自社で行っている目標管理の方法が、従業員にとってストレスになっているかもしれないと思うシーンはありませんか。
一見問題なく管理が行われていると思っていても、実は従業員が不満を抱えていたというケースは珍しくありません。
この記事では、目標管理がストレスになる原因や効果的な目標管理の方法を解説します。
目標管理を実効性のあるものにして、企業の長期的な成長を目指しましょう。
目次
なぜ目標管理で部下がストレスを感じるのか
効果的な目標管理をする際には、従業員がなぜ目標管理でストレスを抱えるのかを知ることが欠かせません。
ここからは、目標設定で部下がストレスを感じる原因を紹介します。
目標が多すぎるから
人はやるべきことが多いと混乱して何を優先したらよいのかがわからなくなってしまい、精神的に負担を感じてしまうときがあります。
仮に設定された目標が多いと、リソースや時間が分散され、どれに対しても中途半端になってしまう可能性もあるでしょう。
さらには、多くの目標を抱えるプレッシャーから常に何かをしなければならないという焦りや、慢性的な疲労を抱えるリスクもあります。
結果として仕事の質が低下することで、前に進めていない感覚に陥り、ストレスを感じてしまいます。
目標が高すぎるから
努力しても達成できないようなことに直面すると、人は「どうせ無理だ」という無力感を覚えてしまいます。
設定した目標が高すぎて達成できない状態が続くと、従業員は敗北感を覚え、モチベーションが著しく低下してしまうでしょう。
その結果、組織内での自信を失うという悪循環につながり、評価されないことへのいらだちを感じてしまうのです。
目標を設定するのに時間がかかるから
従業員はお客様対応や取引先との打ち合わせなどの業務で、日々時間に追われているケースが多いものです。
しかし、目標設定はそのような状況下で行わなければなりません。
管理に必要な書類作成や内容の修正などで目標設定までの過程が長期化すると、本来の業務に充てるべき時間が奪われます。
すると本質的な業務で成果を創出するよりも「目標のための目標設定」の時間が増えてしまい、その非効率さからストレスを感じてしまいます。
自分で立てた目標と上司の理想の目標とが異なるから
従業員は、目標の達成具合が人事評価に影響すると考え、実現可能な低めの目標を設定するケースも考えられます。
ときには、立てた目標が承認されず、上司の望む方向へ誘導されることもあるでしょう。
部下が自ら提案した目標に対して否定されることで諦めの感情が芽生え、目標への当事者意識が薄くなったり達成することに後ろ向きになってしまったりする場合も多々あります。
自分のみでコントロールできないことが多いから
目標を達成できるか否かは、個人の努力以外に、本人にはコントロールできない外部要因に左右されるときもあります。
例えば、チームや他部署の協力や市場の変化など、自分の影響力が及ばない要素によって目標が達成できないと「努力しても成果を達成できない」と無力感を感じてしまいます。
「外部要因によって目標が未達成になれば評価されないかもしれない」と考えた結果、不安を覚えることもあるでしょう。
目標管理にストレスがかかる弊害
目標管理にストレスがかかると、効果を生まないだけでなく場合によってはメリットを上回るほどのデメリットが生じてしまいます。
ここでは、目標管理にストレスがかかる弊害を解説します。
パフォーマンスが低下する
KPIをはじめとする日々負うべき数字がたくさんあると、何を一番優先するべきかわからなくなってしまいます。
するとチーム内でも取り組む対象にばらつきが出てしまい、結果として全体的なパフォーマンスが低下してしまう可能性も出てくるでしょう。
過度に細分化された目標管理では短期的な数値達成に追われるあまり、長期的な視点での創造性や問題解決ができなくなってしまいます。
行き過ぎた目標管理は、このように組織が本来目指すべき姿になることを阻害してしまうのです。
心身が不調になる
目標が高すぎて達成できない月が続くと、自分の行動が目標達成に貢献していないと思うようになります。
こうした状態が続くと、従業員は自己効力感を失ってしまい、慢性的なストレスを抱えたり、燃え尽き症候群に発展したりするリスクが高まります。
特に完璧主義的な傾向がある人ほど、未達成の目標があることに対して自分を責めてしまい、心理的な負担が大きくなるでしょう。
やがて睡眠障害や集中力低下などの身体的な健康も損なってしまうケースもあるため、注意が必要です。
人材の流出につながる
目標管理のプロセスに時間がかかりすぎてしまうと、本来行うべき仕事に対する時間が削られてしまう結果、残業が多くなったり、対応スピードが遅くなったりします。
こうした非効率的な環境は、従業員のワークライフバランスを崩壊させて仕事に対する満足度を下げてしまいかねません。
特に優秀な人ほど、自分の時間や能力が営業活動や顧客対応といった本質的な価値のためではなく、報告書作成や進捗管理などの形式的な作業に費やされることに対して不満を抱きます。
その結果、組織は長期的なキャリア形成や成長を求める人材の期待に応えられず、貴重な人材が社外へ流出してしまうのです。
目標管理の重要性
そもそも、なぜ目標管理を行う必要があるのでしょうか。ここからは、効果的な管理方法を検討するために、目標管理の重要性を解説します。
目標管理は、主に以下のような理由で行います。
- 目標を達成するために必要な行動を可視化できるから
- 組織の生産性が上がるから
- 人材育成ができるから
順に解説します。
目標を達成するために必要な行動を可視化できるから
組織は中長期で達成するべき目標を掲げて、ゴールに向かって経営活動をしています。
目標管理を行うことで、何をすべきか、どのような分担で行うべきかなど、そのゴールに至るまでのプロセスが明確になるのです。
これによりチームや部署単位での意思決定のスピードが向上し、目標達成のための障害や課題も早期に特定できるため、効率的な組織運営につながるでしょう。
組織の生産性が上がるから
変化の著しいこの時代を勝ち残るためには、業界のなかで組織が生産性を上げて営業していくことが欠かせません。
目標管理により各部署や個人が明確な目標を持つことで、業務の優先順位付けが容易になり、より重要度の高い業務に集中できるようになります。
さらに、設定した目標を達成したことによる成功体験は仕事へのモチベーションを高め、業務の工夫に対する提言や改善の促進など、組織全体の生産性の向上にもつながるでしょう。
人材育成ができるから
企業は業績を向上させるための重要な手段として、人材に投資しています。
目標管理のプロセスは単なる業績評価ツールではなく、効果的な人材育成の基盤となります。
なぜなら、明確な目標を設定することによって従業員は自身に期待されている役割や成長の方向性を理解し、必要な知識やスキルを計画的に習得できるからです。
上司との計画的な面談で業務に対する具体的なフィードバックを受けることで、自身の強みや弱みを客観的に把握して持続的な成長につなげられます。
ストレスになりづらい効果的な目標管理の方法
目標設定で従業員が過度にストレスを感じてしまい、モチベーションの低下を招いてしまっては本末転倒です。
そこでここからは、ストレスになりづらい効果的な目標管理の方法を解説します。
SMARTの法則を意識した目標設定をする
効果的な目標を設定するためには、SMARTの法則を意識することが大切です。
SMARTの法則は、以下の5つの基準で構成されます。
- Specific……具体的でわかりやすい
- Measurable……数値として測定可能である
- Achievable……現実的で達成可能である
- Relevant……目標とゴールに関連性のある
- Time-bound……期限が明確である
例えば「売上を増やす」という目標ではなく、「〇か月以内に新規顧客5社を獲得し、月間売上を15%向上させる」のように具体化させましょう。
識学では、誰が評価しても同一の評価となるよう、数字で管理することを提唱しています。
評価項目は多くても5つ以内にする
多すぎる目標は部下を混乱させてしまい、リソースが分散されると説明しました。
目標達成には行動量を増やすことが不可欠であるため、従業員が集中して取り組めるよう、評価項目は多くても5つ以内にしましょう。
例えば、以下のような項目が挙げられます。
- 売上
- アポイント獲得率
- 企画立案数
- 受注数
- タスクポイント数(社内の業務を点数化したもの)
第三者にもわかりやすく、少ない項目にすることで、目標設定〜評価確定までの時間を短縮できます。
自分で変えられることに目を向けさせる
目標を設定しても、外部要因によって達成が危ぶまれて従業員がストレスを溜めることはたしかにあります。
しかし、目標達成においてはコントロールできない対象があると認識してもらい、自分にとっての課題と他人にとっての課題を分けて考えさせることが不可欠です。
他者を変えるのではなく、自分でコントロールできる部分に目を向けて取り組むように意識してもらうと、結果が自分次第だという気持ちになり、従業員の無力感が軽減されます。
負荷が適切な目標を設定させる
現状のスキルに対してあまりにも高い目標は、従業員のやる気を削いでしまう可能性があります。
そのため、従業員の現在のレベルを把握して少し背伸びをすれば届く高さの目標を設定させることがポイントです。
チャレンジングでありながらも達成可能な目標は、従業員が過度な不安を感じてしまう事態を避けつつも、中長期的な成長をうながせます。
目標達成をきちんと評価する
目標に対する評価がきちんとされていないと、従業員は目標設定から評価の過程を無意味だと感じてしまい、ストレスを抱えてしまいます。
そのような事態を避けるために、数値化した目標の達成具合に応じて、きちんと客観的に評価し、給与や役職に反映させましょう。
もし努力のプロセスが結果に表れない場合でも、批判よりも具体的な改善提案や成功した部分の要因分析に重点を置くなど、前向きな対話を心がけることが大切です。
すると目標設定の質が高まり、ポジティブなサイクルを生み出せます。
識学が提唱する目標管理
ここからは、識学が提唱する効果的な目標管理の方法を3つに絞って紹介します。
ゴールを明確にして達成できるかを問う
上司が一方的に考えた目標をもとに細かくアドバイスをしながら行動を管理していると、部下が「自分が考えたことではない」と他責の思考になりやすく、成長を阻害してしまいます。
そのような事態を避けるため、どのような成果を求めているのかについて初期の段階で具体的かつ数字で明確に表し、達成できるかを部下に問いましょう。
そのときに注意したいのが、自己で決定してよいことや使える予算などの権限を与えることです。
達成できないときにも次にどのように行動するのかを問い続けることで、従業員は目標を自分事としてとらえ、改善策を考えて実行できる人になります。
過程ではなく結果で評価する
よくある失敗は、結果ではなく頑張りや姿勢といった取り組みの過程を評価してしまうことです。
しかし、経過での評価は上司の見えている範囲内でしか行えず、印象や感覚での評価になりかねないため、過程ではなく結果で評価するようにしましょう。
淡々と過程で評価していると従業員は「何をすれば評価対象になるのか」を把握できて行動が加速するため、企業の発展にもつながりやすくなります。
評価制度を明確にする
上司によって評価基準が異なる場合、きちんと成績を上げている優秀な従業員ほど不平等感を抱いてしまいます。
そのような事態を避けるため、評価者が変わっても同一の評価になるように評価制度を明確にしましょう。
例えば成約数が目標である場合、対前年比20%アップを80点として60%アップを100点、逆に20%ダウンしたら60点と基準を設定しておきます。
従業員が自分自身で計測可能な点まで詰めておくことで、納得感のある目標管理ができます。
目標管理にかかるストレスを軽減して効果を最大化させよう
従業員ごとに目標管理をして行うべき行動を把握してもらうことは、企業の長期的なビジョンにたどり着くために必要なアクションです。
しかし、過度にストレスを与えてしまう目標管理を継続していては、従業員のモチベーションの低下や退職を招きかねません。
SMARTの法則の活用や評価制度の整備で目標管理を効果的なものにすることで、企業のあるべき姿を目指しましょう。