目標管理(MBO)と人事評価を連動させている企業はいくつも存在します。
この2つを組み合わせることで、従業員の納得を得やすい客観的な人事評価を実現することが可能です。
しかし、担当者のなかには人事評価や目標管理について正しく把握しておらず、効果的な運用ができていないケースも少なくありません。
そこで本記事では目標管理(MBO)と人事評価について、
- 概要や目的、OKRとの違い
- 利点や問題点
- 関係性や連動する方法
- 効果的な運用方法
などを解説していきます。
目次
目標管理(MBO)とは
パーソル総合研究所が2021年に行った調査によると、目標管理を導入している企業は半数以上の53%以上という結果になりました。
そして、このうちのほとんどの企業で人事評価と目標管理を連動させていることが推測できます。
このように、大半の企業が目標管理と人事評価の連動する運用方法を取り入れていますが、そもそも目標管理とはどのようなものなのでしょうか?
ここから目標管理について見ていきましょう。
(参考:人事評価制度と目標管理の実態調査丨パーソル総合研究所)
目標管理とは
目標管理とは、経営学者のピーター・ドラッカー氏が提唱した、組織マネジメントの手法のことです。
組織が掲げる目標とリンクした個人目標を従業員に設定してもらい、上司が支援しつつ、その目標の達成度合いや進捗状況によって人事評価を決めます。
「Management By Objectives」の頭文字をとって「MBO」と呼ばれることもあります。
関連記事:目標管理とは?メリットとデメリット、取り入れる際のポイントやツールも紹介
目的
目標管理の主な目的は、下記の3つです。
- 目標達成
- 業務遂行能力の向上
- モチベーションの向上
これらの目的を達成するためには、
- 目標は組織目標とリンクしていること
- 目標は従業員自身が決めること
の2つの要素が必須になります。
OKRとの違い
目標管理(MBO)と混同されがちな言葉として「OKR」が挙げられますが、両者はどのように異なるのでしょうか?
OKRとは、「目標と主要な成果(Objectives and Key Results)」という意味で、達成率が6割から7割になるような高い目標を設定するための目標管理の手法です。
また、目標は全社で共有されます。
一方、MBOは期待される目標の達成率は100%であり、目標の共有範囲は上司と本人だけなのでOKRと比べると範囲がかなり狭いです。
関連記事:OKRとは?Googleやメルカリも採用している目標の設定方法や成功への道筋
人事評価とは
一方で「人事評価」とは、評価に基づいて従業員を育成し、生産性を向上させることで組織目標の達成や業績向上を実現するための仕組みです。
従業員を適切に評価するには、成果やスキルだけではなく、どのように組織に貢献しているのかを総合的に判断することが求められます。
人事評価においては、一般的に下記の3つの観点から評価が行われます。
項目 | 内容 |
能力評価 | 業務に必要な技術や知識によって評価する |
業績評価 | 従業員の成果や能力を客観的に数値化して評価する |
情意評価 | 従業員の業務に取り組む姿勢や勤務態度などを評価する |
目標管理との関係
本来、「目標管理」を提唱したドラッカー氏は、「人事評価」と結びつけてはいませんでした。
もともとは組織マネジメントの手法であり、人事評価との関連性はなかったのです。
しかし、近年はこの2つを連動させることで、組織と従業員の成長を促進する企業が増加傾向にあります。
人事評価と目標管理(MBO)を連動させる利点
ここでは、この2つを連動させる利点を見ていきましょう。
効率的・客観的な人事評価
人事評価は主観を排除して行う必要があるため、評価者にとっては負担が大きい業務です。
しかし、目標管理に従って明確な基準をもとにした人事評価であれば、客観的で公正な評価が可能になります。
これにより、効率的に業務を進められるため、評価者の負担を軽減できます。
関連記事:人事評価とは?代表的な3つの評価基準や失敗しないための運用方法を解説
モチベーションの向上
2つ目の利点は、従業員のモチベーションが向上することです。
客観的な評価によってモチベーションが上がることだけでなく、これ以外の要因もあります。
目標管理によって設定する個人目標は組織目標とつながっているため、個人目標に取り組むことで組織に貢献している感覚を得やすくなります。
さらに、組織に貢献すれば待遇に反映されるでしょう。
これにより、従業員は高いモチベーションを維持して働けるのです。
人事評価と目標管理(MBO)を連動させる問題点
利点がある一方で、下記のような問題点が生じる可能性があるため、注意しましょう。
従業員同士が協力しなくなる
人事評価と連動することで、従業員は自分の評価を上げたいばかりにチームと連携しなくなる可能性があります。
個人が成果をあげるほど待遇が良くなるため、組織にとって重要な業務よりも自分の評価が高まりやすい業務を優先してしまうのです。
従業員が高い目標を設定しなくなる
2つ目の問題点は、従業員が高い目標を設定しなくなることです。
目標を達成できずに評価を下げられることを避けるために、あえて低い目標を設定する可能性があります。
この場合は、目標を達成すれば加点して、達成できなかった場合は減点しないと定めると良いでしょう。
関連記事:「低めの目標設定」に甘んじる部下に対して、上司がとるべき行動は?
識学的視点:目標管理(MBO)と人事評価を給与と連動させる方法
目標管理と人事評価を給与に連動させるためには、例えば下記のような資料を準備しておく必要があります。
- 社員の役割を定義した表(=社員の目標が決定される)
- 目標と基準点が記載された表(=目標達成に応じて点数が決まる)
- 評価点ポイント換算表(=評価点をポイントに変換するための表)
- 等級表(=必要なポイントと役職を明記したもの)
- 給与テーブル(=ポイントに応じて給与を増減する表)
目標管理と人事評価を連動させるために必要な考え方は、目標に対する結果の評価は絶対評価(=〇点/100点)で行い、査定は相対評価で行うという視点です。
例えば、管理部門のAさん、営業部門のBさんのケースを考えてみましょう。
Aさんは、全てのタスクをミスなく実施し、絶対評価で100点満点の評価を受けました。
一方、営業部門Bさんは1,000万円の売上目標に対し、800万円を単月で売り上げ、絶対評価で80点の評価を受けました。
それでは、Aさんの方が評価が高いからと言って給与が高いのかというとそうではありません。
あくまでも査定は、営業部と管理部の会社への貢献度で決められるべきであり、相対評価であるということです。
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※対象者には制限がございます。
関連記事:目標の振り返り方やそのポイントとは?メリットや問題点などを解説
識学的視点:目標管理(MBO)を効果的に運用する方法とは
目標管理を効果的に運用するためには、明確な定量化された目標を用意することが大切です。
感覚的な目標は、上司の感じるがままに評価されてしまいます。
例えば「仕事に一生懸命取り組んでいる」といった評価項目があった際、社員自身は一生懸命に取り組んでいるつもりでも、上司からみれば一生懸命には見えない、などの認識のずれが発生します。
上記は少し極端な例ですが、以下のような目標設定をしてしまうこともあるのではないでしょうか?
- 処理スピードを早める
- 会社の生産性向上に貢献する
- ミスを減らす
上記の目標は、感覚的であり、定量化された目標ではありません。
したがって、上司も自信をもって〇×をつけることができませんし、その蓋然性を明確にすることはできないでしょう。
それでは、下記のような目標設定であればいかがでしょうか?
- 朝の表集計を10分間に短縮する
- マクロを使った集計表を上司の許可が出る状態で5つ作成する
- 請求書の処理ミスを平均1件/月まで削減する
上記のような目標であれば、誰でも客観的に〇×を判断することができます。
つまり、目標管理においては、恣意性が入らない客観的な指標(=多くの場合は数字)をもって設定することが必要なのです。
まとめ:目標管理と人事評価の連動
目標管理と人事評価を連動させた後は、査定との連動が必要になることでしょう。
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