近年、ビジネスシーンで「ロイヤリティ(Loyalty)」と「ロイヤルティ(Royalty)」という2つの似たような単語が用いられるときがあります。
どちらも似たような意味に感じられますが、実際は明確に意味が異なります。
本記事では、ロイヤリティとロイヤルティの違いを解説しながら、ロイヤリティについて徹底的に解説していきます。ぜひ最後まで読んでみてください。
目次
ロイヤリティ(Loyalty)の意味は?【忠誠心】
ロイヤリティ(Loyalty)は「忠誠心」や「忠実」を意味する言葉です。
ビジネスシーンでは、愛社精神、帰属意識、自社に対する忠誠心などの意味で用いられます。
例えば「ロイヤリティの高い従業員」であれば、愛社精神の強い従業員を指します。
また「顧客のロイヤリティが高い状態」であれば、顧客が自社商品や企業理念に強く共感している状態を指します。
ロイヤルティとの違い
ロイヤリティに似た言葉として、ロイヤルティ(Royalty)が挙げられます。
ロイヤルティには「王族」という意味がある一方で「印税」という意味もあります。
ビジネスシーンでは、ライセンス料や著作権使用料という意味で用いられることが多いです。
例えば「ロイヤルティを5%に設定する」であれば、ライセンス料を5%に設定するという意味になります。
エンゲージメントとの違い
ロイヤリティに似た言葉として、エンゲージメントも挙げられます。
エンゲージメントには「約束」「契約」「雇用」「結婚」というように、契約の意味が強いです。
例えば「エンゲージメントの高い従業員」は、自社に対する理解が深い従業員を指します。
以上のことから、ロイヤリティとはほとんど違いがありません。
ただし、ロイヤリティが「状態」を示す言葉なのに対して、エンゲージメントは「程度」を示す印象が強く、これが違いになっていると考えられます。
コミットメントとの違い
コミットメントは、個人が特定の目標に対して持つ責任感や献身の度合いを指す言葉です。
例えば「コミットメントが高い従業員」は、組織の目標達成に対して強い責任感を有し、積極的に仕事に取り組む従業員を指します。
そのため、ロイヤリティよりもコミットメントの方が、行動面や結果に重きを置いた単語になっています。
ロイヤリティの4つの段階
ロイヤリティには、以下の4つの段階があると考えられています。
- 真のロイヤリティ
- 見せかけのロイヤリティ
- 潜在的ロイヤリティ
- 非ロイヤリティ
それぞれ詳しく解説していきます。
①:真のロイヤリティ
真のロイヤリティは、行動と態度が一致している状態を指します。
企業に対する忠誠心が強いことに加え、企業がより良くなることを強く望み、それを行動で示します。
そのため、真のロイヤリティを有している従業員は、基本的にパフォーマンスが高いです。
企業としては、真のロイヤリティを喪失させないように、ケアし続けることが重要です。
②:見せかけのロイヤリティ
見せかけのロイヤリティは、企業に対する忠誠心は薄いものの、企業に貢献しようとする従業員です。
例えば「とりあえず生活のために働いている従業員」や「自分のキャリアだけを見る従業員」は、一見すると真面目に働いている一方で、企業に対する忠誠心の薄い見せかけのロイヤリティに該当します。
このような従業員は、きっかけ次第で転職する可能性があるため、注意が必要です。
③:潜在的ロイヤリティ
潜在的ロイヤリティは、企業に対する忠誠心は強いものの、それが行動に現れていない状態です。
企業理念や人間関係に対して好印象を抱いている一方で、パフォーマンスが出せていない従業員が、潜在的ロイヤリティに該当します。
このような従業員に対しては、実力を発揮できる場所を設けたり、研修などのスキル習得を支援したりすることで、ロイヤリティの向上を図ります。
④:非ロイヤリティ
非ロイヤリティは、企業に対する忠誠心が薄い上に、貢献度も低い状態のことです。
企業に貢献しようとする意思も見せず、行動にも移さないので、業績が良くなることはありません。
基本的には、非ロイヤリティに陥った従業員を救出するのは至難の業です。
人事担当者やマネージャーは、従業員が非ロイヤリティの状態に陥る前に、対策を打つ必要があります。
従業員のロイヤリティを高めるメリット3選
従業員のロイヤリティを高めるメリットは以下の3つです。
- 生産性が向上する
- 退職率が減少する
- 組織のイメージが向上する
それぞれ詳しく解説していきます。
メリット①:生産性が向上する
従業員のロイヤリティが高まることで、生産性が向上する可能性があります。
企業に対する忠誠心が強いので、自分本位になることがなく、あくまでも「企業第一」で仕事を進めるようになるためです。
例えば営業部の場合、ロイヤリティの高い従業員は、自分だけの営業成績ではなく、企業全体の営業成績を意識するようになります。
組織優先で仕事に取り組むようになるので、結果的に生産性が向上するのです。
メリット②:退職率が減少する
従業員のロイヤリティが高まることで、退職率が減少する可能性があります。
ロイヤリティの高い従業員は、自社に対する忠誠心が強いので、よっぽどのことがない限り、退職することはありません。
そして勤続年数が長くなればなるほど、企業も従業員に対して長期的な人材育成を実施できるので、より結びつきが強くなります。
メリット③:組織のイメージが向上する
従業員のロイヤリティが高まることで、組織のイメージが向上する可能性があります。
例えば、本音では自社製品をあまり良く思っていない営業マンと、心の底から自社製品を愛している営業マンとでは、後者の方が顧客目線で印象が良いはずです。
また、ロイヤリティの高い従業員は「自社の素晴らしいところ」を自発的に宣伝するようになるので、ブランディングでも大きな効果を発揮します。
従業員のロイヤリティを高める方法
従業員のロイヤリティを高める方法は以下の3つです。
- 経営層の透明性を高める
- 横断的なコミュニケーションの機会を増やす
- ストックオプションを導入する
それぞれ詳しく解説していきます。
方法①:経営層の透明性を高める
従業員のロイヤリティを高める方法として、まず挙げられるのが経営層の透明性を高めることです。
実際、企業をコントロールしているのは経営層であり、経営層の思想がそのまま企業に反映されます。
つまり、企業理念を従業員に周知させるには、まず経営層の透明性を高めることが重要です。
従業員が経営層の思想に気軽にアクセスできるようになれば、自社の企業理念を深く理解できる可能性があります。
これが、ロイヤリティ向上に繋がるのです。
方法②:横断的なコミュニケーションの機会を増やす
縦のコミュニケーションだけでなく、他部署を交えた横断的なコミュニケーションを増やすのも得策です。
他社の仲間とコミュニケーションを取ることで、自社をもっと深く理解できるようになります。
また、他部署がどのような仕事を進めているかを理解できれば、自分本位になることが少なくなり、シームレスかつ効率的に仕事を進められるようになるはずです。
方法③:ストックオプションを導入する
少々打算的ですが、ストックオプションを導入するのもいいでしょう。
ストックオプションは、自社の株式をあらかじめ決められた価格で取得できる権利を付与する制度のことです。
とても簡単に言ってしまうと、ストックオプションを取得した従業員は、企業が成長すればするほど、それと同じ割合で報酬を増やすことができるということです。
この仕組みを活用すれば、従業員は自社を成長させるために、本質的な仕事に取り組むようになります。
また、株価が下がると自分の報酬も下がることから、主体的にケアレスミスを予防するようにもなります。
顧客のロイヤリティを高めるメリット3選
顧客のロイヤリティを高めるメリットは以下の3つです。
- リピーターの獲得に繋がる
- 口コミ効果が出やすい
- 顧客単価が向上する
それぞれ詳しく解説していきます。
メリット①:リピーターの獲得に繋がる
顧客のロイヤリティを高めることで、リピーターの獲得に繋がります。
例えば筆者は、Appleに対して強い忠誠心を抱いているため、新しいiPhoneが出たら、必ず購入してしまいます。
このように、ロイヤリティの高い顧客は、商品に対して強い忠誠心を抱いているので、同じ商品をリピートで購入する確率が高いのです。
メリット②:口コミ効果が出やすい
顧客のロイヤリティを高めることで、口コミ効果が期待できるようになります。
例えば筆者は、Appleに対して強い忠誠心を抱いているため、PCを購入する際にWindowsかMacかで悩んでいる友達がいたら、必ずMacをおすすめし、それに合わせて、Macにしかない魅力を力説します。
このように、ロイヤリティの高い顧客は、心の底から製品を愛しているので、その愛を周囲の人に強くぶつけるようになるのです。
メリット③:顧客単価が向上する
顧客のロイヤリティを高めることで、顧客単価の向上が期待できます。
例えば筆者は、Appleに対して強い忠誠心を抱いているため、iPhoneやMacに限らず、Apple Watch、AirPods Pro、HomePod miniなどのApple製品で身を固めるようになりました。
また、アパレルであれば、同ブランドでセットアップを決めることも珍しくないはずです。
このように、顧客のロイヤリティが高まることで、同系列の商品を購入するなど、顧客単価の向上が見込めます。
顧客のロイヤリティを高める方法3選
顧客のロイヤリティを高める方法は以下の3つです。
- NPSを測定して改善に繋げる
- ブランディングに力をいれる
- CSRを重視する
それぞれ詳しく解説していきます。
方法①:NPSを測定して改善に繋げる
顧客のロイヤリティを高めたいのであれば、顧客ロイヤリティを測定する指標の1つであるNPSを活用しましょう。
NPS(Net Promoter Score)は、顧客に「商品・サービスを他人にすすめたいですか?」と質問することで、測定される指標です。
NPSで顧客ロイヤリティを測定することで、顧客の心を掴む商品や、微妙な商品を特定できるため、改善に繋げやすくなります。
方法②:ブランディングに力を入れる
顧客のロイヤリティを高めたいのであれば、ブランディングに力を入れるようにしましょう。
一般的に、目標とする売り上げの30%が、マーケティングコストに用いられます。
そして、その30%からさらに10%をブランディングに投下するのが一般的です。
ブランディングを実施して、顧客ロイヤリティを高めることができれば、リピート率向上や顧客単価向上が見込めます。
ROI(投資対効果)を算出しながら、適切量のリソースをブランディングに投下しましょう。
方法③:CSRを重視する
顧客のロイヤリティを高める方法として、CSRを重視することが挙げられます。
CSR(Corporate Social Responsibility)は「企業の社会的責任」という意味で、従業員・顧客・消費者・株主・地域など、ステークホルダーに対する責任のことを指します。
現在、CSRは非常に注目されており、CSRにどれくらいの力を入れているかどうかが、顧客ロイヤリティを左右するまでになっています。
例えば近年だと、ユニクロが新疆ウイグル自治区の綿を用いていたことで、世界的にバッシングされたのが記憶に新しいです。
このように、社会的責任を果たしているかどうかで、企業のイメージは大きく左右されます。
CSRを重視して、企業のイメージを損なわないようにしましょう。
まとめ
それでは本記事をまとめていきます。
- ロイヤリティは「忠誠心」や「忠実」を意味する言葉
- 従業員のロイヤリティが高まることで、離職率低下や生産性向上などのメリットがある
- 顧客のロイヤリティが高まることで、リピーターの獲得、顧客単価向上などのメリットがある
ロイヤリティは「忠誠心」を意味する言葉で、似た単語であるロイヤルティは「ライセンス料」という意味なので、両者は全く異なる単語になります。
また、従業員及び顧客のロイヤリティが向上すると、様々なメリットを享受できる可能性があります。
ロイヤリティ向上の施策を検討してみてはいかがでしょうか。