タレントマネジメントとは?注目の理由や導入目的から実施の流れ、注意点を解説

突然ですが、下記のような疑問を感じてはいませんか?

  • 「タレントマネジメントってなに?」
  • 「どうして導入する企業が増えているの?」
  • 「どうすれば効果的な人材育成や人材配置ができる?」

「タレントマネジメント」は近年注目度が高まっており、導入する企業が増えつつあります。

本記事では、タレントマネジメントについて基本的な知識から、注目されている理由や背景、活用する流れや注意点を解説していきます。

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タレントマネジメントとは?

「タレントマネジメント」は人材管理法のひとつで、従業員が持っているノウハウやスキル、経験などの情報を会社のリソースとして扱い、最大限活用することを目的としています。戦略的に人材配置や人材採用、育成、評価をすることで、企業と従業員のパフォーマンスを最大限引き出すことができ、昨今注目されているのです。

英語では「Talent Management」の頭文字をとって「TM」と略されることもあります。タレントは「能力」や「才能」といった意味を持っており、従業員がもつ経験やスキルを指しています。

人材の流動化が日本よりも進んでいるアメリカにおいて、優秀な人材の流出をさけるために1990年代に提唱され、海外では多くの企業が用いている手法です。日本ではまだあまり普及していませんでしたが、近年は採用する企業が増加傾向にあります。

タレントマネジメントを行う目的の1つは、次期リーダーを育てることです。組織においてリーダー候補の育成は避けては通れない課題であり、この手法によって早いうちから経営者目線で判断できる従業員を育てることができます。

タレントマネジメントの注目度が高まっている理由

近年、日本でもタレントマネジメントを採用する企業が増えてきていますが、なぜ日本で注目度が高まっているのでしょうか?

その理由は下記の5つが挙げられます。

  • 生産年齢人口の減少
  • ビジネスのグローバル化
  • 働き方の多様化
  • 価値観の多様化
  • 終身雇用制度の崩壊

それでは1つずつ解説していきます。

生産年齢人口の減少

総務省の「平成30年版 情報通信白書|人口減少の現状」によると、日本では少子高齢化が進み、2008年をピークに人口が減り続けており、人口問題研究所の推計では2050年に日本の人口は1億人以下になるとされています。

さらに、内閣府の「人口減少と少子高齢化」によれば、15歳から64歳の生産年齢人口は2065年にはおよそ4,500万人になり、2020年よりも約2,900万人も減る見通しです。

このような理由から、「マンパワーを増やして成果を上げる」時代から「今いる従業員のパフォーマンスを最大化させて成果を上げる」時代に変わりつつあります。

(参考:平成30年版 情報通信白書|人口減少の現状│総務省
(参考:人口減少と少子高齢化│内閣府

ビジネスのグローバル化

ビジネスのグローバル化が進むなか、市場競争力を保ち続けるには、国内だけではなく海外にも事業を展開していかなければなりません。

しかし、そのためには海外で活躍できるグローバル人材が必要になるため、タレントマネジメントを行うことで戦略的な人材育成をする企業が増えているのです。

働き方の多様化

近年は新型コロナウイルスの流行によるテレワークの推進やDXへの対応をはじめ、働き方改革の推進、ワーク・ライフ・バランスの充実などの重要性が増していることも、タレントマネジメントの注目を集める理由の1つです。

特に働き方改革による長時間労働の改善をするためには、従業員の生産性を上げることで対応しなければなりません。その手法としてタレントマネジメントを用いる企業が増えています。

価値観の多様化

従来では、従業員は企業がもつ道具として扱われており、働く側も「企業に尽くす」という価値観を持っていました。しかし、現代では価値観の多様化が進み、「働くのは自分のため」や「自分の時間を大切にしたい」という人が増えてきたため、企業理念やビジョンに共感して貢献してくれる人材の確保が困難になりました。

したがって、すでにいる従業員の考え方や価値観を理解し、企業が求める能力やスキルの育成をするためにタレントマネジメントが求められるようになっているのです。

終身雇用制度の崩壊

従来の日本では、終身雇用制度によって一度就職すれば定年退職まで勤め上げることが一般的だったため、時間をかけて自社に最適な人材を育てることができました。

しかし、近年では終身雇用制度が崩壊しつつあり、人材育成にかける時間を確保できなくなったのです。これもまた、効率的に人材育成が可能なタレントマネジメントが注目されるようになった背景と言えます。

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タレントマネジメントを活用する目的

ここまで見てきたように、近年ではタレントマネジメントが求められるようになりました。それでは、タレントマネジメントを用いる理由や目的とは何なのでしょうか?

それは下記の4つに分類されます。

  • 組織目標の達成
  • 人材採用
  • 適材適所な人材配置によるパフォーマンス最大化
  • 次期リーダーや優れた人材の育成

それでは1つずつ解説していきます。

組織目標の達成

タレントマネジメントを行う最も大きな目的は、「売上を上げる」や「新規契約・ユーザー数の向上」といった組織目標を、人事領域から支援して達成することです。

人材採用

上記でも解説したように、日本はこれから生産年齢人口が減り続けるため、人材の確保が大きな課題となっています。従来では、将来的に自社で活躍できそうな人材の確保に力をいれてきましたが、近年では、すでに能力やスキルを持っている人材を確保することの重要度が増しているのです。

このときタレントマネジメントによって、募集する役職に必要な条件や、配属先のタレント(能力)の傾向などの把握が可能になり、人材採用をスムーズに進められます。

適材適所な人材配置によるパフォーマンス最大化

一人ひとりの能力や価値観、経験を把握することによって、個々人の実力を最大限発揮できるポジションへの配置が可能となります。こういった適材適所な人材配置は企業と個人の生産性向上につながります。

また、自身に最適な業務ができればモチベーションもあがり、離職率の低下にもつながるでしょう。

次期リーダーや優れた人材の育成

マッキンゼーのウォー・フォー・タレントによって、競争に勝ち抜くために優れた人材を育てることの重要性に注目が集まりました。

そして、タレントマネジメントを行うことで一人ひとりの理想の働き方や価値観がわかるため、個々人に最適な研修や配置ができ、より効果的な人材育成が可能になったのです。

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タレントマネジメントを導入する流れ

それでは実際にタレントマネジメントを導入する流れを見てきましょう。

  1. 目的や目標を設定する
  2. 人材情報の把握
  3. 人材採用・育成の計画
  4. 最適な人材配置
  5. 評価・モニタリング

それでは1つずつ解説していきます。

目的や目標を設定する

まず、最初にやるべきことは、タレントマネジメントを導入する目的や目標を明らかにすることです。

企業にはビジョンや企業理念があり、それを実現するための長期的な経営戦略があります。

そしてこれを人事領域から貢献するには、どのようなタレントが求められるのか、どの役職が何人必要かなどの人事戦略を適切に策定しなければなりません。つまり、経営戦略と人事戦略をすり合わせることが基礎となります。

人材情報の把握

続いて、人材情報を把握します。従業員に関して下記のような情報を集めて、整理しておきましょう。

  • 顔写真
  • 氏名
  • 経歴
  • 学歴
  • 目標
  • 評価
  • 配属先

このように人材についての情報は何もかも集め、可視化して自社の現状を把握します。現状がわかれば課題も見えてくるはずです。

人材採用・育成の計画

人材情報を集約したら、策定した人事戦略に求められるタレントとのギャップを把握しましょう。

現在抱えている人材の活用ができれば良いですが、実際にはそれだけで足りるケースは少ないです。したがって、理想と現実のギャップを把握したら、そのギャップを埋めるためにも人材育成をしたり、それで間に合わなければ人材採用を検討する必要があります。

最適な人材配置

続いて、最適な人材配置をすることで、組織と個人のパフォーマンスを最大化します。この際、重要になるのは、配置した先でしっかりと実力を出せているかどうかや、意欲を高められているかどうかなどを常に確認することです。

したがって、マネージャーには高いマネジメントスキルが求められます。

評価・モニタリング

一通り、採用や人材配置が進んだあとは、その成果の評価・モニタリングを行います。

そして、その評価によっては計画を改めたり、人材育成の方法を修正することが求められるでしょう。ただ計画を立てて実行するのではなく、実行した後は必ず評価し、より良いものへと変えていくことが重要です。

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タレントマネジメント導入時に失敗しないためのポイント

上記でタレントマネジメントを導入する流れを見てきましたが、実際に活用するには下記のようなポイントに注意することで、失敗を回避できる可能性が高くなります。

  • 目的を曖昧にしない
  • 従業員と連携する
  • 人材育成ができるマネージャーやリーダーの存在
  • 年功序列から抜け出す

それでは1つずつ解説していきます。

目的を曖昧にしない

まず、タレントマネジメント実施の流れでも解説しましたが、やはり最も重要なポイントは「目的を曖昧にしない」ことです。

「導入することで何を達成したいのか?」といった目的部分が不明瞭なまま活用して人材情報をまとめても、宝の持ち腐れになってしまいます。

従業員と連携する

タレントマネジメントを最大限活用するためには、人材情報が常に最新の状態になっていなければなりません。

そのためには、従業員一人ひとりに協力してもらい、連携する必要があります。しかし、目的や意義がわからない場合、自身についての情報を提供するのは気が引けてしまうケースもあるでしょう。

したがって、ただ連携・協力を呼びかけるのではなく、活用する目的を明確にして社内で広く共有することで、従業員に理解してもらうことが重要です。

人材育成ができるマネージャーやリーダーの存在

タレントマネジメントを導入して、人事戦略に沿った人材育成の計画を立てたとしても、それを現場で実行に移せるマネージャーやリーダーの存在がなければ、絵に描いた餅で終わるでしょう。

重要なことは、「戦略に基づいた人材育成の重要性を理解していること」であるため、やはりその意義や目的を広報することが重要になります。

年功序列から抜け出す

従来の日本企業では年功序列制度によって、スキルアップをしなくても勤続年数が長くなれば自動的にある程度の役職に就くことができていました。

しかし、このような状態では、タレントマネジメントは失敗するでしょう。年功序列から抜け出すことは人材育成の観点からは重要なポイントと考え、制度や風土から考え直す必要があります。

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【企業事例】タレントマネジメントで成功している企業とは

実際に成功している企業事例を見ていきましょう。

サイバーエージェント

サイバーエージェントでは2013年にタレントマネジメントを導入し、いくつもの施策を打っています。

同社では、従業員数が増えはじめて、個々人を把握することが難しくなったという課題がありました。このままでは、適材適所な人材配置ができなくなるため、「GEPPO」という独自のサーベイシステムの開発と、従業員を育成し、事業を成長させるための適材適所を目的とした「キャリアエージェント」を補足しました。

これらの施策によって、集められた情報をもとに人事施策を行っています。しかし、異動などをするときは、情報だけを参考にして強制的に配置するのではなく、本人にその配置を行った理由を説明し、本人の意向も参考にして決定します。

味の素株式会社

味の素株式会社では、グローバルな水準で適材適所な人材配置を行っています。

まず初めに、今後、企業に大きく貢献する人材の要件を見直しました。そして、人材要件とリーダーシップをかけ合わせて、求められる行動特性を10項目設定するという形でタレントマネジメントを実施しています。

ヤフー株式会社

ヤフー株式会社では、「ピープルアナリティクスラボ」という専門部署を設置したり、データを用いて企業や社員の成長に貢献する活動を推し進めていることで有名です。

データを用いることで、個々人に力を入れた客観的な施策を打ち出せるため、タレントマネジメントとの相性が良いことが注目度を高めています。

まとめ

ここまで、タレントマネジメントについて見てきました。

昨今では、生産年齢人口の減少や働き方・価値観の多様化、デジタルイノベーションによるビジネス環境の変化など、じつに様々な変化が起きています。このような変化に適応しながら成長していくためにも、人材の最適なマネジメントが求められます。

経営資源を最大限活用し、従業員と組織の生産性を向上させるためにも、一人ひとりの才能やスキルを発揮する適材適所な人材配置や、経営戦略に基づいた戦略的な人材育成計画の策定と実行が欠かせません。

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