人手不足なのに雇わない会社は、意図的に採用しないケースや採用したいけれどできないケースが考えられます。いずれの場合でも現場の社員にかかる負担が大きくなり、会社にはデメリットしかありません。
本記事では、会社が人手不足なのに雇わない理由や社員を雇わないデメリット、さらには人手不足が発生しやすい会社の特徴を紹介します。
目次
人手不足にもかかわらず社員を雇わない理由
人手不足で残業続き、人手不足で一人の社員が複数業務を掛け持ちしている……このように人手不足による悪影響が出ているにも関わらず採用活動をしない会社にはどのような理由があるのでしょうか。考えられる理由を紹介します。
採用コストを掛けたくない
まず考えられるのが、採用コストを抑えたいという目論みから社員の採用を見送っているケースです。中途採用の社員一人につきかかる採用コストは、100万円を超えることもあるといわれています。
求人広告費を出したり採用面接をしたりする余裕がない会社は、人手不足だと分かっていても採用活動への注力をためらうケースがあるでしょう。
新入社員の採用に手間を掛けられない
現在ギリギリの状態で業務を回している企業は、新入社員を雇うための採用活動をする余裕がありません。人手不足と分かっていても、求人広告を出したりSNSで告知したりするのを控える傾向があります。
社員の採用までには、求人を出したり面接を行ったりする作業が発生します。入社後しばらくは業務を教える必要があり、社員の誰かが新人教育を担当しなければならないでしょう。
しかし、手持ちの仕事で精一杯になっている社員が多ければ、採用や新人教育に関わる諸業務を担当できる人がいません。
人手不足だから新しい人を採用しなければと分かっていても、企業は具体的な行動を起こすのが難しくなります。
業務にマッチする社員が見つからない
専門性の高い仕事の場合、業務と採用者とのマッチ度が非常に重要となります。求人を出し続けても自社のニーズにかなう人材が現われなければ、採用するのは困難です。現場から人を入れてくれと言われても、すぐに対応するのは難しいでしょう。
人手不足なのに社員を雇わないデメリット
人手不足にもかかわらず社員を雇わずにいると、労働生産性の低下や職場の雰囲気の悪化・離職率の上昇が懸念されます。それぞれについて、詳しく見ていきましょう。
労働生産性の低下
人手不足を放置すると、社員一人ひとりにかかる負担が大きくなります。仕事の負担が大きくなることにより、業務の遅延や未達が発生しやすくなるでしょう。
また業務負担が大き過ぎると、社員のモチベーションにも悪影響を与えます。
仕事の終わりが見えない、残業が続くなどの状況があれば、社員の業務効率はより一層低下するかもしれません。業務が回っているように見えても、すでに内部破綻が始まっている可能性があります。
職場の雰囲気の悪化
業務負担が大きくなると、社員に余裕がなくなります。雑談や軽口が減り、職場の雰囲気が殺伐とするかもしれません。また、人によって業務負担のバラつきがある場合は、負担の大きい人が不公平を感じやすいです。
業務負担の大きい人と小さい人の関係が悪くなり、職場内コミュニケーションが十分に取れなくなる恐れがあるでしょう。
離職率の上昇
「人手不足なのに雇わないなんて」という不満から、社員が退職に踏み切ることもあります。優秀な社員が辞めれば離職の連鎖が起こる可能性があり、人手不足はさらに加速するかもしれません。
社員が離職を考えるのは、会社への忠誠心や愛着心を持てなくなったときです。会社が人手不足について見て見ぬフリをすることは、社員との良好な関係を裏切る行為と思われてしまうかもしれません。
人材が定着しない会社の特徴
常に人手不足に陥りやすい会社とは、すなわち人材が定着しない会社です。入社した社員がすぐに辞めてしまう会社に当てはまるいくつかの特徴を紹介します。
社員の提案が認められない
全てトップダウンの独裁的な経営体制の企業は、社員に与えられた裁量がごくわずかです。有益な提案をしても認められない・非効率的な業務フローを強要されるなどの傾向があり、社員が辞めてしまいがちです。
一般に、優秀な社員ほど積極的に業務改善のための提案をする傾向です。社員の挑戦を認めない企業や、時流の変化を受け入れられない企業とは相性が悪く、採用しても長続きしません。
業務分担の不公平が起きている
一部の社員に業務が集中するような会社では、社員間の公平性を保てません。
特に近年は市場のデジタル化が進んでおり、デジタルリテラシーの高い優秀な社員ほど負担が増大する傾向です。デジタルリテラシーの低い社員・上司から仕事を振られるケースも多く、不満がたまります。
業務の一極集中が起きている企業は、社員間の不平不満が顕在化しやすい傾向にあります。自分の担当ではない仕事に煩わされることが増えれば、優秀な社員は「他の会社を探そう」と考えてしまうでしょう。
労働環境が悪い
仕事に問題がなくても、職場の雰囲気がギスギスしていたりトラブルメーカーがいたりする会社では、人材が定着しません。
仕事に集中したい優秀な社員は「もっと仕事に集中できる会社を探そう」と考え、簡単に離職してしまいます。また、有給を取りにくい、定時で帰りにくい、飲み会への参加を強要されるなどの問題があると、働きにくいと判断されてしまうでしょう。
ワークライフバランスを重視する社員からは忌避される傾向があり、離職を引き起こしやすくなります。
人手不足を解消するために必要な対策
人手不足の原因を放置すると、何度新入社員や中途社員を雇っても現状は改善されません。人手不足を根本から改善するためには、現状の見直しが必須です。人手不足に陥る会社がまず見直すべきポイントを紹介します。
評価制度の見直し
人事評価の基準があいまいだと、社員から不満が起こりやすくなります。現在の評価制度の有効性を確認してみましょう。社員に評価の根拠を尋ねられたときに、はっきりと答えられない制度は信頼性があるとは言えません。
社員が納得できる評価制度にするには、明確な基準や、評価過程がはっきり分かることが必要です。評価制度が属人化していると感じたら、早急に評価制度標準化に向けての取り組みを行いましょう。
社内コミュニケーションの見直し
上司と部下、社員同士のコミュニケーションが取れていれば、社員の悩みや不満を把握しやすくなります。職場のコミュニケーションが活性化される仕組みを作り、風通しをよくする工夫が必要です。
ただし飲み会の強制参加などコミュニケーションの押し付けをしてしまうと人によっては大きな負担となります。社員との相互理解を深めるなら、一人ひとりの気持ちを汲み取った接し方が必要です。
研修を充実させる
人手不足に陥りやすい会社こそ、新入社員を定着させるための取り組みが必要です。新入社員にいきなり仕事を押し付けるのではなく、事前研修を充実させましょう。
人手不足で新入社員の研修まで手が回らない場合は、オンボーディングの工程を外注するのも一つの方法です。
人手不足なのに社員を雇わないのは、会社にとって大きなマイナス
人手不足なのに社員を雇わない会社は、雇いたくても余裕がない、雇ってもすぐに辞めるので放置しているなどの理由が考えられます。
どちらのケースも在職中の社員への負担が大きくなり、好ましい状況とは言えません。人手不足の状態を知っていながら放置すれば、離職の連鎖が発生するリスクが高まるでしょう。
人手不足が発生するのは、会社に何らかの問題があるのかもしれません。労働環境や職場の人間関係などを見直し、必要があれば早急に改善してください。社員にとって働きやすい環境を提供できれば、社員が定着し人手不足に陥ることは徐々になくなるはずです。