東京商工リサーチの集計によると、2023年度上半期の「人手不足」関連倒産は82件で、前年の2.6倍に急増。
2013年以降で最多を記録しました。
あらゆる産業が人手不足の課題を抱える中で、現場で働く労働者やマネジメントを行う管理職にも多大な影響を与えています。
今回は現場を指揮する管理職が人手不足の状況でどのような課題と直面しているのか、そして管理職がやってはいけないこととは何なのかを解説します。
人手不足を解消すべく取り組むべきことも紹介していますので、ぜひ最後まで読んでください。
出典:株式会社東京商工リサーチ 「人手不足」倒産 4-9月は過去最多の82件 要因別は、「求人難」と「人件費高騰」が急増
目次
人手不足による管理職を取り巻く課題とは
人手不足の状況で、管理職は一人ひとりの労働生産性を上げることに取り組む必要があります。
管理職も部下も、日々業務を遂行していくだけで精一杯のため、労働生産性向上へのアクションになかなか取り組めないというのが実情です。
しかし、人手不足の中で成果を上げていくためには、労働生産性の課題解決は避けられません。
放置すればするほど、状況は深刻になっていくからです。
厚生労働省によれば、職場のマネジメントを担う存在である管理職は一般社員と比較すると、相対的に多くの人が人手不足感を感じており人手不足に対する危機感が強いと考えられます。
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人手不足の状況で管理職がやってはいけないこと
人手不足の中で管理職の器ではない人が管理職になると、離職者が増加する恐れがあるため、企業としては深刻な問題です。
さらに離職者が増えないように、管理職がやってはいけないこと3つを解説していきます。
- ①優秀な部下に仕事を任せすぎること
- ②成果を自分の手柄にすること
- ③部下より優秀であるとアピールすること
関連記事:【こんな発言はNG】ダメな上司とは?具体例をもとに特徴や対策を解説
①優秀な部下に仕事を任せすぎること
人手不足の状況下では、目の前の業務を早くこなすことを優先しがちです。
滞りなく仕事をしてくれる優秀な部下に必要以上に仕事を任せてしまうことはないでしょうか。
いくら優秀な部下であっても過度な仕事量で心身共に負担がかかると、最悪の場合離職に追い込まれてしまいます。
組織全体の生産性を考え、負担は軽減させるべきです。
また、実業務を通して人は成長できるため、組織のメンバー全員が成長して労働生産性を向上できるよう、管理職が成長の機会を一人ひとりに与えるべきです。
人手不足だからこそ、人材育成の大切さは忘れないようにしてください。
関連記事:生産性の高い人の特徴とは?生産性と効率の違いも合わせて解説
②成果を自分の手柄にすること
人手不足でなくてもやってはいけないことですが、部下の成果を管理職の手柄にすることは、やってはいけません。
部下の頑張りに対する結果は、正当に評価されるべきです。
人の成果を横取りするような管理職のもとでは、若手が続々と退職したり、メンバーが本来の能力を発揮できなかったりと、組織にとって良くないことばかりが起こります。
「なぜこんな管理職の器でない人が上司なのか」と部下は嘆きたくなるかもしれませんが、管理職のなり手がいないことも人手不足の弊害なのです。
もし部下の手柄を横取りしている自覚がある人がいれば、自分自身は仕事ができなくても、部下のサポートに徹する管理職になってください。
管理職はプレーヤーとしてではなく、マネージャーとしての成果を求められています。
部下を信頼して仕事を任せ、部下をサポートできる管理職であれば、チームの業績は上がり部下からの信頼も得られるでしょう。
関連記事:信頼される上司になるには?10の特徴と信頼関係を築くためのポイントについて解説
③部下より優秀であるとアピールすること
プレイングマネージャーの場合、管理職自身がプレーヤーとして誰よりも良い成果を上げなければと思っている人がいるかもしれませんが、間違いです。
管理職は自分の成果より、部下が成果を上げられるようなマネジメントを最優先すべきです。
また過去の栄光から部下に自分のやり方を押し付けることも、管理職がしてはいけないことです。
部下が自信をなくしてキャリアに不安を覚えてしまい、離職につながる恐れがあります。
人手不足の中では離職者をなるべく出さないことや、一人ひとりの労働生産性向上が大切です。
そんな中、管理職の行動が部下の成長機会を奪うようなことはしてはいけません。
部下を必要以上に褒める必要はありませんが、部下の成果を認めて、正当な評価ができる管理職であるべきです。
関連記事:離職率が高くなってしまう原因は?対処法についても解説
人手不足の状況下で管理職が取り組むべきこと
管理職は人手不足の状況下でも、マネジメントを最優先すべきです。
人手不足解消のために管理職が取り組むべきことは以下の3つです。
- ①スキルアップの機会提供
- ②労働環境の改善
- ③「マニュアル」の整備
それぞれ詳しく解説します。
関連記事:日本の人手不足問題の原因とは?人手不足の背景や企業ができる対策を紹介
①スキルアップの機会提供
管理職は部下のスキルアップのために機会を提供しましょう。
部下一人ひとりのスキルを底上げできれば、労働生産性は向上し、人手不足を補填できるはずです。
部下のスキルアップのために人材育成の投資を積極的に進めることは、結果的には大幅な業務効率化になります。
目の前の業務をこなしていくことだけに注力するのではなく、小さなことからでも部下に仕事や権限を与え、成長を促します。
また一人当たりの労働生産性を引き上げることが可能で、人手不足解消の糸口になりえるでしょう。
関連記事:個人でできる生産性向上の取り組み事例を紹介!【15選】
②労働環境の改善
人手不足の中、部下の離職を防ぎ、新たな人材の採用を増やすには、労働環境を整えることが重要です。
たとえば、以下に挙げることができていないようであれば、改善の余地があります。
- リモートワークをできる環境にあるか
- キャリアアップが可能な体制か
- 顧客・社員の情報管理やセキュリティ管理がされているか
- 法外な長時間労働を部下にさせていないか
部下が安心してのびのびと仕事ができる環境に改善することも、離職率の低下や採用面で必要になってきます。
関連記事:離職を防ぐ環境設定のポイント
③「マニュアル」の整備
管理職は部下の業務遂行に効果的なマニュアルを整備すべきです。
「マニュアル人間」と揶揄する言葉があるように、マニュアルを軽視する人が一定数います。
しかしマニュアルは、過去に同じ業務に関わった人たちの膨大な作業量や失敗の上に残っているものです。
たとえば、成果を上げた人の持つ好事例を「マニュアル」としてメンバーに共有すれば、業務の効率化につながります。
マニュアルの良い点は、属人化を防ぎ、誰でもわかる・誰でもできる仕組みをつくれるところです。
人手不足で悩む組織にとっては、マニュアル通りに忠実に実行することで、最短で成長できる良い手段であるといえます。
関連記事:業務効率化と生産性向上の違いとは?実施すべき取り組みを紹介
まとめ
今回は人手不足の状況下で管理職がやってはいけないことや、管理職が取り組むべきことを解説してきました。
人手不足の問題はさまざまな要因が合わさっているため簡単に解消できるわけではありません。
管理職としてできる限りの行動をして、組織の成果を上げられるよう、今回の内容をぜひ参考にしてみてください。