広範な見込み顧客に対して一貫したマーケティング活動を行い、そこから徐々に受注確度の高い見込み客に絞り込んでいくリード・ベースド・マーケティングに対して、特定の高価値アカウント(顧客)にカスタマイズされたマーケティングを行うABM Account Based Marketing(アカウント・ベースド・マーケティング)も近年BtoB領域のマーケティングで定着しつつあります。
本記事ではABM施策の計画から効果的な実践方法についてご紹介いたします。
目次
①経営目標から逆算してABMの必要性を検討する
ABMを実施する前に下記の観点から全社的に導入を検討する必要があります。
・ABMと自社商品・サービスの相性はどうか
・ターゲットとなる大企業へアプローチできるリソースがあるか
・自社にとって本当にABMは必要か
ABMの戦略が経営目標に沿ったものであり、売上と収益向上に大きく貢献できると判断された場合はABMの導入が進みやすくなるでしょう。
②ABM戦略を構築する際の重要なステップ
社内でABMの導入が決定したら、施策全体の方向性を決めるためにまずは明確な目標を設定しましょう。ABM施策を計画する際には、ゴール設定とそのための具体的な戦略が欠かせません。
たとえば、「ターゲット企業との商談化率を20%向上させる」といった具体的なKPIを定めることが施策の指針になります。
目標が定まったら、施策を実行する際の優先順位を整理します。全てのアカウントに同じ労力をかけるのではなく、商談や契約の可能性が高いターゲットを優先的にアプローチします。
これにより、限られたリソースを効率的に活用できます。また、必要なリソースや予算を明確にし、それをチーム全体で共有することで施策のスムーズな進行が可能になります。
③ABM施策を成功に導くための事前準備
ABMの成功には、準備段階での徹底した計画が必要不可欠です。
その第一歩はターゲットアカウントリスト(TAL)の作成です。TALを作る際には、理想的な顧客像を具体化することがポイントです。過去の成功事例から共通する要素を抽出し、自社の提供価値が最大限生かせる業界や企業規模、意思決定プロセスを基準としてターゲットを選定します。
さらに、ABM施策を効果的に進めるためには、営業チームとマーケティングチームの密接な連携が不可欠です。定期的なミーティングを開催し、双方の役割を明確化することで、目標を共有し効果的にアプローチできる体制を構築します。
営業からのフィードバックを活かしながらマーケティングチームがターゲット企業に対してコミュニケーションをとっていき、マーケティングと営業がそれぞれのメッセージを発信するのではなく、一貫性のある訴求を行っていくことが重要です。
④ABM施策でのターゲットアカウント選定の具体的方法
ターゲットアカウント選定は、ABM施策の成否を左右する重要なプロセスです。
最初に、自社のビジネスモデルや目標に基づいて、選定基準を設定しましょう。この基準には、対象企業の年間収益、業界特性、課題やニーズ、意思決定プロセスなどを含めましょう。
選定基準を基にしてリストアップが完了したら、さらにアカウントスコアリングを活用して優先度を付けます。
アカウントスコアリングはデータに基づいて企業をランク付けする手法で、対象企業ごとの収益性やリード獲得の可能性を客観的に評価するのに役立ちます。
このように選ばれたリストに対して、個別の施策を準備することで、効果的なアプローチが可能となります。
ターゲットアカウントを選定するだけなく、決定権者やキーパーソンを特定して一貫性のある訴求をしていくことでABM施策の効率が高まります。
⑤カスタマイズされたメッセージ戦略
ABM施策においては、ターゲットアカウント毎に個別化されたメッセージを発信していくことが成功の鍵です。
単なるアプローチでは、競合他社との差別化が難しいため、個々の企業が抱える課題やニーズに深く踏み込んだ内容を伝える必要があります。
たとえば、経営層向けのメッセージでは、組織マネジメントの課題に焦点を当て、実務担当者には具体的な課題解決の手段や運用の効率化を強調するなど、ターゲットによってカスタマイズした訴求を行っていきます。このパーソナライズされたメッセージはより高い関心を引き、ABM施策の成功確率を高めます。
⑥効果的なABM施策に必要なコンテンツと配信計画
カスタマイズされたメッセージの発信と併せて考えるべきことが必要なコンテンツ作成と適切な配信タイミングです。
ABM向けのコンテンツはターゲットの興味や関心を引き出し、購買プロセスを進めるために欠かせません。仮説を基にリサーチ会社の定量調査や顧客インタビューの定性調査を行い、顧客の検討購買プロセスを整理します。
顧客の購買プロセスを進めるために適切なタイミング・チャネルで適切なコンテンツを発信していく必要があります。
主なコンテンツとして、ホワイトペーパー(お役立ち資料)、ターゲット毎のLP(ランディングページ)、成功事例・導入事例、セミナー・共催セミナー、各社にカスタマイズされた営業資料があげられます。
⑦ABM施策におけるマーケティングツールの活用法
効率的にABM施策を進めるには、専用ツールの導入が有効です。
たとえば、SalesforceやHubSpot、Marketoなどのプラットフォームはターゲットアカウントの管理やカスタマイズしたメール配信を容易にします。
またSFAやCRMの機能もあり連携を強化することで、営業チームがより効率的にターゲットにアプローチできる環境を構築することが可能です。
これらのツールを活用すれば、アカウントごとのエンゲージメントデータを把握し、施策の調整が可能です。そのため、ターゲット企業に対するアプローチのタイミングやメッセージを最適化できます。
⑧広告キャンペーンを活用したABM施策の実践
ターゲットアカウントへの認知度を高め、関係性を構築するために広告キャンペーンの活用は効果的です。
広告の精度が高くなってきており、職種や従業員数・売上高などの情報に基づいた緻密なターゲティングが可能となっています。さらにリターゲティング広告を活用することで、一度接触したターゲット企業・アカウントへの再度アプローチが可能です。
これによって興味を持ち始めた企業との接点を増やしエンゲージメントを高めることで、コンバージョン率を向上させることができます。
⑨ABM施策のパフォーマンス測定と改善プロセス
AMB施策の効果を最大化するためには、定期的なパフォーマンスの測定と分析が不可欠です。
注目すべき指標の例として、CPA(Cost per Acquisition:顧客獲得単価)、リードのエンゲージメント率、商談化率、ターゲット企業ごとのROIなどがあります。
施策の効果を定量的に把握し、必要に応じてマーケティング戦略を修正します。マーケティングツールやプラットフォームを活用して、リアルタイムでのデータ分析・継続的な分析を行い、得られたデータを基に次のステップを素早く意思決定することでマーケティング活動の最適化を図り、ABM施策の精度を高めましょう。
⑩PDCAサイクルでABM施策を継続的に改善する方法
ABM施策を成功させるためには、PDCAサイクル(計画・実行・評価・改善)を高速で回していくことが重要です。
たとえば、初回施策の結果を基に、次回の施策ではターゲットアカウントの選定基準を調整したり、訴求メッセージの内容を変更したりします。
Pの計画に重きを置かずに素早く実行を行い、評価・改善につなげることが大切です。このPDCAサイクルを高速で回すことでターゲットアカウントへのアプローチがより効果的になり、商談や契約率の向上につながります。
ABM施策は一度で完結するものではなく、継続的な改善を行い最適化することが重要です。
記事のまとめ
ABM施策計画と効果的な実践についてご紹介いたしました。
広範な見込み顧客に対して一貫したマーケティング活動のみを行っている企業は、特定の高価値アカウントを特定しカスタマイズされたメッセージを訴求するABM施策の導入も検討して実施してみてはいかがでしょうか。
文責:識学 岸