入社年数で離職率の違いを見ると、入社から数年が経過した社員よりも新入社員の離職率は高い傾向があり、企業にとっては「いかにして新入社員をフォローして定着させるか」が課題となっています。
新入社員が短期間で退職することは、企業にとって人材育成コストの増加や業務の遅れ、そして残された社員たちの士気低下といった悪影響をもたらします。
この問題を防ぐためには、企業が新入社員の悩みや不安に寄り添い、適切なフォローやサポートを行うことが必要です。
本記事では、「なぜ新入社員の離職率は高いのか?」という疑問に答えるべく、新入社員の離職率に影響する要因や、効果的な新入社員フォローの施策について解説していきます。
関連記事:新卒社員の離職率は?将来の幹部候補生・定着のための対策
目次
新入社員の平均的な離職率はどれぐらい?
一般的に「新入社員」と見なされるのは、入社から3年以内程度の社会人のことです。
そのなかでも大学を卒業したばかりの新卒社会人は、入社から3年以内に離職するのは31.5%という調査結果が出ています(厚生労働省『新規学卒者の離職状況』令和4年)。
離職率の平均値は業界や業種、企業の規模などによっても異りますが、一般的にはこの31.5%(おおよそ3人に1人が3年以内に辞める計算)を上回る離職率の組織は「新入社員の離職率が高い職場」に該当してしまっており、何らかの対策が必要であると考えるべきでしょう。
関連記事:新卒社員の離職率の平均は?離職を抑える方法とあわせて解説します
新入社員の離職率が高くなる要因
新入社員の離職率が高くなりやすい背景には、以下の3つがあげられます。
- 入社前の期待と現実のギャップ
- 職場環境や企業文化の違い
- 労働市場の変化
- 職場のハラスメント
- ポスト不足・昇進の見込みの乏しさ
上記それぞれの要因が、なぜ離職率に影響を与えているのか解説していきます。
1.入社前の期待と現実のギャップ
新入社員は、初めての就職という人生の大きな節目に立ち、職場での人間関係や業務内容に期待を抱いて入社してきます。
特に、入社前の会社説明会などでアピールされた会社の良い部分が印象に残っている分、入社した後の現場で遭遇する「こんなはずじゃなかった」というギャップとの落差にショックを受けてしまいがちです。
関連記事:採用ミスマッチの対策方法5選【従業員を定着させる方法も紹介!】
2.職場環境や企業文化の違い
職場環境や企業文化は、新入社員の働きやすさや適応できるかを左右する重要な要素です。
しかし、企業によっては新入社員が十分に馴染めず、スムーズに適応できず苦しんでしまうことがあります。
例えば、上下関係が厳格な企業やコミュニケーションが不足している職場では、新入社員がストレスや不満を抱え、離職率が高くなってしまう傾向があります。
3.労働環境の変化
近年の労働市場の変化も新入社員の離職率に影響を与えています。
労働市場の流動性が高まり、第二新卒を受け入れる企業がかなり増えてきています。
そのため、新入社員が「ムダに我慢を重ねたり妥協をするより、自分に合った職場を探そう」と考えて転職するケースが増加しているのです。
4.職場のハラスメント
職場でのパワハラやセクハラ、モラハラなどのハラスメントがある場合、新入社員はストレスを感じやすく、離職を考えるようになります。
企業の外部からの評判にも関わってくるため、ハラスメント防止のための取り組みや相談窓口の設置、適切な対処方法を周知することが求められます。
5.ポスト不足・昇進の見込みの乏しさ
新入社員が自分のキャリアに対してポストの不足や昇進の見込みが立たないと感じる場合、やる気を失い、離職を考えることがあります。
企業は、新入社員に対して希望あるキャリアの未来像を示すとともに、適切な昇進機会を提供することが重要です。
また、さまざまな職務経験やプロジェクトへの参加を通じて、彼らのスキルや視野を広げる機会を提供しつつ、スキルや実績を十分に身につければそれにふさわしいポストや昇進の機会を与えることを従業員にアピールしておくことも必要です。
これにより、従業員が将来に希望を持って努力できるようになります。
新入社員の離職を防ぐ!効果的なフォローのための5つの具体策
新入社員の離職率を下げるためには、企業が適切なフォローやサポートを行うことが重要です。
具体的かつ効果的なフォローの方法として、以下の5つの方法をご提案します。
- オリエンテーション・研修プログラムの充実
- 先輩社員によるメンター制度の導入
- 定期的な面談・フィードバック
- 職場環境の改善
- キャリア開発のサポート
以下、それぞれについて詳しく説明していきます。
1.オリエンテーション・研修プログラムの充実
新入社員が入社直後にぶつかる大きな壁のひとつが、業務の難しさです。
新入社員はまだまだ先輩や上司との関係性が出来ていない分、仕事でわからないことがあってもなかなか質問できず、解決できない問題にストレスを溜めることがよくあります。
特に、勇気を出して先輩に質問した結果、冷淡な態度を取られたり叱責されたりすると、たとえ一度の出来事であってもトラウマとなってしまうことは少なくありません。
それっきり仕事の分からない部分を質問ができずに悩み、離職の決意を固めることも多々あるのです。
上記のような問題を防ぐために、現場の先輩たちが新人に優しく接する事も重要ではありますが、人事担当者らによるサポートも効果的です。
例えば、新人が現場に配属される前にオリエンテーションや研修プログラムを実施するなどし、「わからない事だらけ」の状態のまま現場へ放り込まれる事態を解消するようにしましょう。
研修を通じて、業務内容以外にも会社のビジョンや目標、企業文化などを伝えるのもおすすめです。
2.先輩社員によるメンター制度の導入
新入社員に対して、先輩社員をメンターとしてアサインする制度を導入することで、新入社員が業務や職場環境に適応しやすくなります。
本来であれば特定のメンターだけでなく、職場の社員全員が新入社員に温かく接する事がもっとも望ましいのですが、現実的には一定数、仕事に忙殺されているなどで精神的に余裕がない社員がいたり、新入社員に対して冷淡な態度、横柄な態度をとってしまう社員もいるでしょう。
これを完全に防ぎ切るのは残念ながら困難です。
そこで、社員の中でもコミュニケーションスキルが一定以上に達しており、後輩に対して面倒見の良い社員たちを新入社員のメンターとして任命します。
メンターは新入社員の悩みや質問に対応し、仕事の進め方やコミュニケーション方法をサポートします。
メンターが適切にフォローを行うことで、新入社員は安心感を持ち、自信を持って業務に取り組むことができるでしょう。
3.定期的な面談・フィードバック
新入社員に対して、上長や人事担当者などが定期的な面談やフィードバックを行うことが重要です。
これにより、新入社員の業務遂行状況や適応状況を把握し、適切なサポートを提供することができます。
また、新入社員が抱える不安や悩みの中でも、現場では漏らせない不満や不安などを管理層が汲み取ることで、メンターやその他の先輩社員との人間関係にトラブルが生じていないかどうか、早期に把握する事も大切です。
4.職場環境の改善
職場環境の働きやすさが新入社員の定着につながります。
具体的には、コミュニケーションが取りやすい雰囲気の整備や、ハラスメント防止の取り組みの強化などといった人間関係面の改善のほか、柔軟な労働環境の提供など、制度面の改善が挙げられます。
5.キャリア開発のサポート
新入社員が自分のキャリアに対して希望を持ち、企業に定着するためには、上長や人事担当者がキャリア開発のサポートをして面倒を見ることが重要です。
企業は新入社員に対して適切なキャリアパスを示すことが求められます。
実際に社内で輝かしいキャリアを築いて活躍している社員などを「キャリアのモデルケース」とし、新入社員対象の研修などに登場させて講演を行うなどといった方法が有効です。
また、社内での異動やプロジェクトへの参加を通じて新入社員がスキルや視野を広げる機会を提供し、将来のポストや昇進の可能性を示すというアプローチも効果を発揮するでしょう。
まとめ
新入社員の離職率が高い背景には、入社前の期待と現実のギャップ、職場環境や企業文化の違い、労働市場の変化、職場のハラスメント、ポスト不足・昇進の見込みの乏しさなどが関係しています。
これらの問題に対処するために、経営陣や人事担当者としては「オリエンテーション・研修プログラムの充実」、「メンター制度の導入」、「定期的な面談・フィードバック」、「職場環境の改善」、「キャリア開発のサポート」などの方法を通じて、新入社員の仕事の進捗やメンタル面をフォローすることが重要です。
将来の幹部候補生とも言える彼(女)らの定着を促すことは、企業の持続的な成長を下支えすることにもつながります。