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ネガティブフィードバックとは、相手の問題点を指摘し、改善を促すためのフィードバック方法です。
相手の課題を直接指し示すことができる反面、直接的なフィードバックに耐性のない社員は、ネガティブフィードバックで落ち込んでしまう可能性があります。
本記事では、効果的なネガティブフィードバックの伝え方や注意点などをわかりやすく解説します。
過去に部下にネガティブフィードバックを実施して失敗をしたことがある方や、現在上司からネガティブフィードバックを受けている方におすすめの記事となっていますので、ぜひご一読ください。
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ネガティブフィードバックとは
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ネガティブフィードバックとは、相手の問題点を指摘し、改善を促すためのフィードバック方法です。
ネガティブフィードバックの正しい意味や使い方を知らないと、上手なフィードバックができなくなってしまいます。
そこでここからは、ネガティブフィードバックの意味と効果、そして似た言葉のフィードフォワードとの意味の違いをわかりやすく解説します。
ネガティブフィードバックの意味
ネガティブフィードバックには以下2つの意味があります。
- 意欲や能力が好ましくない方向に逸れるフィードバック
- 被評価者にとって耳が痛いフィードバック
ネガティブフィードバックは元々工学分野で使われていた言葉で、1の意味を示していました。しかし、現在人事評価でネガティブフィードバックという言葉を使う際は2の意味として使われるのが一般的です。
ネガティブフィードバックの例として、「期待以下の成果だった」や「このままでは今のポジションから降りてもらう」という言葉が挙げられますが、被評価者にとってネガティブな内容を伝えるため、ポジティブフィードバックと比較すると使い方が非常に難解です。
ネガティブフィードバックをする際には、自身と被評価者との関係性に注目して、効果的なフィードバックができるように注意する必要があります。
特に現在はパワハラや行き過ぎた人格否定などが問題になるケースがあるので、厳しい評価を下しながらも、被評価者に寄り添った事実に基づくフィードバックを実施することが重要だと言われています。
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相対評価と絶対評価の違いとは?どちらを選ぶべきかわかりやすく解説!ネガティブフィードバックの効果
ネガティブフィードバックをできない管理職の方もいますが、時に厳しいことを言わないと部下が成長しない場合もあります。
そういう場合、ネガティブフィードバックを活用することで以下の効果が期待できます。
- 部下の更なる能力の向上が期待できる
- 部下が常に改善を繰り返すようになる
例えば、部下が致命的な失敗をしているのにもかかわらず、ポジティブフィードバックをしてしまえば部下の成長はありません。
上記のような際には、部下に対して厳しいフィードバックをした上で、次回は同じ過ちを犯さないように隣に寄り添う姿勢が大切です。
また、部下に対しネガティブフィードバックをできるということは、部下が改善を繰り返すようになることを意味します。上司は部下に対し目標を与え、その目標の到達度に応じて的確なフィードバックをし、PDCAを回す必要があります。
適切にネガティブフィードバックを実施することで、部下がフィードバックを改善していくため、結果として会社全体に改善を繰り返す風潮が発生することでしょう。
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フィードフォワードとの違い
ネガティブフィードバックと混同されるビジネス用語として「フィードフォワード」が挙げられます。
フィードフォワードとは、過去に目を向けるのではなく、未来の問題解決に向けた対話の場を示しています。
ネガティブフィードバックの場合もフィードフォワード同様に、未来に向けた話し合いをしますが、過去の問題点にも厳しく言及する点が異なります。
また、フィードフォワードは「対談」を示しており、会話の役割分担がないのに対し、ネガティブフィードバックの場合は「上司」から「部下」へフィードバックを実施します。
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ネガティブフィードバックの伝え方の難しさ
フィードバックとは相手の行動に対して「評価」を加えることです。
現状維持ではなく、更なる高みに登るためのフィードバックをするために実施するのが、ネガティブフィードバックです。
ネガティブフィードバックは相手の琴線に触れる可能性もあるため、新卒の社員の中には「自身の悪いところを教えてくれるのは嬉しいが、実際に言われるとかなり落ち込む」というコメントをする社員もいます。
ただし、適切なフィードバックをするためには、ポジティブフィードバックだけで不十分です。
例えば、識学が行った調査では、上司と部下の間にはモヤモヤが生じており、互いの意思疎通に問題が生じているケースがあることがわかりました。
この原因は「明確な意思表示が足りていない」ことです。
明確な意思表示をするためには、時にネガティブな内容であっても伝えなければいけません。
ですが、その伝え方が非常に難解なのがネガティブフィードバックなのです。
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「ネガティブ」という名前がついているため、全体的として否定的なイメージをもってしまうネガティブフィードバックですが、実際は以下のようなメリットがあります。
- 成長を促せる
- 目標達成への原動力を高められる
- エンゲージメントを向上させる
それぞれ詳しく解説します。
成長を促せる
ネガティブフィードバックを実施することで、部下の成長を促すことができます。
昨今では新卒後すぐに転職をしてしまう方もいますが、そのほとんどの退職理由に該当するのが「やりがいを感じられない」ことです。
やりがいは成長とも繋がるため、仕事で成長ができることを示せれば、こうした新卒社員の転職は防げる可能性があります。
ポジティブフィードバックは捉えようによっては、「とてもよい仕事をしている」と誤認されることもあるため、適度に試練を与えることで、社員はその壁を突破するために自助努力を続けることでしょう。
目標達成への原動力を高められる
ネガティブフィードバックでは、与えられた目標を達成するための努力の方向性について軌道を修正し、正しい方向へと導きことができます。
部下の行動がなぜ目標達成と外れた行動になっているのか、目標に対して現状の努力ではなぜうまくいかないのかを明確に提示することができれば、目標達成までの最短ルートを指し示すことができます。
エンゲージメントを向上させる
時に厳しいフィードバックをすることで、社員のエンゲージメントが向上する可能性があります。
特に優秀な社員はさらに成長をしたいと考えているおり、ネガティブフィードバックに対し前向きに取り組めることも多いです。
結果的に厳しいフィードバックによりエンゲージメントが向上する可能性がある点がメリットといえます。
ネガティブフィードバックの注意点
今までの説明のように、ネガティブフィードバックはメリットが多くありますが、注意しないと社員のエンゲージメントが大きく低減する可能性があります。
ここからは、ネガティブフィードバックによる注意点をわかりやすく解説します。具体的には以下4つに注意する必要があります。
- 人間関係が悪くなることがある
- 関係性に留意する
- 主観的な意見を伝えない
- 迅速にフィードバックをする
- 大勢の前で指摘しない
それぞれ詳しく解説をします。
人間関係が悪くなることがある
フィードバックを受ける人の性格によっては、ネガティブフィードバックにより人間関係が悪化することもあります。
例えば、フィードバックを受ける側が「極度に言われたことを気にしてしまう」性格だった場合、ネガティブフィードバックを受けることで、その後上司に対し報告をしづらくなる可能性があります。
関係性に留意する
現在の関係性に留意した上でネガティブフィードバックを実施することが重要です。ネガティブフィードバックで口にするのは厳しい評価です。
したがって、関係性がまだ構築されていない部下に対しネガティブフィードバックを行ってしまえば、互いに口論になってしまう可能性も捨てきれません。
したがって、お互いの関係性に留意した上でネガティブフィードバックを実施する必要があります。
主観的な意見を伝えない
ネガティブフィードバックでよくある失敗が、主観を入れた発言をすることです。
そもそも評価は主観に基づくものではなく、客観的に決められた項目で判断されるべきものです。
ここに主観を混ぜてしまうと、ただの感想となってしまうため良いフィードバックにはなりません。
フィードバックを受けた部下も、納得しない場合もあるため、あくまでも客観的事実に基づいたフィードバックをすることが大切です。
迅速にフィードバックをする
ネガティブフィードバックは、時間経ってから行っても有効的ではありません。
特に互いの信頼関係が構築されていない場合は「上司はなぜ今頃そんなに昔の話を持ち出すのだろうか?」と部下が疑問を感じてしまいます。
したがって、ネガティブフィードバックをする際は、遅くとも1週間以内に実施するようにしましょう。
大勢の前で指摘しない
ネガティブフィードバックは個別に行うようにしましょう。
大勢の前で部下の問題を指摘すると、中には「パワハラ」や「いじめ」といった印象をもたれてしまい、その後他の部下が報告をしづらくなるリスクがあります。
また、指摘をされた部下自身も「見せしめ」になっていると感じ、プライドが大きく傷つく危険性もあります。
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ネガティブフィードバックは伝え方が難しいと言われていますが、効果のある伝え方をするためにはどうすればよいのでしょうか。
ここからは、ネガティブフィードバックの効果が最大限に引き出せる伝え方を紹介します。
- 具体的なフィードバックをする
- 人格を否定しない
- ポジティブフィードバックも適度に挟む
具体的なフィードバックをする
まずは具体的なフィードバックをすることを心がけましょう。
指摘事項が抽象的であるほど、部下は同じ過ちを繰り返します。「全体的に悪い」では上司の意図は伝わりません。
また、抽象的なフィードバックは批判のように感じられる側面もあるため、フィードバックの本来的な意味からズレないためにも、具体的なフィードバックを心がけるようにしましょう。
人格を否定しない
フィードバックをする際は、人格を否定しないようにしましょう。
事実に基づく適切な評価はフィードバックにあたりますが、人格に口を出すことはあってはなりません。
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ポジティブフィードバックも適度に挟む
ポジティブフィードバックを適度に挟むことで、指摘が苦手な上司であってもネガティブフィードバックをすることができます。
例えば、問題が発生した際に以下の手順で実施すると伝えやすい上司が多いようです。
- ポジティブフィードバック
- ネガティブフィードバック
- ポジティブフィードバック
このようにポジティブフィードバックとネガティブフィードバックを挟んでコメントすることを「サンドイッチ型フィードバック」と呼びますが、ネガティブな要素が緩和されるため好んで使われることがあります。
一方で、最も伝えたいネガティブフィードバックがぼやけてしまうため、重要なことを伝える際には向いていません。
例文から見るネガティブフィードバックとサンドイッチ型フィードバック
実際にネガティブフィードバックとサンドイッチ型フィードバックをどのように行えばよいかわからない方が見受けられます。そこで実際に使われる例文を用意しました。
以下、それぞれの例文を紹介します。
ネガティブフィードバックの例文
『依頼された仕事に対して、期日までに報告もなく今日出社してみれば、仕事が終わっていないのはどうしてでしょうか。例えば、仕事が2,5,8割終了した段階で報告をし、軌道修正をしながら進められたのであれば仕事は終わっていたと思います。仕事は全体で進めていくものだから、あなたの仕事が遅れると仕事全体のスケジュールを修正することになるので気をつけて欲しいです。次回同じようなことが起きたら、チームメンバーから外します。』
上記のように何が問題だったかを明確にし、その改善策を伝え、次回以降徹底させることがネガティブフィードバックの目的です。
厳しい内容ではありますが、問題点を明確にすることで、次回以降に生かすことができます。
サンドイッチ型フィードバックの例文
『期日には遅れてしまったが、最低限のところまではできていたのはよかったですね。情報もうまくまとめられていたので、報告書としてはわかりやすいです。ただし、報告は2,5,8割終了した段階でできるとよかったかもしれないですね。もしその時に聞いていれば、私も全体のスケジュールを修正できたし、あなたも期日を再設定することでよりよい資料ができたかもしれないです。
途中まではよくできているので、このまま引き続き頑張ってほしいと思います。この資料が完成したら社内に共有しましょう。』
サンドイッチ型フィードバックの場合、全体として柔らかい内容になるため、上司が最も言いたかった「何も言わずに期日に遅れること」が問題であり、改善策として「2,5,8割終了した段階で報告する必要がある」ことがぼやけてしまっています。
したがって、クリティカルな問題を提示する際には、サンドイッチ型フィードバックは適していないことがわかります。
まとめ
本記事では、ネガティブフィードバックについてわかりやすく解説しました。
ネガティブフィードバックは、気をつけないと部下のプライドを折ってしまう評価方法ですが、うまく利用することで、更なる部下の成長が見込める手法です。
部下との関係性と、状況に応じて使い分けるようにしてください。
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