める相手に供給する企業や人、国などが「Supplier」に該当します。
カタカナ言葉の「サプライヤー」の意味
一方で、カタカナ言葉の「サプライヤー」は、部品やモノに限らず「何かを提供する人」というニュアンスが強くなり、下記のような意味合いが含まれます。
- 物品の供給者
- 原料を輸出する業者
- 商品を供給する企業
- 原料を供給する国家
- サービスを提供する企業
このように、実に多種多様な意味合いが含まれており、その文脈によって若干ニュアンスが異なる場合もあるため、注意しましょう。
旅行用語としての「サプライヤー」
サプライヤーはもともと製造業や販売業の世界で使われていた言葉であり、もともとは部品や原材料などの「モノ」を供給する人や企業のことを指していました。
しかし近年では、モノに限らずサービスの提供者もサプライヤーとして認識されるようになっています。
例えば、旅行用語としての「サプライヤー」は、サービス業である「運輸」や「宿泊施設」、「レストラン」などもサプライヤーに含まれます。
なぜ、部品や原材料などの「モノ」を供給することがない「運輸」や「宿泊施設」がサプライヤーとなるのでしょうか?
運輸業者や宿泊施設がサプライヤーとなるワケ
旅行業者は、日程や行き先を事前に決めておくツアー旅行のサービスを提供していますよね。そんな旅行業者にとっては、前もって計画した通りに運行してくれる運輸業者や宿泊できる宿泊施設の存在が欠かせません。
したがって、運輸業者や宿泊施設を運営する業者は旅行業者の立場からすると、自社が提供する旅行商品の一部を構成する「パーツの供給者」となるのです。
旅行業界はこのような仕組みになっているため、旅行業界においては運輸業者や宿泊施設がサプライヤーとなります。
サプライヤーの対義語「ベンダー」との違い
サプライヤーと混同されがちな言葉としてもう一つ、「ベンダー」を挙げることができます。
ベンダーはサプライヤーの対義語ですが、他にも下記のような言葉がサプライヤーの対義語として用いられます。
- ベンダー
- バイヤー
- ディストリビューター
それでは1つずつ解説していきます。
ベンダー
ベンダーとは、売り手や売主、販売者、販売会社という意味を持ちます。ベンダーは英語で「Vendor」となり、「販売する、売る」という意味を持つ「vend」に「-or」を付け加えた言葉です。
具体的には、ベンダーは仕入れした商品を消費者に販売する商社や販売代理店などを指しています。重要な点は「消費者に向けて販売する」というところです。
つまり、「ベンダーは消費者に商品を売る企業」であり、「サプライヤーは消費者以外にも、会社に対して部品や原材料を供給する企業」と覚えると良いでしょう。
ベンダーはもともとIT用語だった
ベンダーという言葉は、もともとはIT業界で用いられていたIT用語でした。
IT業界ではソフトウェアの開発設計をする企業を指す言葉として「ベンダー」という言葉が用いられていたのです。
製造業など一般的なビジネス用語としてのベンダーと、IT業界で用いられるベンダーは少し意味合いは異なりますが、「消費者に向けて商品を供給する企業がベンダー」という理解をしておけば問題ありません。
バイヤー
バイヤーとは「買い手」を意味する言葉であり、その名の通り「買い手になる人や企業」を指しています。英語では「Buyer」となり、「買う」という意味の「Buy」に、「-er」を付け加えた言葉です。
具体的には、バイヤーは企業において商品の買い付けを担当する人を指したり、仕入れ担当者を指しています。
サプライヤーは「提供する人・企業」であるのに対して、バイヤーは「買う人・企業」となり「提供される側」になります。
したがって、バイヤーはサプライヤーの対義語となるのです。
サプライヤーも原材料や部品を購入する「買い手」であるため、一見するとバイヤーのようではありますが、購入した原材料や部品を加工してメーカーなどに供給している点で異なります。
ディストリビューター
聞き慣れないかもしれませんが、ディストリビューターもサプライヤーの対義語です。
ディストリビューターは分配者や配給者、卸売業者といった意味を持っています。
メーカーから商品を仕入れて、その商品を売ってくれる小売店に卸す「中間業者」のような存在として解釈するのが良いでしょう。
英語では「Distributor」となり、「分配、割り振る」という意味を持つ「Distribute」に「-or」を付け加えた言葉です。
ディストリビューターの特徴は、中間業者としての役割しか持っていないこと。そのため、基本的に直接販売をすることはありません。
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サプライヤーとメーカーの違い
サプライヤーと混同されがちな言葉として挙げられるのが「メーカー」と「ベンダー」です。
それではまず、サプライヤーとメーカーとの違いについて見ていきましょう。
サプライヤーとメーカーの違い
メーカーはサプライヤーと似た文脈で用いられることが多く、混同されやすい言葉です。
メーカーとは、製品や商品そのものを製造する業者や企業を指しています。一般的に部品や原材料を使用して製品を製造する企業を示すため、部品や原材料だけを供給する企業は該当しません。
メーカーは英語では「Maker」となり、「作る、制作する」という意味を持つ「make」に「-er」を付け加えた言葉です。
メーカーとサプライヤーが混同されがちな理由は、メーカーがサプライヤーを兼ねることがあるためです。立場によってはメーカーもサプライヤーになる、ということを覚えておきましょう。
立場によって変わるメーカーとサプライヤー
サプライヤーもまた、原材料をもとに「部品」という製品を製造するため、「メーカー」でもあります。しかし、その製品を供給する先がメーカーであれば、その会社はサプライヤーとなります。
したがって、部品を製造して家電メーカーに供給する企業はサプライヤーです。
しかし、部品から家電を製造する企業は「家電メーカー」ですが、立場によっては家電メーカーも「サプライヤー」となる場合があります。
例えば、家電メーカーが家電量販店に家電を納品するのであれば、家電量販店の立場からは家電メーカーはサプライヤーとなるのです。
このように、サプライヤーとメーカーは明確に分けることができず、曖昧なところがあるためその都度判断する必要があるでしょう。
メーカーとサプライヤーを区別するなら
メーカーとサプライヤーをもっと明確に区別したいのであれば、部品や原材料などの製造原価の算出に含まれるものをつくる企業を「サプライヤー」として、それ以外を「メーカー」とする分け方ができます。
例えば家電量販店の立場からすると、家電メーカーは製品の「サプライヤー」ですが、仕入れた家電は部品ではなく、製造原価の算出に用いることはありません。
これにより、家電メーカーは「メーカーである」と言うことができ、立場によって「メーカーかサプライヤーか」と悩むことなく判断することができます。
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業界によって異なるサプライヤーの意味合い
ここまでは、主に製造業をメインにサプライヤーについて解説してきましたが、サプライヤーという言葉が用いられるのは製造業だけではありません。
業界によってサプライヤーが担う役割も異なるため、今回は下記の業界におけるサプライヤーの意味合いを見ていきましょう。
- IT業界
- 貿易業界
- 食品業界
それでは1つずつ解説していきます。
IT業界
IT業界におけるサプライヤーは、どのような存在をイメージしますか?
「ソフトウェアの作成とかシステム開発をして、クライアントに納品する企業でしょ?」と考える方も多いのではないでしょうか。もちろん、このような企業もあります。が、これだけではありません。
IT業界におけるサプライヤーを知るためには、まずはIT業界がピラミッド型の構造をしているということを押さえておく必要があります。
下請けが繰り返されるIT業界
「IT企業A」がクライアントからアプリ開発を依頼された場合、IT業界では他の企業に開発を委託することが一般的です。
例えば、クライアントからアプリ開発を依頼されたIT企業Aが、IT業界Bに委託したとします。このとき、IT企業Aはクライアントに納品するアプリを、IT企業Bから仕入れることになります。
したがってIT企業Bは、IT企業Aのサプライヤーであるといえるのです。
さらにIT業界ではピラミッド構造により、IT企業BがIT企業Cに委託して、一次請け、二次請けとサプライヤーの連鎖が起きやすい業界でもあります。
貿易業界
貿易業界においては、輸入企業が輸出企業かによってサプライヤーが異なります。
輸出企業であれば、国内の製品を海外の取引先に供給することになるので、国内の輸入企業がサプライヤーとなります。一方で、輸入企業は海外の製品を仕入れるので、海外の輸出企業がサプライヤーです。
また、輸入企業だとしても輸入した商品をどこかに供給することになるため、サプライヤーでもあります。
食品業界
食品業界では一般的に、生産された食品が消費者の手の渡るまでに下記のような流れを辿っていきます。
- 第一次産業から原材料を仕入れる
- 食品メーカーの開発・製造
- 小売店が仕入れる
- 消費者が購入する
したがって、この流れにおけるサプライヤーは第一次産業と食品メーカーとなります。
食品メーカーは畜産業者や農家などから食品の原材料となるものを仕入れて、食品に加工します。したがって、第一次産業は食品メーカーに原材料を供給するサプライヤーと言えるのです。
一方で、食品メーカーが開発・製造する食品は小売店に卸され、一般的な消費者が購入できるようになります。したがって、食品メーカーは小売店に食品を供給するサプライヤーと言えます。
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サプライヤーを選ぶ際のポイント
あなたは数あるサプライヤーの中から、どのようにしてサプライヤーを選んでいるでしょうか?
ここでは、サプライヤーを選ぶ際に気をつけるべきポイントを見ていきます。
- 金額だけで選ばない
- サプライヤーを固定化しない
それでは1つずつ解説していきます。
金額だけで選ばない
サプライヤーを選ぶ際に、多くの企業は金額を重要視しているかと思います。
確かに、金額は最も重要であると言っても過言ではありませんが、重要なポイントは金額だけではありません。金額だけでサプライヤーを選んでしまうと、取り返しのつかない失敗につながる可能性があります。
したがって、重要なことは「金額だけで選ばない」ということです。例えば、供給される部品や原材料の品質、サポート体制、企業自体の評判なども重要視するべきでしょう。
サプライヤーを固定化しない
近年はテクノロジーの進歩や技術革新が進み、1年と経たずにあらゆるビジネスが変化しています。
このような時代において、サプライヤーを変えずに何年も固定化してしまうと、自社の損失につながりかねません。したがって、定期的にサプライヤーを見直して、料金や価格をもとにサプライヤーを変えることが求められます。
サプライヤー管理とは?
サプライヤー管理とは、サプライヤーに関するあらゆる情報を取得し、それらの情報からサプライヤーを評価して調達戦略の策定に活かすことです。
サプライヤー管理を怠ると資材や原材料の安定的な調達ができなかったり、コストが増加してしまったりする可能性があるため注意しなければなりません。
サプライヤー管理の流れ
サプライヤー管理は以下の手順で行われます。
- サプライヤーの情報収集
- サプライヤーの分析・評価
- 契約管理
- 品質管理
- 価格交渉
- サプライヤー監査
順に解説します。
1.サプライヤーの情報収集
サプライヤーのなかから適正な価格・納期で取引できる企業を選ぶため、まずはサプライヤーの財務情報や納期、品質やCSR関連の情報などを収集します。
2.サプライヤーの分析・評価
集めた情報をもとに、サプライヤーを分析・評価します。
このとき、社内の担当者が変わったとしても明確な基準のもとで判断できるように、社内データとして選定方法を蓄積しましょう。
3.契約管理
サプライヤーを選定したら契約交渉をして取引するサービスや契約期間、支払い条件、オプションなどを定義します。
このとき契約範囲や役割、責任の範囲を明記することでトラブルを未然に防げます。
4.品質管理
サプライヤーから提供される商品やサービスの品質を、定期的に確認します。
そうすることで自社の製品やサービスの品質を保てるようになり、企業における信頼性や市場での評価を高めることにもつながるでしょう。
5.価格交渉
サプライヤーが置かれている環境を分析します。
粗利率が大きかったり競合他社が多かったりすれば、価格交渉の余地があると判断できるでしょう。
6.サプライヤー監査
サプライヤーが行動指針を遵守しているかを定期的に確認し、必要があれば改善を要求します。
サプライヤーによって社会への悪影響が与えられていないかを確認すると、自社事業への信頼性も保てます。
サプライヤー管理のポイント
サプライヤー管理で失敗を避けるには、以下のようなポイントを検討しましょう。
- 情報を収集する
- QCDのバランスを考えて評価する
- サプライヤーの経営状況を見極める
順に解説します。
情報を収集する
優良なサプライヤーを見つけるためには、情報収集が欠かせません。
まずは自社の状況や目的を明確にして必要な情報を洗い出し、サプライヤーの公開情報を参考にしたり展示会に足を運んだりして情報を集めましょう。
QCDのバランスを考えて評価する
サプライヤーを評価するにはQCD(Quality:品質、Cost:コスト、Delivery:納期)の3つを考えることが大切です。
サプライヤーを選ぶ際には、コストを抑える視点は重要です。しかしそれだけではなく、品質や納期も含めて多角的な視点から検討し、評価基準をデータ化しておきましょう。
サプライヤーの経営状況を見極める
サプライヤーを取り巻く状況は日々変化しています。そのため、サプライヤーの経営状況を見極めて事前に危険を察知しましょう。
納期遅延や担当者の変更が相次ぐような状況であれば財務状況を分析し、必要があればサプライヤーの変更を検討しなければなりません。
サプライヤーの公開とは
サプライヤーの公開とは、メディアや労働機関にサプライヤーを公開することを指します。
サプライヤーを公開している企業の例は、以下のとおりです。
- アパレルブランド……アディダス、Gapなど
- テクノロジー企業……Apple
- 小売……マークス・アンド・スペンサー、KMARTオーストラリアなど
特にアパレルブランドでは、1990年代後半に強制労働・児童労働が問題視された関係で、製品を製造するすべての工場名と住所の公開が求められた経緯があります。
サプライヤーを公開するメリット
製造過程に問題があると、サプライヤーの公開に踏み切れないでしょう。
一方でサプライヤーを公開してアピールできると、商品を購入する消費者に安心できるブランドというイメージを与えられるメリットがあります。
取引先との関係を良好に築いている企業であると社会に認知してもらえる結果、市場での競争力が向上すると期待できます。
サプライヤーを公開するデメリット
サプライヤーを公開すると消費者に信頼を与えられる一方で、場合によってはリストが競合他社の目に触れるときもあるでしょう。
そのため、リストに掲載されているサプライヤーに対して、他社から製品調達の依頼がはいってしまうかもしれない点がデメリットです。
しかし、労働環境を改善するために他の企業と協働していると考えることもできるため、メリットがデメリットを上回るケースもあるでしょう。
まとめ
ここまで、サプライヤーに関する基本的な知識や、混同されがちな言葉との違いを見てきました。
このようなビジネス用語は取引や商談の際に当たり前のように用いられることがあり、正しく意味を把握しておかなければ適切な取引ができなくなってしまうかもしれません。したがって、よく耳にするビジネス用語は適切に意味を知っておくことが、会社を守ることにつながります。