経営者は、企業経営や事業に関すること、従業員やその家族のこと、そしてお金のことに関して常に頭を悩ませています。
多くの経営者はこのように数々の悩みのタネを抱えていますが、なかでも経営者共通の悩みであり、かつ深刻なものが「孤独であること」と言えます。
信頼できる部下や優れた従業員に恵まれた経営者だとしても、経営者としての立場にいる以上は孤独から逃れることは難しいでしょう。では、なぜ経営者は孤独に苛まれてしまうのでしょうか? どうすれば経営者は孤独に悩まされずに済むのでしょうか?
そこで本記事では、経営者が孤独を感じる理由や孤独に悩まされなくなる方法を解説していきます。
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経営者が孤独な理由とは?
経営者が孤独を感じる理由には下記のようなものがあります。
- すべての決断を1人で行わなければならない
- 従業員との立場の違い
- 友達付き合いが変わる
- 従業員との付き合い方が難しい
- 適切なアドバイスをくれる相手がいない
すべての決断を1人で行わなければならない
経営者と言えば多くの仲間に囲まれており、仕事でもプライベートでも多くの人脈があり、常に人に囲まれているというようなイメージがあります。しかし、常に周りに人がいるのに孤独を感じるのはなぜなのでしょうか?
それは、企業活動について決断をする際は、常に経営者が1人で行わなければならないからです。小さな意思決定から重要な意思決定まで、最終的な決断を行うのは経営者1人です。
さらに、その決断の責任を負うのもすべて経営者です。決断の結果、良からぬ方向に転がってしまった要因が従業員にあった場合でも、その決断を下したのは経営者であるため、最終的な責任は経営者にあるのです。
経営者の仕事は「決断」と「責任」
このように、極端に考えると企業の経営者の仕事は「決断すること」と「その責任を負うこと」にあると言えるでしょう。その決定の中には企業の将来や従業員の生活を左右する可能性もあります。
経営者である以上、重大な責任を伴う決定をし続けなければならず、その心理的なプレッシャーは心身にも影響を及ぼします。
経営者はこのような状態に晒され続ける立場にも関わらず、その辛さやプレッシャーを分かち合える存在が限られているため、孤独に陥ることは当然といえば当然なのかもしれません。
従業員との立場の違い
経営者が孤独を感じる2つ目の理由は、経営者と従業員の立場の違いからくるものです。
経営者と従業員とでは背負っているものから見ている景色、考えている時間軸などがまるで異なります。
経営者は企業の存続から従業員とその家族の生活、お金のやりくり、従業員に関する問題や課題、取引先との交渉やトラブルなど、企業に関するありとあらゆるものを背負っています。
また、そういった物事について長期的なスパンで考えて、将来的なビジョンをイメージしながら意思決定していくことが求められるのです。
しかし一方で、多くの従業員はそこまで考えているわけではありません。もちろん、会社のことを考えている従業員も存在しますが、大半の従業員は自身の生活のために働いているのであって、会社のことを本気で考えている従業員は少数派でしょう。
立場の違いから生じる孤独
このように、従業員と経営者とでは抱えているものや見えている景色が違うため、相談しても理解を得られなかったり、適切なアドバイスを貰えないといったことは大いにあります。
この結果、経営者は自身の悩みや相談を従業員にすることもできず、そのまま1人で悩みを抱え込み、孤独に陥ってしまいます。
友達付き合いが変わる
自身の立場を理解できる従業員がいない場合でも、仕事とは関係のない友達がいれば問題ないかもしれません。しかし、経営者になった人が経営者になる前から友達だった人と話すと、違和感を覚えるでしょう。
なぜなら、その友達は経営者以前の価値観によって仲良くなった友達だからです。経営者になると価値観が大きく変わるのはよくあることで、その状態で友達と話すと社会や仕事に対する見方が異なるため、話が合わなくなってしまうのです。
また、経営者になってからできた友達だとしても、経営が軌道に乗ってくると別の目的をもって近づいてくる人も増えてきます。
そのような友達は、経営が怪しくなるとすぐに離れていくでしょう。そのような人を信用して裏切られてしまうと、経営にも悪影響がでるため、経営者はなかなか人を信じることができません。
これにより、経営者はさらに孤独に陥ってしまうのです。
従業員との付き合い方が難しい
経営者が孤独を感じる4つ目の理由は、従業員との付き合い方が難しいことにあります。
昨今は、「◯◯ハラスメント」という言葉が量産されているように、あらゆる行為や発言がハラスメントになりかねない時代です。もちろん、ハラスメントには十分に注意したうえで従業員との関係を構築しなければなりません。
しかし、一般的にハラスメントは立場が上の者が下の者に行うものであるため、必然的に上司はハラスメントの加害者になりがちです。そして、経営者という立場はすべての従業員の上司となるため、ハラスメントに人一倍気をつけなければならないのです。
この結果、従業員との適切な関係を構築することができなかったり、関係構築に多大な労力を費やすことになり、結果的に経営者は孤独を感じやすくなってしまいます。
適切なアドバイスをくれる相手がいない
上記で見てきたように、経営者には自身の立場を理解できる存在が限りなく少ないです。
また経営者は、全幅の信頼を寄せ、腹を割ってすべてを打ち明けられる相手も多くはありません。なぜなら、経営者が抱える悩みには企業経営に関する重要事項も含まれており、そう簡単には人に話せない内容だからです。
「相手が経営者なら安心」とは限らない
「自身と同じ立場である経営者なら相談相手に適している」と考える方もいるのではないでしょうか? 確かに、相手も経営者なら自身と同じ悩みや課題を抱えているため、共感できて孤独感を和らげることはできます。
また、相手が悩みや孤独に対してどのように対処しているのかなど、助言をくれることもあるため、経営者に相談するのは効果的です。しかし、相手が経営者だとしても、まったく違う業種や業界の場合は参考にならないケースも少なくありません。
また、同じ業界だとしたら本音を打ち明けることなく、腹のさぐりあいになる部分も出てくるでしょう。
経営者の悩みに親身に付き添い、プロとして的確なアドバイスやコンサルティングを行う人物や組織は存在しますが、それでもやはり、経営者にとって孤独や悩みを解消する相手は少ないことに変わりはなく、孤独に陥ってしまうのです。
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では、そもそも経営者が孤独であることはそれほど問題なのでしょうか?
近年、日本ではソロキャンプやソロサウナという「ソロ◯◯」といったような、1人で何かをすることが流行っているように、孤独を楽しむ風潮があります。
このように、「自分と向き合う時間」としての孤独がもてはやされ、結果的に「孤独であることは良いことである」とする言説が少なくありません。
経営者にとって孤独はリスク
しかし、孤独は楽しめてこそ良いことであり、経営者にとって、過度に孤独を感じることはリスクでしかありません。
なぜなら、孤独を感じることによってメンタルや体に不調をきたしてしまえば、経営に何らかの悪影響を及ぼしかねないからです。
経営に関する意思決定は常に明瞭でクリアな思考をもとにするべきであり、孤独に苛まれている状況ではベストな決断が難しくなるでしょう。また、誰にも相談できなくなると、経営者が1人ですべてを動かそうとするワンマン経営に陥ってしまいます。
さらに、孤独はタバコやお酒、運動不足などに相当する健康被害があるともされているため、孤独を感じたまま過ごすことは心にも体にも悪影響なのです。
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それでは、経営者が感じる孤独を軽減・解決する方法を見ていきましょう。
- 経営者は孤独であることを受け入れる
- ワークライフバランスを充実させる
- 経営者の仲間をつくる
- メンタルと体を鍛えて健康増進を図る
- メンターやプロに相談する
以下で1つずつ解説していきます。
経営者は孤独であることを受け入れる
まず始めにやるべきことは、「経営者は孤独である」ということを受け入れることです。
経営者という立場上、孤独になることは避けられません。そのことをまず理解して受け入れることで、「自分以外の経営者もまた孤独なのだ」と考えられるようになれば、少し孤独感が和らぐのではないでしょうか?
孤独な経営者はあなただけではありません。日本中、世界中の経営者は皆、基本的に孤独を感じているものです。そのうえで下記で紹介する方法を実践することで、孤独から抜け出すことができるでしょう。
ワークライフバランスを充実させる
経営者は雇われて働く一般的な労働者とは異なり、「この時間になったら仕事は終わり」という働き方ができず、仕事とプライベートの境界線が曖昧になりがちです。そのため、常に会社経営や事業のことを考えて、始業時間も就業時間も関係なく仕事をしてしまいます。
しかし、この状態に陥るとプライベートが疎かになり、仕事以外で重要な社会的な関係や家族との関係が失われかねません。すると、さらに仕事にのめり込むようになり、より孤独感を強く感じるようになるでしょう。
このような事態を避けるためにも、ワークライフバランスの充実やタイムマネジメントの徹底が求められます。
気兼ねなく交流できる友人や家族との時間を過ごせば、孤独感を解消できます。したがって、大切な人との時間をとる際には「時間が空いたら」ではなく、あらかじめ予定に組み込んでおくことが重要です。
経営者の仲間をつくる
上記でも軽く触れましたが、経営者の仲間をつくることも効果的です。
従業員とは立場が異なるため、悩みを相談したり話しても孤独を紛らわせることはできないでしょう。しかし、経営者として同じ立場の人間であれば、価値観や抱えている悩みが近いため孤独を解消できるかもしれません。
ですが、同じ経営者だとしても利害関係や同じ業界にいる場合、本音で語り合うことは難しくなります。
経営者同士なら共通の悩みや課題について理解し合える可能性は高いですが、本当の意味で孤独感を解決することにはつながらないかもしれません。そういった場合、次の策が有効でしょう。
メンターやプロに相談する
相談相手や指導者などのメンターや、経営コンサルティング会社などの外部のプロに相談することも効果的です。相手はプロであり知識や経験も豊富であるため、経営者の悩みを理解したうえで、第三者として的確なアドバイスをもらえる可能性が高いでしょう。
経営者の立場からでは見えない問題や課題を見つけることができるといった利点もありますが、なによりも利害関係者ではないプロであるため、腹を割って本音でぶつかることができる相手として、存分に話し合えることができます。
経営者としての悩みや課題の解決が孤独感の解消につながることもありますが、それより重要なことは「思いの丈をぶちまけること」です。本音でぶつかれる相手がいないことが、経営者にとって孤独の最も大きな原因なのです。
メンタルと体を鍛えて健康増進を図る
経営者にとって最も重要な仕事は、会社に関わる意思決定です。
しかし、孤独を感じてメンタルに問題を抱えている場合、適切な意思決定ができなくなる可能性があります。
したがって、経営者は常に健康的なメンタルを維持していなければなりません。また、心と体はつながっているため、体が不健康であれば明瞭な意思決定が難しくなります。
そして、「孤独であること」と「孤独感を感じること」は別物であり、ただなんとなく孤独感を感じる場合はメンタルに問題があるか考え方が偏っている可能性が高いため、心と体を鍛えることで孤独感を和らげることができます。
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孤独と経営者は切っても切り離せない関係と言えるでしょう。
しかし、孤独によるメンタルヘルスの不調は、企業経営に関わる重要な意思決定に悪影響を及ぼします。
経営者が孤独を感じる原因は、理解者がいないことや本音でぶつかれる相手がいないことです。
経営者が抱える悩みは一般的な労働者とは異なり、会社経営に関わる重大な要素も含んでいたり、「経営者は弱みを見せられない」と考えて誰にも悩みを話せないという場合も少なくありません。
経営者が孤独に押し潰されてしまっては、会社の今後の成長も発展もなく、衰退してしまいます。そうならないためにも、自身に最適なメンターを見つけたり、経営コンサルタントなど外部のプロに相談して孤独を解消することが重要です。
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