「世間の管理職平均年齢は?」「どうしたら管理職になれる?」など、昇進を希望する人にはさまざまな悩みや不安がつきものです。
今回は厚生労働省のデータなど信頼できる情報をもとに、管理職の平均年齢や女性管理職の比率、そして管理職に求められるスキルについて見ていきたいと思います。
ぜひ、自身のキャリアビジョンを達成させるための参考にしてください。
目次
管理職の平均年齢と管理職登用のタイミング
下記は厚生労働省が実施した「令和3年賃金構造基本統計調査の概況」資料の抜粋です。
【厚生労働省資料より 令和3年賃金構造基本統計調査の概況】
役職 | 男女平均年齢 | 男性年齢 | 女性年齢 |
部長(管理職) | 52.8歳 | 52.8歳 | 53.1 |
課長(管理職) | 48.7歳 | 48.7歳 | 49.0 |
係長 | 45.3歳 | 45.1歳 | 45.9際 |
引用元:厚生労働省資料より 令和3年賃金構造基本統計調査の概況
厚生労働省の調査によると、管理職の平均年齢は男性が48.7歳、女性が49歳となっています。
ただし、このデータはあくまでも平均です。
実際には30歳前後で管理職になっている人もいれば、50歳を超えてはじめて管理職に就く人もいます。
49歳で管理職になるとすれば、新卒採用されてから管理職になるまで約26年かかる計算です。
かなり遠い道のりのように見えますが、管理職年齢は業種や企業規模によっても違ってきます。
一般的には、スタートアップ企業など小規模な会社では与えられる裁量も大きく、20代で管理職として登用されるケースも少なくありません。
関連記事:管理職の昇格・昇任・昇進試験とは?試験の内容や目的、注意点を徹底解説!
管理職の平均年収
厚生労働省の調査データを見ると、管理職の平均年収は「課長級で約600万円程度」、「部長級で約700万円」となっています。
ただし、企業によっては基本給以外にボーナスやインセンティブなどが支給されることもあります。
そもそも、平均年収は業種によっても違います。
同じ厚生労働省の調査を見ると、もっとも高い業種は「電気ガス・熱供給」などの分野、もっとも低いのは飲食宿泊業です。
管理職になると、報酬が会社業績と連動することも多く、業績によってはかなり年収が上下する可能性もあります。
一般社員と比較し、管理職は「経営目線で業務に取り組む姿勢が求められる」ということでしょう。
関連記事:【管理職手当の決め方】役職手当との違いや相場、残業代との関係を徹底解説!
企業における女性管理職が占める割合
企業における女性管理職の登用状況についても見ていきましょう。
政府は民間企業の女性管理職割合目標を「2020年15%」としていましたが、令和4年の経済産業省の調査によると、女性管理職の割合は「15%」となり目標を達成しています。
ちなみに、アメリカやイギリスなど諸外国の女性管理職の割合は約40%となっており、日本の女性活躍が依然として遅れていることがわかります。
【経済産業省の調査より|役員管理職に占める女性比率】
国 | 役員における女性比率 | 管理職における女性比率 |
日本 | 6% | 15% |
米国 | 22% | 41% |
イギリス | 27% | 37% |
フランス | 43% | 35% |
スウェーデン | 36% | 40% |
女性管理職の割合は業種によっても違いが見られます。
例えば資生堂の場合では、女性管理職の割合は約58%です。
元々女性社員が多い職場なのかもしれませんが、建設やメーカー系など男性中心の職場においては、まだまだ改善の余地はありそうです。
関連記事:女性リーダーを増やすには?女性リーダーのメリットや特徴を徹底解説!
管理職に求められるスキルとは?
管理職に求められるスキルは多岐にわたりますが、一般的に必要なスキルは次の4つです。
- 実務管理能力
- 人材マネジメントスキル
- 課題発見力と解決力
- 提案力や経営層との調整力(社内ネゴシエーションスキル)
実務管理能力
管理職には、管轄組織における実務管理能力が求められます。
実務管理の方法は業種によっても異なりますが、どちらにせよ実務管理を行うには実務に精通している必要があるでしょう。
【実務管理の具体例】
- プロジェクトの進行管理
- 受発注管理や請求管理(営業職の場合など)
- 予算進捗管理
- 部下のパフォーマンス管理
「現場を知らない管理者」からの指示は、部下の心には響きません。
組織をマネジメントして生産性を上げるには、部下の内発的動機付けが必要です。
管理職として未経験の部署に配属された場合などは、自ら現場に下りて実務を理解することも必要になってきます。
実務を理解し現場に寄り添う上司からの指示は、部下の能動的なアクションのきっかけにもなるでしょう。
人材マネジメントスキル
管理職としてもっとも大事なスキルが「人材マネジメントスキル」です。
「マネジメント=人や業務を細かく管理する」というイメージを持つ人が多いですが、その場の業務のために人を管理するだけが人材マネジメントスキルではありません。
部下の特性や将来のキャリアビジョンを一緒に考え、並走する気持ちを大切に部下を育成していくことが、管理職に求められる人材マネジメントスキルです。
とはいえ「人材マネジメントスキル」といっても、何をすればいいのかわからない人も多いでしょう。
人材マネジメントスキルの具体例をいくつかあげていますので、ぜひ参考にしてください。
【人材マネジメントスキルの具体例】
具体例 | 内容 |
部下スキルの把握 | 部下が得意とするスキルを把握する |
個人的課題の把握 | 家庭事情など、業務や部下のキャリアに影響する諸事情を理解する |
部下のキャリアビジョンの把握 | 部下と3年後5年後のキャリアビジョンを共有する 部下がキャリアピジョンを描けない場合は一緒に考えてアドバイスする |
正しい目標設定と評価 | 納得感のある正しい業務目標の設定し、目標に対する進捗管理と評価する |
フィードパックと動機付け | 日々の業務評価をフィードバックし部下の内発的動機づけを行う |
課題発見力と解決力
管理職には、管轄組織に潜む課題を発見し、主体性をもって解決に向けて動くスキルも求められます。
つまり、「真の課題」を見極める能力です。
例えば「工場ラインの生産性低下」という課題があった際には、機械的性能や人員配置などの直接的課題はもちろん、その「裏」にある本当の課題はなにか見極めることが大切です。
もしかすると、工場全体を管理するシステムや組織そのものに問題があるかもしれません。
課題が明らかになったら、課題解決に向け、部署を横断した調整能力も求められます。
自部署だけで解決ができない場合は、他部署の責任者と調整していく必要もあるでしょう。
課題によっては経営層に提言する必要があるかもしれません。
会社での「調整能力」とは、利害関係の異なる相手と物事を調整し、落としどころを見つけるスキルのことです。
例えばプロジェクトを推進するうえで、管理部の許可が得られなかったり予算許可がもらえなかったりすることは、どこの職場でもよくあることです。
事実、厚生労働省公式サイト「人材育成の現状と課題」のなかでも、管理職に不足している能力として「組織内外との利害調整や交渉力・人脈力」があげられています。
【厚生労働省公式サイト 人材育成の現状と課題より「近年の管理職に不足している能力資質」より】
相反する考えをもつ部署との調整は大変ですが、関係部署の責任者と交渉し目標達成に向けて調整していくことは、管理職にとって重要なスキルといえます。
提案力や経営層との調整力(社内ネゴシエーションスキル)
管理職は現場から出た意見をまとめ、経営層に提言する役割を担います。
「予算を確保してほしい」「業務環境を改善してほしい」など、費用と時間がかかる問題については経営層に許可を取ることも多いでしょう。
現場からの要望を資料にまとめ、経営層との会議などをセッティングし、他部署を巻き込んで提案していくネゴシエーション能力も、管理職に求められるスキルのひとつです。
自分の提案を経営層に許可してもらうには、経営陣とのコミュニケーションスキルも大切になってきます。
管理職になるために今からできる4つの取り組み
管理職を目指すなら、ただ与えられた仕事をこなすだけでは不十分です。
昇格のチャンスが巡ってきたときに上司から推薦をもらえるよう、普段から次の4つの取り組みを心がけましょう。
- 経営者目線で物事を俯瞰的に考えるクセをつける
- 将来有望な先輩管理職のスキルを真似る
- 管理職試験の準備
- マネジメントスキル向上に役立つ書籍を読む
経営者目線で物事を俯瞰的に考えるクセをつける
管理職になるためには、常に経営者目線で物事を俯瞰的に捉えるようにしましょう。
指示された業務を遂行するだけではなく、業務を行う目的や経営上の背景などを考えることが大切です。
常に俯瞰的に物事を見るクセがつけば、管理職に求められる課題発見力やマネジメント能力を鍛えることができます。
将来有望な先輩管理職のスキルを真似る
成功している先輩管理職のスキルや行動を観察し、それを自分自身に取り入れることで、効果的にマネジメントスキルを磨くことができます。
まわりを見渡せば、経営層からも部下からも人望を集めている有能な先輩管理職がいるはずです。
目標とする管理職がいたら、その人の「コミュニケーション能力」「問題解決能力」「社内調整力」などを、ぜひ真似してみてください。
管理職試験の準備
管理職に昇格するためには、管理職試験や面接をパスしなければいけません。
昇格を目指しているなら、早めに試験準備をしておくといいでしょう。
試験内容は企業によって異なりますが、例えば次のような試験があります。
- 会計知識を問う試験…日商簿記やビジネス会計
- 語学力を問う試験…TOEIC
- 課題発見力や解決力を問う試験…ケーススタディー、インバスケット試験など
市販の問題も数多く発売されていますので、参考書籍を購入したり模擬試験を受けたりして、準備しておくのがおすすめです。
マネジメントスキル向上に役立つ書籍を読む
管理職試験のケーススタディーの参考になるのが、マネジメント思考を身につけるための書籍です。
管理職を目指す人にとって、「思考力を鍛える書籍」「マネジメントスキルを鍛える書籍」はとても参考になります。
参考までに管理職昇格に役立つ書籍をいくつかご紹介します。
まとめ
管理職になれる年齢やそれまでの在籍期間は企業や業種によって違います。
もちろん、年齢が上がれば自動的に管理職になれるわけではなく、逆にいえば実力主義の企業では、努力次第で20代や30代で管理職に昇格できるケースもあります。
管理職になるには「経営層の補佐的役割を担う」くらいの意識をもって業務に取り組む必要があるでしょう。
実務知識はもちろん、マネジメントスキルや各種法令に関する知識も求められますので、日頃から積極的に自己啓発に取り組むことが昇格への近道といえるでしょう。