メタ認知とは「自分が考えていることを認識すること」です。これができると仕事の効率が良くなったり、コミュニケーションがうまくとれるようになります。
- 「メタ認知ってなんだろう」
- 「自分のことをもっと深く理解したい」
- 「メタ認知能力を高めるにはどうすればいいんだろう?」
この記事ではこれらの疑問に答えるべく、メタ認知について解説していきます。
この記事を読むことで、メタ認知について
- 本質がわかる
- 高めるメリット・デメリットがわかる
- 鍛える方法がわかる
ようになるため、ぜひメタ認知能力を鍛えてビジネスに活用する参考にしてみてください。
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メタ認知とは?
メタ認知(metacognition)とは、簡単に言うと「自分の認知を認知すること」となります。
「認知」とは考えていることや感じていること、記憶や判断などを指し、これらを第三者視点から俯瞰して見ているように認識することがメタ認知です。
「メタ」には「超越した」や「高次元の」といった意味があるため、別の言い方をするならば「認知をより高い次元から認識すること」となるでしょう。
このメタ認知能力を鍛えると、冷静に物事を考えられるようになるなど、様々なメリットがあります。その結果、目標の達成が容易になったり、問題を解決する力が育まれたりします。
最近では、自分の思考や行動を正確に把握、コントロールできるようになるとされ、ビジネスに役立てるために注目されています。
メタ認知を定義したジョン・H・フラベル
メタ認知という言葉を定義したのは米国の心理学者ジョン・H・フラベル氏です。
もともとは心理学の世界で用いられていた専門用語であり、つい最近まで一般的に用いられることはありませんでした。
その後、脳科学や教育関係で用いられるようになりましたが、近年では人材育成や経営などの世界で、必要な能力として重要視されるようになっています。
メタ認知の源流はソクラテスにあり
メタ認知の歴史を紐解いていくと、行き着くのは「無知の知」で有名な古代ギリシアの哲学者、ソクラテスです。
無知の知では「自分が何も知らないということを自覚している」という知恵を指していますが、これこそまさに「自分が何を認識しているかを認識している」状態=メタ認知だといえるでしょう。
メタ認知が持つ2つの技能と知識
メタ認知を分解すると、下記の2つに分類されます。
- メタ認知的知識
- メタ認知的技能
それでは1つずつ解説していきます。
メタ認知的知識
メタ認知的知識はメタ認知に必要な、自分に関する情報です。具体的には、人によって異なる自分自身の課題であったり、目標や行為、経験にまつわる知識を指しています。
例えば「走るのは得意だけど、勉強はあまり得意ではない」や「人と話していると相手の顔色ばかり窺ってしまう」といった、自分について注意深く考えてみて初めてわかる「自分の情報」です。
先程の例で言えば「勉強はあまり得意ではない」という点は「課題」にあたります。
メタ認知的技能
メタ認知的技能は、下記の2つに分けられます。
- メタ認知的モニタリング
- メタ認知的コントロール
メタ認知的モニタリングは、メタ認知的知識をもとに今の自分の状態を監視して、最適な行動ができているかや、知識の不足があるかどうかを確認することです。
そして、メタ認知的コントロールは、モニタリングによってわかった情報から、最適な行動や感情のコントロールをすることを指しています。
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メタ認知能力が高いと、人は冷静に行動できるようになったり、戦略的に判断できるようになります。したがって、第三者から見てもメタ認知能力が高いかどうかは、ある程度わかってしまうものです。
ここでは、メタ認知能力が高い人がどのような特徴を持っているのかを解説していきます。その特徴が下記の3つです。
- 冷静な判断と行動ができる
- 物事の本質を捉えるのが得意
- 自分について客観的な分析ができている
それでは1つずつ解説していきます。
冷静な判断と行動ができる
メタ認知能力が高い人は、自分の思考や感情を常に観察しているため、感情的な行動がほとんどありません。
例えば誰かに腹が立つようなことを言われたとき、誰しも怒りを感じますよね。この点に関しては、メタ認知能力が高い低いは関係ありません。しかし、その後の対応が異なってきます。
メタ認知能力が低い人であれば、自分が怒りを抱いていることに気づけず感情のままに言い返したり、行動に出たりします。しかしメタ認知能力が高い人の場合は、怒った瞬間に「今、自分は怒っている」と客観的に気づくことができます。
したがって、怒りのままに行動することが減り、冷静に判断することができるのです。感情的になるがゆえによく失敗する人は、メタ認知能力を鍛えてみると良いでしょう。
物事の本質を捉えるのが得意
メタ認知能力が高い人は、物事の本質を捉えることに長けています。
なぜなら、常に自分が何を考えているかを観察することで「今、自分はなぜこのように考えているのか」や「これはなぜだろうか」といった生産的な思考を意識して行っているからです。
一方で、メタ認知能力があまりない人は自分の思考には無頓着であるために、常にとりとめのない「妄想」に近い思考となっています。したがって、何かを観察して本質を辿ったり、深いレベルで思考したりしないので、物事の浅い表面部分しか認識できません。
物事の本質を捉えられるようになると、仕事でも生産性が上がります。なぜなら「この仕事の本質は何なのか」や「この仕事で一体なにを達成するべきなのか」といった、本質に迫る思考をしているため、無駄なことをしなくなるからです。
自分の強みや弱みががわかる
自分について客観的な分析ができていれば、強みや弱みがわかり、ビジネスでもプライベートでも役に立ちます。そして、メタ認知能力が高い人はこれができています。
なぜなら、自分がどのようなときにどのようなことを考え、そして感じるのかを知っているからです。その結果、自分の強みや得意なことがわかり、仕事でも活かせるようになります。同時に、自分の苦手分野や弱点も把握できるため、それを補うことも可能です。
しかし、メタ認知能力があまりない人は、自分がなにか考えたり感じたとしても、そのことに注目したり深く考えたりしないため、自分について深く知ることができません。その結果、自分の強みや弱みにも鈍感になり、非効率的な生き方になってしまいます。
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メタ認知能力が高いと様々なメリットがありますが、具体的にはどのようなものが挙げられるのでしょうか。
ここで解説するのは下記の3つのメリットです。
- 汎用性の高い思考ができるようになる
- 人間関係を良好に保てるようになる
- 冷静に問題に対処できるようになる
それでは1つずつ解説していきます。
汎用性の高い思考ができるようになる
現代はこれまでにないほど変化が激しい時代となっています。このような時代において、メタ認知能力の高さは最も役立つスキルと言っても過言ではないでしょう。
なぜなら、メタ認知ができるようになると、汎用性の高い思考ができるようになるため、環境がどれほど変化しようと簡単に適応できるようになるからです。
汎用性の高い思考というのは「抽象度の高い思考」とも言い換えることができ、簡単に言うと本質を捉えた思考となります。
どれだけ時代が変化しても本質は大きく変わることはありません。つまり、本質の周辺にある枝葉末節が変化しようと、本質を常に考え続けていればすぐに対応できるようになるということです。
人間関係を良好に保てるようになる
メタ認知能力を鍛えると、コミュニケーション能力も上がるため、人間関係を良好に保てるようになります。
メタ認知能力が低い人は、「自分が考えていること=皆も考えていること」というような理解をしがちで、コミュニケーションがうまくいかないことも少なくありません。
メタ認知能力を上げることができれば、自分と周囲の考えの差異に気づけるため、より円滑なコミュニケーションが可能になります。その結果、仕事でも仲間や上司との連携がうまくとれるようになり、業務効率化や生産性向上、モチベーションアップにつなげられるでしょう。
冷静に問題に対処できるようになる
仕事にトラブルは付き物でもあるため、ある程度は仕方ありません。大切なのはトラブルを無くすことではなく、トラブルにどのように対処するかです。
メタ認知能力が高いと、どのようなトラブルが起きても冷静に対処できるようになります。メタ認知能力が低いと、なにか問題が生じるとすぐに冷静さを失い、適切な行動がとれなくなってしまいます。
しかし、メタ認知能力が高い人は、どのようなトラブルが起きても冷静に対処できるようになります。仮に一時的に冷静さを失ったとしても、「自分は今、冷静ではない」と自覚できるため、すぐに冷静さを取り戻せるのです。
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メリットもありますが、メタ認知能力が高いことで生じるデメリットも存在します。
「考えすぎて動けなくなる」ということです。
メタ認知能力は思考力を大いに使う能力でもあるため、度を越えると考えることから抜けられなくなり、行動できなくなったり注意力が落ちてしまうことがあります。
また、「考えすぎて疲れる」というデメリットもあるため、メタ認知をする際はほどほどにして、適宜周囲の人に相談することも重要になります。
メタ認知能力を鍛えるトレーニング方法
メタ認知能力が高いことで様々なメリットが得られることがわかりましたが、それでは、どのようにしてメタ認知能力を鍛えればよいのでしょうか?
ここでは、メタ認知能力を鍛える下記の2つの方法について解説していきます。
- モニタリングとコントロール
- マインドフルネス
モニタリングとコントロール
自分を第三者視点から見ているように客観視することで、自分の思考や行動のクセ、または自分のやりがちな失敗などを把握する作業を「セルフモニタリング」や「メタ認知的モニタリング」といいます。
このモニタリングを行うことで、自分がどのようなときにどのような感情が湧いてきて、どのような行動をしがちなのかを確認していきます。
具体的なやり方は、自分が感情的になったたときに、まずはそのことに気づくことから始めましょう。例えば、自分が何かに怒ったとき「今、自分は怒っている」と気づく、といった具合です。
そして次は「自分はなぜ怒っているのか?」を考えましょう。この行為を繰り返すことで、自分がどのような時に怒りやすいのかを把握できます。こういったことを把握できるようになったら、次は「コントロール」というステップに進みます。
モニタリングによってわかった自分の欠点や課題を、改善または克服するための行動がコントロールです。例えば、「自分は怒りやすく、感情に任せた行動をしがちだ」とわかったなら、「次は怒りの感情が湧いた時に深呼吸をする」といったコントロール方法を身につけていきます。
このモニタリングとコントロールを何度も行うことで、少しずつ自分の欠点を改善することができるのです。
マインドフルネス
メタ認知能力や集中力を鍛える方法として、最近流行っているのがマインドフルネスや瞑想です。瞑想はGoogleなども導入しており、Appleの創業者であるスティーブ・ジョブズも行っていたとされ、その効果は世界のトップ企業が認めています。
瞑想では自分の思考を常にモニタリングすることで、メタ認知能力を鍛えていくのです。
瞑想のやり方はまず床に座り、正しい姿勢を保ちます。座り方は胡座や結跏趺坐で行う人が多いですが正座でも構いません。その後は身体の力を抜き、目は閉じるか半目のままにします。
そのまま、何も考えずにただ呼吸に集中してください。しかし、実際やってみるとわかりますが「何も考えない」のはとても難しく、気づいたら何か別のことを考えています。
この時、「何も考えてはいけない!」と焦るのではなく、ただ「あぁ、自分は今、こんなことを考えていた」と、ただ考えていたことを遠くから眺めるような感覚で、その思考を手放しましょう。
そして再び意識を呼吸に戻します。気づいたら別のことを考えていることを「マインドワンダリング」といいますが、マインドワンダリングに気づき、呼吸に意識を戻すということを何度も行うことで、日常生活のなかでも自分が何を考えているのかを意識できるようになるのです。
その結果、日常的にモニタリングが可能になり、次のステップであるコントロールもしやすくなっていきます。
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まとめ メタ認知能力を鍛えて仕事に活かそう!
自分のことを客観視できる人は、自分の長所も短所も把握しており、どのような場面においても冷静に行動できます。
また仕事においても、その仕事がどのような意味をもっていて、どのような目的で行うのかを考えて本質を捉えているため、仕事の効率や生産性が高く的確に仕事をこなすことが可能です。
コミュニケーション能力も高まるため、良好な人間関係の維持・構築にもつながります。
このように、メタ認知能力を向上させることでさまざまなメリットがあるため、ぜひ鍛えてビジネスに活かしてみてはいかがでしょうか?
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