2020/09/30

ドラッカーの「マネジメント」から学ぶ 転職面接を成功させる人材の考え方

会社にとって、いま何が必要で何を優先すべきか――
そのトリアージこそ、経営でも個人でも、強く求められる能力と言えるでしょう。
能力というより、ある種の「覚悟」と言うべきでしょうか。

そして、その優先順位は「結果」に対するものだと、筆者は考えていました。
少なくとも今回のすれ違いが起きるまでは。

 

転職エージェントの手腕

 

筆者の友人は、外資系コンサルタントファームでコンサルタント(ヘッドハンター)として活躍する女性です。

外資系企業の特徴として、新卒採用をほとんど行わないことが挙げられます。
それに対し日系企業は、数年かけて新卒採用者を教育し、社会人として育て上げるカルチャーがあります。

しかし、外資系企業が求める人材は、即戦力として受け入れることが前提のため、「昨日まで学生でした」という人材は「またの機会に」となることが多いのです。

そのため、友人のようなヘッドハンターが介入する形で、求職者(キャンディデイト)と求人企業(クライアント)を結び付けます。

外資系企業にとって、英語は必要不可欠です。
そこで、バイリンガルとしての能力がどの程度あるのかをヘッドハンターが判断し、クライアントへの紹介の可否を決めます。

クライアント企業からすると、ヘッドハンターの行動力や洞察力、分析力によって、求める人材が最短ルートで獲得できるとあり、ヘッドハンター個人への信頼は絶大です。

友人は毎年、社内MVPとして表彰される優秀なヘッドハンターです。
そんな彼女の目標は、

「双方にとってベストなオファー(内定)を生み出すこと」

この一択であると断言します。


そんな転職エージェントのプロへ、求職活動中の知人を引き合わせました。

 

内定までの長い道のり

 

知人Xは、食品業界一筋で活躍してきた50代後半の男性です。
これまでのキャリアも立派なため、再就職に時間はかからないのでは、と誰もが楽観視していました。

しかし、予想に反して転職活動は困難を極めました。

離職から2年が経過するXは、ハローワークの求人システムから有料の求人サイトまで、ありとあらゆる手段で転職活動を続けてきました。
これまでにエントリーした企業数は150社を超えます。

真面目で責任感の強いXが、面接にすら進めない状況に気を揉んだ筆者は、ヘッドハンターの友人へ相談をしました。

「これ、エントリーの時点でAIが自動で不合格にしてる」

友人は、求人サイトの仕組みを教えてくれました。
年齢、性別、キャリアなどをもとに、企業が求めるターゲット層から外れるエントリーに対して、
「書類選考の結果、残念ながら今回は見送らせていただくことに・・・」
というリプライが自動で送信されるとのこと。

そのため、書類審査で落とされたと思っていた大半のエントリーが、じつは年齢的なターゲット層から外れていたため、AIによって「お断り」されていた可能性があったのです。

「オートリプライで断られても、企業へ直接、履歴書を送ったほうがいいですよ」

年齢的な壁に直面し、自暴自棄になりかけていたXでしたが、このアドバイスを受けて就職活動をリスタートさせました。

しかし、いくつかの企業と面接までこぎつけるも、内定には至りません。

そんな鳴かず飛ばずの状態が続いたある日、友人から

「もしよかったら、面接のトレーニングをしませんか?」

と提案がありました。

オンライントレーニング初日の開口一番、

「Xさん、実際はこんなに素敵なお顔なのに、履歴書の写真がもったいないです。
美容室でヘアスタイルを整えてから、スタジオで撮り直すことをおすすめします」

友人はこう切り込みました。

Xのこれまでのキャリアや業界事情からして、内定が取れないはずはないと考える友人は、単刀直入にアドバイスを続けます。

最初は面食らった様子のXでしたが、すぐさまメモをとり、面接でのコツをつかもうと必死でした。

筆者は、「これでようやく再就職に近づいた」と安堵の胸をなでおろしました。

 

譲れない信念

 

「どうしてXさんは、私のアドバイスを受け入れてくれないんだろう」

深夜に友人からメッセージが届きました。

「面接のレジュメ、添削したけどこれじゃ通らないよ」

企業側が受け入れたいと思う人物像でなければ、落とされて当然です。
そのためにも、表現方法や伝え方を少し変えるだけで、受け手の印象が変わるということを、友人は伝えたかったのです。

しかし、Xは頑なに自らの主張を伝えようとしました。
決して、友人のアドバイスを聞いていなかったわけではありません。
それらを理解した上で、自らの主張を貫いたのです。

「これはオファーがもらえない人の典型。
今回だけでも私の言ったとおりにやってもらいたい、絶対に受かるから」

人材紹介のプロである友人の嘆きは事実でしょう。
企業分析の結果、Xのキャリアと求める人材がいかにマッチしているかを伝え、内定へと繋ぐ。
そのための面接のポイントを伝えたわけで、異論の余地はないほどに完璧な戦略です。

それなのに、なぜ――。

数日後、Xから突然、筆者へ連絡がありました。
待ち合わせ場所へ行くとスーツ姿のXがいます。
ひと悶着の端緒となった「面接レジュメ」の企業の社長と、面談をしてきたとのこと。

「(筆者の)友人には本当に申し訳ないと思ってる。
だけど俺には、年齢的にも残された時間は少ない。
だから、内定がほしいというより、自分が活かせる企業かどうかを知りたかったんだ」

内定こそが最も手に入れたいもので、企業文化など二の次と考えていた筆者は驚きました。

「もし、『業界も職種もなんでもいい、とにかく再就職できれば』という考えなら、就職先なんてどこでもいいんだよ。
でも、これまでのキャリアを活かして、俺のラストスパートができる企業を選びたかったんだ」

あと数年で、シニアエイジと呼ばれる年齢を迎えるXにとって、友人や筆者の年代とは異なる価値観や考えがあったのです。

「その信念を曲げてまで、内定がほしいわけじゃないんだ。
だからこそ、真っ当なアドバイスをくれた(筆者の)友人には、申し訳ないことをしたと思ってる」

そう言って頭を下げるXに、返す言葉が見つかりませんでした。

 

優先すべきことと価値観との互換性

 

筆者は社労士であり、採用や人事に関わる仕事を日々行っています。
履歴書から読み取れる人物像や、面接で垣間見える本質的な部分から、企業にとって必要な人材かどうかの判断をします。

ヘッドハンターの友人とは異なる立場ですが、筆者なりの採用に関するベストプラクティスはあります。

友人は「就職させること」が目的のため、条件をクリアしたうえで「内定」を最優先に考えます。
ここは筆者も同意見です。まずは「打席に立つこと」で、それが打率へとつながるからです。

そのためにも、まずは内定を掴んでもらい、進退はその時点で決めればいい、と我々は考えました。

P.F.ドラッカーは、マネジメントにおける自己管理と目標管理のなかで、
「組織には、人をまちがった方向へ持って行く要因が四つある」
と言っています。

その一つである「技能の分化」の話を思い出しました。

「三人の石切り工の話がある。何をしているかを聞かれて、それぞれが『暮らしを立てている』『最高の石切りの仕事をしている』『教会を建てている』と答えた。第三の男こそマネジャーである」

三人いずれの答えも間違いではありません。しかし、組織マネジメントの考え方としては、3番目の回答が正しいのです。目標を正しく理解し、目標達成のために自己管理を徹底することで、現状の把握と方向づけができます。

友人と筆者は、「内定こそが最優先の目標である」と考えました。
そこには、年齢を気にするXにまずは安定した就業環境を整えてもらいたい、という配慮もありました。

しかしXは、企業に対して譲れない条件があり、そこを曲げてまで内定をもらう必要はない、と考えていました。三人の石切り工の例でいうと、2番目の答えに近い考えです。
Xにとっては、安定した就業環境を確保するより、貫くべき「強い信念」があったのです。

この隔たりこそ、Xが友人のアドバイスを受け入れられなかった要因であり、我々が勘違いをしていた部分だったのです。

Xの「強い信念」を早い段階で理解していれば、友人のアドバイスも別の内容となっていたでしょう。
今回のすれ違いから、我々は「人の価値観の違い」を痛感しました。

ダイバーシティが推進される昨今、自分とは異なる価値観や発想を理解し、取り入れることで、ビジネスに限らず様々な環境変化に迅速かつ柔軟に対応できます。

そのためにも、多くの人とコミュニケーションをとり、自分との違いを受け入れることが大切です。
その結果、企業は成長を、個人はしあわせを手に入れることができるはずです。

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